【第16回】局所排気装置の圧力損失計算|直管・エルボ・分岐を計算例で解説

【第16回】局所排気装置の圧力損失を計算する|直管・エルボ・分岐の抵抗をどう求めるか

局所排気装置を設計するとき、「必要排風量は12 m³/minだから、12 m³/minの排風機を選べばよい」と考えていないでしょうか。

実際には、排風量だけでは排風機を選定できません。

フードから吸い込まれた空気は、ダクトを通り、エルボで方向を変え、場合によっては別の枝ダクトから流れてきた空気と合流します。

さらに、空気清浄装置や排気口なども通過します。

この過程では、空気の流れに対する抵抗が生じます。

その抵抗によって失われる機械的エネルギーを、圧力として表したものが「圧力損失」です。

例えば、直径150 mmのダクトを10 m設置する場合と、同じダクトに90度エルボを3個追加した場合では、同じ風量を流すために必要な圧力が異なります。

また、2台のフードを1台の排風機に接続する場合には、単にすべてのダクトの圧力損失を合計すればよいわけではありません。

圧力損失の計算では、空気がどの経路を通り、その経路にどのような抵抗が存在するかを整理することが重要です。

この記事では、直管・エルボ・合流部の圧力損失をそれぞれ計算し、最後に2本の枝ダクトが合流する設備の計算例を紹介します。

目次

1. 圧力損失とは?なぜ局所排気装置で重要なのか

最初に、圧力損失の意味を整理しましょう。

空気が流れると抵抗が発生する

ダクト内部を空気が流れると、空気とダクト内面との摩擦によってエネルギーが失われます。

また、ダクトが曲がっていたり、断面形状が変化したりすると、流れが乱れ、追加の損失が生じます。

このような損失があるため、排風機は必要な排風量を確保するために、空気へ圧力エネルギーを与える必要があります。

例えば、同じ排風量でも、短い直管だけの設備と、長いダクトに多くのエルボがある設備では、必要な排風機の能力が異なります。

圧力損失の単位はPa

圧力損失は、通常Pa(パスカル)で表します。

例えば、ある直管区間の圧力損失が50 Pa、エルボの損失が20 Paだったとします。

これらが同じ流路上に直列に存在する場合には、

50 + 20 = 70 Pa

となります。

つまり、この2つの部分で合計70 Paの圧力損失が発生するということです。

ただし、実際の設備ではほかにも損失が存在するため、70 Paがそのまま排風機に必要な圧力になるわけではありません。

圧力損失を計算しないとどうなるのか?

例えば、フードの必要排風量を確保するために排風機を選定しても、実際のダクト系統の抵抗が大きければ、想定より排風量が少なくなる可能性があります。

その結果、フードで必要な制御風速などを確保できなくなることがあります。

2. 圧力損失を計算する前に理解したい3つの圧力

圧力損失の計算では、「静圧」「速度圧」「全圧」という用語が登場します。

静圧とは?

静圧とは、流れている空気が持つ圧力のうち、速度圧を除いた圧力成分です。

例えば、吸込み側のダクトでは、周囲の大気圧を基準とした静圧が負になることがあります。

ただし、静圧が負であることと、圧力損失の値が負であることは同じ意味ではありません。

速度圧とは?

速度圧は、空気の流れる速さに対応する圧力です。

速度圧Pvは、次の式で求められます。

Pv = ρV² ÷ 2

  • Pv:速度圧(Pa)
  • ρ:空気密度(kg/m³)
  • V:風速(m/s)

全圧とは?

