【第24回】既設局所排気装置の改善方法|フード・ダクト・排風機の効果を数値比較

【第24回】既設局所排気装置の性能を改善する方法|フード・ダクト・排風機の改善効果を数値で比較

「局所排気装置の吸引能力が弱いので、排風機を大型化したい」

「ダクトの径を大きくすれば、風量は増えるのではないか」

「フードを発散源へ近づけるだけで、吸引性能は改善するのか」

既設の局所排気装置を改善する際には、このような疑問が生じることがあります。

例えば、フードの制御風速が不足している設備で、排風機の回転数を上げることを検討したとします。

しかし、吸引不足の原因がフードと発散源の距離にある場合には、排風機を大型化するよりも、フードの位置を変更する方が合理的なことがあります。

また、ダクト内部に粉じんが堆積している場合には、その原因を調べて改善することで、排風機を交換せずに性能を回復できる可能性があります。

一方、必要な排風量と圧力を発生させる能力そのものが不足している場合には、排風機の見直しが必要になることもあります。

つまり、既設局所排気装置の改善では、吸引能力が不足している原因を調べ、その原因に対応した対策を選ぶことが重要です。

この記事では、フード・ダクト・排風機を中心に、改善方法とその効果を数値で比較します。

なお、記事中の改善前後の数値は、特に断らない限り、理解のために設定した仮定例または理論モデルによる計算値です。実際の工場における改善実績を示すものではありません。

目次

1. 局所排気装置の性能改善は、どこから始めるべきか?

最初に、改善を検討する順序について考えます。

局所排気装置は、単に大量の空気を吸い込めばよい設備ではありません。

目的は、有害物質が作業場へ拡散する前に、発散源の近くで適切に捕捉することです。

そのため、改善を検討する際には、排風機の能力だけでなく、発散源とフードの位置関係や、作業者の呼吸域を通過する気流の有無などを確認する必要があります。

改善を考える基本的な順序

実務上は、次の順序で検討することを推奨します。

  1. 有害物質の発散そのものを減らせないか。
  2. フードを適切な位置へ移動できないか。
  3. 発散源を囲い込めないか。
  4. ダクトの閉塞や空気漏れ、過大な圧力損失を改善できないか。
  5. 各フードの流量配分を適切に調整できないか。
  6. 排風機の運転条件や能力を変更する必要があるか。

これは、すべての設備で必ずこの順序に従うという法令上の規定ではありません。

既設設備の状態と改善目的に応じて、適切な順序を選択するための実務上の考え方です。

特に、有害物質の除去・代替・密閉化など、発散を根本的に減らす方法を検討できる場合には、換気設備の能力増強よりも優先して検討することが重要です。

2. 改善前に測定しておくべき項目

改善効果を数値で比較するためには、改善前の状態を把握しておく必要があります。

例えば、次のような項目を確認します。

測定・確認項目主な目的
制御風速必要な吸引性能の確認
開口面風速囲い式フードの気流分布の確認
排風量実際に流れている空気量の確認
ダクト静圧運転状態・抵抗変化の調査
空気清浄装置の差圧フィルター等の抵抗の確認
排風機回転数排風機の運転条件の確認
ダンパー開度各フードへの風量配分の確認
フードと発散源の距離捕捉性能に影響する配置の確認
外乱気流空調や給気による影響の確認

また、実際の作業状態を観察することも重要です。

例えば、設計時にはフードから200 mmの位置で作業する予定だったのに、実際には400 mm離れた位置で作業している場合があります。

そのようなときには、排風機の能力不足だけを疑うのではなく、設備配置も改善対象になります。

改善前の測定結果は、改善後の性能を確認するための基準になります。

3. 改善方法①|外付け式フードを発散源へ近づける

まず、側方吸引型の外付け式フードを例に説明します。

外付け式フードは、発散源の外側から有害物質を吸引する方式です。

例えば、洗浄作業台の奥に矩形の外付け式フードを設置し、手前側で洗浄作業を行う場合があります。

このような設備では、フードと発散源との距離が捕捉性能に大きく影響します。

なぜ距離が重要なのか?

