囲い式フードの必要排風量を計算する|開口面積と風速分布の実践
囲い式フードの必要排風量は、開口面積と風速から計算できます。
しかし、単純に開口面積へ制御風速を掛ければ、正しい必要排風量が求められるのでしょうか。
実際には、それほど単純ではありません。
例えば、囲い式フードの開口面で風速を測定したところ、最も遅い場所では0.40 m/s、最も速い場所では0.60 m/sだったとします。
この場合、どの風速を使って排風量を計算すればよいのでしょうか。
また、前面の開口部以外に、材料を投入するための開口部や、扉のすき間がある場合には、どのように計算すればよいのでしょうか。
こうした疑問を解決するためには、開口面積、平均風速、最小風速、風速分布の関係を理解する必要があります。
今回は、囲い式フードの必要排風量を計算する方法を、実際の数値を使って順番に解説します。
さらに、風速の測定結果から補正係数を求める方法、複数の開口部がある場合の計算方法、設計した設備の性能を確認するときの注意点まで説明します。
1. 囲い式フードの必要排風量は何によって決まるのか?
囲い式フードは、有害物質の発散源を囲いの内部に置き、開口部から空気を流入させることで、有害物質が周囲へ漏れ出すことを抑える方式です。
例えば、粉体原料を投入する作業では、発散源の周囲を囲い、前面だけに作業用の開口部を設けることがあります。
排風機を運転すると、前面の開口部から内部へ向かう気流が形成されます。
この気流によって、粉じんや有害蒸気が作業場側へ流れ出すことを抑えます。
必要排風量を考える際に重要なのは、主に次の3つです。
- 開口面積はどれくらいあるか。
- 開口面でどれくらいの流入風速を確保するか。
- 開口面全体で風速がどの程度均一になっているか。
開口面積が大きいほど必要排風量は増える
例えば、同じ平均流入風速を維持する場合、開口面積が2倍になれば、開口部から流入する空気量も2倍になります。
反対に、開口面積を半分にできれば、同じ平均流入風速に対応する空気量は半分になります。
ただし、開口部を小さくすると、作業者の動作や内部の気流が変わる可能性があります。
そのため、単純に開口部を小さくすればよいわけではありません。
開口面のすべての場所で風速は同じではない
例えば、フードの背面上部に排気ダクトが接続されている場合、ダクトに近い位置では吸引が強く、離れた位置では弱くなる場合があります。
このような風速のむらを考慮することが、囲い式フードの排風量計算では重要です。

2. 囲い式フードの必要排風量の基本式
最初に、風量、風速、開口面積の関係を確認しましょう。
開口部から空気が流入する場合、基本的には次の式を使用します。
Q = 60 × A × Vavg
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Q | 開口部からの流入風量 | m³/min |
| A | 開口面積 | m² |
| Vavg | 開口面に垂直な平均流入風速 | m/s |
| 60 | 秒から分への換算係数 | s/min |
例えば、開口面積が0.30 m²、平均流入風速が0.50 m/sの場合には、
Q = 60 × 0.30 × 0.50
Q = 9.0 m³/min
となります。
この計算では、開口部から毎分9.0 m³の空気が流入していることになります。
フード内部で空気の蓄積がなく、ほかに流入口や漏れがなければ、排気ダクトへ流れる風量も9.0 m³/minです。
なぜ平均風速を使用するのか?
実際の開口面では、各位置の風速が異なる場合があります。
例えば、開口面の一部では0.40 m/s、別の場所では0.60 m/sだったとします。
この場合、開口面の全体を通過する空気量は、それぞれの部分を通過する風量の合計になります。
そのため、開口面全体の平均流入風速を用いることで、風量を計算できるのです。
ただし、この関係で使用するのは、開口面に垂直な方向の風速成分です。
空気が開口面に対して斜めに流れている場合には、単に風速の大きさを平均しただけでは正確な風量にならないことがあります。
この点は、実際の測定・計算で注意すべき部分です。
3. 平均風速と最小風速は何が違うのか?
