【第11回】局所排気装置の必要排風量の計算方法|制御風速と計算例を解説

必要排風量と制御風速の計算|囲い式・外付け式フードの計算方法を基礎から解説

局所排気装置を設計するとき、「必要排風量を計算する」という作業があります。

必要排風量とは、有害物質を適切に捕捉するために、フードからどれだけの空気を吸い込む必要があるかを表すものです。

しかし、初めて局所排気装置を設計する人にとっては、次のような疑問が生じるのではないでしょうか。

「必要排風量はどのように計算するのか」

「制御風速とは何なのか」

「フードの開口面積に風速を掛ければよいのか」

「囲い式と外付け式で計算方法は違うのか」

これらは、局所排気装置の設計を理解するうえで重要な疑問です。

例えば、開口面積が同じ2つのフードでも、一方が囲い式、もう一方が外付け式であれば、必要排風量が大きく異なる場合があります。

また、外付け式フードでは、発散源との距離が少し変わるだけで、必要排風量が大きく増加することがあります。

これは、フードの種類によって空気の吸い込み方が異なるためです。

この記事では、制御風速と必要排風量の意味を整理したうえで、囲い式フードと外付け式フードの計算方法を、具体的な数値例を使って解説します。

さらに、計算した排風量を実際の設備設計へつなげる方法と、現場で性能を確認するときの注意点まで説明します。

目次

1. 必要排風量とは?最初に風量と風速の違いを理解する

必要排風量の計算に入る前に、「風量」と「風速」の違いを理解しましょう。

どちらも局所排気装置では頻繁に使用する用語ですが、意味は異なります。

風量とは?

風量とは、一定時間内に流れる空気の体積を表すものです。

例えば、排風量が12 m³/minであれば、1分間に12 m³の空気が排出されることを意味します。

風量には、一般に次のような単位が使われます。

  • m³/s:1秒当たりの空気量
  • m³/min:1分当たりの空気量
  • m³/h:1時間当たりの空気量

局所排気装置の計算では、m³/minがよく使われます。

風速とは?

風速とは、空気が移動する速さのことです。

例えば、風速0.5 m/sは、空気が1秒間に0.5 m移動する速さに相当します。

風速の単位は、一般にm/sです。

ただし、実際の空気の流れは三次元的であり、位置によって速さも方向も異なる場合があります。

風量と風速の関係

例えば、断面積1 m²のダクトを、断面に垂直な方向へ、平均風速1 m/sで空気が流れているとします。

この場合、1秒間に通過する空気量は、

1 m² × 1 m/s = 1 m³/s

となります。

1分間に換算すると、

1 × 60 = 60 m³/min

です。

この関係を式で表すと、次のようになります。

Q = 60 × A × V

記号意味単位
Q風量m³/min
A空気が通過する断面積m²
V断面に垂直な平均風速m/s

この式は、局所排気装置の設計で何度も使用する基本式です。

ただし、ここで一つ注意が必要です。

この式に代入する風速は、風量を求めようとする断面における平均風速です。

外付け式フードから離れた発散源の位置で測定した風速を、そのままフードの開口面積に掛けても、一般に排風量は求められません。

この違いは、後ほど詳しく説明します。

2. 制御風速とは?何を制御するための風速なのか

次に、制御風速について説明します。

制御風速とは、有害物質を適切に捕捉するため、所定の位置に確保する吸引気流の速度です。

局所排気装置では、フードへ向かう気流によって、有害物質が作業場へ拡散することを抑えます。

そのため、発散源の状態に応じた吸引気流が必要になります。

例えば、有機溶剤を使用する作業であれば、発散した蒸気をフードへ取り込む必要があります。

また、粉じんを発生する作業であれば、発散した粒子が周囲へ広がらないようにする必要があります。

ただし、有害物質の発散方向や運動速度が異なるため、どの作業でも同じ風速が必要になるわけではありません。

制御風速はフードの種類によって確認位置が異なる

ここが非常に重要です。

日本の有機溶剤中毒予防規則では、囲い式フードと外付け式フードで、制御風速の確認位置が異なります。

囲い式フード

フードの開口面における最小風速を制御風速とします。

外付け式フード

有機溶剤蒸気を吸引しようとする範囲内で、フードの開口面から最も離れた作業位置の風速を制御風速とします。

つまり、同じ「制御風速」という言葉でも、フードの種類によって対象となる場所が違います。

例えば、囲い式フードでは開口面の風速分布が重要になります。

一方、外付け式フードでは、発散源がフードからどれだけ離れているかが重要になります。

この違いを理解しないまま計算すると、必要排風量を誤る可能性があります。

3. 日本の法令では制御風速がどのように定められているのか?