外付け式フードでは、一般にフードの開口面から離れるほど吸引による風速が低下します。

そのため、フードと発散源の距離が大きい場合には、発散した有害物質を十分に捕捉できないことがあります。

一方、フードを発散源に近づけることで、同じ排風量でも、発散源付近の吸引気流を強められる場合があります。

改善前後の比較例

次のような設備を想定します。

項目改善前
フード形式側方吸引型外付け式
排風量12.0 m³/min
フードから発散源までの距離300 mm
所定作業位置の風速0.33 m/s

ここで、排風量を12.0 m³/minに維持したまま、フードを発散源へ近づけたとします。

改善後の値を、次のように仮定します。

項目改善前改善後の仮定値
フードから発散源までの距離300 mm150 mm
排風量12.0 m³/min12.0 m³/min
同じ作業位置における風速0.33 m/s0.57 m/s

この例では、作業位置での風速が、

0.33 → 0.57 m/s

へ向上しています。

風速の増加率は、

(0.57 − 0.33) ÷ 0.33 × 100

約72.7%

です。

ただし、改善後の0.57 m/sは、設計計算から必ず得られる値ではなく、効果を説明するための仮定値です。

実際の改善効果は、フードの開口寸法、形状、距離、周囲の気流などによって異なります。

この改善方法の利点

排風量を増加させずに、必要な位置での吸引性能を改善できる可能性があります。

そのため、排風機の大型化に伴う電力消費の増加や騒音の問題などを回避できる場合があります。

注意点

フードを近づけることで、作業者が無理な姿勢になったり、作業を妨げたりする場合には、適切な改善とはいえません。

また、作業者の呼吸域を通過してから有害物質がフードへ吸い込まれるような配置も避ける必要があります。

フードと発散源の距離だけでなく、作業者の位置と気流の方向を確認します。

4. 改善方法②|フードにフランジや側板を設ける

次に、フードの形状を改善する方法です。

例えば、外付け式フードにフランジや側板を設けることが考えられます。

フランジとは?

フランジは、フードの開口部の周囲に設ける板状の部分です。

フードの背面や周辺からの空気の流入を抑え、発散源側の吸引気流を有効に利用する目的で使用されることがあります。

ただし、フランジの効果はフードの形状、寸法、設置状態によって異なります。

フランジを設ければ、どの設備でも必要排風量が一律に25%減少する、といった説明は適切ではありません。

側板を追加する場合

例えば、洗浄作業台の奥側に外付け式フードがあり、左右から空気が流れ込んでいる場合を考えます。

フードと作業台の左右に適切な側板を設けると、横方向からの外乱気流を受けにくくなる場合があります。

その結果、発散した有害物質をフードへ導きやすくなる可能性があります。

ただし、側板の追加によって気流が偏ったり、作業性が悪化したりする場合もあります。

効果をどう確認するのか?

改善前後で、次の項目を比較します。

  • 同じ作業位置での風速
  • 排風量
  • 発散した有害物質の捕捉状態
  • フード周囲の外乱気流
  • 作業姿勢や作業性

側板の設置前後で、単に開口面風速が増えたかどうかだけで判断するのではなく、発散源付近の捕捉状況を確認することが重要です。

5. 改善方法③|発散源を囲い込んで必要な排風量を減らす

フードの性能改善では、発散源の囲い込みも重要です。

例えば、開放された洗浄工程の一部を覆い、必要な作業開口部だけを残す方法があります。

ただし、囲い込みによって必要な性能が維持できるか、作業性や安全性に問題がないかを確認する必要があります。

囲い込みの効果を計算してみる

ここでは、囲い式フードの開口面積と平均風速の関係を考えます。

基本式は、

Q = 60 × A × Vavg

です。

  • Q:排風量(m³/min)
  • A:開口面積(m²)
  • Vavg:開口面平均風速(m/s)

この式を変形すると、

Vavg = Q ÷ (60 × A)

となります。

改善前の条件

排風量:12.0 m³/min

開口幅:1.0 m

開口高さ:0.60 m

開口面積は、

A1 = 1.0 × 0.60

A1 = 0.60 m²

です。

平均風速は、

V1 = 12.0 ÷ (60 × 0.60)

V1 ≒ 0.333 m/s

となります。

改善後の条件

次に、開口幅は1.0 mのまま、開口高さを0.40 mへ減らしたとします。

排風量は12.0 m³/minで一定と仮定します。

開口面積は、

A2 = 1.0 × 0.40

A2 = 0.40 m²

です。

平均風速は、

V2 = 12.0 ÷ (60 × 0.40)

V2 = 0.500 m/s

となります。

計算結果を比較する

項目改善前改善後
開口面積0.60 m²0.40 m²
排風量12.0 m³/min12.0 m³/min
開口面平均風速0.333 m/s0.500 m/s

この計算では、開口面積を約33.3%減らすことで、平均風速が約50%増加します。

同じ平均風速を維持するなら必要風量はどうなるか?

