【第25回】局所排気装置の改善効果の評価方法|測定誤差・風速・風量の判定

【第25回】局所排気装置の改善効果をどう評価する?|測定誤差・性能比較・改善後の判定方法

局所排気装置の性能を改善した後、その効果をどのように確認すればよいのでしょうか。

例えば、側方吸引型の外付け式フードを発散源へ近づけたところ、所定の作業位置における風速が次のようになったとします。

  • 改善前:0.33 m/s
  • 改善後:0.57 m/s

一見すると、十分な改善効果が得られたように思えます。

しかし、ここで確認すべきことがあります。

改善前後で同じ作業位置を測定していたでしょうか。

排風機の回転数やダンパー開度は変わっていなかったでしょうか。

測定器の誤差や測定値のばらつきは、どの程度あったのでしょうか。

また、改善後の風速が法令上の性能要件を満たしていても、ほかの作業位置で有害物質が捕捉されずに拡散している可能性はないでしょうか。

このように、改善効果の評価では、数値の増減だけでなく、測定条件と性能要件を組み合わせて判断する必要があります。

この記事では、制御風速、排風量、静圧、圧力損失の改善前後の比較から、測定誤差の考え方、性能の適合判定、改善後の記録方法まで具体例を使って説明します。

目次

1. 局所排気装置の改善効果は3つに分けて評価する

局所排気装置の改善後には、次の3つを区別して確認します。

① 数値として改善したか

例えば、制御風速が0.33 m/sから0.57 m/sになった場合、改善前より風速が大きくなっています。

これは、測定結果から確認できる数値上の変化です。

ただし、その変化が改造によるものかどうかは、測定条件やほかの要因を確認する必要があります。

② 測定結果を信頼できるか

例えば、改善前は発散源から300 mm離れた位置で測定していたのに、改善後は150 mmの位置で測定していた場合を考えます。

この違いが改善の目的そのものである場合はありますが、比較したい作業位置が異なっていれば、同一地点での風速変化として扱えません。

また、測定器の特性や測定時の気流変動によっても結果は変化します。

③ 必要な性能が確保されたか

例えば、有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則値が適用される側方吸引型外付け式フードでは、制御風速は0.5 m/sです。

改善後に所定位置で0.57 m/sが確認された場合、数値としては原則値を上回っています。

しかし、測定位置・運転条件が適切であることや、ほかの該当箇所にも問題がないことを確認する必要があります。

さらに、制御風速の性能要件を満たすことと、実作業中の有害物質へのばく露が十分に抑制されていることも区別して考えます。

2. 改善前後の風速を比較する方法

最初に、風速の改善効果を計算してみます。

計算例①|外付け式フードの改善

次の条件を想定します。

  • フード形式:側方吸引型外付け式
  • 改善方法:フードを発散源へ近づける
  • 改善前の所定位置の風速:0.33 m/s
  • 改善後の所定位置の風速:0.57 m/s

これらの数値は、改善効果の評価方法を説明するための仮定値です。

風速の増加量を求める

増加量は、

改善後の風速 − 改善前の風速

で求められます。

0.57 − 0.33

増加量 = 0.24 m/s

です。

風速の増加率を求める

増加率は次の式で計算します。

増加率(%)=(改善後 − 改善前)÷ 改善前 × 100

数値を代入すると、

(0.57 − 0.33) ÷ 0.33 × 100

増加率 ≒ 72.7%

となります。

つまり、比較した測定位置では、改善前に比べて風速が約72.7%高くなっています。

これだけで改善効果が確認できたといえるか?