局所排気装置の制御風速は、対象物質や適用される規則によって異なります。

ここでは、有機溶剤中毒予防規則を例に説明します。

有機溶剤中毒予防規則第16条

同規則第16条第1項では、対象となる局所排気装置について、フード形式に応じた制御風速が定められています。

フード形式制御風速
囲い式フード0.4 m/s
外付け式・側方吸引型0.5 m/s
外付け式・下方吸引型0.5 m/s
外付け式・上方吸引型1.0 m/s

ここでいう制御風速は、同規則に定められた位置で確認する値です。

また、同条では、局所排気装置のすべてのフードを開放した場合の制御風速であることも規定されています。

複数のフードを一台の排風機に接続する場合には、この点にも注意する必要があります。

なお、第16条第2項には一定の例外規定があります。

また、第18条には、対象となる局所排気装置を所定の制御風速で稼働させる義務が規定されています。さらに、一定の要件を満たした場合の特例制度も存在します。

したがって、単に第16条の表だけを見て、すべての作業に同じ要求があると判断してはいけません。

特定化学物質・粉じんなどでは要求事項が異なる

特定化学物質障害予防規則では、対象物質によって制御風速による性能要件と、抑制濃度による性能要件が区別されています。

制御風速についても、ガス状と粒子状などで異なる値が定められている場合があります。

粉じん障害防止規則でも、粉じん発生源の種類やフード形式によって制御風速が異なります。

また、研削盤など回転体を有する機械では、一般的な粉じん作業と異なる規定があります。

一方、鉛中毒予防規則など、所定の抑制濃度を満たす能力が要求される場合には、法令の性能要件と設計計算に使用する風速を区別する必要があります。

必要排風量の計算では、最初に適用法令と性能要件を確認することが重要です。

なお、法令上の制御風速を満たすことは重要ですが、それだけで実作業におけるばく露が十分に低減されていると保証されるわけではありません。

発散条件や外乱気流、作業者の動作なども確認する必要があります。

4. 必要排風量を計算する前に何を決めるのか?

ここまで説明したように、必要排風量は制御風速だけでは決まりません。

まず、次の条件を明確にする必要があります。

確認項目主な内容
対象物質有機溶剤、特定化学物質、粉じんなど
適用法令性能要件、設置条件、例外規定
フード形式囲い式、外付け式、レシーバー式など
発散源大きさ、位置、発散方向、発散速度
開口部横幅、高さ、直径、開口面積
発散源との距離フード開口面からの距離
作業者の位置呼吸域、作業範囲
外乱気流空調、扉、給気など
フード周囲フランジ、側板、壁、作業台
複数フード同時使用条件、分岐、系統構成

これらの情報は、前の記事で説明した現場調査によって把握します。

例えば、外付け式フードであれば、開口面積だけでなく、フードから最も離れる作業位置が重要になります。

また、囲い式フードであれば、開口面積と開口面の風速分布が重要になります。

現場調査を行わずに、計算式へ適当な数値を代入することは避けなければなりません。

5. 囲い式フードの必要排風量を計算する

まず、囲い式フードの計算方法から説明します。

囲い式フードは、発散源を囲いの内部に配置し、開口部から空気を流入させる方式です。

この場合、開口部から流入する空気量を求めることが基本になります。

囲い式フードの基本式

開口部からのみ空気が流入し、流量が定常的であると仮定すると、次の式が成立します。

Q = 60 × A × Vavg

ここで、

  • Q:排風量(m³/min)
  • A:開口面積(m²)
  • Vavg:開口面の平均流入風速(m/s)

