【第33回】局所排気装置の運転管理基準書|管理値・点検・異常時対応

局所排気装置の運転管理基準書の作り方|管理値の設定・異常時対応・点検記録を具体例で解説

局所排気装置は、設置時に必要な性能を確認できても、その性能が将来にわたって維持されるとは限りません。

使用を続けるうちに、フード内部の状態、ダクトの汚れ、排風機の運転条件、給気設備などが変化し、吸引性能が低下する場合があります。

第32回では、局所排気装置の完成時に測定した風速・排風量・静圧を初期管理値として使用し、運転開始後の性能低下を発見する方法を解説しました。

しかし、実際の事業場では、次のような疑問が生じます。

  • 風速がどの程度低下したら異常と判断するのか。
  • 静圧が変化した場合、作業を停止する必要があるのか。
  • 日常点検では何を確認すればよいのか。
  • 有機溶剤作業主任者による点検と定期自主検査は何が違うのか。
  • 異常が見つかった場合、誰が原因を調べるのか。
  • 改善後は何を確認すれば使用を再開できるのか。
  • 測定結果や不具合への対応をどのように記録すればよいのか。

これらを担当者の経験だけに任せると、同じ異常が発生しても、担当者によって対応が変わる可能性があります。

そこで役立つのが、局所排気装置の運転管理基準書です。

運転管理基準書には、必要な運転条件、管理値、点検方法、異常時の対応、記録方法などを整理します。

今回は、第27~32回で使用してきたアセトン洗浄用局所排気装置を例に、実務で使える運転管理基準書の作り方を解説します。

完成時の初期管理値から注意水準を設定し、性能が低下した場合の判断方法を整理します。

さらに、Excelによる測定値の比較、点検記録の作成、役割分担、再発防止まで具体的に紹介します。

なお、今回の管理値や測定結果は、説明のために設定した仮定値です。実際の設備では、適用法令、測定の不確かさ、設備の特性、作業条件などを確認して決定する必要があります。

目次

1.局所排気装置の運転管理基準書とは?

1-1.運転管理基準書を作成する目的

運転管理基準書とは、局所排気装置を適切な状態で使用し続けるために、事業場が管理方法を定めた文書です。

例えば、完成時の最小風速が0.54 m/秒だった設備について、数か月後に0.48 m/秒となった場合を考えます。

ある担当者は「法令上の原則値0.40 m/秒を上回っているので問題ない」と判断するかもしれません。

一方、別の担当者は「完成時の値より低下しているので原因を調べる必要がある」と判断するかもしれません。

今回の設備では、自主的な設計目標として最小風速0.50 m/秒を設定しています。

そのため、0.48 m/秒は法令上の原則値を数値上は上回っていても、設計目標を満たしていません。

このような場合の対応をあらかじめ定めておけば、担当者ごとの判断の違いを減らすことができます。

1-2.運転管理基準書に記載する項目

今回作成する基準書には、次の内容を記載します。

項目主な記載内容
基本情報設備番号、設置場所、対象作業
適用法令関係法令、必要な性能
通常運転条件サッシ開口高さ、排風機設定など
初期管理値完成時の風速、排風量、静圧
自主管理値注意水準、調査・是正の判断条件
点検方法点検項目、方法、実施時期
異常時対応作業停止、報告、原因調査、是正
役割分担作業者、作業主任者、設備管理担当者等
記録管理記録内容、保存方法、変更履歴
見直し設備変更時や異常発生後の改訂方法

1-3.運転管理基準書は法定書類なのか?

今回紹介する名称や構成の「運転管理基準書」が、有機溶剤中毒予防規則で一律に作成を義務付けられているわけではありません。

これは、法令上必要な点検や検査を確実に実施し、設備の性能を継続的に管理するための自主的な管理文書です。

ただし、法令に基づく制御風速の確保、点検、定期自主検査、異常時の補修などの義務は、管理基準書の有無にかかわらず適用されます。

2.今回管理する局所排気装置の条件

2-1.対象設備

今回も、アセトンを使用した小型金属部品の洗浄作業を想定します。

設備構成は次のとおりです。

H-01:ドラフトチャンバー型の囲い式フード

↓

排気ダクト

↓

AC-01:活性炭吸着装置

↓

F-01:排風機

↓

EX-01:屋外排気口

今回の設備には、説明用の管理番号LEV-001を付けます。

2-2.設備の基本条件

項目条件
設備番号LEV-001
対象物質アセトン
作業内容小型金属部品の洗浄
フード形式囲い式
フード開口幅0.80 m
通常使用時の開口高さ0.40 m
ダクト内径160 mm
ダクト断面積0.0201 m²
活性炭吸着装置1台
排風機1台
通常運転周波数50 Hz(仮定値)

運転周波数50 Hzは、今回の仮想設備に設定した値です。

実際の設備では、メーカーの運転条件、設計図書、完成時の調整結果などから確認します。

2-3.第31回の完成時測定結果

第31回では、次の仮想測定値を使用しました。

項目完成時測定値
開口面の最小風速0.54 m/秒
開口面の平均風速0.65 m/秒
ダクト排風量12.40 m³/分
ダクト内平均風速10.28 m/秒
フード直後の静圧−280 Pa
インバータ周波数50 Hz