例えば、平均風速0.50 m/sを維持したい場合を考えます。

開口面積0.60 m²では、

Q1 = 60 × 0.60 × 0.50

Q1 = 18.0 m³/min

です。

一方、開口面積0.40 m²では、

Q2 = 60 × 0.40 × 0.50

Q2 = 12.0 m³/min

となります。

つまり、この単純計算では、開口面積を小さくすることで、同じ平均風速を確保するための風量を、

18.0 → 12.0 m³/min

へ減らせます。

減少率は約33.3%です。

この計算で注意すべきこと

ここで求めたのは開口面の平均風速です。

有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則が適用される囲い式フードでは、開口面の最小風速が評価対象となります。

そのため、平均風速0.50 m/sであることだけで、最小風速0.40 m/s以上を確保できているとは判断できません。

また、実際には開口面積の変更に伴って系統抵抗や排風量も変化する場合があります。

したがって、計算値は設計検討の参考とし、最終的には所定位置で測定して評価する必要があります。

6. 改善方法④|ダクトの閉塞・空気漏れを改善する

次に、ダクトの改善です。

ダクトの内部に粉じんが堆積したり、接続部に隙間が生じたりすると、必要な排風量を確保できなくなる場合があります。

ダクトの閉塞

例えば、粉じんを吸引する設備で、エルボ部分に粉じんが堆積している場合があります。

このような状態では、空気の流路が狭くなり、圧力損失が増加する可能性があります。

ダクトの空気漏れ

また、排風機の吸込み側にあるダクトに穴が開いていると、途中から外部の空気が流入する場合があります。

例えば、次の状態を考えます。

項目仮定した風量
フードからの吸引風量9.0 m³/min
ダクト途中からの漏れ込み3.0 m³/min
漏れ箇所より下流の風量12.0 m³/min

この場合、下流側で12.0 m³/minの風量が測定されても、フードから吸引している風量は9.0 m³/minです。

そのため、排風機付近の排風量だけで、フードの性能を判断してはいけません。

改善方法

ダクトの閉塞や空気漏れが見つかった場合には、原因に応じた清掃、修理、部品交換などを行います。

ただし、ダクト内部には有害な粉じんや化学物質が蓄積している可能性があります。

作業時には、設備停止、誤起動防止、残留物へのばく露防止、必要に応じた火災・爆発防止措置などを検討します。

また、清掃や修理だけでなく、なぜ堆積や漏れが発生したのかを調べることが重要です。

7. 改善方法⑤|エルボの圧力損失を減らす

ダクトの圧力損失は、直管の摩擦だけでなく、エルボや分岐などでも生じます。

ここでは、エルボを改善した場合の効果を計算します。

エルボの圧力損失

エルボなどによる局部圧力損失は、一般に次の式で表します。

ΔP = ζ × ρ × V² ÷ 2

  • ΔP:局部圧力損失(Pa)
  • ζ:局部損失係数
  • ρ:空気密度(kg/m³)
  • V:対象断面の平均風速(m/s)

計算条件

次の条件を仮定します。

項目条件
ダクト内径200 mm
排風量12.0 m³/min
空気密度1.20 kg/m³
改善前の損失係数2.0
改善後の損失係数0.5

損失係数は、効果を説明するための仮定値です。実際のエルボでは、形状、曲率半径、上流・下流の条件などから適切な値を選ぶ必要があります。

ダクト内の平均風速

断面積は、

A = π × 0.20² ÷ 4

A ≒ 0.03142 m²

です。

排風量12.0 m³/minは、

12.0 ÷ 60 = 0.20 m³/s

なので、

V = 0.20 ÷ 0.03142

V ≒ 6.37 m/s

です。

速度圧を求める

Pv = ρ × V² ÷ 2

Pv = 1.20 × 6.37² ÷ 2

Pv ≒ 24.3 Pa

となります。

改善前のエルボ

ΔP1 = 2.0 × 24.3

ΔP1 ≒ 48.6 Pa

です。

改善後のエルボ

ΔP2 = 0.5 × 24.3

ΔP2 ≒ 12.2 Pa

です。

圧力損失の比較

項目改善前改善後
損失係数2.00.5
速度圧約24.3 Pa約24.3 Pa
圧力損失約48.6 Pa約12.2 Pa

改善による圧力損失の減少は、

48.6 − 12.2

約36.4 Pa

です。

減少率は約75%となります。

ただし、これは排風量12.0 m³/minが変化しないという条件で、そのエルボ単独の損失を比較した結果です。

実際にエルボを改造すると、系統抵抗が変化するため、排風量も変わる場合があります。

また、エルボの損失係数が実際に2.0から0.5へ改善できるとは限りません。

そのため、この計算結果をそのまま実際の風量増加量として扱ってはいけません。

8. ダクト径を大きくすれば、必ず改善するのか?