です。

例えば、開口面積が0.24 m²、平均流入風速が0.50 m/sであれば、

Q = 60 × 0.24 × 0.50

Q = 7.20 m³/min

となります。

しかし、ここで問題があります。

有機溶剤中毒予防規則の囲い式フードでは、制御風速は開口面の最小風速です。

一方、風量計算に使用するのは平均風速です。

この2つは必ずしも同じではありません。

開口面の風速分布を考慮する

例えば、フードの開口面を複数の位置に分けて風速を測定したところ、次のような値になったとします。

測定位置風速
A0.40 m/s
B0.45 m/s
C0.55 m/s
D0.60 m/s

この4点を等面積区域の代表測定値と仮定すると、単純平均は、

(0.40 + 0.45 + 0.55 + 0.60) ÷ 4

平均風速 = 0.50 m/s

です。

一方、最小風速は、

最小風速 = 0.40 m/s

となります。

つまり、平均風速と最小風速は異なります。

この違いを考慮せず、最小風速をそのまま平均風速として計算すると、排風量を過小評価する可能性があります。

※この4点測定は、平均風速と最小風速の違いを説明するための例であり、法令上の正式な測定点数を示すものではありません。

6. 補正係数kを用いた囲い式フードの計算

開口面で風速にむらがある場合、平均風速と最小風速の比を使って、必要排風量を計算する方法があります。

補正係数kとは?

補正係数kは、次のように定義します。

k = Vavg ÷ Vmin

  • Vavg:開口面の平均風速
  • Vmin:開口面の最小風速

例えば、

Vavg = 0.50 m/s

Vmin = 0.40 m/s

であれば、

k = 0.50 ÷ 0.40

k = 1.25

となります。

開口面全体の風速が完全に均一であれば、kは1になります。

一方、風速のむらが大きい場合には、kは1より大きくなります。

囲い式フードの必要排風量

先ほどの基本式へ補正係数を組み込むと、次の式になります。

Q = 60 × A × Vmin × k

これが、開口面の風速分布を考慮した囲い式フードの必要排風量の計算式です。

ただし、補正係数kは、すべてのフードに共通する定数ではありません。

設計に使用する場合には、フードの形状、ダクト接続位置、内部構造、過去の測定結果などを考慮して設定する必要があります。

また、開口部以外のすき間から流入する空気がある場合は、その流量も別途考慮する必要があります。

7. 計算例①|囲い式フードの必要排風量を求める

ここでは、有機溶剤を使用する作業を、囲い式フードの内部で行う場合を想定します。

前面には、作業者が手や材料を出し入れするための開口部があります。

計算条件

項目設定値
開口部の横幅600 mm
開口部の高さ400 mm
設計上の最小風速0.40 m/s
風速分布の補正係数k1.25

※本事例では、有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則となる囲い式フードの制御風速を使用します。補正係数は説明用の仮定値です。

ステップ1:単位をmへ換算する

横幅600 mmは、

600 ÷ 1,000 = 0.60 m

高さ400 mmは、

400 ÷ 1,000 = 0.40 m

となります。

ステップ2:開口面積を求める

A = 0.60 × 0.40

A = 0.24 m²

ステップ3:必要排風量を求める

Q = 60 × A × Vmin × k

Q = 60 × 0.24 × 0.40 × 1.25

Q = 7.20 m³/min

となります。

計算結果をどう考えるか?

この条件では、開口面において最小風速0.40 m/sを確保するための計算上の排風量は7.20 m³/minです。

ただし、この値は、開口部以外からの流入がなく、補正係数1.25が成立する場合の計算結果です。

また、有害物質の発散状況、作業者の動作、外乱気流などによっては、より大きな排風量や構造の改善が必要になる場合があります。

補正係数が変わるとどうなる?

例えば、フード内部の構造を改善し、補正係数を1.25から1.10に小さくできたと仮定します。

この場合、

Q = 60 × 0.24 × 0.40 × 1.10

Q = 6.336 m³/min

となります。

比較すると、次のようになります。

条件k計算上の必要排風量
改善前1.257.20 m³/min
改善後1.106.336 m³/min

このように、風速分布を均一にできれば、最小風速を確保するために必要な平均風速を小さくできる可能性があります。

ただし、改善後のk = 1.10は仮定値であり、実際の設備で改善できることを保証するものではありません。

8. 外付け式フードの必要排風量はなぜ計算方法が違うのか?