全圧Ptは、静圧Psと速度圧Pvの和で表されます。

Pt = Ps + Pv

これは、損失を考えるうえで重要な関係です。

静圧の変化と圧力損失を混同しない

例えば、ダクト径が途中で大きくなり、風速が低下すると、静圧が回復することがあります。

しかし、静圧が回復したからといって、途中で圧力損失が発生していないという意味ではありません。

ダクト内部で抵抗が発生すると、気流の全圧は流れ方向に低下します。ただし、排風機などによってエネルギーが加えられる場合は別です。

したがって、圧力損失の計算では、静圧の数値だけでなく、全圧と速度圧の関係を理解する必要があります。

同じ断面積の直管前後では、風速がほぼ同じであれば、静圧の低下量と全圧の損失量はほぼ一致します。

一方、断面積が変わる部分では、静圧差をそのまま圧力損失として扱えない場合があります。

3. 圧力損失は大きく2つに分けられる

局所排気装置のダクトで発生する圧力損失は、計算上、大きく2つに分類できます。

種類主な発生場所基本的な考え方
摩擦圧力損失直管部分ダクト内面と気流の摩擦
局部圧力損失エルボ、合流部、ダンパーなど流れの方向・断面・速度分布の変化

直管では、主に摩擦圧力損失を計算します。

エルボや合流部では、形状に応じた局部圧力損失を計算します。

なお、フード入口や空気清浄装置にも圧力損失があります。

今回は、まず直管・エルボ・合流部について説明し、その後に系統全体へ組み合わせます。

4. 直管の圧力損失を計算する方法

直管の摩擦圧力損失を求める代表的な式が、ダルシー・ワイスバッハ式です。

ΔPf = λ × (L ÷ D) × (ρV² ÷ 2)

また、速度圧Pvを使用すると、

ΔPf = λ × (L ÷ D) × Pv

と書けます。

記号意味単位
ΔPf直管の摩擦圧力損失Pa
λダルシー管摩擦係数無次元
L直管長さm
Dダクト内径m
ρ空気密度kg/m³
Vダクト内平均風速m/s

ここで使用するλは、ダルシー管摩擦係数です。ファニング摩擦係数とは定義が異なるため、計算資料の係数をそのまま混用してはいけません。

計算例①|直径200 mm、長さ10 mの直管

次の条件を仮定します。

項目値
排風量Q12 m³/min
ダクト内径D0.20 m
直管長さL10 m
空気密度ρ1.20 kg/m³
管摩擦係数λ0.025

※λ = 0.025は説明用の仮定値です。

まず、ダクト断面積を求めます。

A = π × 0.20² ÷ 4

A ≒ 0.03142 m²

次に、平均風速を求めます。

V = 12 ÷ (60 × 0.03142)

V ≒ 6.37 m/s

速度圧は、

Pv = 1.20 × 6.366² ÷ 2

Pv ≒ 24.32 Pa

となります。

最後に、直管圧力損失を計算します。

ΔPf = 0.025 × (10 ÷ 0.20) × 24.32

ΔPf ≒ 30.40 Pa

となります。

この条件では、長さ10 mの直管部分で約30.40 Paの摩擦圧力損失が発生する計算です。

管摩擦係数は何によって変わるのか?

管摩擦係数は、ダクトの材質や内面の粗さ、レイノルズ数などによって変化します。

例えば、内面が比較的滑らかなダクトと、内面に凹凸が多いダクトでは、抵抗が異なる場合があります。

また、ダクト内部に粉じんが堆積した場合には、有効断面積や内面状態が変化するため、圧力損失も変化します。

そのため、実際の設計では、使用するダクトに適した管摩擦係数を確認する必要があります。

5. エルボの圧力損失を計算する方法

次に、エルボの圧力損失を考えます。

エルボとは、ダクトの方向を変えるための曲がり部分です。

例えば、天井に沿って設置された水平ダクトを下向きに曲げる場合などに使用します。

なぜエルボで圧力損失が発生するのか?

まっすぐなダクトでは、空気は主にダクトの軸方向へ流れます。

しかし、エルボでは空気の進む方向を変更しなければなりません。

曲がり部では、内側と外側で流れ方が異なり、流れの剥離や二次流れが生じる場合があります。

その結果、機械的エネルギーが失われ、圧力損失が発生します。

エルボの局部圧力損失の基本式

ΔPe = ζ × Pv

または、

ΔPe = ζ × (ρV² ÷ 2)

です。

ここで、

  • ΔPe:エルボの局部圧力損失(Pa)
  • ζ(ゼータ):局部損失係数(無次元)
  • Pv:係数の定義に対応する断面の速度圧(Pa)

です。

計算例②|90度エルボ1個の圧力損失

先ほどの直径200 mm、排風量12 m³/minのダクトを使用します。

速度圧は約24.32 Paでした。

ここで、エルボの局部損失係数を説明用に、

ζ = 0.5

と仮定します。

すると、

ΔPe = 0.5 × 24.32

ΔPe ≒ 12.16 Pa

となります。

90度エルボが3個ある場合

同じ条件のエルボを3個設置し、各エルボで同じ損失係数を使えると仮定すると、

ΔPe,total = 3 × 12.16

ΔPe,total ≒ 36.48 Pa

となります。

ただし、曲がり部同士が近接している場合には、上流側の偏流が下流側に影響し、独立したエルボの係数を単純に加算する方法では正確に評価できないことがあります。

エルボの損失係数は一定なのか?