ダクト径を大きくすると、同じ排風量ではダクト内の平均風速が低下します。

一般に、風速が低くなることで直管の圧力損失を小さくできる場合があります。

しかし、ダクト径を大きくすることが、常に適切な改善とは限りません。

計算例|ダクト径200 mmと250 mm

排風量を12.0 m³/minで一定とします。

項目内径200 mm内径250 mm
断面積0.03142 m²0.04909 m²
排風量12.0 m³/min12.0 m³/min
平均風速約6.37 m/s約4.07 m/s

この例では、ダクト径を200 mmから250 mmへ大きくすると、平均風速が約36%低下します。

粉じんを扱う場合には注意する

粉じんを吸引する設備では、ダクト内で粉じんを搬送するために必要な風速を確保することが重要です。

ダクト径を大きくして風速を下げすぎると、粉じんが堆積しやすくなる場合があります。

必要な搬送速度は、粉じんの種類、粒径、濃度、湿り気、付着性などによって異なります。

そのため、単に圧力損失を小さくすることだけを目的に、ダクト径を変更してはいけません。

ダクトの改善では、圧力損失の低減と、有害物質を適切に搬送するための条件を両立させる必要があります。

9. ダクト抵抗を減らすと、実際の排風量はどれだけ増えるのか?

ここからは、経験者向けに排風機の性能曲線と系統抵抗曲線を使った計算例を紹介します。

これまで説明してきたエルボやダクトの圧力損失は、一定の風量で比較したものです。

しかし、実際の排風量は、排風機の性能とダクト系統の抵抗によって決まります。

ファン性能曲線と系統抵抗曲線

排風機が発生できる静圧を、風量Qの関数として表したものをファン性能曲線とします。

一方、必要な圧力を風量の関数で表したものを系統抵抗曲線とします。

それぞれの曲線の交点が、運転点になります。

計算用の簡易モデル

ここでは、ファン性能曲線を次のように仮定します。

Ps = 500 − 1.5Q²

また、改善前の系統抵抗曲線を、

Ps = 3.5Q²

とします。

ここで、

  • Ps:ファン静圧(Pa)
  • Q:排風量(m³/min)

です。

係数には、この単位系に対応する単位が含まれます。

これらは計算方法を説明するための架空の曲線であり、実在する排風機の性能を示すものではありません。

改善前の運転点

交点では両方の圧力が等しくなります。

500 − 1.5Q² = 3.5Q²

500 = 5.0Q²

Q² = 100

したがって、

Q = 10.0 m³/min

となります。

このときの静圧は、

Ps = 3.5 × 10.0²

Ps = 350 Pa

です。

ダクトを改善した場合

次に、ダクトの抵抗を低減し、系統抵抗曲線が次のように変わったと仮定します。

Ps = 2.5Q²

排風機の性能曲線は変わらないものとします。

500 − 1.5Q² = 2.5Q²

500 = 4.0Q²

Q² = 125

したがって、

Q ≒ 11.18 m³/min

となります。

このときの静圧は、

Ps = 2.5 × 125

Ps = 312.5 Pa

です。

改善前後の比較

項目改善前改善後
系統抵抗の係数3.52.5
排風量10.0 m³/min約11.18 m³/min
運転点のファン静圧350 Pa312.5 Pa

排風量の増加率は、

(11.18 − 10.0) ÷ 10.0 × 100

約11.8%

です。

この例では、排風機を変更しなくても、ダクト抵抗を減らすことで排風量が増加しています。

静圧が下がっているのに、なぜ風量が増えるのか?

ここは重要なポイントです。

ダクト抵抗が小さくなると、同じ風量を流すために必要な圧力が低下します。

そのため、排風機の運転点が移動し、より大きな風量で運転できる場合があります。

したがって、静圧が大きいほど必ず吸引能力が高いというわけではありません。

実際の設備では、メーカーのファン性能曲線と系統抵抗曲線を使用して検討します。

また、今回の簡易モデルは単一系統の例です。複数の枝ダクトがある設備では、各枝への流量配分も検討する必要があります。

10. 改善方法⑥|排風機の回転数を上げる場合

ダクトやフードの改善だけでは必要な性能を確保できない場合には、排風機の回転数変更を検討することがあります。

ファン法則

同じファンで相似な運転条件が成立する場合には、次の関係が知られています。

  • 風量は回転数に比例する。
  • 圧力は回転数の二乗に比例する。
  • 軸動力は回転数の三乗に比例する。

ただし、これらは相似則が成立する条件での関係であり、実際の設備の運転点を無条件に求められるものではありません。

計算例|回転数を10%増加させる

例えば、排風機の回転数を、

1,500 → 1,650 min⁻¹

に変更した場合を考えます。

回転数比は、

1,650 ÷ 1,500 = 1.10

です。

相似則が成立する対応点では、

風量比 = 1.10

圧力比 = 1.10² = 1.21

軸動力比 = 1.10³ = 1.331

となります。

つまり、対応する運転条件では、回転数を10%増加させると、圧力は約21%、軸動力は約33.1%増加する関係です。

既設ダクトの運転点ではどうなるか?