ここからは、囲い式フードの必要排風量を計算するうえで特に重要な内容です。
有機溶剤中毒予防規則第16条では、所定の囲い式フードについて、開口面における最小風速を制御風速として規定しています。
同条第1項の原則となる数値は、0.4 m/sです。
ただし、この数値は有機溶剤中毒予防規則の対象となる局所排気装置についてのものであり、すべての囲い式フードに共通するわけではありません。
また、同条第2項には一定の例外があります。
最小風速とは?
最小風速とは、対象とする開口面で確認した風速のうち、最も小さい風速のことです。
例えば、開口面の風速を複数の位置で測定し、次の結果が得られたとします。
| 測定位置 | 風速 |
|---|---|
| A | 0.40 m/s |
| B | 0.45 m/s |
| C | 0.55 m/s |
| D | 0.60 m/s |
この場合、最小風速は0.40 m/sです。
平均風速とは?
一方、これらの4つの測定点が同じ面積の区域を代表していると仮定すると、平均風速は次のようになります。
Vavg = (0.40 + 0.45 + 0.55 + 0.60) ÷ 4
Vavg = 0.50 m/s
つまり、
- 最小風速:0.40 m/s
- 平均風速:0.50 m/s
となります。
ここで、開口面全体の平均風速は、最小風速よりも大きいことが分かります。
もし、最小風速0.40 m/sをそのまま平均風速として計算すると、実際に必要となる風量を小さく見積もる可能性があります。
これを避けるために使用するのが、風速分布の補正係数です。
※この4点の例は、平均値と最小値の違いを理解するためのものです。法令に基づく定期自主検査の測定点数を示したものではありません。
4. 風速分布の補正係数kとは?
囲い式フードでは、開口面の風速が完全に均一になるとは限りません。
そのため、最小風速と平均風速の違いを考慮して必要排風量を求めます。
このときに用いるのが、補正係数kです。
補正係数kの定義
k = Vavg ÷ Vmin
- k:風速分布の補正係数(無次元)
- Vavg:開口面の平均流入風速(m/s)
- Vmin:開口面の最小流入風速(m/s)
例えば、平均風速0.50 m/s、最小風速0.40 m/sであれば、
k = 0.50 ÷ 0.40
k = 1.25
となります。
補正係数kは、開口面の風速がどの程度不均一になっているかを示す指標として利用できます。
kが1の場合
開口面全体で流入風速が完全に均一であれば、
Vavg = Vmin
となるため、
k = 1.0
です。
これは、風量計算上、最も無駄が少ない理想的な状態です。
kが大きい場合
例えば、最小風速が0.40 m/sのまま、平均風速が0.60 m/sであれば、
k = 0.60 ÷ 0.40
k = 1.50
となります。
この場合、開口面に風速のむらがあり、最小風速を確保するために大きな平均風速が必要になっていると考えられます。
ただし、kは風速分布の一つの指標であり、それだけでフードの捕捉性能全体を評価できるわけではありません。
5. 補正係数を用いた必要排風量の計算式
先ほど紹介した基本式は、
Q = 60 × A × Vavg
でした。
ここで、
Vavg = k × Vmin
ですから、式に代入すると、
Q = 60 × A × Vmin × k
となります。
これが、囲い式フードの風速分布を考慮した必要排風量の計算式です。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Q | 計算上の必要排風量 | m³/min |
| A | 開口面積 | m² |
| Vmin | 設計上確保する開口面の最小風速 | m/s |
| k | 平均風速と最小風速の比 | 無次元 |
この式では、開口面積A、必要な最小風速Vmin、補正係数kの3つを設定することで、必要排風量を計算します。
ただし、開口部以外から空気が流入する場合には、その風量も考慮する必要があります。
また、補正係数kを決めるときには根拠が必要です。
補正係数は、すべての囲い式フードで1.1や1.25と決まっているわけではありません。
提供された『やさしい作業環境改善技術』にも、補正係数を仮定した計算例や、実測によって風速分布のむらを確認した事例が紹介されています。
しかし、それらの値を、形状や条件が異なる設備にそのまま適用することは適切ではありません。
6. 計算例①|開口寸法から必要排風量を求める
ここでは、有機溶剤を取り扱う囲い式フードを想定して、必要排風量を計算します。
フードの前面に、横幅600 mm、高さ400 mmの開口部があるとします。
計算条件
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| 開口部の幅 | 600 mm |