まだ十分ではありません。

例えば、次のような条件が変わっていた場合、測定値の変化には複数の要因が含まれます。

  • 排風機の回転数が上がっていた
  • ダンパー開度が変わっていた
  • 空調の吹出し方向が変わっていた
  • ほかのフードを停止していた
  • 測定位置が変わっていた

そのため、フードの位置変更による改善効果を調べる場合には、可能な限りほかの運転条件をそろえて比較します。

目的に応じて比較位置を分ける

フードを移動すると、フードから最も離れた作業位置の定義や位置関係が変わる場合があります。

そこで、実務上は次の2つを分けて考えると整理しやすくなります。

改善効果の比較: 改善前後で対応する同じ実作業位置における風速を比較します。

法令上の性能評価: 改善後のフード配置に対し、適用法令・検査指針で定められた位置の制御風速を測定します。

この2つは測定位置が一致する場合もありますが、必ずしも同じではありません。

3. 測定誤差とは?測定値が完全に一致しない理由

ここからは、測定誤差について説明します。

例えば、風速計で同じ場所を3回測定したところ、次の結果になったとします。

測定回数風速
1回目0.56 m/s
2回目0.57 m/s
3回目0.58 m/s

同じ場所を測定しているのに、結果が少し異なっています。

なぜでしょうか。

測定値が変化する主な理由

① 気流そのものが変動している

局所排気装置の吸引気流は、必ずしも常に一定ではありません。

空調の吹出し、作業者の動き、周囲の設備の運転などによって変化する場合があります。

② 風速計の測定特性

風速計には、測定範囲、精度、分解能、方向特性、応答特性などがあります。

これらの特性が、測定結果に影響する場合があります。

③ プローブの位置と向き

特に外付け式フードでは、吸込み口からの距離によって風速が大きく変化します。

そのため、プローブの位置が変わると、測定結果が変わる可能性があります。

④ 測定者による違い

測定器の持ち方、身体の位置、測定時間、表示値の読み取り方などによって、結果に違いが生じる場合があります。

「誤差」と「ばらつき」は同じ意味ではない

厳密には、測定誤差は測定値と基準となる値との差に関係する概念です。

一方、同じ条件で繰り返した測定値の散らばりは、測定のばらつきとして扱います。

また、測定値の信頼性を定量的に表すためには、「測定の不確かさ」という考え方が用いられます。

実務では、これらをすべて「測定誤差」と呼ぶことがありますが、正確に評価する際には区別が必要です。

4. 測定の不確かさをどう考えるのか?

測定の不確かさとは、測定値にどの程度の幅を考慮する必要があるのかを表すためのものです。

例えば、ある条件で測定した風速が、

0.57 m/s

だったとします。

ここで、適切な評価によって拡張不確かさが0.03 m/sと求められたと仮定します。

この場合、測定結果を説明する方法として、

0.57 ± 0.03 m/s

と表すことが考えられます。

ただし、実際にこのように表示するには、拡張不確かさの算出方法、包含係数、適用条件などを明確にする必要があります。

0.03 m/sという値はメーカーの保証値なのか?

違います。

ここで使用した0.03 m/sは、測定の不確かさを説明するための仮定値です。

日本カノマックスのクリモマスター風速計 Model 6501シリーズなど、実際に使用する測定器の仕様から求めた数値ではありません。

実務では、使用する測定器の仕様、校正結果、測定方法、繰返し測定の結果などを確認する必要があります。

不確かさが小さいほどよいのか?

一般に、測定の不確かさが小さいほど、測定値の細かな違いを評価しやすくなります。

ただし、不確かさを小さくすることだけが目的ではありません。

例えば、測定位置が間違っていれば、高精度の風速計を使っても、必要な性能を正しく評価できません。

測定器の精度だけでなく、適切な位置・条件・方法で測定することが重要です。

5. 測定を繰り返すと何が分かるのか?

改善前後の結果を比較する場合、同じ条件で繰り返し測定することが有用です。

計算例②|改善前後に3回ずつ測定する

例えば、次の測定結果が得られたとします。

測定回数改善前改善後
1回目0.320.56
2回目0.330.57
3回目0.340.58
平均0.330.57

単位:m/s

ここでは、各値が同じ指定位置、同じ運転条件の下で得られたと仮定します。

平均値を比較すると、

0.57 − 0.33

平均風速の増加量 = 0.24 m/s

です。

また、各回の測定値を見ると、改善前後で明確な数値の差が見られます。

この結果から何が分かるのか?