これらを今回の初期管理値として使用します。

実際に管理基準書を作成する場合は、完成時の性能確認記録から数値を転記します。

測定していない値を、計算値から推測して実測値として記載してはいけません。

3.最初に法令上の要求事項を整理する

管理値を設定する前に、法令で求められる事項を確認します。

今回の設備は、有機溶剤中毒予防規則第5条に基づくアセトン洗浄用の固定式局所排気装置を想定しています。

3-1.制御風速

同規則第16条では、囲い式フードの原則的な制御風速として0.40 m/秒が定められています。

囲い式フードの制御風速は、開口面における最小風速です。

したがって、平均開口面風速が0.40 m/秒以上であっても、最小風速が基準を下回っていれば、原則的な制御風速の要求を満たしていません。

ただし、同条には特定の条件に適用される例外があるため、個々の設備に適用される規定を確認します。

3-2.作業中の運転

同規則第18条では、対象となる有機溶剤業務に労働者が従事する間、必要な制御風速で局所排気装置を稼働させることなどが求められています。

また、換気を妨げる気流を排除するなど、設備を有効に稼働させるための措置についても規定されています。

そのため、排風機が回転していることだけで、必要な運転状態にあるとは判断できません。

3-3.有機溶剤作業主任者による点検

同規則第19条の2では、事業者は有機溶剤作業主任者に、局所排気装置などを1月を超えない期間ごとに点検させることなどが求められています。

ただし、この規定は、すべての点検で毎回16点の開口面風速測定を行うことまで一律に定めたものではありません。

点検内容は、法令上の職務に加えて、設備の状態や事業場の管理方法に応じて具体化します。

3-4.定期自主検査

同規則第20条では、対象となる局所排気装置について、原則として1年以内ごとに1回、定期自主検査を実施することが求められています。

主な検査事項は、フード・ダクト・排風機の損傷、堆積物、接続部の緩み、吸気・排気の能力などです。

実施方法については、厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」が参考になります。

3-5.初使用時等の点検と補修

同規則第22条では、対象となる局所排気装置を初めて使用するときや、分解して改造・修理したときの点検が定められています。

また、第23条では、所定の自主検査や点検で異常を認めた場合の補修が求められています。

3-6.記録の保存

同規則第21条では、定期自主検査の結果について、所定の事項を記録し、3年間保存することが求められています。

一方、今回紹介する日常点検記録や自主的な性能管理表について、すべて一律に同条の保存義務が適用されるわけではありません。

ただし、設備の履歴を把握するため、自主的な記録についても保存方法を定めることを推奨します。

3-7.法令上の要求と自主管理を区別する

管理事項位置付け
囲い式フードの原則的制御風速0.40 m/秒法令上の基準
作業中に必要な制御風速を確保すること法令上の義務
有機溶剤作業主任者による1月を超えない期間ごとの点検法令上の義務
1年以内ごとに1回の定期自主検査法令上の義務
定期自主検査記録の3年間保存法令上の義務
最小風速0.50 m/秒という設計目標自主的な設計条件
完成時の0.54 m/秒を初期管理値にすること自主的な管理方法
注意水準の設定自主的な管理方法
Excel管理表の使用自主的な管理方法

4.管理値は3つに分けて設定する

今回の管理基準書では、数値を次の3つに分類します。

4-1.法令上の基準

最初に確認するのは、法令上必要な性能です。

今回の囲い式フードでは、原則として開口面の最小風速0.40 m/秒です。

この値は、今回の事業場が任意に変更できるものではありません。

4-2.自主的な設計目標

次に、設計時に設定した目標を確認します。

今回の例では、最小風速0.50 m/秒、必要排風量12.00 m³/分です。

必要排風量12.00 m³/分は、フード開口面積と仮定した平均風速から計算した設計値であり、それ自体が法令で一律に定められた排風量ではありません。

4-3.初期管理値

最後に、完成時の測定結果を確認します。

今回の例では、最小風速0.54 m/秒、ダクト排風量12.40 m³/分などです。

初期管理値は、運転開始後の変化を調べるための比較基準として使用します。

例えば、運転開始後に最小風速が0.52 m/秒へ低下した場合、設計目標0.50 m/秒は上回っています。

しかし、完成時の0.54 m/秒と比較すれば低下しています。

このような変化を早期に発見することが、自主的な性能管理の目的です。

5.最小制御風速の管理値を設定する

5-1.今回の管理区分

今回の設備では、最小制御風速について次の管理区分を仮に設定します。

最小制御風速管理区分対応
0.52 m/秒以上通常通常の管理を継続
0.50以上~0.52 m/秒未満注意再確認と傾向監視
0.40以上~0.50 m/秒未満要調査・是正原因調査、作業条件の安全確認
0.40 m/秒未満法令基準未達対象作業の停止、報告、是正