次に、外付け式フードについて説明します。

囲い式フードでは、開口部を通過する空気の量から、比較的簡単に排風量を計算できました。

しかし、外付け式フードでは、同じ方法を使用することはできません。

理由は、発散源がフードの開口面の外側にあるためです。

発散源位置の風速は開口面風速より小さくなる

例えば、側方吸引型の外付け式フードがあるとします。

フードの開口面では、毎秒数mの速さで空気が流れ込んでいるかもしれません。

しかし、フードから0.20 m離れた発散源の位置では、吸引風速が0.5 m/s程度になっている場合があります。

つまり、フードの開口面風速と、発散源位置の吸引風速は異なります。

そのため、外付け式フードでは、フードの形状や発散源との距離を考慮した計算式が必要になります。

外付け式フードの代表的な経験式

障害物のない空間に設けた、フランジのない単純な円形または一定の縦横比を持つ長方形フードでは、次の経験式が使われます。

Q = 60 × Vc × (10X² + A)

記号意味単位
Q計算上の必要排風量m³/min
Vc対象位置で確保する吸引風速m/s
Xフード開口面から対象位置までの距離m
Aフードの開口面積m²

この式は、Dalla Valleの研究に基づく代表的な経験式です。

囲い式フードの式と大きく異なるのは、10X²という距離に関係する項があることです。

距離Xが大きくなると、必要排風量が急速に増えることが分かります。

ただし、この式は、あらゆるフード形状に適用できるものではありません。

スロット型や壁・作業台に接したフード、囲い込みによって気流が制限されているフードなどでは、別の経験式や設計方法を検討する必要があります。

また、発散源がフードの中心軸から大きく外れている場合などには、単純な式だけで吸引気流の分布を十分に評価できないことがあります。

9. 計算例②|外付け式フードの必要排風量を求める

ここでは、有機溶剤を使用する作業台に、側方吸引型の外付け式フードを設置する場合を想定します。

計算条件

項目設定値
フード形式単純な側方吸引型
フランジなし
開口部の横幅200 mm
開口部の高さ200 mm
対象位置までの距離X0.20 m
対象位置で確保する風速Vc0.50 m/s

※経験式の適用条件を満たす単純なフードを想定しています。実作業における有効性や法令適合を保証する条件ではありません。

ステップ1:開口面積を求める

A = 0.20 × 0.20

A = 0.04 m²

ステップ2:必要排風量を求める

Q = 60 × Vc × (10X² + A)

Q = 60 × 0.50 × (10 × 0.20² + 0.04)

Q = 30 × (0.40 + 0.04)

Q = 13.2 m³/min

となります。

囲い式の計算式を使用するとどうなる?

ここで、誤った計算例を考えてみましょう。

開口面積0.04 m²に、対象位置の風速0.5 m/sをそのまま掛けると、

Q = 60 × 0.04 × 0.5

Q = 1.2 m³/min

となります。

しかし、これは外付け式フードの必要排風量として適切な計算ではありません。

なぜなら、0.5 m/sは発散源に相当する対象位置での風速であり、フードの開口面における平均風速ではないためです。

外付け式フードでは、離れた対象位置まで吸引気流を形成するための排風量が必要になります。

今回の条件に経験式を適用すると、13.2 m³/minとなります。

風速を測定・設定した位置と、風量を計算する断面を取り違えないことが重要です。

10. フードと発散源の距離が変わると必要排風量はどうなる?

先ほどの外付け式フードについて、距離だけを変更した場合を考えてみましょう。

開口面積0.04 m²、対象位置で確保する風速0.5 m/sは同じとします。

対象位置までの距離計算上の必要排風量
0.10 m4.2 m³/min
0.20 m13.2 m³/min
0.30 m28.2 m³/min

この計算では、距離が0.10 mから0.30 mへ増えると、必要排風量は約6.7倍になります。

第8記事でも説明したように、外付け式フードでは、発散源との距離が必要排風量へ大きな影響を与えます。

ただし、この結果は今回の経験式と仮定条件によるものです。

すべての外付け式フードで、距離が3倍になると必ず6.7倍の風量が必要になるわけではありません。

なぜフードを近づけることが重要なのか?

必要排風量を大きくすると、排風機やダクトなどの設備が大型化する場合があります。

さらに、排風機の消費電力や空調負荷などにも影響することがあります。

そのため、外付け式フードでは、まず発散源へ近づけられないか検討することが重要です。

しかし、作業者の呼吸域を汚染気流が通るような位置にフードを設置してはいけません。

必要な捕捉性能と作業性を両立させながら、フードの位置を検討する必要があります。

11. フランジ付きフードでは計算式が変わる

外付け式フードの開口部の周囲へ、適切なフランジを設けると、空気の回り込みを減らせる場合があります。

そのため、フランジのない単純なフードと比べて、同じ対象位置で同じ吸引風速を確保するための排風量を小さくできる可能性があります。

代表的な経験式は、次のとおりです。

Q = 60 × 0.75 × Vc × (10X² + A)

