【第29回】局所排気装置のExcel設計計算書の使い方|入力・自動計算・検算の実例

局所排気装置の設計計算書を実際に使ってみよう|Excel入力から計算結果の確認までを具体例で解説

局所排気装置の設計では、フードの必要排風量、ダクト径、圧力損失、排風機の性能など、さまざまな計算が必要になります。

これらをExcelで管理すれば、設計条件を変更したときに、関連する計算結果を自動的に更新できます。

しかし、Excelの計算書を作成しても、入力する場所や計算結果の確認方法が分からなければ、実務で十分に活用することはできません。

今回は、第28回で紹介したExcel設計計算書を使用し、具体的な設備条件を入力しながら、必要排風量から排風機の運転点までを計算します。

さらに、サッシの開口高さやダクト径を変更し、計算結果がどのように変化するかを確認します。

初めてExcelで設計計算を行う方にも理解できるように、通常の掛け算・割り算による計算例と、Excelへ入力する数式を併記します。

なお、今回の設備条件、損失係数、排風機性能などは、計算方法を説明するための仮定値であり、実在する設備の仕様や測定結果ではありません。

目次

1.Excel設計計算書の構成と基本的な使い方

1-1.設計計算書の構成

今回使用するExcel設計計算書は、次の9つのシートで構成します。

シート名主な内容
① 基本情報設備番号、対象物質、設計条件
② 現場調査発散源、作業内容、設置環境
③ フード計算開口面積、風速、必要排風量
④ ダクト・圧損ダクト径、速度圧、圧力損失
⑤ 排風機選定排風機性能、系統抵抗、運転点
⑥ 設計結果一覧主要な計算結果
⑦ 法令・届出確認適用法令、届出の要否
⑧ 施工・性能確認設計値と完成時測定値
⑨ 根拠・変更履歴計算根拠、変更内容

今回の実習では、主に「フード計算」「ダクト・圧損」「排風機選定」の3つのシートを操作します。

1-2.Excelの計算にはROUND関数を使用する

今回のExcel設計計算書では、計算結果の四捨五入にROUND関数を使用します。

例えば、計算結果が9.94718394の場合、

=ROUND(9.94718394,2)

と入力すると、9.95になります。

ROUND関数の最後の数字は、小数点以下の何桁まで四捨五入するかを指定するものです。

今回のExcelでは、次のようにセルを使い分けます。

列使用方法
A列項目名
B列入力値または四捨五入した表示値
C列丸め前の計算値
D列単位・補足事項

ただし、排風機選定シートでは、ゴールシークの操作に合わせてB列を計算用、C列を表示用とします。

計算用の数値は原則として丸めずに保持し、表示用の数値にROUND関数を使用します。

例えば、ダクト断面積の計算では、小数第4位まで表示します。

計算用C18セル:

=PI()*(C17/2)*(C17/2)

表示用B18セル:

=ROUND(C18,4)

今回の結果は0.0201 m²です。

なお、12.00のように末尾のゼロまで表示する場合は、ROUND関数に加えてExcelの表示形式を設定します。

以降は、この方法で計算します。

2.今回設計する局所排気装置の条件

2-1.対象となる作業

今回は、アセトンを使用して小型金属部品を洗浄する作業を想定します。

フードには、ドラフトチャンバー型の囲い式フードを使用します。

フード内部に洗浄容器を配置し、前面のサッシ開口部から作業を行う設備です。

アセトンは、有機溶剤中毒予防規則における第二種有機溶剤等に該当します。

今回の計算例では、同規則第16条の原則的な制御風速を確認する必要がある設備を想定します。

2-2.設計条件

項目設計条件
フード開口幅0.80 m
フード開口高さ0.40 m
法令上の原則的な制御風速0.40 m/秒
自主的な設計目標の最小風速0.50 m/秒
平均風速と最小風速の比1.25
ダクト内径160 mm
直管合計長さ12 m
90度エルボ3個
フード接続部損失係数1.50
エルボ1個の損失係数0.75
ダルシー摩擦係数0.025
空気密度1.20 kg/m³
活性炭吸着装置の初期圧力損失180 Pa
圧力損失増加後の想定値230 Pa
出口損失係数1.00