少なくとも、この測定例では、改善後の測定値が改善前より高い傾向にあることが分かります。

ただし、3回測定しただけで、測定の不確かさ全体を十分に評価したとはいえません。

例えば、同じ風速計に一定方向の偏りがある場合、何回測定してもその偏りが解消されない可能性があります。

また、改善前後で測定者やプローブの向きが違っていた場合には、その影響も考慮する必要があります。

繰返し測定で注意したいこと

同じ測定点で3回読み取る方法と、設備を停止・再起動して条件を再現しながら複数回測定する方法では、確認できるばらつきが異なります。

また、連続した表示値を短時間に3回記録しただけでは、長期的な運転変動を把握できないことがあります。

そのため、何を確認するための繰返し測定なのかを明確にすることが重要です。

6. 法定の原則値に近い測定結果はどう判断するのか?

ここは、実務で特に重要な部分です。

例えば、有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則値が適用される側方吸引型外付け式フードを考えます。

この場合、制御風速の原則値は0.5 m/sです。

改善後に測定したところ、

0.51 m/s

だったとします。

0.51 m/sなら、直ちに問題ないと判断してよいか?

測定値は原則値0.5 m/sを上回っています。

しかし、実際の測定では、次の事項を確認する必要があります。

  • 法令・検査指針で求められる位置で測定しているか
  • 所定の運転条件を満たしているか
  • 測定器は適切なものか
  • 測定値は安定しているか
  • 他の必要な測定点で不足がないか

また、測定値が基準に近い場合には、測定の不確かさを考慮することも有用です。

不確かさを考慮した説明例

仮に、測定値が0.51 m/sで、適切に評価された拡張不確かさが0.03 m/sだったとします。

説明用に単純な範囲で示すと、

0.51 − 0.03 = 0.48 m/s

0.51 + 0.03 = 0.54 m/s

となります。

この結果では、測定の不確かさを考慮した範囲が、原則値0.5 m/sをまたいでいます。

したがって、自主的な品質保証の観点では、追加測定や原因確認を行うことが合理的な場合があります。

ただし、測定の不確かさをどのように適合判定へ反映するかは、適用する判定ルールによって異なります。

例えば、事業場が「測定値から所定の不確かさを差し引いても管理上の要求値以上であること」という保守的な社内判定ルールを採用する方法も考えられます。

これは法令に一律に定められた判定方法ではありません。

また、測定値が0.51 m/sであるというだけで、法令上の不適合と断定することも適切ではありません。

重要な区別

項目判断内容
法令上の性能評価適用法令・検査指針に基づく
測定の不確かさ測定結果の信頼性に関する情報
社内の管理余裕組織が自主的に決める安全側の判断条件

7. 囲い式フードでは平均風速だけで判断しない

次に、ドラフトチャンバーを例に考えます。

有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則が適用される囲い式フードでは、開口面の最小風速が制御風速となります。

したがって、開口面の平均風速が高くても、ある部分の風速が不足していれば、必要な性能を満たさない場合があります。

計算例③|16点測定による改善前後の比較

例えば、ドラフトチャンバーの開口面を16区域に分割して測定したとします。

改善前後の結果を整理すると、次のようになりました。

評価項目改善前改善後
開口面の最小風速0.37 m/s0.43 m/s
開口面の平均風速0.46 m/s0.51 m/s
適用される原則値0.40 m/s0.40 m/s

これらは説明用の仮定値です。

改善前の状態

平均風速は0.46 m/sです。

しかし、最小風速は0.37 m/sであり、原則値0.40 m/sを下回っています。

この場合、平均風速が高いことを理由に適合とは判断できません。

改善後の状態

改善後には、最小風速が0.43 m/sになっています。

原則値0.40 m/sを上回っています。

ただし、適切な測定条件と測定位置であることを確認し、ほかの必要な検査事項も評価する必要があります。

最も重要な改善効果は何か?