この区分は、今回の設備に対して仮に設定した自主的な管理方法です。

法令で「0.52 m/秒未満は注意」と定められているわけではありません。

5-2.注意水準を0.52 m/秒にした理由

完成時の初期管理値は0.54 m/秒です。

設計目標は0.50 m/秒です。

その間にある0.52 m/秒を、今回の説明用の注意水準として設定します。

0.54 − 0.52 = 0.02 m/秒

つまり、完成時より0.02 m/秒低下した時点で注意する方法です。

ただし、実際に0.02 m/秒の変化を有意な変化として捉えられるかは、測定器の精度、測定の不確かさ、気流の変動などによって異なります。

今回の数値をそのまま実設備に適用するのではなく、測定結果の信頼性を考慮する必要があります。

5-3.0.50 m/秒を下回った場合

例えば、最小風速が0.48 m/秒になったとします。

この場合、今回の法令上の原則値0.40 m/秒は数値上上回っています。

しかし、自主的な設計目標0.50 m/秒には達していません。

今回の管理基準書では、この状態を「要調査・是正」とします。

作業を継続してよいかについては、有害物質の漏出、作業条件、設備の状態などを確認し、責任者が判断する必要があります。

自主的な基準によって対象作業の一時停止を定めることも考えられます。

5-4.0.40 m/秒を下回った場合

今回の設備で原則的な制御風速0.40 m/秒を下回る結果が得られた場合は、必要な性能が確保されていない可能性があります。

今回の管理基準書では、対象となる有機溶剤洗浄作業を停止し、関係者へ報告して、原因調査と是正を行うこととします。

測定方法に問題が疑われる場合も、測定値を恣意的に採用し直すのではなく、適切な条件で再確認します。

また、たとえ風速が0.40 m/秒以上であっても、有害物質の漏出、排風機の異常、火災・爆発の危険などが認められる場合には、数値にかかわらず安全確保を優先します。

6.排風量の管理値を設定する

6-1.今回の排風量

第29回の設計計算では、必要排風量を12.00 m³/分としました。

第31回の完成時のダクト測定では、12.40 m³/分という仮想測定結果を設定しました。

したがって、今回の管理基準書では次のように整理します。

  • 設計必要排風量:12.00 m³/分
  • 完成時の初期管理値:12.40 m³/分

6-2.単純な低下率だけで管理しない

仮に、初期排風量12.40 m³/分から5%低下した値を注意水準にすると、

12.40 × 0.95 = 11.78 m³/分

となります。

しかし、11.78 m³/分は、設計必要排風量12.00 m³/分を下回っています。

つまり、5%の低下を待ってから注意する方法では、今回の設計目標に対して遅い可能性があります。

管理値は、単に初期値から何%低下したかではなく、必要な性能と初期値の余裕を考慮して設定することが重要です。

6-3.今回の管理区分

今回の排風量については、次のように仮定します。

ダクト排風量管理区分対応
12.20 m³/分以上通常通常管理
12.00以上~12.20 m³/分未満注意再測定、傾向確認
12.00 m³/分未満要調査・是正原因調査、運転条件確認

ここで設定した12.20 m³/分は、自主的な注意水準です。

12.00 m³/分も今回の設備の設計必要排風量であり、すべての局所排気装置に適用される法定最低排風量ではありません。

6-4.最小風速と排風量を組み合わせる

排風量が12.20 m³/分以上であっても、最小制御風速が設計目標を下回る場合があります。

例えば、フード内部の器具配置が変化し、開口面の風速分布が変わった場合です。

したがって、今回の管理基準書では、排風量だけでなく、最小制御風速も確認することとします。

また、排風量が設計値を下回ったからといって、それだけで直ちに法令違反と断定することも適切ではありません。

法令上の制御風速と、設計上の排風量を区別して判断します。

7.静圧の管理方法を設定する

7-1.今回の初期静圧

第31回の完成時には、フード直後のダクトで静圧−280 Paという仮想測定結果を設定しました。

この値を初期管理値として使用します。

ただし、−280 Paは今回の特定の測定位置における値です。

装置全体の圧力損失や排風機の全圧とは異なります。

7-2.静圧には一律の正常範囲を設定しない

例えば、静圧が−280 Paから−235 Paへ変化した場合を考えます。

数値としての差は、

−235 −(−280)= +45 Pa

です。

負圧の絶対値は45 Pa小さくなっています。

しかし、これだけで排風機の能力低下やダクトの漏れを断定することはできません。

そのため、今回の管理基準書では、静圧を原因調査のための参考管理項目とします。

初期値との差が認められた場合には、排風量、制御風速、排風機の運転設定などを併せて確認します。

7-3.静圧の管理表

項目管理方法
初期静圧−280 Pa
測定位置フード直後の指定測定孔
比較条件同じ開口高さ・排風機運転設定等
管理方法初期値と今回値の差を記録
異常の判断制御風速・排風量・設備状態と併せて評価

静圧に注意水準を設定する場合には、通常の変動幅、測定の不確かさ、設備の運転特性などから合理的に決める必要があります。

今回は、根拠のない一律の許容幅を設定しません。

7-4.排風機の運転周波数も記録する

今回の通常運転周波数は50 Hzです。

第32回では、運転開始後に45 Hzへ変化していたことを、不具合原因の例として使用しました。

ただし、50 Hzという値だけで設備性能を保証できるわけではありません。

排風機の運転周波数は、完成時の性能を再現するための重要な運転条件として管理します。

8.実務で使用する管理値一覧表

ここまでの内容を一つの管理表に整理します。

管理項目法令・設計上の条件自主的な注意水準初期管理値
最小制御風速法令原則0.40 m/秒、設計目標0.50 m/秒0.52 m/秒未満0.54 m/秒
ダクト排風量設計必要排風量12.00 m³/分12.20 m³/分未満12.40 m³/分
フード直後の静圧一律の下限・上限を設定しない変化の原因を確認−280 Pa
インバータ周波数設備固有の通常運転設定設定変更を確認50 Hz
サッシ開口高さ通常作業条件所定位置からの変更を確認0.40 m