今回の0.50 m/秒は、法令上の一律の要求値ではなく、設計上の自主的な目標です。

また、平均風速と最小風速の比1.25は、今回の計算例で設定した仮定値です。

実際には、フードの構造や開口面の風速分布によって、この関係は変化します。

3.手順① 基本情報と現場調査を入力する

最初に「基本情報」シートを開きます。

今回の入力例は次のとおりです。

項目入力例
設備番号LEV-001
使用物質アセトン
作業内容小型金属部品の洗浄
フード形式囲い式
フード台数1台
排ガス処理装置活性炭吸着装置
排気先屋外

LEV-001は、今回の説明用に設定した仮の設備番号です。

次に「現場調査」シートへ、発散源の位置、作業方法、サッシの使用開口高さ、周囲の気流、給気設備などを記録します。

特に、サッシ開口高さ0.40 mは、通常の作業状態を想定して設定した値であることを明記します。

また、アセトンには引火性があるため、換気性能に加え、適切な火災・爆発防止措置についても確認が必要です。

4.手順② フードの必要排風量を計算する

4-1.入力するセル

「フード計算」シートを開き、次の条件を入力します。

セル項目入力値
B4開口幅(m)0.80
B5開口高さ(m)0.40
B6設計目標の最小風速(m/秒)0.50
B7平均風速と最小風速の比1.25
B8法令上の原則的な制御風速(m/秒)0.40

4-2.開口面積を計算する

開口面積は、幅と高さを掛けることで求められます。

0.80 × 0.40 = 0.32 m²

計算用C10セル:

=B4*B5

表示用B10セル:

=ROUND(C10,4)

計算結果:0.3200 m²

4-3.設計平均風速を計算する

今回は、最小風速0.50 m/秒と補正係数1.25を使用します。

0.50 × 1.25 = 0.625 m/秒

計算用C11セル:

=B6*B7

表示用B11セル:

=ROUND(C11,3)

計算結果:0.625 m/秒

4-4.必要排風量を計算する

まず、1秒間に吸引する空気量を求めます。

0.32 × 0.625 = 0.20 m³/秒

次に、1分間の排風量へ換算します。

0.20 × 60 = 12.0 m³/分

計算用C12セル:

=C10*C11*60

表示用B12セル:

=ROUND(C12,2)

計算結果:12.00 m³/分

今回のフード計算結果を整理すると、次のとおりです。

計算項目セル計算結果
開口面積B100.3200 m²
設計平均風速B110.625 m/秒
必要排風量B1212.00 m³/分

この12.00 m³/分は、設計条件に基づく必要排風量です。

実際のフードで最小風速0.50 m/秒を確保できるかは、完成後の測定などで確認する必要があります。

5.手順③ ダクト内径とダクト内風速を計算する

次に「ダクト・圧損」シートを開きます。

5-1.必要排風量を読み込む

まず、フード計算で求めた必要排風量を参照します。

計算用C4セル:

='フード計算'!C12

表示用B4セル:

=ROUND(C4,2)

今回の必要排風量は12.00 m³/分です。

5-2.ダクト条件を入力する

セル項目入力値
B5ダクト内径(mm)160
B6空気密度(kg/m³)1.20
B7摩擦係数0.025
B8直管合計長さ(m)12
B9エルボ個数3
B10エルボ損失係数0.75
B11フード接続部損失係数1.50
B12処理装置の初期圧力損失(Pa)180
B13損失増加後の圧力損失(Pa)230
B14出口損失係数1.00

5-3.ダクト内径をmへ換算する

ダクト内径160 mmをmへ換算します。

160 ÷ 1,000 = 0.160 m

計算用C17セル:

=B5/1000

表示用B17セル:

=ROUND(C17,3)

計算結果:0.160 m

5-4.ダクト断面積を計算する

円形ダクトの断面積を求めます。

まず、半径を計算します。

0.160 ÷ 2 = 0.080 m

次に、半径を2回掛けて円周率を掛けます。

0.080 × 0.080 × 3.14159265

= 約0.0201 m²

計算用C18セル:

=PI()*(C17/2)*(C17/2)

表示用B18セル:

=ROUND(C18,4)