先ほどの簡易ファンモデルを使います。

回転数1,500 min⁻¹のファン性能曲線は、

Ps = 500 − 1.5Q²

でした。

このファンに相似則を適用し、回転数を1.10倍にすると、簡易モデルでは、

Ps = 605 − 1.5Q²

となります。

既設ダクトの系統抵抗を、

Ps = 3.5Q²

のままとすると、

605 − 1.5Q² = 3.5Q²

605 = 5Q²

Q² = 121

したがって、

Q = 11.0 m³/min

です。

運転点の静圧は、

Ps = 3.5 × 11.0²

Ps = 423.5 Pa

となります。

結果を比較する

項目回転数1,500回転数1,650
排風量10.0 m³/min11.0 m³/min
ファン静圧350 Pa423.5 Pa

この例では、回転数を10%上げることで、排風量が10%増加しています。

これは、仮定したファン性能曲線と系統抵抗曲線の組合せによる結果です。

実際の設備では、性能曲線や運転条件によって結果が異なる場合があります。

回転数を上げる際の注意点

回転数を上げると、次の問題が発生する可能性があります。

  • 電動機の過負荷
  • 排風機の許容回転数超過
  • 振動や騒音の増加
  • 軸受や駆動部分への負荷増加
  • ダクトや空気清浄装置の圧力条件の変化
  • 複数フードへの流量配分の変化

また、インバータ制御による回転数変更では、電動機や排風機が使用条件に適合していることを確認する必要があります。

排風機の回転数を変更する前に、メーカー仕様、電動機容量、ファン性能曲線、系統抵抗などを確認してください。

11. ダクト改善と排風機の回転数増加を比較する

ここまでの計算結果をまとめます。

同じ架空の排風機とダクト系統を使用した比較です。

項目改善前ダクト抵抗低減回転数10%増
排風機回転数1,5001,5001,650
排風量10.011.1811.0
ファン静圧350312.5423.5
風量増加率—約11.8%10.0%

単位:回転数 min⁻¹、排風量 m³/min、静圧 Pa

この仮定例では、ダクト抵抗の低減によって約11.8%、回転数の増加によって10.0%の風量増加が得られています。

ただし、この結果から「ダクト改善の方が必ず効果的」と結論付けることはできません。

実際の効果は、ダクト抵抗をどの程度減らせるか、排風機がどのような性能曲線を持っているかによって変わります。

また、必要な排風量が確保されても、フードの位置や形状が不適切であれば、所定の制御風速を得られない場合があります。

排風量の増加と捕捉性能の改善は、区別して評価する必要があります。

12. 複数フードの設備では、各枝ダクトの流量配分に注意する

局所排気装置には、複数のフードを1台の排風機へ接続した設備があります。

この場合、主管の合計排風量が設計値と一致していても、一部のフードで風量が不足することがあります。

改善前の測定例

フード必要排風量現在の排風量
A7.2 m³/min8.2 m³/min
B4.8 m³/min3.8 m³/min
合計12.0 m³/min12.0 m³/min

この例では、主管の合計排風量は12.0 m³/minですが、フードBの風量が不足しています。

どのような改善を検討するのか?

例えば、枝ダクトBのダンパー開度や閉塞の有無を確認します。

また、枝ダクトAに過大な風量が配分されていないか調べます。

必要に応じて、各枝ダクトの抵抗を調整します。

改善後の目標

例えば、次のような状態を目標とします。

フード改善前改善後の目標
A8.2 m³/min7.2 m³/min
B3.8 m³/min4.8 m³/min
合計12.0 m³/min12.0 m³/min

ただし、この数値は、流量配分の目標を示したものです。

ダンパーを調整すれば必ずこの値になるという意味ではありません。

ダンパーの操作によって、排風機の運転点や各枝の流量が変化するため、実際に測定しながら調整する必要があります。

また、各フードについて必要な制御風速などが得られていることを確認する必要があります。

13. 改善策ごとの効果をどのように比較すればよいか?

これまで紹介した改善方法は、すべて同じ指標で比較できるわけではありません。

例えば、フードの距離を短くする改善では、発散源付近の風速が重要です。

一方、ダクトのエルボを改善する場合には、圧力損失の低減効果が重要になります。

また、排風機の回転数変更では、排風量や静圧に加えて、電動機の負荷なども確認する必要があります。

改善方法と評価指標

改善方法主な評価指標特に注意すること
フードを近づける制御風速、捕捉状況作業者の呼吸域と作業性
フランジ・側板追加捕捉状況、制御風速気流分布の変化
囲い込み開口面積、風速、必要風量最小風速と作業性
ダクトの閉塞除去排風量、静圧、区間損失堆積の再発
空気漏れの補修フード風量、漏れ量補修後の気密性
エルボの改善局部圧力損失実際の損失係数
ダクト径変更風速、圧力損失粉じん等の搬送速度
回転数の変更風量、静圧、電流等許容回転数と負荷
ダンパー調整各枝の風量、制御風速他フードへの影響

実際の改善計画では、効果だけでなく、改造費用、保守性、作業性、エネルギー消費、工事中の安全性なども含めて検討します。

14. 改善前後の性能は、どのように測定して比較するのか?