一定ではありません。

例えば、次の条件によって変わります。

  • 曲がり角度
  • 曲率半径
  • ダクトの断面形状
  • エルボの製作方法
  • 内面の粗さ
  • 上下流にある継手との位置関係

一般に、急激な曲がりよりも、滑らかな曲がりの方が損失を小さくできる場合があります。

ただし、どの形状でも同じ割合で損失を低減できるわけではありません。

6. エルボの損失係数はどこから求めるのか?

局部損失係数ζは、実験や技術資料などに基づいて求めます。

重要なのは、エルボの曲がり角度だけで決めないことです。

例えば、同じ90度エルボでも、滑らかな曲管と鋭角的な曲がりでは、損失係数が異なります。

また、長方形ダクトのエルボでは、幅・高さ・曲率半径などの関係も影響します。

そのため、実際の設計では、使用する継手の形状に対応した損失係数表やメーカー資料などを参照します。

計算するときの注意点

例えば、ある技術資料にζ(ゼータ) = 0.5と記載されていても、すべてのエルボへ適用できるわけではありません。

その係数が、どのような断面、形状、風速条件で得られたものかを確認する必要があります。

特に、異径継手や合流部では、局部損失係数の基準となる速度圧を取り違えないように注意します。

7. 相当直管長とは?エルボの損失を直管長さへ換算する方法

ここまで、直管とエルボの損失を別々に計算しました。

しかし、エルボの抵抗を「同じ圧力損失を生じる直管の長さ」に置き換える方法もあります。

この長さを、相当直管長と呼びます。

相当直管長の基本的な考え方

例えば、あるエルボの圧力損失が、同じダクトの直管4 m分の摩擦損失に相当する場合、

「このエルボの相当直管長は4 m」

と考えます。

これによって、エルボの損失を直管の長さに換算して計算できます。

相当直管長の計算式

直管の摩擦損失は、

ΔPf = λ × (L ÷ D) × Pv

です。

一方、局部損失は、

ΔPe = ζ × Pv

です。

これらを等しいとすると、

λ × (Leq ÷ D) × Pv = ζ × Pv

となります。

整理すると、

Leq = ζ × D ÷ λ

です。

  • Leq:相当直管長(m)
  • ζ(ゼータ):局部損失係数
  • D:ダクト内径(m)
  • λ(ラムダ):ダルシー管摩擦係数

計算例③|エルボ1個の相当直管長

次の条件を仮定します。

  • ダクト内径:0.20 m
  • 局部損失係数:0.5
  • 管摩擦係数:0.025

計算すると、

Leq = 0.5 × 0.20 ÷ 0.025

Leq = 4.0 m

となります。

つまり、この条件でのエルボ1個の損失は、同じダクトの直管4 m分の摩擦損失に相当します。

直管10 mにエルボが3個ある場合

エルボ3個の相当直管長は、

4.0 × 3 = 12.0 m

です。

実際の直管長さは10 mなので、損失計算に使用する合計相当長さは、

10 + 12 = 22 m

となります。

ここで注意したいのは、相当直管長を使用して計算した場合には、同じエルボの局部圧力損失をさらに加算してはいけないことです。

二重計上になるためです。

8. 分岐・合流部では、なぜ圧力損失の計算が難しくなるのか?