計算結果:0.0201 m²

今回の設計計算書では、ダクト断面積を小数第4位まで表示します。

ただし、後続のダクト内風速などの計算では、丸め前の数値を保持しているC18セルを使用します。

5-5.ダクト内平均風速を計算する

必要排風量は12.00 m³/分です。

まず、1秒間の空気量に換算します。

12.00 ÷ 60 = 0.20 m³/秒

次に、ダクト断面積で割ります。

ここでは、表示値の0.0201 m²ではなく、丸め前の断面積を使用します。

0.20 ÷(丸め前のダクト断面積)

= 約9.94718 m/秒

計算用C19セル:

=C4/60/C18

表示用B19セル:

=ROUND(C19,2)

計算結果:9.95 m/秒

ダクト内風速は、ダクト内部を流れる空気の平均的な速さです。

囲い式フードの開口面で評価する制御風速とは異なります。

6.手順④ 速度圧を計算する

速度圧とは、空気の流れが持つ運動エネルギーに対応する圧力です。

今回のダクト内平均風速は、丸め前で約9.94718 m/秒です。

空気密度は1.20 kg/m³とします。

速度圧は、次の順番で計算します。

① ダクト内平均風速を2回掛ける。

9.94718 × 9.94718 = 約98.946

② 空気密度を掛ける。

98.946 × 1.20 = 約118.735

③ 2で割る。

118.735 ÷ 2 = 約59.37 Pa

計算用C20セル:

=B6*C19*C19/2

表示用B20セル:

=ROUND(C20,2)

計算結果:59.37 Pa

この速度圧を、次の圧力損失計算に使用します。

7.手順⑤ 各部の圧力損失を計算する

今回の局所排気装置では、次の部分について圧力損失を求めます。

  • フード接続部
  • 直管
  • 90度エルボ
  • 活性炭吸着装置
  • 屋外排気口

7-1.フード接続部の圧力損失

フード接続部の損失係数は1.50と仮定します。

速度圧 × 損失係数

59.367881 × 1.50 = 約89.05 Pa

計算用C21セル:

=C20*B11

表示用B21セル:

=ROUND(C21,2)

計算結果:89.05 Pa

7-2.直管の圧力損失

今回の条件は次のとおりです。

  • 直管長さ:12 m
  • ダクト内径:0.160 m
  • 摩擦係数:0.025

まず、直管長さをダクト内径で割ります。

12 ÷ 0.160 = 75

次に、摩擦係数を掛けます。

75 × 0.025 = 1.875

最後に速度圧を掛けます。

1.875 × 59.367881 = 約111.31 Pa

計算用C22セル:

=B7*(B8/C17)*C20

表示用B22セル:

=ROUND(C22,2)

計算結果:111.31 Pa

7-3.90度エルボの圧力損失

今回は90度エルボが3個あります。

エルボ1個の損失係数を0.75と仮定します。

59.367881 × 0.75 × 3

= 約133.58 Pa

計算用C23セル:

=B9*B10*C20

表示用B23セル:

=ROUND(C23,2)

計算結果:133.58 Pa

7-4.活性炭吸着装置の圧力損失

今回は、設計排風量12.0 m³/分における初期圧力損失を180 Paと仮定します。

計算用C24セル:

=B12

表示用B24セル:

=ROUND(C24,2)

設定値:180.00 Pa

実際には、選定する装置のメーカー資料から、使用風量に対応する圧力損失を確認します。

7-5.屋外排気口の圧力損失

今回は、簡略化した計算として出口損失を速度圧1個分とします。

59.367881 × 1.00 = 約59.37 Pa

計算用C25セル:

=C20*B14

表示用B25セル:

=ROUND(C25,2)

計算結果:59.37 Pa

なお、出口の速度圧を損失として計算しているため、同じ速度圧を別の項目で重複して加算しないようにします。

7-6.圧力損失を合計する

ここまでの計算結果をまとめます。

項目圧力損失
フード接続部89.05 Pa
直管111.31 Pa
エルボ3個133.58 Pa
活性炭吸着装置180.00 Pa
排気口59.37 Pa
合計573.31 Pa

計算用C26セル:

=SUM(C21:C25)

表示用B26セル:

=ROUND(C26,2)

計算結果:573.31 Pa

合計は、各部の丸め前の計算値を足して求めます。

7-7.圧力損失が増加した場合

今回は、活性炭吸着装置の圧力損失が180 Paから230 Paへ増加した場合も検討します。

圧力損失の増加量は、

230 − 180 = 50 Pa

です。

したがって、増加後の系統圧力損失は、

573.31 + 50 = 623.31 Pa

となります。

計算用C27セル:

=C26-B12+B13

表示用B27セル:

=ROUND(C27,2)

計算結果:623.31 Pa

この623.31 Paは、排風量12.0 m³/分を維持した場合の計算値です。

実際には圧力損失が増加すると排風量も変化することがあるため、次に排風機の運転点を確認します。

8.手順⑥ 排風機選定シートへ数値を入力する

8-1.仮想排風機の性能

今回は、計算方法を理解するために仮想の排風機を設定します。

この排風機の全圧は、次のように変化すると仮定します。

排風機全圧(Pa)=1,250 − 50 × 排風量(m³/分)

例えば、排風量12.0 m³/分の場合、

50 × 12.0 = 600

1,250 − 600 = 650 Pa

となります。

この排風機の性能は、実在するメーカーの製品仕様ではありません。

8-2.入力セルを設定する

「排風機選定」シートを開きます。

セル項目設定
B4排風機性能式の定数1250
B5排風量に掛ける係数50
B6初期系統圧力損失圧損シートから参照
B7損失増加後の系統圧力損失圧損シートから参照
B8基準排風量フード計算から参照
B10初期状態の試算排風量12.0
B11排風機全圧自動計算
B12初期系統抵抗自動計算
B13圧力差自動計算
B17損失増加後の試算排風量12.0
B18排風機全圧自動計算
B19損失増加後の系統抵抗自動計算
B20圧力差自動計算

B6セル:

='ダクト・圧損'!C26

B7セル:

='ダクト・圧損'!C27

B8セル:

='フード計算'!C12

ここでは、後続の運転点計算に使用するため、丸め前の数値を参照しています。

9.手順⑦ ゴールシークで初期運転点を求める

9-1.運転点とは?

排風機の運転点とは、排風機が発生する圧力と、ダクトなどの系統抵抗が釣り合う位置です。

この運転点によって、設備の運転風量が決まります。

今回の計算では、排風機全圧と系統全圧抵抗を比較します。

9-2.計算式を入力する

B10セルに初期値12.0を入力します。

排風機全圧を計算するB11セル:

=B4-B5*B10

系統抵抗を計算するB12セル:

=B6*(B10/B8)*(B10/B8)

圧力差を計算するB13セル:

=B11-B12

今回のモデルでは、系統抵抗が風量の2乗に比例すると仮定します。

これは計算方法を理解するための近似です。

実際の設備では、活性炭吸着装置などの抵抗特性が必ずしも風量の2乗に比例するとは限らないため、メーカー資料による確認が必要です。

9-3.ゴールシークを使用する

Excelの「データ」タブから「What-If分析」→「ゴールシーク」を選択します。

次のように設定します。

項目設定
数式入力セルB13
目標値0
変化させるセルB10

この操作によって、圧力差がゼロになる排風量を求めます。

ここではROUND関数を使用しません。

途中の圧力差を四捨五入すると、圧力差が残っていてもゼロと表示され、運転点の計算精度に影響する場合があるためです。

9-4.運転点を確認する

今回の初期運転点は、計算上、次のようになります。

  • 運転排風量:約12.51949 m³/分
  • 運転全圧:約624.02533 Pa

表示用C10セル:

=ROUND(B10,2)

表示用C11セル:

=ROUND(B11,2)

表示用C12セル:

=ROUND(B12,2)

計算結果は次のとおりです。

項目表示結果
運転排風量12.52 m³/分
排風機全圧624.03 Pa
系統抵抗624.03 Pa

初期運転点:12.52 m³/分、624.03 Pa

ゴールシーク実行後は、B13セルの圧力差が十分小さくなっていることも確認します。

10.手順⑧ 圧力損失増加後の運転点を求める

次に、活性炭吸着装置の圧力損失が増加した場合の運転点を求めます。

B17セルに初期値12.0を入力します。

排風機全圧を計算するB18セル:

=B4-B5*B17

系統抵抗を計算するB19セル:

=B7*(B17/B8)*(B17/B8)

圧力差を計算するB20セル:

=B18-B19

ゴールシークでは次のように設定します。

項目設定
数式入力セルB20
目標値0
変化させるセルB17

この計算でも、ゴールシークが参照する圧力差は丸めずに使用します。

計算上の運転点は次のとおりです。

  • 運転排風量:約12.17259 m³/分
  • 運転全圧:約641.37057 Pa

表示用C17セル:

=ROUND(B17,2)

表示用C18セル:

=ROUND(B18,2)

表示用C19セル:

=ROUND(B19,2)

結果を比較すると、次のようになります。

条件運転排風量運転全圧
初期状態12.52 m³/分624.03 Pa
圧力損失増加後12.17 m³/分641.37 Pa

今回の仮想設備では、圧力損失が増加すると運転排風量が減少しています。

ただし、計算上はどちらも設計排風量12.0 m³/分以上となりました。

実際の設備では、排風量だけでなく、フードの最小制御風速なども確認する必要があります。

11.手順⑨ 排風機性能曲線をExcelで作成する

11-1.グラフ用の表を作成する

排風機選定シートのA25セル以降に、次の項目を作成します。

列内容
A列排風量(m³/分)
B列排風機全圧
C列初期系統抵抗
D列損失増加後の系統抵抗
E列排風機全圧の表示値
F列初期系統抵抗の表示値
G列損失増加後の系統抵抗の表示値

A25セルに0を入力します。

A26セル:

=A25+1

これをA45までコピーすると、排風量0~20 m³/分の数値が入力されます。

11-2.排風機全圧を計算する

B25セル:

=$B$4-$B$5*A25

11-3.初期系統抵抗を計算する

C25セル:

=$B$6*(A25/$B$8)*(A25/$B$8)

11-4.損失増加後の系統抵抗を計算する

D25セル:

=$B$7*(A25/$B$8)*(A25/$B$8)

ここではグラフの座標を正確に計算するため、丸め前の数値を使用します。

11-5.表示用の数値を作成する

E25セル:

=ROUND(B25,2)

F25セル:

=ROUND(C25,2)

G25セル:

=ROUND(D25,2)

B25~G25の数式を45行目までコピーします。

11-6.散布図を作成する

横軸を排風量、縦軸を圧力として「散布図(XY)」を作成します。

表示する曲線は次の3本です。

  1. 排風機全圧曲線
  2. 初期系統抵抗曲線
  3. 圧力損失増加後の系統抵抗曲線

グラフの座標には、A列とB~D列の丸め前の数値を使用します。

さらに、先ほど求めた運転点を別系列として表示します。

運転点排風量全圧
初期状態12.52 m³/分624.03 Pa
圧力損失増加後12.17 m³/分641.37 Pa

運転点の座標は丸め前の数値を使用し、データラベルには上記の表示値を使用します。

これにより、グラフ上の交点と計算値を正確に対応させることができます。

12.手順⑩ 設計結果一覧シートで確認する

ここまでの計算が終了したら、「設計結果一覧」シートを開きます。

このシートでは、各計算シートの主要な結果をまとめます。

例えば、必要排風量は次のように参照します。

='フード計算'!B12

ダクト断面積は、

='ダクト・圧損'!B18

初期系統圧力損失は、

='ダクト・圧損'!B26

初期運転排風量は、

='排風機選定'!C10

とします。

これらは、各シートで求めた表示用の値を参照しています。

今回の設計結果は次のとおりです。

項目計算結果
フード開口面積0.3200 m²
設計平均風速0.625 m/秒
必要排風量12.00 m³/分
ダクト内径160 mm
ダクト断面積0.0201 m²
ダクト内平均風速9.95 m/秒
速度圧59.37 Pa
フード接続部圧力損失89.05 Pa
直管圧力損失111.31 Pa
エルボ圧力損失133.58 Pa
活性炭吸着装置圧力損失180.00 Pa
排気口圧力損失59.37 Pa
初期系統圧力損失573.31 Pa
圧力損失増加後623.31 Pa
初期運転排風量12.52 m³/分
損失増加後の運転排風量12.17 m³/分