先ほどの条件をそのまま使用すると、

Q = 60 × 0.75 × 0.50 × (10 × 0.20² + 0.04)

Q = 9.9 m³/min

となります。

比較すると、

条件計算上の必要排風量
フランジなし13.2 m³/min
フランジあり9.9 m³/min

となります。

代表的な経験式では、25%の差になります。

ただし、すべてのフードへフランジを設置すれば25%削減できるという意味ではありません。

フランジの形状や寸法、設置条件などを確認する必要があります。

また、フランジの設置によって実際の流量や圧力損失が変化する場合には、排風機の運転条件も再検討する必要があります。

12. 囲い式と外付け式では、なぜ必要排風量が大きく違うのか?

ここまでの計算を整理すると、フード形式によって計算方法が異なることが分かります。

項目囲い式フード外付け式フード
発散源の位置囲いの内部開口面の外側
主な計算条件開口面積、最小風速、風速分布開口面積、対象位置の風速、距離、形状
代表的な式Q = 60 × A × Vmin × kQ = 60 × Vc × (10X² + A)
特に注意すること開口面の風速のむら発散源までの距離
計算式の制約他の流入口や内部気流を考慮する経験式の適用条件を確認する

囲い式フードは、発散源を囲い、開口部から流入する気流を利用して有害物質の拡散を抑えます。

一方、外付け式フードは、開放された空間にある発散源まで吸引気流を形成しなければなりません。

この違いによって、必要排風量に差が生じます。

ただし、フード形式だけで必要排風量が決まるわけではありません。

発散源の位置、作業方法、開口寸法、外乱気流などによって適切な設計条件は異なります。

また、レシーバー式フードや特殊形状のフードでは、今回紹介した式以外の方法が必要になる場合があります。

13. 計算した排風量をそのまま排風機の仕様にしてよいのか?

ここは、設計実務で特に注意したい部分です。

例えば、計算上の必要排風量が13.2 m³/minだったとします。

この場合、単に「13.2 m³/minの排風機を購入すればよい」と考えることは適切ではありません。

なぜなら、排風機が実際に送ることのできる風量は、接続するダクトや空気清浄装置などの圧力損失によって変わるためです。

排風機の選定では風量と圧力が必要

局所排気装置の空気は、一般に次のような経路を流れます。

フード → ダクト → 必要な空気清浄装置 → 排風機 → 排気口

この途中では、さまざまな圧力損失が発生します。

例えば、

  • フードへの流入損失
  • ダクトの摩擦損失
  • エルボなどの局部損失
  • 空気清浄装置の圧力損失
  • 排気口などでの損失

です。

排風機は、これらの損失を考慮した運転条件で、必要な風量を確保できるものを選定する必要があります。

したがって、必要排風量の計算は、排風機選定の出発点であり、最終段階ではありません。

ダクト内風速も確認する

粉じんやミストを含む空気を搬送する場合には、ダクト内部での堆積や付着にも注意する必要があります。

例えば、フードの必要排風量を小さくできたとしても、ダクト径が変わらなければ、ダクト内風速が低下することがあります。

その結果、粉じんが堆積しやすくなる場合があります。

したがって、必要排風量を決めた後には、ダクト径、搬送速度、圧力損失なども合わせて検討する必要があります。

14. 複数のフードがある場合は排風量を合計するのか?