改善工事が完了したら、必要な性能が確保されていることを確認します。

例えば、フードを移動した場合には、同じ発散源・作業条件において、所定位置の制御風速や捕捉状況を確認します。

また、ダクトの抵抗を改善した場合には、排風量と静圧などを測定します。

測定条件をそろえる

改善効果を比較する際には、次の条件を確認します。

  • 対象物質と発散状態
  • 作業方法
  • フードの開口状態
  • 測定位置
  • 排風機の回転数
  • ダンパー開度
  • 給気・空調条件
  • 同時使用するフードの数

条件が異なる場合には、その違いを記録します。

改善前と改善後で何を比較するのか?

例えば、次のように記録します。

項目改善前改善後
排風量実測値実測値
制御風速実測値実測値
ダクト静圧実測値実測値
排風機回転数実測値実測値
発散源との距離実測値実測値
捕捉状態観察結果観察結果

測定結果は、適用法令上の性能要件、設計値、改善前の状態などと比較します。

15. 法令上、既設局所排気装置を改造するときに注意すること

ここでは、有機溶剤中毒予防規則を例に整理します。

① フードの位置・形状

同規則第14条では、外付け式フードを有機溶剤の蒸気の発散源にできるだけ近い位置へ設けることなどが規定されています。

また、ダクトについて、長さをできるだけ短くし、ベンドの数をできるだけ少なくすることが規定されています。

② 局所排気装置の性能

同規則第16条では、対象となる局所排気装置について、フード形式に応じた制御風速を出し得る能力が規定されています。

フード形式原則となる制御風速
囲い式0.4 m/s
外付け式・側方吸引型0.5 m/s
外付け式・下方吸引型0.5 m/s
外付け式・上方吸引型1.0 m/s

ただし、同条には例外規定があり、別の規則が適用される設備では性能要件が異なる場合があります。

③ 改造・修理後の点検

同規則第22条では、対象となる局所排気装置を初めて使用するとき、または分解して改造・修理したときに、所定事項を点検することが規定されています。

例えば、ダクトの堆積状態、接続部の緩み、吸気・排気の能力などです。

④ 異常が見つかった場合

同規則第23条では、所定の自主検査や点検によって異常を認めた場合、直ちに補修することが規定されています。

⑤ 届出の要否

局所排気装置の設置、移転、主要構造部分の変更などでは、労働安全衛生法令に基づく計画の届出が必要となる場合があります。

ただし、すべての部品交換や補修が一律に同じ届出の対象となるわけではありません。

改造内容を決める段階で、対象設備、変更範囲、適用規定、届出の要否を確認する必要があります。

実務上の注意

今回紹介した改善方法は、すべて任意に実施してよいという意味ではありません。

特に、フード形式の変更、ダクト系統の変更、排風機の交換などでは、適用される法令と設備の性能条件を再確認する必要があります。

16. 改造工事では、どのような安全対策が必要か?

既設設備の改造では、運転中の点検よりも危険な作業が発生する場合があります。

例えば、次のような作業です。

  • ダクトの切断・取外し
  • 排風機の羽根車・ベルトの点検
  • 電動機やインバータの交換
  • 粉じんの堆積したダクトの清掃
  • 有害物質が付着したフィルターの交換
  • 高所に設置したダクトの改造

改造前の安全確認

まず、設備の停止・隔離方法を決めます。

必要に応じて、電源遮断や誤起動防止措置を講じます。

また、設備内部に蓄積した有害物質へのばく露や、可燃性物質による火災・爆発の危険を確認します。

改造中の作業環境

局所排気装置を停止すると、通常の作業時に必要な換気能力が失われる場合があります。

そのため、改造工事中に有害物質を発散させる作業を継続するかどうかについても、事前に検討する必要があります。

必要な性能が確保できない状態で、有害物質へのばく露が生じる作業を継続してはいけません。

改造後の確認

改造工事が完了したら、必要な点検・性能測定を実施します。

特に、排風機の回転方向や運転状態、ダクトの接続部、各フードの制御風速などを確認します。

さらに、設備図面と測定記録を更新しておくことを推奨します。

17. 実務事例|どの改善方法を選ぶべきか?