設計結果一覧には、計算結果だけでなく、使用した係数の根拠、設計条件、確認者なども記録することを推奨します。

13.実践演習① サッシ開口高さを変更する

ここからは、実際に入力値を変更して、計算結果がどのように変わるか確認します。

まず、「フード計算」シートのB5セルを変更します。

変更前:0.40 m

変更後:0.60 m

13-1.開口面積

0.80 × 0.60 = 0.48 m²

13-2.必要排風量

今回は、平均風速0.625 m/秒を維持するものと仮定します。

0.48 × 0.625 × 60 = 18.0 m³/分

変更前後の結果は次のとおりです。

項目変更前変更後
開口高さ0.40 m0.60 m
開口面積0.3200 m²0.4800 m²
必要排風量12.00 m³/分18.00 m³/分

サッシ開口高さを大きくすると、同じ平均風速を維持するために必要な排風量も増加します。

ただし、今回の活性炭吸着装置の圧力損失180 Paは、排風量12.0 m³/分における仮定値です。

排風量が18.0 m³/分に増加する場合、その数値をそのまま使用してよいとは限りません。

そのため、変更後の排風量に対応する処理装置の圧力損失や排風機性能を再確認する必要があります。

14.実践演習② ダクト径を変更する

次に、ダクト内径を160 mmから200 mmへ変更します。

「ダクト・圧損」シートのB5セルを変更します。

この演習では、必要排風量を12.0 m³/分に戻し、同じ排風量で比較します。

14-1.200 mmダクトの断面積

200 mmをmへ換算します。

200 ÷ 1,000 = 0.200 m

半径は、

0.200 ÷ 2 = 0.100 m

です。

断面積は、

0.100 × 0.100 × 3.14159265

= 約0.0314 m²

となります。

計算用C18セル:

=PI()*(C17/2)*(C17/2)

表示用B18セル:

=ROUND(C18,4)

計算結果:0.0314 m²

14-2.ダクト内平均風速

排風量を1秒間の空気量に換算します。

12.0 ÷ 60 = 0.20 m³/秒

ダクト内風速は、丸め前の断面積を使用して計算します。

0.20 ÷(丸め前のダクト断面積)

= 約6.36620 m/秒

表示結果は、

6.37 m/秒

です。

14-3.速度圧

空気密度1.20 kg/m³を使用します。

速度圧は、次のように計算します。

6.36620 × 6.36620 × 1.20 ÷ 2

= 約24.32 Pa

したがって、

速度圧:24.32 Pa

となります。

14-4.直管の圧力損失

今回の比較では、直管長さ12 m、摩擦係数0.025を同じと仮定します。

まず、直管長さをダクト内径で割ります。

12 ÷ 0.200 = 60

次に、摩擦係数を掛けます。

60 × 0.025 = 1.50

最後に、丸め前の速度圧を掛けます。

1.50 ×(丸め前の速度圧)

= 約36.48 Pa

直管圧力損失:36.48 Pa

14-5.変更前後の比較

項目内径160 mm内径200 mm
排風量12.00 m³/分12.00 m³/分
ダクト断面積0.0201 m²0.0314 m²
ダクト内平均風速9.95 m/秒6.37 m/秒
速度圧59.37 Pa24.32 Pa
直管圧力損失111.31 Pa36.48 Pa