この例では、平均風速の向上も確認できますが、性能評価の中心となるのは、最小風速が原則値を上回るようになったことです。

したがって、囲い式フードの改善結果を報告する場合には、最小風速を明確に記録することが重要です。

サッシの位置を記録する

ドラフトチャンバーでは、上下スライド式サッシの開口高さによって風速が変化する場合があります。

そのため、改善前後の測定時には、サッシ高さを必ず記録します。

また、サッシの開口高さが異なる場合には、その違いを踏まえて評価します。

8. 排風量の改善効果を正しく評価する

次に、ダクトの排風量を比較します。

排風量Qは、ダクト断面積Aと断面平均風速Vavgから求められます。

Q = 60 × A × Vavg

  • Q:排風量(m³/min)
  • A:ダクト断面積(m²)
  • Vavg:断面平均風速(m/s)

計算例④|ダクト改善による風量増加

次の値が得られたとします。

項目改善前改善後
ダクト内径200 mm200 mm
排風量10.0 m³/min10.9 m³/min

風量の増加量は、

10.9 − 10.0 = 0.9 m³/min

です。

増加率は、

0.9 ÷ 10.0 × 100

増加率 = 9.0%

となります。

この例では、排風量が9%増加しています。

設計計算値と実測値は分けて考える

前回の記事では、ダクト抵抗を減らした場合の架空の計算モデルから、排風量が10.0 m³/minから約11.18 m³/minへ増える例を示しました。

今回の実測例では、改善後の排風量を10.9 m³/minと仮定しています。

両者を比較すると、

11.18 − 10.9 = 0.28 m³/min

の差があります。

この差が生じたとしても、計算と測定のどちらかが必ず間違っているとは限りません。

実際の設備では、次のような理由によって差が生じる場合があります。

  • 実際のダクト抵抗が計算時の仮定と異なる
  • ファン性能曲線が簡易モデルと異なる
  • 測定位置の気流分布が不均一
  • 排風機回転数が異なる
  • ダンパー開度が変わっている

風量増加だけでは十分とは限らない

例えば、主管の排風量が増加しても、一部のフードで必要な風速が得られていない場合があります。

そのため、主管の排風量と各フードの制御風速などを組み合わせて評価する必要があります。

9. ダクト径を変更した場合の比較で注意すること

例えば、ダクト径を200 mmから250 mmへ変更した場合を考えます。

この場合、排風量が同じであっても、断面積が変わるため、ダクト内の平均風速が変化します。

項目内径200 mm内径250 mm
排風量12.0 m³/min12.0 m³/min
断面積約0.03142 m²約0.04909 m²
平均風速約6.37 m/s約4.07 m/s

この例では、ダクト径を大きくした結果、平均風速は低下しています。

しかし、排風量は変わっていません。

したがって、ダクト内風速が低下したことだけを理由に、排風性能が悪化したと判断してはいけません。

一方、粉じんを扱う設備では、ダクト内で粉じんを搬送するために必要な風速を確保する必要があります。

そのため、圧力損失の低減効果だけでなく、粉じんの堆積リスクも含めて評価します。

10. 静圧の変化を改善効果と判断してよいのか?

静圧は、ダクトの運転状態を調べるための重要な指標です。

しかし、静圧が高くなったか低くなったかという一つの数値だけでは、改善効果を判定できません。

計算例⑤|改善前後の静圧

次のような測定結果を仮定します。

項目改善前改善後
ダクト静圧−350 Pa−310 Pa
排風量10.0 m³/min11.0 m³/min

この例では、符号付きの静圧値は−350 Paから−310 Paへ増加しています。

一方、負圧の絶対値は350 Paから310 Paへ減少しています。

さらに、排風量は10.0 m³/minから11.0 m³/minへ増加しています。

なぜ負圧が小さくなっても風量が増える場合があるのか?

例えば、ダクト系統の抵抗が小さくなると、同じ排風機でも運転点が移動し、排風量が増える場合があります。

そのため、必要な圧力が小さくなりながら、風量が増加することがあります。

ただし、この結果が実際の改善効果を示しているかどうかは、静圧の測定位置、ファン性能曲線、系統抵抗などを確認する必要があります。

静圧はどのように評価するのか?

次の情報を組み合わせます。

  • 改善前後の排風量
  • 同じ位置で測定した静圧
  • 排風機回転数
  • ダンパー開度
  • 空気清浄装置の差圧
  • ダクトの構造変更

静圧の変化は、改善効果を調べるための手掛かりであり、それだけで性能向上を証明するものではありません。

11. エルボの圧力損失を比較するときの注意点

前回の記事では、エルボの損失係数を改善した場合の計算例を紹介しました。

同じ風量における計算結果は、次のとおりです。

項目改善前改善後
損失係数ζ2.00.5
速度圧24.3 Pa24.3 Pa
圧力損失約48.6 Pa約12.2 Pa

この例では、エルボ単独の圧力損失が約36.4 Pa減少しています。

実際の設備ではどう確認するのか?