ここからは、複数のフードを接続する局所排気装置を考えます。

例えば、2台の作業台に設置されたフードを、1台の排風機で吸引する場合です。

それぞれのフードから伸びるダクトは、途中で一つのダクトに合流します。

局所排気装置では空気が合流する

排風機へ向かう空気の流れに着目すると、2本の枝ダクトからの空気は合流部で一つになります。

このため、吸込み側の局所排気装置では、「分岐管」や「枝ダクト」と呼ぶ場合でも、気流としては合流現象を扱うことになります。

流量は合計する

例えば、次のような設備を考えます。

  • フードA:7.2 m³/min
  • フードB:4.8 m³/min

この2つが合流する場合、漏れなどがなく定常状態であれば、

Qtotal = QA + QB

となります。

したがって、

Qtotal = 7.2 + 4.8

Qtotal = 12.0 m³/min

です。

圧力損失は単純に合計できない

では、フードAから合流点までの損失が100 Pa、フードBから合流点までの損失が80 Paだった場合、合流前の圧力損失は180 Paになるのでしょうか。

そうではありません。

AとBの枝ダクトは、空気が通過する経路として並列になっています。

そのため、Aの経路の圧力損失とBの経路の圧力損失を、直列のように加算してはいけません。

実際には、合流点における圧力条件と、それぞれの枝ダクトの抵抗によって、各枝の流量が決まります。

9. 合流部の局部圧力損失をどう求めるのか?

合流部では、2方向から流れてきた空気が一つの流れになります。

このとき、流れの方向や速度分布が変化し、損失が発生します。

合流部の局部圧力損失も、適切な係数を使用する場合には、

ΔPj = ζj × Pv,ref

という形で計算できます。

  • ΔPj:合流部の局部圧力損失(Pa)
  • ζj:合流部の局部損失係数
  • Pv,ref:係数の定義に対応する速度圧(Pa)

合流部の係数は何によって変わるのか?

主な要因は次のとおりです。

  • 合流角度
  • 枝ダクトと主管の断面積比
  • 各枝の風量比
  • 合流前後の風速
  • 合流部の形状
  • 上流の曲がりや偏流

例えば、主管へ鋭角に合流する場合と、直角に合流する場合では、空気の方向変化が異なります。

ただし、損失係数は合流角度だけでは決まりません。

同じ角度でも流量比や断面積比が違えば、損失が異なる場合があります。

合流部には基準速度圧の問題がある

ここが専門的に重要な部分です。

合流部の損失係数には、枝ダクト側の速度圧を基準にするものと、合流後の主管側の速度圧を基準にするものがあります。

そのため、例えばζj = 0.6という数値だけが分かっても、どの速度圧を掛けるべきかが分からなければ、正しく計算できません。

損失係数の数値だけでなく、その係数が定義された基準断面を確認する必要があります。

また、合流部では静圧回復などの影響もあるため、静圧の変化をそのまま局部損失として扱わないようにします。

10. 計算例④|2本の枝ダクトが合流する設備の圧力損失

ここでは、2台のフードを1台の排風機で吸引する設備を考えます。

この計算例は、設計手順を理解するための仮定条件です。

なお、合流部の損失係数は、計算方法を説明するために設定した数値であり、特定の継手の性能を保証するものではありません。

設備条件

各部分の条件を次のように設定します。

項目枝ダクトA枝ダクトB
排風量7.2 m³/min4.8 m³/min
ダクト内径150 mm125 mm
直管長さ8 m6 m
エルボ数1個2個
エルボ1個の損失係数0.50.5
合流部の仮定損失係数0.60.8
フード入口損失25 Pa25 Pa

共通条件は次のとおりです。

  • 空気密度ρ:1.20 kg/m³
  • 管摩擦係数λ:0.025
  • エルボおよび合流部の係数:説明用の仮定値
  • 合流部の係数は、それぞれの枝ダクト側の速度圧を基準とすると仮定

この例では、枝ダクトAとBが、それぞれ指定された排風量で流れている状態をまず仮定し、必要な圧力バランスを確認します。

実際の設備で、その流量配分が最初から成立しているという意味ではありません。

ステップ① 枝ダクトAの平均風速を求める

枝ダクトAの排風量は7.2 m³/min、内径は0.15 mです。

断面積は、

A = π × 0.15² ÷ 4

A ≒ 0.01767 m²

です。

平均風速は、

V = 7.2 ÷ (60 × 0.01767)