今回の条件では、ダクト内径を大きくすると、ダクト内平均風速と直管の圧力損失が小さくなることが分かります。

160 mmダクトと200 mmダクトの直管圧力損失を比較すると、

36.48 ÷ 111.31 = 約0.33

となります。

つまり、今回の仮定条件では、200 mmダクトの直管圧力損失は、160 mmダクトの場合の約0.33倍です。

ただし、実際の設備では、ダクト径の変更によって接続部の形状や損失係数などが変わる場合があります。

また、排風機の運転点も変化するため、改めて計算する必要があります。

15.Excel設計計算書で注意したい入力ミス

Excelでは計算式を登録することで自動計算できますが、入力値や参照先に誤りがあると、計算結果も誤ります。

特に、次の事項には注意が必要です。

15-1.単位を間違える

例えば、ダクト内径160 mmをm単位へ換算せずに計算すると、断面積やダクト内風速が大きく異なる結果になります。

各入力欄には、mm、m、m²、m³/分、Paなどの単位を明記します。

15-2.必要排風量と運転排風量を混同する

今回の必要排風量は12.00 m³/分です。

一方、仮想排風機の初期運転排風量は12.52 m³/分です。

これらは異なる意味を持つ数値です。

設計結果一覧では、両者を区別して記録します。

15-3.制御風速と平均風速を混同する

今回の囲い式フードでは、法令上の原則的な制御風速は開口面の最小風速です。

平均風速が基準値以上であっても、開口面の最小風速が基準値以上であるとは限りません。

15-4.損失係数の根拠を確認しない

今回の計算で使用した摩擦係数や局部損失係数は仮定値です。

実際の設計では、ダクトの材質、継手の形状、寸法、流れの条件などに応じて確認する必要があります。

15-5.設計条件を変更した後に運転点を再計算しない

ダクト径や圧力損失を変更すると、系統抵抗曲線が変化します。

そのため、変更後の条件でゴールシークを再実行し、運転点を確認します。

また、排ガス処理装置などの圧力損失の特性が変更後も適用できるか確認する必要があります。

15-6.四捨五入した値だけで法令適合性を判断する

今回のExcelでは、計算結果の表示にROUND関数を使用しています。

しかし、法令上の性能判定では、四捨五入した表示値だけで判断してはいけません。

例えば、測定された最小風速が0.395 m/秒の場合、小数第2位に四捨五入すると0.40 m/秒となります。

しかし、丸め前の数値は0.40 m/秒を下回っています。

実際の性能判定では、適用法令、測定方法、測定器の精度、記録する桁数などを踏まえて適切に評価する必要があります。

16.法令上の確認事項

今回の例では、アセトンを使用する有機溶剤業務を想定しています。

主に次の法令を確認します。

関係法令等主な確認事項
有機溶剤中毒予防規則第5条対象業務における設備
同規則第14条フード・ダクトの構造
同規則第15条排風機の配置
同規則第16条制御風速
同規則第20条定期自主検査
同規則第22条初使用時等の点検
労働安全衛生法第88条等計画届出の適用確認

有機溶剤中毒予防規則第16条では、囲い式フードの原則的な制御風速として0.40 m/秒が定められています。

囲い式フードでは、開口面における最小風速が制御風速です。

ただし、同条には一定の条件で適用される特例もあるため、個別の設備に適用される要求事項を確認する必要があります。

今回の設計目標0.50 m/秒は自主的に設定した値であり、法令で一律に定められた数値ではありません。

また、ダクト断面積を小数第4位まで表示することや、Excelの計算用セルと表示用セルを分けることは、今回の記事で推奨する実務上の方法です。

法令が今回のExcelのセル配置やROUND関数の使用を直接要求しているわけではありません。

Excelで計算結果が得られたことだけで、設備の法令適合性が確認されたと判断しないようにしてください。

17.実務チェックリスト

設計条件の入力

  • 使用物質と作業内容を確認した。
  • フード形式と開口寸法を入力した。
  • 法令上の制御風速を確認した。
  • 自主的な設計目標を明確にした。
  • ダクト径、長さ、エルボ個数を確認した。
  • 損失係数の根拠を確認した。

Excel計算

  • 開口面積を確認した。
  • 必要排風量を確認した。
  • ダクト断面積を小数第4位で表示している。
  • ダクト内平均風速を確認した。
  • 速度圧を確認した。
  • 各部の圧力損失を確認した。
  • 系統全体の圧力損失を確認した。
  • 後続計算に丸め前の値を使用している。

排風機選定

  • 排風機全圧と系統抵抗の定義をそろえた。
  • ゴールシークで運転点を求めた。
  • 圧力差が十分小さいことを確認した。
  • 運転点をグラフ上で確認した。
  • 必要排風量を確保できるか確認した。
  • 設計条件変更後に運転点を再計算した。

完成前の確認

  • 計算結果を再検算した。
  • 設計値と実測値を区別した。
  • 使用した係数の出典を記録した。
  • 計算書と図面の整合性を確認した。
  • 実際の排風機仕様を確認した。
  • 設計変更履歴を整理した。

18.よくある質問

Q1.Excelの計算式をすべて覚える必要がありますか?