実際の設備では、各管理項目について、測定器、測定位置、測定方法、管理値の根拠なども併記することを推奨します。

この表の値を、ほかの局所排気装置へそのまま適用してはいけません。

特に、粉じん用、特定化学物質用、外付け式フードなどでは、確認すべき条件や性能要件が異なります。

9.測定条件と測定方法を基準書に記載する

9-1.開口面風速の測定条件

今回は、通常作業時のサッシ開口高さ0.40 mで確認します。

開口幅は0.80 mです。

測定時には、フード内部の器具配置、空調・給気設備の状態、排風機の運転設定などを記録します。

9-2.16点の風速測定

今回の例では、厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」を参考に、フードの開口面を4×4の16区画へ分割します。

各区画の中心を測定位置とします。

開口幅0.80 mを4等分すると、

0.80 ÷ 4 = 0.20 m

開口高さ0.40 mを4等分すると、

0.40 ÷ 4 = 0.10 m

です。

各区画の中心で風速を測定し、16点の中から最小風速を確認します。

なお、測定位置を16点に固定すればすべての囲い式フードで適切という意味ではありません。

フードの構造や開口寸法、指針の定める条件に応じて決定します。

9-3.平均風速と最小風速を区別する

平均風速は、開口面を通過する空気量を推定する際の参考になります。

一方、今回の囲い式フードの制御風速は、開口面における最小風速です。

したがって、平均風速だけで法令上の制御風速を判定してはいけません。

9-4.ダクト排風量の測定

ダクト排風量を測定する場合には、適切な測定断面を選定し、ピトー管や差圧計などを使用して断面内の風速分布を確認します。

その結果から平均風速を求め、ダクト断面積を掛けて排風量を計算します。

ダクト中央の1点の風速を、そのまま平均風速として扱わないようにします。

また、ダクト断面積は今回の設計計算書と同様に0.0201 m²と表示しますが、排風量の計算には丸め前の断面積を使用します。

9-5.静圧の測定

静圧は、指定した測定孔で確認します。

同じ設備であっても、測定孔が異なれば静圧の意味が変わる場合があります。

管理基準書には、測定孔の位置を図面で示しておくことを推奨します。

9-6.測定値の表示と判定

今回のExcel管理表では、表示値の整理にROUND関数を使用します。

ただし、可能な範囲で丸め前の測定データを保持し、管理値との比較では表示上の四捨五入によって判定が変わらないようにします。

測定の不確かさや気流の変動も考慮し、基準に近い値について安易に適合と断定しないことが重要です。

10.点検の時期と担当者を決める

10-1.点検を4つに分ける

今回の設備では、点検・検査を次の4つに分けて管理します。

区分時期・頻度位置付け
使用前の運転確認作業開始前自主的な管理
有機溶剤作業主任者の点検1月を超えない期間ごと法令上の職務
定期自主検査原則1年以内ごとに1回法令上の義務
臨時点検・性能確認異常時、変更時、必要時法令上の点検要件と自主管理を区別

このほか、初使用時または分解して改造・修理した場合には、有機溶剤中毒予防規則第22条の点検が必要です。

10-2.使用前の運転確認

使用前の確認では、毎回すべての測定器を使用して詳細な性能測定を行うというよりも、運転状態に明らかな異常がないか確認する方法が考えられます。

例えば、次の事項です。

  • 排風機が運転している。
  • 異常音や異常振動がない。
  • サッシが所定の位置にある。
  • 排風機の運転設定に意図しない変更がない。
  • 警報装置がある場合は異常表示がない。
  • フード内部に著しい障害物がない。
  • 作業場に異常な臭気や漏出の兆候がない。

ただし、臭気がないことだけで、有機溶剤へのばく露がないと判断してはいけません。

10-3.有機溶剤作業主任者の点検

有機溶剤作業主任者による点検では、局所排気装置が適切に運転できる状態にあるか確認します。

今回の基準書では、例えば次の項目を設定できます。

  • フード、ダクト等の損傷
  • ダクト接続部の異常
  • 排風機の運転状態
  • 吸込み気流の異常の有無
  • サッシや内部器具の状態
  • 運転設定の変更の有無

これは今回の設備に合わせた実務上の点検項目例であり、法令がすべての項目を同じ方法で毎月数値測定するよう要求しているという意味ではありません。

10-4.定期自主検査

定期自主検査では、法令と指針に基づき、フード・ダクト・排風機の状態や吸気・排気能力などを確認します。

今回のように制御風速で評価する設備では、適切な位置で風速を測定し、適用される基準との関係を確認します。

また、必要に応じてダクト排風量や静圧なども測定・記録します。

10-5.臨時点検

次のような場合には、定期の予定を待たずに確認を行うことを推奨します。

  • 最小風速が自主的な管理値を下回った。
  • 排風量が初期管理値から大きく低下した。
  • 静圧の変化が認められた。
  • 排風機の運転設定が変更された。
  • フード内部の機器配置を変更した。
  • ダクト経路や設備構造を変更した。
  • 空調・給気設備を変更した。
  • 有害物質の漏出や異常が疑われる。