例えば、エルボの上流側と下流側に適切な測定点を設け、圧力の変化を確認する方法があります。

ただし、測定位置によって速度圧が変わる場合には、静圧差だけを圧力損失として扱えません。

全圧の関係を使用し、

ΔPt = Pt1 − Pt2

によって、区間の全圧損失を評価します。

ここで、

  • ΔPt:区間の全圧損失
  • Pt1:上流側全圧
  • Pt2:下流側全圧

です。

また、改善前後で風量が異なる場合、圧力損失の単純比較では、流路抵抗がどれだけ変化したのかを正確に評価できない場合があります。

そのため、可能であれば同じ風量で比較するか、風量の違いを考慮して評価します。

損失係数を比較する方法

適切な測定条件で、局部損失を分離して評価できる場合には、

ζ = ΔP ÷(ρV²/2)

によって損失係数を求める方法があります。

ただし、測定区間に直管摩擦損失やほかの局部損失が含まれている場合には、それらを適切に区別する必要があります。

実際のエルボでは気流が乱れるため、測定断面の選定も重要になります。

12. ファン性能曲線と系統抵抗曲線で改善効果を確認する

ダクトの改善や排風機の変更を行った場合、ファン性能曲線と系統抵抗曲線を使って運転点を比較すると、改善の考え方を理解しやすくなります。

前回の記事では、次の簡易モデルを使用しました。

改善前

ファン性能曲線:

Ps = 500 − 1.5Q²

系統抵抗曲線:

Ps = 3.5Q²

この交点は、

  • 排風量:10.0 m³/min
  • ファン静圧:350 Pa

です。

ダクト改善後

ファン性能曲線:

Ps = 500 − 1.5Q²

系統抵抗曲線:

Ps = 2.5Q²

この交点は、

  • 排風量:約11.18 m³/min
  • ファン静圧:312.5 Pa

となります。

改善効果の比較

項目改善前改善後
排風量10.0 m³/min約11.18 m³/min
ファン静圧350 Pa312.5 Pa
風量増加率—約11.8%

これは、仮定した数式に基づく理論計算です。

実際の設備では、測定によって現在の運転点を求め、メーカーのファン性能曲線などと比較する必要があります。

グラフで注意すること

ファン性能曲線は一般に右下がり、単純な系統抵抗曲線は右上がりに描かれます。

改善後に系統抵抗が低下すると、運転点が移動します。

ただし、ファン性能曲線と系統抵抗曲線が交差していない位置に運転点を描いてはいけません。

また、運転点の数値とグラフ上の座標が一致している必要があります。

13. 改善効果があっても、ほかのフードの性能が低下していないか確認する

複数のフードを一つの排風機へ接続した設備では、改善したフード以外の性能も確認する必要があります。

例えば、フードAとフードBがある設備を考えます。

改善前の排風量

フード改善前
A7.2 m³/min
B4.8 m³/min
合計12.0 m³/min

ここで、フードAのダクト抵抗を減らしたとします。

その結果、排風量が次のようになったと仮定します。

改善後の排風量

フード改善前改善後
A7.28.2
B4.83.8
合計12.012.0

単位:m³/min

この例では、フードAの風量が増加しています。

しかし、フードBの風量は減少しています。

つまり、一つのフードの性能を改善した結果、別のフードで吸引能力が不足する可能性があります。

何を確認するべきか?