すべてを覚える必要はありません。

重要なのは、何を計算しているのか理解することです。

例えば、必要排風量は「開口面積 × 平均風速 × 60」で求められます。

この計算の意味を理解していれば、Excelの数式が正しいかを確認しやすくなります。

Q2.ダクト断面積は小数第4位までの表示で十分ですか?

今回の160 mmと200 mmのダクトを比較する計算例では、小数第4位までの表示で十分と考えます。

ただし、これは表示上の桁数です。

後続の計算には丸め前の数値を使用するため、計算精度を維持できます。

実際に必要な表示桁数は、設計条件や計算目的に応じて判断します。

Q3.ゴールシークを使用しないと排風機の運転点を求められませんか?

ゴールシーク以外の方法でも求められます。

例えば、排風量を少しずつ変えながら、排風機全圧と系統抵抗を比較する方法があります。

ただし、Excelのゴールシークを使用すると、両者が一致する排風量を効率的に求められます。

Q4.Excelで必要排風量が求められれば、フードの性能も保証されますか?

保証されません。

今回の計算では、平均風速と最小風速の比を仮定して排風量を求めています。

実際のフードでは、開口面の風速分布や周囲の気流によって、最小風速が変化します。

完成後には、適切な方法で性能を確認する必要があります。

Q5.ダクト径を変更した場合、どこを再計算しますか?

主に、ダクト断面積、ダクト内風速、速度圧、各部の圧力損失、系統全体の圧力損失、排風機の運転点などを再計算します。

また、損失係数や摩擦係数が変更後の構造にも適用できるかを確認します。

Q6.Excelで計算結果が正しく表示されれば、設計も正しいと考えてよいですか?

いいえ。

Excelは、入力された数値と数式に従って計算します。

数式が正しくても、入力条件や損失係数が実際の設備に適していなければ、計算結果を設計判断に使用できない場合があります。

そのため、計算値の根拠と設備条件を確認することが重要です。

19.まとめ:Excel設計計算書は数値の意味を理解して使用する

今回は、局所排気装置のExcel設計計算書を使用し、フードの必要排風量、ダクト内風速、圧力損失、排風機の運転点までを順番に計算しました。

主な計算結果は次のとおりです。

項目計算結果
必要排風量12.00 m³/分
ダクト内径160 mm
ダクト断面積0.0201 m²
ダクト内平均風速9.95 m/秒
速度圧59.37 Pa
初期系統圧力損失573.31 Pa
圧力損失増加後623.31 Pa
初期運転排風量12.52 m³/分
損失増加後の運転排風量12.17 m³/分

Excelを使用すれば、設計条件に応じて計算結果を自動的に更新できます。

また、計算用セルに丸め前の値を保持し、表示用セルで適切な桁数に整理することで、計算精度と読みやすさの両立が可能です。

ただし、局所排気装置の設計で重要なのは、単に計算結果を求めることではありません。

なぜその数値を使用したのか、計算結果が何を意味するのか、その設備で必要な性能を確保できるのかを確認することが重要です。

Excel設計計算書を、設計条件と計算根拠を整理する資料として活用することで、設計変更、施工時の確認、既設設備の改善にも役立てることができます。


参考資料

  1. 『やさしい作業環境改善技術』
    • 第7章「捕捉フードの必要排風量の計算」
    • 第13章「圧力損失の計算」
    • 第14章「圧力損失の計算演習」
    • 第15章「排風機(ファン)の選定」
  2. 有機溶剤中毒予防規則|e-Gov法令検索
  3. 労働安全衛生法|e-Gov法令検索
  4. 局所排気装置の定期自主検査指針等|厚生労働省
  5. ROUND関数|Microsoft Support
  6. ゴールシークの使用方法|Microsoft Support

※今回の設備条件、損失係数、仮想排風機性能などは計算方法を説明するための仮定値です。実際の設計では、適用法令、対象物質、設備構造、メーカー仕様などを確認してください。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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