なお、分解して改造または修理を行った場合には、第22条の点検が必要となることにも注意します。

11.異常が見つかった場合の対応方法

11-1.異常時対応の基本手順

今回の管理基準書では、次の手順を設定します。

  1. 異常を発見する。
  2. 作業者と設備の安全を確認する。
  3. 必要に応じて対象作業を停止する。
  4. 責任者へ報告する。
  5. 測定条件や設備状態を確認する。
  6. 原因を調査する。
  7. 是正措置を実施する。
  8. 再測定・再点検を実施する。
  9. 使用再開の可否を判断する。
  10. 記録を残し、再発防止を行う。

11-2.法令上の基準を下回った場合

今回の設備で最小制御風速が0.40 m/秒未満となった場合には、必要な吸引性能を確保できていない可能性があります。

今回の基準書では、対象の有機溶剤洗浄作業を停止し、設備管理担当者と安全衛生担当者へ報告することとします。

そのうえで、原因調査と是正を行い、必要な性能が確認できてから作業再開を判断します。

11-3.自主的な設計目標を下回った場合

最小風速が0.48 m/秒となった場合を考えます。

今回の法令上の原則値は上回っていますが、設計目標0.50 m/秒には達していません。

今回の運用例では、速やかに原因調査を行い、責任者による安全確認と是正方針の決定を必要とします。

作業継続の安全性が確認できない場合には、対象作業を一時停止します。

11-4.静圧だけが変化した場合

静圧が−280 Paから−235 Paへ変化しても、それだけで原因や性能の良否を断定してはいけません。

この場合には、排風量、制御風速、インバータ周波数などを確認します。

11-5.排風機の設定が変わっていた場合

例えば、通常運転設定50 Hzに対して45 Hzになっていた場合です。

この場合、原因や設定変更の経緯を確認せずに周波数を戻してはいけません。

電動機や排風機の仕様、保護機能、変更履歴などを確認し、権限を持つ担当者が適切に対応します。

その後、必要な性能が得られていることを再測定で確認します。

12.第32回の不具合事例を管理基準書へ適用する

ここでは、第32回で使用した仮想測定データを、今回の管理基準書で判定してみます。

12-1.運転開始3か月後の測定結果

項目完成時3か月後
最小制御風速0.54 m/秒0.48 m/秒
平均開口面風速0.65 m/秒0.58 m/秒
ダクト排風量12.40 m³/分11.10 m³/分
フード直後の静圧−280 Pa−235 Pa
インバータ周波数50 Hz45 Hz

12-2.最小制御風速の評価

今回の最小風速は0.48 m/秒です。

自主的な設計目標0.50 m/秒を下回っています。

したがって、管理区分は「要調査・是正」です。

12-3.ダクト排風量の評価

今回のダクト排風量は11.10 m³/分です。

設計必要排風量12.00 m³/分を下回っています。

したがって、こちらも「要調査・是正」です。

12-4.静圧の評価

静圧は−280 Paから−235 Paへ変化しています。

負圧の絶対値が45 Pa小さくなっています。

ただし、静圧の変化だけで原因を確定することはできません。

今回は、ほかの測定値と運転条件を確認します。

12-5.原因調査

今回の仮想事例では、インバータの通常運転設定50 Hzが45 Hzへ変更されていたことが分かりました。

さらに、設備を調査し、ほかに著しい不具合がないことを確認したものとします。

その結果、運転設定の変更が性能低下の主な原因だったと判断したと仮定します。

12-6.是正措置

排風機や電動機などの安全性を確認し、権限を持つ担当者が通常運転設定50 Hzへ復帰させます。

その後、同じ測定条件で再測定します。

12-7.改善後の測定結果

項目改善前改善後管理上の評価
最小制御風速0.480.53 m/秒設計目標を達成
ダクト排風量11.1012.36 m³/分設計目標を達成
静圧−235−277 Pa初期値に近い
インバータ周波数4550 Hz通常設定に復帰

今回の仮想事例では、最小制御風速と排風量が設計目標を満たす状態に回復しました。

ただし、実際の使用再開では、異常原因への対応が完了していること、作業時の捕捉性能に問題がないこと、その他の安全上の異常がないことなども確認する必要があります。

13.運転管理基準書の完成例

ここまでの内容を実際の文書に整理します。

以下は、今回の仮想設備LEV-001について作成する運転管理基準書の記入例です。

局所排気装置 運転管理基準書(記入例)

文書番号:LEV-M-001

版数:第1版

対象設備:LEV-001

1.目的

本基準書は、局所排気装置LEV-001の必要な性能を維持するため、運転条件、管理値、点検方法、異常時の対応及び記録方法を定める。

2.適用範囲

アセトン洗浄工程に設置した囲い式局所排気装置LEV-001に適用する。

対象範囲は、フードH-01、排気ダクト、活性炭吸着装置AC-01、排風機F-01及び関連する制御設備とする。

3.通常運転条件

項目設定
サッシ開口高さ0.40 m
インバータ通常運転周波数50 Hz
排風機運転対象作業中は必要な性能を維持
給気・空調性能確認時の条件に整合
フード内部吸引を妨げる配置にしない

4.主要管理値

項目管理値
法令上の原則的制御風速0.40 m/秒
自主的な設計目標の最小風速0.50 m/秒
最小風速の注意水準0.52 m/秒未満
完成時の最小風速0.54 m/秒
設計必要排風量12.00 m³/分
排風量の注意水準12.20 m³/分未満
完成時の排風量12.40 m³/分
完成時の参考静圧−280 Pa