複数フードの設備では、少なくとも次の事項を確認します。

  • 各フードの制御風速などの性能
  • 各枝ダクトの排風量
  • 主管の排風量
  • ダンパー開度
  • 排風機の運転状態

主管の合計排風量だけでは、一部のフードで発生している問題を見落とす可能性があります。

14. 気流が改善しても、有害物質の捕捉状況を確認する

ここまで、風速や風量などの数値について説明しました。

しかし、局所排気装置の目的は、風速を大きくすることだけではありません。

有害物質を適切に捕捉し、作業者のばく露を防ぐことです。

例えば、風速が高くても捕捉が不十分な場合がある

外付け式フードの近くで、空調機から強い風が吹いている場合を考えます。

フードの開口面では十分な風速が測定されていても、有害物質が横方向に流され、作業者の呼吸域へ向かう可能性があります。

また、発散源とフードの間に作業者がいる場合、有害物質を含む気流が作業者の呼吸域を通過することがあります。

スモークテスターなどによる確認

適切な気流可視化方法を使用すると、フードへ向かう気流の方向を確認できる場合があります。

ただし、スモークテスターは、気流の方向や流れ方を観察するためのものであり、風速の数値を正確に測定するものではありません。

また、使用する煙や可視化物質の安全性も確認する必要があります。

必要に応じて有害物質の濃度も確認する

対象物質や作業条件によっては、所定の方法による有害物質の濃度測定が必要になる場合があります。

例えば、局所排気装置の性能要件が抑制濃度によって定められる設備では、適用される規定と測定方法に従って評価します。

また、作業者のばく露状況を確認するために、作業環境測定や個人ばく露測定などの方法が有用な場合もあります。

ただし、これらはそれぞれ評価目的と適用される基準が異なります。

制御風速の測定、抑制濃度の測定、作業環境測定、個人ばく露測定を同じ評価として扱わないことが重要です。

15. 改善後の性能評価はどのような順序で行うのか?

ここまでの内容を、現場で使える手順に整理します。

ステップ① 改善前の状態を確認する

改善前の制御風速、排風量、静圧などの記録を整理します。

また、作業条件や測定位置も確認します。

ステップ② 改善内容を明確にする

例えば、フードの位置変更、ダクトの清掃、エルボの変更、排風機回転数の調整など、何を変更したのかを記録します。

ステップ③ 改善後の運転条件を確認する

排風機、ダンパー、サッシ、空調、給気などの状態を確認します。

ステップ④ 適切な方法で性能を測定する

適用される法令・検査指針に従い、必要な位置で制御風速などを測定します。

ステップ⑤ 改善前後の測定値を比較する

増加量、低下量、変化率などを計算します。

ただし、同じ意味の測定値を比較していることが前提です。

ステップ⑥ 測定結果の信頼性を確認する

測定条件、測定器、繰返し測定の結果、測定の不確かさなどを確認します。

ステップ⑦ 法令上の性能要件と比較する

適用法令や検査指針に基づき、必要な性能を満たしているか評価します。

ステップ⑧ 実際の捕捉状況を確認する

必要に応じて気流の可視化や有害物質濃度の測定などを実施します。

ステップ⑨ 改善効果を記録する

改善前後の測定値、測定条件、判定結果、残された問題などを記録します。

【図解⑧挿入:改善前の測定から、改善工事、再測定、測定結果の検証、法令上の性能判定、記録までのフローチャート】

16. 実務事例|改善後の風速が0.57 m/sだった場合の評価

ここでは、架空の部品洗浄工場を想定します。

この工場では、側方吸引型外付け式フードを使用して有機溶剤の蒸気を吸引しています。

有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則値0.5 m/sが適用される設備とします。

改善前の状態

項目改善前
フードから発散源までの距離300 mm
所定作業位置の風速0.33 m/s
フード排風量12.0 m³/min

この設備では、所定位置の制御風速が原則値を下回っています。

そこで、フードの位置を変更する改善を検討しました。

改善内容

フードを発散源へ近づけ、距離を300 mmから150 mmへ変更したとします。

改善後の結果

項目改善前改善後
フードから発散源までの距離300 mm150 mm
対応する作業位置の風速0.33 m/s0.57 m/s
排風量12.0 m³/min12.0 m³/min