V ≒ 6.79 m/s

となります。

速度圧は、

Pv = 1.20 × 6.791² ÷ 2

Pv ≒ 27.67 Pa

です。

ステップ② 枝ダクトAの直管損失を求める

ΔPf,A = λ × (L ÷ D) × Pv

ΔPf,A = 0.025 × (8 ÷ 0.15) × 27.67

ΔPf,A ≒ 36.89 Pa

となります。

ステップ③ 枝ダクトAのエルボ損失を求める

エルボは1個、損失係数は0.5と仮定します。

ΔPe,A = 0.5 × 27.67

ΔPe,A ≒ 13.83 Pa

となります。

ステップ④ 枝ダクトAの合流部損失を求める

合流部の仮定損失係数は0.6です。

ΔPj,A = 0.6 × 27.67

ΔPj,A ≒ 16.60 Pa

となります。

ステップ⑤ 枝ダクトAの損失を合計する

フード入口損失25 Paを加えます。

ΔPA = 36.89 + 13.83 + 16.60 + 25

ΔPA ≒ 92.32 Pa

となります。

これは、今回定義した枝Aの経路における損失の概算値です。

ステップ⑥ 枝ダクトBを同じ方法で計算する

枝ダクトBの条件は次のとおりです。

  • 排風量:4.8 m³/min
  • 内径:0.125 m
  • 直管長さ:6 m
  • エルボ:2個
  • エルボ損失係数:各0.5
  • 合流部の仮定損失係数:0.8
  • フード入口損失:25 Pa

まず平均風速は、

V ≒ 6.52 m/s

となります。

速度圧は、

Pv ≒ 25.50 Pa

です。

直管損失は、

ΔPf,B = 0.025 × (6 ÷ 0.125) × 25.50

ΔPf,B ≒ 30.60 Pa

となります。

エルボ2個の損失は、

ΔPe,B = 2 × 0.5 × 25.50

ΔPe,B ≒ 25.50 Pa

です。

合流部の仮定損失は、

ΔPj,B = 0.8 × 25.50

ΔPj,B ≒ 20.40 Pa

となります。

フード入口損失25 Paを加えると、

ΔPB = 30.60 + 25.50 + 20.40 + 25

ΔPB ≒ 101.50 Pa

となります。

2本の枝ダクトを比較する

圧力損失の内訳枝A枝B
直管摩擦損失36.89 Pa30.60 Pa
エルボ損失13.83 Pa25.50 Pa
合流部損失16.60 Pa20.40 Pa
フード入口損失25.00 Pa25.00 Pa
合計92.32 Pa101.50 Pa

※表示値は小数第2位に丸めています。各区間を計算する際には、丸める前の値を用いています。

この計算では、枝ダクトBの方が約9.17 Pa大きい損失になりました。

11. 分岐系統の圧力バランスとは?

先ほどの計算では、枝ダクトAが92.32 Pa、枝ダクトBが101.50 Paとなりました。

ここで重要なのは、合流点では、その点の圧力条件が一つに定まるということです。

したがって、2本の枝ダクトを指定した流量で運転するには、それぞれの枝の圧力条件を整合させる必要があります。

抵抗が小さい枝に空気が多く流れることがある

例えば、枝ダクトAの抵抗が小さく、枝ダクトBの抵抗が大きい場合には、自然に流れる空気量が設計値から変化する可能性があります。

その結果、A側では設計値より多く流れ、B側では必要な排風量が不足することがあります。

この問題は、複数のフードを1台の排風機で使用する設備で重要です。

今回の計算ではどうするのか?