ここでは、架空の部品洗浄工場を考えます。

この工場では、側方吸引型の外付け式フードを使用しています。

しかし、実際の作業位置で必要な制御風速が得られていません。

現状

項目状態
フード形式側方吸引型外付け式
対象作業部品の洗浄
発散源洗浄容器
吸引能力不足
排風機運転中
周囲の環境空調気流の影響あり

改善案A:排風機の回転数を上げる

回転数を上げることで、排風量が増加する可能性があります。

ただし、電動機負荷や騒音などが増加する可能性があります。

また、発散源とフードの距離が不適切な場合には、十分な改善効果が得られないこともあります。

改善案B:フードを発散源へ近づける

フードと発散源の距離を短くすることで、同じ排風量でも捕捉性能が改善する可能性があります。

ただし、作業姿勢や設備の配置を確認する必要があります。

改善案C:側板を設ける

横方向からの気流を抑えることで、捕捉状態が改善する可能性があります。

ただし、側板の大きさや取付位置によって効果が変わります。

改善案D:空調の吹出し方向を変更する

空調気流が有害物質の捕捉を妨げている場合、吹出し方向や給気位置の調整が有効なことがあります。

ただし、作業場全体の換気や温熱環境も考慮する必要があります。

この事例では何を優先するか?

まず、現場で実際の作業位置と気流の状態を確認します。

次に、フードを近づけることや外乱気流の改善を検討します。

それでも必要な性能を確保できない場合には、排風量やダクト抵抗、排風機の能力などを検討します。

このように、改善の目的に直接関係する部分から対策を選ぶことが重要です。

18. 改善効果の評価表を作成する

改善方法を比較するときには、数値だけでなく、改善の目的、必要な工事、ほかの設備への影響などを整理すると判断しやすくなります。

改善案主な目的確認する数値主な制約
フード移動捕捉性能向上所定位置の風速作業性、配置
フランジ・側板気流改善風速、捕捉状態寸法、作業空間
囲い込み必要風量低減開口面積、風速、風量開口部の使いやすさ
ダクト清掃流路抵抗の回復風量、静圧、差圧堆積物の性質
ダクト形状変更圧力損失低減圧力損失、風量設置スペース
ダクト径変更風速・損失の調整風速、圧力損失搬送速度
排風機回転数変更排風量の調整風量、静圧、電流許容回転数
排風機交換必要能力の確保ファン性能曲線、運転点電力、騒音、費用

ここで重要なのは、改善方法を一つだけ選ぶとは限らないことです。

例えば、フードの位置を改善し、ダクト内の堆積物を除去したうえで、必要な風量へ調整する方法も考えられます。

ただし、複数の改善を同時に実施すると、どの対策がどの程度効果をもたらしたのか分かりにくくなる場合があります。

可能であれば、改善の段階ごとに測定結果を記録しておくと、効果の検証に役立ちます。

19. 改善前後に記録しておきたい項目

改善工事が完了した場合には、次の事項を記録しておくことを推奨します。

項目記録内容
改善前の問題制御風速不足、風量不足など
原因調査調査方法・測定結果
改善内容フード・ダクト・排風機の変更
改善前測定風速、風量、静圧等
改善後測定風速、風量、静圧等
運転条件回転数、ダンパー開度等
性能判定適用される法令・設計値との比較
安全確認改造工事中・再稼働時の確認
図面改造後の設備系統図
維持管理新しい正常時の基準値・点検方法

この記録を残すことで、将来、再び吸引能力が低下した場合にも、正常時との比較が容易になります。

また、第23回で説明した注意値・対応値などの自主的な管理値を、改善後の設備条件に合わせて見直すことも重要です。

20. 既設局所排気装置の改善チェックリスト

確認事項確認
対象物質と適用法令を確認した□
現状の吸引不足を測定で確認した□
作業者へのばく露リスクを評価した□
発散源の除去・代替・密閉化を検討した□
フードと発散源の距離を確認した□
フード形状の改善を検討した□
囲い込みの可能性を検討した□
ダクトの閉塞・空気漏れを確認した□
ダクトの圧力損失を計算した□
粉じん等の搬送速度を確認した□
空気清浄装置の抵抗を確認した□
ファン性能曲線を確認した□
排風機の回転数・電動機容量を確認した□
複数フードの流量配分を確認した□
改造に伴う届出の要否を確認した□
改造工事の安全対策を検討した□
改善後の制御風速等を確認した□
改善後の排風量・静圧等を測定した□
設備図面と測定記録を更新した□
維持管理方法・管理値を見直した□

このチェックリストは、既設設備の改善計画を整理するための実務上の提案です。すべての項目が一律に法的義務となるわけではありません。

よくある質問

Q1. 局所排気装置の風量が不足している場合、最初に排風機を交換するべきですか?