これらは説明用の仮定値です。

評価① 数値上の改善効果

風速の増加量は0.24 m/sです。

増加率は約72.7%です。

この結果から、対応する作業位置では風速が増加したことが分かります。

評価② 測定結果の信頼性

次に、測定位置と運転条件を確認します。

また、測定器の適切性や測定値のばらつきなどを確認します。

測定条件が適切であれば、改善後の風速が高くなったという結果の信頼性が高まります。

ただし、測定結果の信頼性については、必要に応じて測定の不確かさを検討します。

評価③ 法令上の性能

改善後の配置について、法令・検査指針に基づく所定位置で測定し、必要な制御風速が確保されているか確認します。

仮に、所定位置の制御風速も0.57 m/sであることが適切に確認された場合、原則値0.5 m/sを数値上は上回っています。

ただし、必要なほかの測定点や検査事項についても確認します。

評価④ 実作業での捕捉状況

作業者が通常の洗浄作業を行う状態で、有害物質が適切に捕捉されているか確認します。

必要に応じて、気流の可視化や有害物質濃度の測定なども検討します。

最終的な評価

以上の確認を行い、必要な性能が確保されていることを確認できた場合、改善は目的を達成したと判断する根拠が得られます。

このように、単に風速が上がったという結果だけでなく、測定条件と性能要件を組み合わせて評価することが重要です。

17. 改善効果を評価する記録表の例

改善効果を報告する際には、次のような記録表が有用です。

記録項目記録内容
設備名対象設備の名称・管理番号
改善前の問題制御風速不足など
改善内容フード位置変更など
改善前の測定値風速・風量・静圧等
改善後の測定値風速・風量・静圧等
測定位置図面・写真・測定点番号
測定条件運転状態・作業条件
測定器名称・型式・管理番号
測定のばらつき繰返し測定結果など
適用性能要件法令・告示・設計条件
判定結果適合状況・確認事項
実作業の捕捉状態観察・測定結果
残された問題追加対策の必要性
管理値改善後の正常値・自主管理値

特に、測定位置を記録しておくことが重要です。

例えば、測定値だけを保存していても、次回の点検で同じ位置を再現できなければ、正確な比較が難しくなります。

また、改善後に必要な性能が確保されていることを確認したうえで、そのときの測定値を新しい正常時の基準値として記録しておくことを推奨します。

18. 法令上の要求事項と実務上の提案を区別する

ここでは、今回の記事の主な内容について、日本の労働安全衛生関係法令上の位置付けを整理します。

有機溶剤中毒予防規則第16条

第16条では、対象となる局所排気装置について、フード形式に応じた制御風速を出し得る能力が規定されています。

同条には例外規定があります。

また、対象物質や作業によって適用される規則・性能要件が異なる場合があります。

有機溶剤中毒予防規則第18条

第18条では、対象となる局所排気装置の稼働について規定されています。

設置時に性能を確保したとしても、実際の作業時に必要な性能を維持することが重要です。

有機溶剤中毒予防規則第20条~第23条

対象となる局所排気装置の定期自主検査、記録、初回使用時等の点検、異常時の補修について規定されています。

改善工事の内容によっては、改造・修理後の所定の点検などが必要になります。

厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」

同指針では、フード、ダクト、排風機などの検査方法や判定基準が示されています。

また、制御風速や抑制濃度など、設備の種類に応じた性能確認の方法が示されています。

測定の不確かさを計算することは法的義務なのか?

今回紹介した繰返し測定や測定の不確かさの評価は、改善効果の信頼性を高めるために有用な方法です。

ただし、すべての局所排気装置について、改善前後の風速測定で拡張不確かさを算出しなければならないという一律の法的義務があるわけではありません。

法令上の性能要件、検査指針による方法、組織が自主的に行う測定の信頼性評価を区別して扱う必要があります。

19. 現場で使える改善効果評価チェックリスト

確認項目確認
適用法令と性能要件を確認した□
改善前の測定記録を確認した□
改善内容を明確にした□
測定目的に応じた測定位置を決めた□
法定評価位置と効果比較位置を区別した□
改善前後の運転条件を確認した□
風速計等の測定器の適切性を確認した□
測定器の校正状態を確認した□
必要に応じて繰返し測定を行った□
測定値のばらつきを確認した□
改善前後の数値を比較した□
必要に応じて測定の不確かさを評価した□
制御風速などの性能要件を確認した□
各枝ダクトの風量を確認した□
静圧・圧力損失の変化を確認した□
排風機の運転状態を確認した□
実作業での捕捉状態を確認した□
他フードへの影響を確認した□
改善後の図面・測定記録を更新した□
必要に応じて自主管理値を見直した□

※このチェックリストは改善効果の評価を支援するための実務上の提案です。すべての項目が一律に法的義務となるわけではありません。

よくある質問

Q1. 改善後の制御風速が高くなれば、改善は成功ですか?