今回の仮定条件で、指定流量を実現するための圧力差を考えてみます。

枝ダクトBの損失は、

101.50 Pa

です。

枝ダクトAの損失は、

92.32 Pa

です。

差は、

101.50 − 92.32

約9.17 Pa

となります。

今回の簡略モデルでは、枝A側に約9.17 Paの追加抵抗を与えることで、両枝の損失を近づける設計を検討できます。

例えば、調整用ダンパーなどを使用する方法があります。

ただし、必要なダンパーの開度は、使用するダンパーの特性や流量条件に基づいて決める必要があります。

圧力バランスを調整する方法

主な方法には、次のようなものがあります。

方法① ダクトの設計によって抵抗を調整する

枝ダクトの径や経路、継手の構造などを見直し、必要な風量で圧力条件が整合するように検討します。

方法② ダンパーなどで抵抗を調整する

抵抗の小さい枝に調整用ダンパーなどを設け、流量配分を調整します。

ただし、ダンパーによって追加の圧力損失が発生するため、排風機の選定にも影響します。

また、粉じんを含む空気を扱う場合には、ダンパー付近での堆積、閉塞、摩耗などにも注意が必要です。

圧力バランスは設備完成後にも確認する

計算で圧力バランスを調整したとしても、実際の設備では製作誤差、施工条件、ダクトの粗さなどによって流量配分が変わることがあります。

そのため、設備完成後には、各枝の排風量や必要な制御風速などを確認し、必要に応じて調整します。

12. 合流後の主管の圧力損失を計算する

次に、合流後の主管を考えます。

枝ダクトAの排風量は7.2 m³/min、枝ダクトBは4.8 m³/minでした。

したがって、主管の排風量は、

Q = 12.0 m³/min

です。

ここでは主管の条件を次のように仮定します。

項目値
排風量12 m³/min
ダクト内径200 mm
直管長さ10 m
エルボ1個
エルボ損失係数0.5
管摩擦係数0.025

主管の直管損失

第4章の計算例と同じ条件なので、

ΔPf,main ≒ 30.40 Pa

です。

主管のエルボ損失

主管の速度圧は約24.32 Paです。

したがって、

ΔPe,main = 0.5 × 24.32

ΔPe,main ≒ 12.16 Pa

となります。

主管の合計損失

ΔPmain = 30.40 + 12.16

ΔPmain ≒ 42.55 Pa

となります。

この42.55 Paは、両枝が合流した後の主管部分における損失です。

両方の枝から流入した空気が通過するため、各枝から排風機までの圧力損失を考える際に共通して含まれます。

13. 系統全体の圧力損失はどう合算するのか?

ここまでの結果を整理します。

区間圧力損失
枝A約92.32 Pa
枝B約101.50 Pa
合流後の主管約42.55 Pa

ここで、

92.32 + 101.50 + 42.55

と計算してはいけません。

枝Aと枝Bは並列経路だからです。

選択した一つの流路に沿って損失を計算する

今回の簡略化したモデルでは、枝Bの方が抵抗の大きい経路です。

枝Aを調整するなどして、指定流量で圧力バランスが成立したものとします。

このとき、枝Bの経路と、合流後の主管の損失を加算すると、

101.50 + 42.55

約144.05 Pa

となります。

空気清浄装置の損失も加える

ここで、空気清浄装置の圧力損失を、説明用に120 Paと仮定します。

すると、

144.05 + 120

約264.05 Pa

となります。

この数値は、今回計算対象としたフード入口、枝ダクト、合流部、主管、空気清浄装置の損失を組み合わせた概算値です。

この264.05 Paが排風機の必要静圧になるのか?

まだ、そう判断してはいけません。

排風機を選定するには、今回省略した機器・継手、排風機前後の接続構造、排気口、速度圧の取扱い、系統の境界条件などを整理する必要があります。

また、排風機の静圧と全圧では、定義が異なります。

そのため、今回計算した損失の合計値を、そのままカタログに記載された排風機静圧へ当てはめることは適切ではありません。

排風機の選定については、系統全体の必要な圧力を整理し、メーカーの性能曲線と照合する必要があります。

14. 圧力損失が小さい設備ほどよいのか?

一般に、必要な風量を確保するための圧力損失を小さくできれば、排風機の負担や消費電力を低減できる可能性があります。

しかし、圧力損失だけを小さくすればよいわけではありません。

ダクト径を大きくしすぎた場合

例えば、粉じんを含む空気を搬送するダクトで、圧力損失を減らすためにダクト径を大きくすると、平均風速が低下します。

その結果、粉じんが堆積しやすくなる可能性があります。

つまり、粉じんを扱う設備では、圧力損失だけでなく、搬送速度を考慮する必要があります。

エルボを減らすことにも限界がある

ダクトの曲がりを減らせば、圧力損失を小さくできる場合があります。

しかし、設備配置や建物の構造によっては、曲がりを完全になくすことはできません。

そのため、必要なエルボを適切な形状にすることも重要です。

圧力損失と捕捉性能は別の評価項目

例えば、圧力損失を小さくした設備でも、フードの位置が不適切であれば、有害物質を十分に捕捉できないことがあります。

したがって、局所排気装置の設計では、

  • 有害物質を適切に捕捉できること
  • 必要な排風量を確保できること
  • ダクト内で適切に搬送できること
  • 過大な圧力損失を生じさせないこと

を組み合わせて検討します。

15. 実務例|圧力損失が大きくなり吸引能力が低下した

ここでは、架空の製造工場を考えます。

この工場では、2台の局所排気フードを1台の排風機で吸引しています。

当初は問題なく運転していましたが、最近になってフードB側の吸引能力が低下するようになりました。

現場で確認すること

まず、設備が設計時と同じ条件で運転されているか確認します。

例えば、次の事項を調べます。

  • 排風機の運転状態
  • ダクト内部の堆積や閉塞
  • ダンパーの開度
  • 空気清浄装置の目詰まり
  • ダクト接続部からの空気漏れ
  • 各枝ダクトの風量
  • フードの制御風速