例えば、1台の排風機に、2つのフードを接続する場合を考えます。

それぞれの必要排風量が、次のようになったとします。

  • フードA:7.2 m³/min
  • フードB:13.2 m³/min

この2つを同時に使用する場合、フードに必要な流量の合計は、

Q = 7.2 + 13.2

Q = 20.4 m³/min

となります。

ただし、これだけで排風機を選定できるわけではありません。

分岐ごとの圧力損失が違う

例えば、フードAのダクトは短く、フードBのダクトは長いとします。

この場合、各分岐の圧力損失が異なる可能性があります。

共通の排風機で吸引すると、抵抗の小さい分岐に空気が多く流れ、抵抗の大きい分岐では必要風量が確保できない場合があります。

したがって、各分岐の流量配分と圧力損失を検討する必要があります。

また、同時使用するフードの条件を確認する必要があります。

所定の法令で、すべてのフードを開放した場合の制御風速が要求されている場合には、その条件を満たす設計が必要です。

なお、複数分岐の総流量は加算しますが、異なる並列分岐の圧力損失を単純に足し合わせるわけではありません。

各分岐と共通ダクトの流れを整理し、系統全体の圧力条件を検討します。

15. 必要排風量の計算で経験者が注意したい7つのポイント

① 法令上の制御風速をすべての物質に適用しない

有機溶剤、特定化学物質、粉じんなどでは、適用される規則や性能要件が異なります。

また、法令上の性能要件が抑制濃度である場合には、設計で使用する風速と法的要求を区別する必要があります。

② 囲い式フードでは平均風速と最小風速を混同しない

風量を求める基本式では平均風速を使用します。

一方、所定の囲い式フードの法令上の制御風速は、開口面の最小風速です。

したがって、風速分布のむらを考慮せずに計算すると、必要排風量を過小評価する可能性があります。

③ 外付け式フードでは距離を正確に測定する

外付け式フードでは、発散源とフードの距離が必要排風量に大きく影響します。

通常の作業位置だけでなく、作業範囲内で最も離れた位置を確認する必要があります。

④ フードの形式に適した経験式を選ぶ

円形や長方形の単純な外付け式フードに使用する式を、すべてのスロット型フードへそのまま適用してはいけません。

また、壁や作業台が気流の流入を制限している場合には、自由空間に設けたフードと気流条件が異なります。

⑤ 外乱気流を無視しない

計算上は必要な吸引風速が得られる条件でも、空調や扉などによる気流が強い場合には、捕捉性能が不足することがあります。

排風量を増やす前に、外乱気流を減らせないか検討することが重要です。

⑥ 必要排風量を減らすことだけを目的にしない

必要排風量を小さくすると、省エネルギーにつながる可能性があります。

しかし、排風量を減らすことで捕捉性能が低下したり、粉じんがダクト内に堆積したりする場合には、適切な改善とはいえません。

⑦ 計算値と実測値を区別する

計算で求めた必要排風量は、設定した条件に基づく値です。

実際の設備では、ダクトの圧力損失や排風機の性能、給気条件などによって風量が変わります。

したがって、計算値だけでなく、設置後の性能確認が重要です。

16. 現場で必要排風量と制御風速を確認する方法

局所排気装置を設置した後には、計算で想定した性能が得られているかを確認する必要があります。

囲い式フードの場合

囲い式フードでは、開口面における風速分布を確認します。

特に、法令上の制御風速が開口面の最小風速とされている場合には、平均風速だけではなく、最小風速を確認する必要があります。

開口面のどの位置で測定するかについては、厚生労働省の定期自主検査指針など、適用する検査方法を確認します。

外付け式フードの場合

外付け式フードでは、法令で定められた対象作業位置の風速を確認します。

例えば、有機溶剤中毒予防規則の対象となる外付け式フードでは、吸引範囲内で開口面から最も離れた作業位置の風速が重要になります。

フードの開口面だけで風速を測定しても、対象位置における制御風速を確認したことにはなりません。

ダクト内の風量測定

必要に応じて、ダクト内部の風速を測定し、風量を求めることもあります。

この場合には、適切な測定位置や測定方法によって、ダクト断面の平均風速を把握する必要があります。

例えば、ダクト内の平均風速が5.0 m/s、断面積が0.04 m²であれば、

Q = 60 × 0.04 × 5.0

Q = 12 m³/min

となります。

ただし、実際のダクト内では風速分布が一様とは限りません。

曲がり部や分岐部の近くでは偏流が発生する場合があるため、測定位置と測定方法に注意が必要です。

捕捉性能も確認する

風速や排風量が計算どおりでも、実作業で有害物質が漏れ出している場合には、十分な対策とはいえません。

必要に応じて、適切な気流の可視化や、作業環境測定、個人ばく露測定などを検討します。

法令上の測定・評価義務と、設備改善のために任意で行う評価は区別する必要があります。

17. 実務で使える必要排風量の計算チェックリスト

分類確認項目確認内容
法令適用法令対象物質、作業、性能要件
法令制御風速該当する規定、例外の有無
設備フード形式囲い式・外付け式など
寸法開口面積m²
囲い式最小風速m/s
囲い式補正係数設定根拠
外付け式発散源との距離m
外付け式対象位置の風速m/s
外付け式フランジ形状、寸法、設置状態
外付け式経験式適用条件との整合
共通外乱気流方向、風速、発生条件
共通計算風量m³/min
共通同時使用条件フードの開放状態
ダクトダクト径・経路内径、長さ、曲がり
ダクト搬送速度対象物質との適合性
排風機必要静圧系統の圧力損失
給気給気条件給気量、給気位置
性能確認制御風速所定位置での確認
性能確認捕捉性能実際の作業条件での確認

このチェックリストは、設計実務のために整理したものであり、すべての局所排気装置に共通する法定様式ではありません。

よくある質問

Q1. 制御風速が分かれば必要排風量を計算できますか?