5.点検・検査

作業開始前に運転状態を確認する。

有機溶剤作業主任者による点検は、1月を超えない期間ごとに実施する。

定期自主検査は、原則として1年以内ごとに1回実施する。

異常が認められた場合は、必要な原因調査と点検を行う。

6.異常時の対応

制御風速が法令上の原則的な基準を下回った場合は、対象作業を停止し、責任者へ報告する。

自主的な設計目標を下回った場合は、速やかに原因調査と安全性の確認を行い、必要な是正措置を実施する。

有害物質の漏出、火災・爆発の危険、設備の重大な異常が疑われる場合には、測定値にかかわらず安全確保を優先する。

7.使用再開

是正後に必要な点検・測定を行い、安全上の問題がないことと、必要な性能が確保されていることを確認したうえで、定められた責任者が使用再開を判断する。

8.記録

点検日、測定者、測定条件、測定結果、異常内容、是正措置、再測定結果、確認者を記録する。

法定の定期自主検査記録については、関係法令に従って保存する。

9.基準書の見直し

設備の構造、作業条件、運転設定、管理値などを変更した場合、または重大な異常が発生した場合には、管理基準書を見直す。


この記入例を基本形として、事業場名、責任者名、承認者、作成日、改訂日、測定位置図、実際のメーカー仕様などを追加します。

特に、管理値の設定根拠と、異常時の対応責任者を明確にすることが重要です。

14.Excelで運転管理表を作成する

14-1.管理条件シート

最初に、Excelで「管理条件」というシートを作成します。

次のように設定します。

セル項目値
B4法令上の原則的制御風速0.40
B5自主的な設計目標の最小風速0.50
B6最小風速の注意水準0.52
B7完成時の最小風速0.54
B8設計必要排風量12.00
B9排風量の注意水準12.20
B10完成時のダクト排風量12.40
B11完成時の静圧−280
B12通常運転周波数50
B13通常開口高さ0.40
B14開口幅0.80

単位は別列に明記します。

また、これらの数値が法令、設計値、初期測定値、自主管理値のどれに該当するかも記載します。

14-2.測定記録シート

次に「測定記録」シートを作成します。

列項目
A列測定年月日
B列サッシ開口高さ
C列最小制御風速
D列平均開口面風速
E列ダクト排風量
F列フード直後の静圧
G列インバータ周波数
H列排風量変化率
I列静圧差
J列数値管理区分
K列運転条件の照合結果

なお、作業者名、測定器、測定位置、異常の内容、確認者等は別列または別シートで記録します。

14-3.排風量変化率を計算する

今回の排風量をE5セルに入力し、初期排風量と比較します。

H5セル:

=IF(OR(E5="",'管理条件'!$B$10=0),"",ROUND((E5-'管理条件'!$B$10)/'管理条件'!$B$10*100,2))

例えば、初期値12.40 m³/分、今回値11.10 m³/分の場合、

11.10 − 12.40 = −1.30

−1.30 ÷ 12.40 × 100

= 約−10.48%

となります。

14-4.静圧差を計算する

静圧はF5セルに入力します。

I5セル:

=IF(F5="","",ROUND(F5-'管理条件'!$B$11,0))

今回値−235 Pa、初期値−280 Paの場合、

−235 −(−280)= +45 Pa

となります。

ただし、静圧差だけで正常・異常を自動判定しないようにします。

14-5.数値管理区分を表示する

今回の最小制御風速と排風量について、管理区分を表示する方法を考えます。

J5セル:

=IF(OR(C5="",E5=""),"未測定",IF(C5<'管理条件'!$B$4,"停止・報告",IF(OR(C5<'管理条件'!$B$5,E5<'管理条件'!$B$8),"要調査・是正",IF(OR(C5<'管理条件'!$B$6,E5<'管理条件'!$B$9),"注意","通常"))))

この数式では、最小風速が法令上の原則値を下回った場合に「停止・報告」、自主的な設計目標を下回った場合に「要調査・是正」などを表示します。

ただし、この自動判定は今回の仮定条件に限定したものです。

法令上の特例、測定条件の違い、測定の不確かさ、設備の異常などをExcelが自動的にすべて判断できるわけではありません。

「通常」と表示されても、安全性や法令適合性が保証されたことにはなりません。

14-6.運転条件の違いを表示する

K5セルでは、サッシ開口高さとインバータ周波数が通常条件に一致しているかを確認します。

例えば、次の数式を使用できます。

=IF(OR(B5="",G5=""),"条件未記入",IF(OR(ABS(B5-'管理条件'!$B$13)>0.000001,ABS(G5-'管理条件'!$B$12)>0.1),"運転条件相違","設定値一致"))

この式で比較しているのは、入力された設定値です。

空調・給気条件やフード内部の状態まで確認できるわけではありません。

14-7.今回の測定結果を入力する

第32回の仮想測定値を入力すると、次のようになります。

項目入力値
開口高さ0.40 m
最小制御風速0.48 m/秒
平均開口面風速0.58 m/秒
ダクト排風量11.10 m³/分
静圧−235 Pa
インバータ周波数45 Hz