静圧測定を活用する

局所排気装置では、静圧測定を利用して、異常の発生箇所を推定できる場合があります。

例えば、過去の正常時の測定記録があれば、現在の静圧や風量と比較します。

ただし、静圧の値は風量によって変化するため、単に静圧が大きくなったか、小さくなったかだけで異常箇所を断定することはできません。

ダクト内部が詰まっている場合

粉じんの堆積によって有効断面積が小さくなると、圧力損失や流量配分が変化する可能性があります。

また、排風機が同じ回転数で運転していても、系統抵抗の変化によって排風量が低下する場合があります。

このような場合には、ダクト内部の点検が必要です。

ただし、ダクトの開放や清掃に際しては、設備停止、残留物の性状、ばく露や着火の危険性などを確認し、安全な方法で作業する必要があります。

ダンパーの調整にも注意する

複数のフードを接続している設備では、一つのダンパーの開度を変更すると、他の枝ダクトの流量に影響する場合があります。

そのため、フードBの吸引能力が不足しているからといって、他の枝のダンパーを無条件に閉めることは適切ではありません。

各枝の流量と圧力条件を確認したうえで調整する必要があります。

16. 法令ではダクトの圧力損失をどう扱っているのか?

ここまで解説した圧力損失の計算は、局所排気装置の設計に必要な技術的手法です。

一方、日本の労働安全衛生関係法令には、局所排気装置の構造や性能についての要求事項があります。

有機溶剤中毒予防規則第14条第2項

同項では、局所排気装置のダクトについて、長さをできるだけ短くし、ベンドの数をできるだけ少なくすることが規定されています。

これは、ダクトの圧力損失を小さくするうえでも合理的な構造上の要求です。

ただし、同項がすべての局所排気装置に対して、ダルシー・ワイスバッハ式を使用した圧力損失計算書の作成を直接義務付けているという意味ではありません。

法令上の性能要件との関係

有機溶剤中毒予防規則第16条では、対象となる局所排気装置について、フードの形式に応じた制御風速を確保できる能力が規定されています。

そのため、圧力損失を計算して排風機を選定しても、実際の設備で必要な制御風速が得られなければ、法令上の性能要件を満たさない可能性があります。

定期自主検査との関係

厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」では、ダクトの変形、破損、腐食、接続部からの空気漏れなどの確認方法が示されています。