必ずしもそうではありません。

フードの位置、ダクトの閉塞、空気漏れ、空気清浄装置の抵抗などを調べ、原因に対応した改善方法を検討することが重要です。

Q2. 外付け式フードを発散源へ近づければ、必ず制御風速が高くなりますか?

一般に、外付け式フードでは距離が短いほど発散源付近の吸引風速を確保しやすくなります。

ただし、フード形状や周囲の気流などによって結果が異なるため、改善後に測定して確認する必要があります。

Q3. フランジを設ければ排風量を25%減らせますか?

すべての設備で25%減らせるわけではありません。

フランジの効果は、フードの構造、寸法、設置条件などによって異なります。

実際の改善効果は、適切な設計検討と性能測定によって確認します。

Q4. 囲い式フードの開口面積を小さくすれば、必要排風量も減りますか?

同じ平均風速を確保するための風量は、開口面積が小さいほど少なくなる関係があります。

ただし、実際の捕捉性能は開口面の最小風速や気流分布なども関係するため、平均風速だけで性能を判定してはいけません。

Q5. ダクト径を大きくすれば、圧力損失は減りますか?

同じ風量では、ダクト径を大きくすることで圧力損失を低減できる場合があります。

ただし、粉じん等の搬送速度が不足し、堆積の原因となる場合があります。

Q6. エルボの圧力損失を減らした分だけ、排風機の必要静圧も下がりますか?

一定風量での損失比較では、その区間の圧力損失を減らせます。

ただし、実際の運転では排風量が変化するため、ファン性能曲線と系統抵抗曲線の関係から確認する必要があります。

Q7. 排風機の回転数を10%上げれば、風量は必ず10%増えますか?

ファン法則が成立する相似な運転条件では、風量が回転数に比例する関係があります。

ただし、実際の運転点は系統抵抗によって決まるため、常に単純な比例計算だけで判断できるわけではありません。

Q8. 既設局所排気装置を改造した場合、点検は必要ですか?

適用される規則と改造内容によって異なります。

例えば、有機溶剤中毒予防規則第22条の対象となる局所排気装置を分解して改造・修理した場合には、所定の点検が必要です。

Q9. 改善後の排風量が設計値になれば、性能は正常ですか?

必ずしもそうではありません。

必要な制御風速や捕捉状況なども確認する必要があります。

また、複数フードを接続している場合には、各フードの流量配分も重要です。

まとめ|局所排気装置の改善は、排風機の大型化だけではない

既設局所排気装置の吸引性能を改善するには、フード・ダクト・排風機を設備全体として検討することが重要です。

例えば、外付け式フードを発散源へ近づけることで、同じ排風量でも捕捉性能が向上する場合があります。

また、囲い込みによって開口面積を減らすことで、必要な排風量を小さくできる可能性があります。

ダクトでは、閉塞や空気漏れを補修したり、エルボなどの圧力損失を減らしたりすることで、排風量が改善する場合があります。

一方、排風機の回転数増加や大型化は、必要な風量・圧力を確保するための方法ですが、電動機の負荷や騒音、エネルギー消費などへの影響を考慮する必要があります。

最も重要なのは、改善方法を選ぶ前に、現在の設備にどのような問題があるのかを測定と現場調査によって確認することです。

局所排気装置の性能改善は、排風量を増やすことだけが目的ではありません。必要な位置で有害物質を適切に捕捉できる状態を、合理的な設備構成で確保することが目的です。

そのために、改善前後の制御風速、排風量、静圧などを測定し、必要な性能が確保されているか確認する必要があります。

さらに、改善後の正常値を記録しておくことで、将来の性能低下を早期に発見するための基準として活用できます。

次回は、局所排気装置の改善効果を評価する際に重要となる、測定結果の比較方法、測定誤差、性能改善の判定について詳しく解説します。

主な参考資料

  1. 『やさしい作業環境改善技術』第18章「工事完成時の点検と性能が出ない場合の対策」
  2. e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」
  3. 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について
  4. 厚生労働省「第三管理区分となる場合の例・局所排気装置等の設置管理に関する資料」
  5. 米国OSHA Technical Manual, Section III, Chapter 3:Ventilation Investigation

※OSHAの資料は海外の技術的参考情報であり、日本国内の法的義務を示すものではありません。

※本文で使用した風速、風量、圧力損失、ファン性能曲線、改善前後の性能値は、特に断らない限り、計算方法や改善の考え方を説明するための仮定例です。実設備にそのまま適用できる設計値や改善実績ではありません。

※実際の改造では、対象物質、設備構造、法令上の性能要件、排風機の性能、電動機の負荷、工事の安全性などを確認し、適切な設計・施工・性能確認を行う必要があります。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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