この場合、数値管理区分は「要調査・是正」となります。

また、通常運転周波数50 Hzに対して45 Hzとなっているため、運転条件の照合結果は「運転条件相違」となります。

このように、数値管理区分と運転条件の照合結果を分けて表示すると、何を調査すべきか分かりやすくなります。

15.測定結果と異常時対応を記録する

15-1.記録を一つにつなげる

性能管理では、異常が発生したという記録だけでなく、その後の対応まで関連付けて管理することが重要です。

例えば、次の項目を整理します。

項目記録内容
記録番号管理用番号
設備番号LEV-001
発見日実際の日付
発見者氏名・所属
発見した現象最小風速・排風量の低下
測定結果0.48 m/秒、11.10 m³/分
運転条件45 Hz
調査結果設定変更の確認
確認された原因設定変更により排風性能が低下
是正措置安全確認後、通常設定へ復帰
再測定結果0.53 m/秒、12.36 m³/分
承認者実際の責任者
再発防止設定変更管理と点検項目の見直し

今回の表は、第32回の仮想事例を使用しています。

実際の管理表では、事実として確認できていない原因を確定事項として記録しないようにします。

15-2.改善後の記録

今回の改善後の仮想測定値は次のとおりです。

項目初期管理値改善後
最小制御風速0.54 m/秒0.53 m/秒
ダクト排風量12.40 m³/分12.36 m³/分
静圧−280 Pa−277 Pa
インバータ周波数50 Hz50 Hz

改善後は、最小風速と排風量が自主的な設計目標を満たしている結果となりました。

ただし、実際の使用再開では、数値だけではなく、設備の異常が解消していることや、通常作業時の安全性を確認する必要があります。

15-3.再発防止の確認

今回の例では、インバータの設定変更が性能低下の原因だったと仮定しています。

再発防止策として、設定変更の権限管理、変更記録、定期的な運転設定確認などが考えられます。

これらの対策については、実施しただけで終わらせず、その後の点検で有効に機能していることを確認します。

16.管理基準書を見直すべき場面

運転管理基準書は、一度作成したら変更しない文書ではありません。

設備や作業条件が変化した場合には、内容を見直す必要があります。

16-1.設備を変更した場合

例えば、次のような変更です。

  • フードの寸法を変更した。
  • サッシの通常使用高さを変更した。
  • ダクト径や経路を変更した。
  • 排風機を交換した。
  • 排ガス処理装置を交換した。
  • インバータの通常運転設定を変更した。

これらの変更がある場合、必要排風量、圧力損失、排風機の運転点、制御風速などへの影響を確認します。

16-2.作業条件を変更した場合

例えば、洗浄容器の大きさや設置位置が変わる場合です。

発散源の位置や作業方法が変化すれば、フード内部の気流条件が変わる可能性があります。

そのため、従来の管理値を引き続き使用できるか確認する必要があります。

16-3.管理値を見直す場合

管理値の見直しでは、単に現在の測定値に合わせて基準を緩めることは避けなければなりません。

例えば、以前は最小風速0.54 m/秒だった設備が0.47 m/秒まで低下したため、管理目標を0.45 m/秒へ変更するという方法は適切ではありません。

設計条件、法令上の要求、必要な捕捉性能、測定の不確かさなどを確認し、合理的な根拠を持って判断する必要があります。

16-4.文書の改訂履歴

管理基準書には、次のような改訂履歴を設けることを推奨します。

版数改訂内容承認者
第1版新規制定実際の承認者
第2版点検項目の追加実際の承認者
第3版設備変更に伴う管理条件見直し実際の承認者

実際の改訂日や承認者は、確定した情報を記載します。

17.実務チェックリスト

基準書の作成

  • 対象設備と作業内容を明確にした。
  • 適用法令を確認した。
  • 法令上の基準と自主目標を区別した。
  • 完成時の測定記録を確認した。
  • 初期管理値を設定した。
  • 自主的な注意水準の根拠を整理した。
  • 測定の不確かさを考慮した。

測定・点検

  • 測定位置を定めた。
  • 測定方法を定めた。
  • サッシ開口高さを定めた。
  • 排風機の運転条件を定めた。
  • 有機溶剤作業主任者の点検を管理している。
  • 定期自主検査を管理している。
  • 初使用時等の点検が必要な場合を整理した。

異常時対応

  • 異常時の作業停止条件を定めた。
  • 責任者への報告方法を定めた。
  • 原因調査の担当を決めた。
  • 設備の調整・補修を行う担当者を決めた。
  • 改善後の再測定方法を定めた。
  • 使用再開の承認方法を定めた。

記録管理

  • 測定値と測定条件を記録できる。
  • 設計値と実測値を区別している。
  • 異常の原因と是正内容を記録できる。
  • 再測定結果を記録できる。
  • 定期自主検査記録の保存義務を満たす。
  • 基準書の改訂履歴を管理している。

18.よくある質問

Q1.運転管理基準書の作成は法令上の義務ですか?

今回紹介した名称や形式で、運転管理基準書の作成が一律に義務付けられているわけではありません。

ただし、制御風速の確保、点検、定期自主検査、異常時の補修など、法令上必要な事項は実施する必要があります。

運転管理基準書は、それらを継続的に管理するための実務上の手段です。

Q2.制御風速が0.40 m/秒以上なら、設備に問題はないと判断できますか?