また、必要に応じてダクト内静圧を測定し、設計値との違いを確認する方法も示されています。

これは、圧力損失や流量の変化を把握するための実務上の重要な確認方法です。

ただし、どの検査項目や法的義務が適用されるかは、対象設備と関係規則によって判断する必要があります。

17. 経験者が注意したい8つのポイント

① 直管とエルボの損失を混同しない

直管の摩擦圧力損失と、エルボなどの局部圧力損失では、使用する係数が異なります。

② 局部損失係数を無条件に使用しない

係数が、対象継手の形状や流量条件に合っているか確認します。

③ 相当直管長を使用した場合に二重計上しない

エルボの損失を相当直管長に換算した場合、同じエルボの局部損失をさらに加えてはいけません。

④ 合流部では流量比と基準速度圧を確認する

合流部の損失係数は、合流角度だけでは決まりません。

特に基準となる速度圧を取り違えないことが重要です。

⑤ 枝ダクトの圧力損失を単純に合計しない

並列する枝ダクトは、直列のダクトとは異なります。

各枝の流量と圧力条件を整合させる必要があります。

⑥ 静圧の変化をそのまま圧力損失として扱わない

ダクトの断面積が変化すると、速度圧と静圧の配分が変わる場合があります。

全圧との関係を確認する必要があります。

⑦ 計算風量と実際の運転風量を区別する

圧力損失を計算するときには、各区間の風量を仮定しています。

しかし、実際の風量は排風機の性能と系統抵抗によって決まります。

⑧ 圧力損失の合計だけで排風機を選定しない

排風機の必要静圧・全圧、運転点、排気口条件などを確認する必要があります。

18. 現場で使える圧力損失計算チェックリスト

分類確認項目
設計条件必要排風量、空気密度、対象物質
系統フード数、枝ダクト数、合流位置
直管内径、長さ、内面粗さ、管摩擦係数
エルボ個数、角度、曲率半径、損失係数
合流部合流角度、断面積比、流量比
速度圧各区間の風速と基準速度圧
計算方法局部損失係数法または相当直管長法
枝ダクト各枝の損失と圧力バランス
主管合流後の排風量、速度圧、損失
その他の損失フード、ダンパー、空気清浄装置、排気口など
排風機必要風量、必要圧力、運転点
性能確認設計値と実測値、制御風速、捕捉状況
保全粉じん堆積、腐食、変形、空気漏れ、清掃性

よくある質問

Q1. 直管の圧力損失は、ダクトが長いほど大きくなりますか?

同じ内径、風量、空気密度、管摩擦係数であれば、直管摩擦圧力損失は長さに比例します。

Q2. エルボ1個の圧力損失は何Paですか?

一定ではありません。

エルボの形状、風速、損失係数などによって異なります。

Q3. エルボの損失を直管長さへ換算できますか?

できます。

相当直管長法を使用します。ただし、同じ損失を係数法と二重に加算しないように注意します。

Q4. 枝ダクトの圧力損失は合計しますか?

並列する枝ダクトの損失を、そのまま合計することはできません。

各枝の損失を計算し、合流点で圧力条件を整合させたうえで、共通する主管の損失を計算します。

Q5. 合流部の圧力損失は0.5などの一定値で計算できますか?

合流部の損失係数は、形状や流量比などによって変わります。

したがって、一律の値を使用することは適切ではありません。

Q6. 静圧の差が圧力損失になりますか?

同じ断面積で平均風速が変わらず、高さの影響などを無視できる条件では、静圧差から全圧損失を求められる場合があります。

しかし、異径部などで速度圧が変化する場合には、静圧差だけでは正しく評価できません。

Q7. 排風機の静圧は、計算した圧力損失の合計と同じですか?

必ずしも同じではありません。

排風機の静圧と全圧、速度圧、系統の境界条件などを整理する必要があります。

まとめ|圧力損失の計算は、流路を整理することから始まる

局所排気装置の圧力損失を求めるには、まず空気が通過する経路を整理する必要があります。

直管の摩擦圧力損失は、ダルシー・ワイスバッハ式によって計算できます。

エルボなどの局部圧力損失は、局部損失係数と速度圧から計算します。

また、エルボの損失を相当直管長に換算して計算することもできます。

一方、複数の枝ダクトが存在する場合には、それぞれの損失を単純に加算することはできません。

各枝の流量と圧力条件を整合させる必要があります。

そして、最終的な排風機の選定では、フード、ダクト、合流部、空気清浄装置、排気口などを含む系統全体の条件を検討する必要があります。

局所排気装置の圧力損失計算で最も重要なのは、式を覚えることだけではありません。実際のダクト系統を正しく整理し、適切な係数を使用して、空気が通る経路ごとに損失を評価することです。

この考え方を理解できれば、局所排気装置の新設や改造だけでなく、吸引能力が不足した既設設備の原因調査にも応用できます。

次回は、今回求めた圧力損失をもとに、排風機の必要静圧・必要全圧を整理し、性能曲線から排風機を選定する方法を解説します。

主な参考資料

  1. 『やさしい作業環境改善技術』第10章「ダクトの設計」(特に第11節「ダクト系の配置」、第13節「ベンド、合流、取り合わせ」)
  2. e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」
  3. 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について
  4. 米国エネルギー省「A Plug-and-Play Duct System Evaluation」
  5. 米国環境保護庁「Air Pollution Engineering Manual」
  6. 米国OSHA「OSHA Technical Manual, Section III, Chapter 3:Ventilation Investigation」

※損失係数、管摩擦係数、フード入口損失、空気清浄装置の損失は、計算方法を説明するための仮定値です。実際の設備設計では、使用する継手や機器に対応した係数・性能資料を確認する必要があります。

※海外資料は技術的参考情報です。日本国内の法的義務を示すものではありません。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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