制御風速だけでは計算できません。

囲い式フードでは開口面積や風速分布、外付け式フードでは開口面積、フード形状、対象位置までの距離などが必要になります。

Q2. 囲い式フードはQ = A × Vで計算できますか?

開口面の平均流入風速をVとする場合には、単位換算を含めてQ = 60 × A × Vで計算できます。

ただし、制御風速が開口面の最小風速である場合には、風速分布を考慮する必要があります。

また、開口部以外から流入する空気がある場合には、その風量も考慮します。

Q3. 外付け式フードで開口面積×制御風速を使ってはいけないのですか?

制御風速が発散源側の対象位置での風速として定められている場合には、開口面積と単純に掛け合わせても、必要排風量を求めることはできません。

フード形状や発散源との距離に対応した計算方法が必要です。

Q4. 計算した排風量より少し大きな排風機を選べばよいですか?

単に風量だけを大きくした排風機を選定する方法は適切ではありません。

系統の圧力損失を計算し、必要な風量と静圧を満たす運転点を確認する必要があります。

Q5. 排風量が足りない場合は排風機を大型化すればよいですか?

排風機能力の不足が原因であれば、大型化が必要になる場合があります。

しかし、フードの位置が遠すぎたり、外乱気流が強かったりする場合には、フードの配置や構造を改善した方が合理的なことがあります。

Q6. 法定制御風速を満たしていれば、ばく露防止は十分ですか?

必ずしも十分とは限りません。

制御風速は重要な法令上の性能要件ですが、実際の捕捉性能は、発散条件や外乱気流、作業者の位置などによって変化する場合があります。

法令適合と実作業でのばく露低減効果を区別して確認する必要があります。

Q7. 補正係数kはどのように設定すればよいですか?

開口面の平均風速と最小風速の比として定義できます。

ただし、設計段階では実設備の測定値がないため、フード形状、内部構造、過去の類似設備のデータなどに基づいて推定することになります。

今回の計算例の1.25などを、根拠なく実設計へ適用することは避けてください。

まとめ|必要排風量はフード形式と制御風速の位置関係から求める

局所排気装置の必要排風量を計算するときには、まず風量と風速の違いを理解する必要があります。

風量は単位時間当たりに流れる空気の体積であり、風速は空気が移動する速さです。

また、制御風速は、有害物質を捕捉するために所定の位置で確保する吸引気流の速度です。

囲い式フードでは、開口面積と開口面の風速分布から必要排風量を計算します。

一方、外付け式フードでは、フードの形状や発散源までの距離などを考慮する必要があります。

代表的な式を整理すると、次のようになります。

囲い式フード

Q = 60 × A × Vmin × k

単純な外付け式フード

Q = 60 × Vc × (10X² + A)

ただし、これらは所定の条件を仮定した計算式です。

実際の設備では、適用法令、作業方法、外乱気流、ダクトの圧力損失、排風機の性能なども考慮する必要があります。

また、計算した排風量が得られていても、有害物質が適切に捕捉できているとは限りません。

重要なのは、計算式に数値を代入すること自体ではなく、なぜその風速と排風量が必要なのかを理解し、実際の作業条件で必要な捕捉性能を確保することです。

この考え方を身につけることで、局所排気装置の新設だけでなく、既設設備の性能不足や吸引不良の原因調査にも役立てることができます。

次回以降は、今回の計算方法を基礎にして、フードの形式や設置条件ごとの計算をさらに掘り下げていきます。

主な参考資料

※海外のEPA・OSHA資料は、捕捉気流や経験式の理解を補足する技術参考資料です。日本国内の法的義務を示すものではありません。

※本記事の数値計算は、計算方法を理解するための仮定条件による例です。実際の設備仕様や法令適合を保証するものではありません。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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