それだけでは判断できません。

今回の設備では、原則的な法令基準として0.40 m/秒を使用します。

しかし、フードの捕捉気流、排風機の運転状態、設備の損傷、横風なども確認する必要があります。

Q3.最小風速の注意水準0.52 m/秒は、すべての事業場で使用できますか?

使用できません。

今回の初期管理値0.54 m/秒と設計目標0.50 m/秒から、説明用に設定した値です。

実際には、測定条件、通常変動、測定の不確かさ、設備特性などを踏まえて決定します。

Q4.排風量の管理値は初期値から10%低下した値でよいですか?

一律には適切ではありません。

今回の設備では、初期排風量12.40 m³/分に対し、設計必要排風量が12.00 m³/分です。

10%低下する前に、設計必要排風量を下回ります。

したがって、管理値は必要な性能と初期値の余裕を考慮して設定する必要があります。

Q5.静圧だけを毎日確認すれば、性能管理として十分ですか?

十分とは限りません。

静圧は設備状態の変化を調べるために役立ちますが、静圧だけでフードの制御風速や排風量を正確に把握できるわけではありません。

必要に応じて風速や排風量を確認します。

Q6.有機溶剤作業主任者の点検では、毎回16点の風速測定が必要ですか?

有機溶剤中毒予防規則第19条の2は、局所排気装置などを1月を超えない期間ごとに点検することを求めています。

この規定だけを根拠として、毎回必ず16点の風速測定を行う必要があると説明することは適切ではありません。

ただし、異常が疑われる場合や、事業場の管理上必要な場合には、風速測定を行うことが考えられます。

Q7.Excelの数値が「通常」と表示されれば、作業を継続してよいですか?

Excelの管理区分だけで判断してはいけません。

今回のExcelは、設定した数値条件に基づく補助的な管理表です。

有害物質の漏出や設備異常がある場合は、数値表示にかかわらず安全を優先して対応します。

Q8.局所排気装置の基準書は設備ごとに作成する必要がありますか?

今回のように、設備ごとに管理値や運転条件が異なる場合は、設備ごとの管理情報を持つことを推奨します。

共通する管理手順は事業場全体の基準書として定め、設備固有の管理値や測定位置は設備別の一覧表で管理する方法も考えられます。

Q9.抑制濃度方式の局所排気装置にも同じ管理値を使用できますか?

使用できません。

今回の設備は、有機溶剤中毒予防規則に基づく制御風速方式を想定しています。

抑制濃度が性能要件となる設備では、適用法令と定期自主検査指針に基づき、別途管理方法を検討する必要があります。

19.まとめ:管理基準書で性能低下を早期に発見する

今回は、局所排気装置の運転管理基準書の作り方を解説しました。

第31回の完成時測定値を初期管理値とし、第32回の性能低下事例を使用して、管理値の設定から異常時対応、再測定、記録管理までを整理しました。

今回の設備で使用した主要な数値は次のとおりです。

管理項目値
法令上の原則的制御風速0.40 m/秒
自主的な設計目標0.50 m/秒
最小風速の注意水準(仮定)0.52 m/秒
完成時の最小風速0.54 m/秒
設計必要排風量12.00 m³/分
排風量の注意水準(仮定)12.20 m³/分
完成時の排風量12.40 m³/分
完成時の参考静圧−280 Pa
通常運転周波数50 Hz

運転管理基準書を作成するうえで重要なのは、単に基準となる数値を並べることではありません。

何を、どの条件で確認し、どのような変化があれば、誰が、何をするのかを明確にすることが重要です。

特に、次の点を押さえる必要があります。

  • 法令上の基準と自主的な管理値を区別する。
  • 初期管理値は完成時の適切な測定結果を使用する。
  • 管理値は必要な性能と初期値の余裕を考慮して設定する。
  • 静圧の変化だけで原因や性能の良否を判断しない。
  • 異常が見つかった場合の作業停止・報告・是正の方法を定める。
  • 改善後には必要な再測定を行う。
  • 測定結果と是正内容を関連付けて記録する。
  • 設備や作業条件が変わった場合には管理基準書を見直す。

局所排気装置の管理では、完成時に必要な性能を確保することと同じように、その性能を継続して維持するための仕組みを整えることが重要です。

運転管理基準書は、設備の性能を維持し、有害物質へのばく露を防ぐための実務上の管理手段として活用できます。


参考資料

法令・行政資料

  1. 有機溶剤中毒予防規則|e-Gov法令検索
    第16条、第18条、第19条の2、第20条、第21条、第22条、第23条
  2. 有機溶剤中毒予防規則|厚生労働省
  3. 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について
    平成20年3月27日付け基発第0327001号
  4. 局所排気装置の定期自主検査指針|愛知労働局

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  1. 第23回「局所排気装置の測定記録と管理値の設定|静圧・風量・制御風速から性能低下を早期発見する方法」
  2. 第29回「局所排気装置の設計計算書を実際に使ってみよう|Excel入力から計算結果の確認までを具体例で解説」
  3. 第31回「局所排気装置の完成時性能確認と引渡しの実務|設計値と実測値の比較・不具合対応・記録管理」
  4. 第32回「局所排気装置の運転開始後に性能が低下したら?|初期管理値を使った異常診断と改善手順」

※本記事における設備条件、管理値、測定値、不具合原因、是正結果は、説明用の仮定値または仮想事例です。実際の設備の法令適合性や性能を示すものではありません。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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