風速が高くなったことは改善効果を示す情報ですが、それだけで十分とは限りません。

測定条件、法令上の性能要件、実際の捕捉状態などを確認する必要があります。

Q2. 改善前後で測定器が違っていても比較できますか?

比較できる場合もありますが、測定器の特性や校正状態による差が生じる可能性があります。

可能であれば同じ測定器を使用し、異なる測定器を使用する場合には、その違いを考慮して評価します。

Q3. 風速を3回測定して平均値を求めれば、正確な値になりますか?

繰返し測定によってばらつきを把握しやすくなりますが、それだけで測定の不確かさ全体を評価したことにはなりません。

また、法令上の評価が最小風速の場合には、測定点間の平均風速だけで判定してはいけません。

Q4. 制御風速が0.51 m/sなら、原則値0.5 m/sを満たしていますか?

数値上は原則値を上回っています。

ただし、法令・検査指針に従った位置と条件で測定されていることを確認する必要があります。

測定の不確かさは、測定結果の信頼性を評価するための情報として扱います。

Q5. 排風量が増加しても、静圧が低下する場合はありますか?

あります。

例えば、ダクトの系統抵抗が低減すると、より小さい圧力で多くの空気が流れる運転点へ移動する場合があります。

Q6. 改善後の排風量が設計値と一致すれば、性能は正常ですか?

必ずしもそうではありません。

フード形式に応じた制御風速や捕捉状態など、必要な性能を確認する必要があります。

Q7. 改善前後の測定位置が違っていた場合、どうすればよいですか?

その違いを記録し、単純に同じ位置での測定値として比較しないようにします。

必要に応じて、改善目的に対応する位置で再測定します。

また、改善後の法令上の性能評価は、改善後の設備構造に適した所定位置で行います。

Q8. 改善後も定期自主検査は必要ですか?

対象となる設備では、引き続き法令上の定期自主検査が必要です。

また、改善内容によっては、改造・修理後の点検義務が適用される場合があります。

まとめ|改善効果は「数値の変化」「測定の信頼性」「性能の適合性」で判断する

既設局所排気装置の改善効果を評価する際には、改善前後の測定値を比較することが基本になります。

例えば、外付け式フードの所定位置の風速が0.33 m/sから0.57 m/sへ増加すれば、数値上は約72.7%の改善です。

しかし、その結果を正しく評価するには、測定位置や運転条件、測定器の特性、測定値のばらつきなどを確認する必要があります。

また、制御風速が法令上の性能要件を満たしている場合でも、実際の有害物質の捕捉状態を確認することが重要です。

さらに、複数フードを接続した設備では、改善したフードだけでなく、ほかのフードの吸引性能も確認する必要があります。

局所排気装置の改善で重要なのは、風速や風量の数値を大きくすることだけではありません。必要な位置で有害物質を適切に捕捉できることを、信頼できる測定方法で確認することです。

そして、改善後の測定結果を記録しておけば、その後の性能低下を早期に発見するための基準として活用できます。

改善効果の評価を、単なる工事完了確認ではなく、継続的な設備性能の維持管理につなげることが重要です。

主な参考資料

  1. 『やさしい作業環境改善技術』第18章「工事完成時の点検と性能が出ない場合の対策」
  2. e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」
  3. 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について
  4. 製品評価技術基盤機構(NITE)・認定センター「JCSS公表・公開文書」

※本記事の測定値、改善率、繰返し測定結果、測定の不確かさ、ファン性能曲線などは、特に断らない限り、評価方法を理解するための仮定例です。

※測定の不確かさに関する説明は計量学上の考え方を参考にしたものであり、局所排気装置のすべてに適用される法定判定方法を示すものではありません。

※実際の設備では、対象物質、作業条件、設備構造、適用法令、測定方法を確認して評価する必要があります。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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