| 開口部の高さ | 400 mm |
| 最小風速Vmin | 0.40 m/s |
| 補正係数k | 1.25 |
補正係数1.25は、説明のための仮定値です。
また、開口部以外からの流入はないものとします。
ステップ① 寸法をmへ換算する
幅600 mmは、
600 ÷ 1,000 = 0.60 m
高さ400 mmは、
400 ÷ 1,000 = 0.40 m
です。
ステップ② 開口面積を求める
A = 0.60 × 0.40
A = 0.24 m²
となります。
ステップ③ 必要排風量を求める
Q = 60 × A × Vmin × k
Q = 60 × 0.24 × 0.40 × 1.25
Q = 7.20 m³/min
となります。

この計算で分かるのは、設定した条件で最小風速0.40 m/sを確保するためには、7.20 m³/minの排風量が必要になるということです。
ただし、この値は設計計算上の値です。
実際の設備では、開口面の風速分布、作業による気流の変化、すき間からの流入などを確認する必要があります。
7. 実践例|16点の風速測定から補正係数を求める
ここからは、実際の測定結果を使って計算する方法を考えてみましょう。
厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」では、囲い式フードの制御風速を確認するために、開口面を等面積に分割して風速を測定する方法が示されています。
原則として、開口面を16以上の等面積部分に分割し、各部分の一辺を0.5 m以下として、その中心で風速を測定します。
なお、開口面が著しく小さい場合には、2以上の部分に分割する取扱いがあります。
ここでは、分かりやすい例として、600 mm × 400 mmの開口部を縦4区画、横4区画の16区画に分けます。
① 測定位置を決める
開口部の幅は600 mmです。
横方向に4等分すると、
600 ÷ 4 = 150 mm
となります。
また、高さは400 mmです。
縦方向に4等分すると、
400 ÷ 4 = 100 mm
となります。
つまり、1区画の寸法は150 mm × 100 mmです。
各区画の中心を測定点とします。
② 16点で風速を測定する
ここでは、次のような測定結果が得られたと仮定します。
| 位置 | 左① | ② | ③ | 右④ |
|---|---|---|---|---|
| 上段 | 0.40 | 0.45 | 0.48 | 0.52 |
| 2段目 | 0.43 | 0.47 | 0.52 | 0.57 |
| 3段目 | 0.45 | 0.49 | 0.54 | 0.60 |
| 下段 | 0.46 | 0.50 | 0.54 | 0.58 |
単位:m/s
※この表は説明用に作成した仮想データです。実際の設備の測定結果ではありません。
この測定結果では、開口面の左上付近の風速が最も小さく、右側で大きい傾向があります。

③ 平均風速を計算する
16点の測定値を合計すると、
合計 = 8.00 m/s
です。
測定点数は16点なので、
Vavg = 8.00 ÷ 16
Vavg = 0.50 m/s
となります。
この計算では、16区画が等面積で、それぞれの測定点が各区画の平均的な風速を代表しているものと仮定しています。
④ 最小風速を確認する
16点の測定値のうち、最も小さい値は、
Vmin = 0.40 m/s
です。
⑤ 補正係数を計算する
k = Vavg ÷ Vmin
k = 0.50 ÷ 0.40
k = 1.25
となります。
⑥ 風量を計算する
開口面積0.24 m²、平均風速0.50 m/sを使用すると、
Q = 60 × 0.24 × 0.50
Q = 7.20 m³/min
となります。
一方、最小風速と補正係数を使っても、
Q = 60 × 0.24 × 0.40 × 1.25
Q = 7.20 m³/min
となります。
両方の計算結果が一致しました。
この結果をどう評価するか?
今回の測定例では、最小風速が0.40 m/sです。
仮に有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則となる0.4 m/sが適用される設備であれば、測定値上はその値と一致しています。
ただし、実際の法令適合判断では、適切な測定方法、測定器の精度、測定時の運転条件、例外規定の適用なども確認する必要があります。
さらに、0.40 m/sという測定値には余裕がありません。
実際の運転中に風速が変動することを考えると、余裕のある性能を確保することを実務上検討する必要があります。
その余裕を一律に何%とするかは、今回の法令から直接決まるものではなく、設備条件に応じた設計判断です。
8. 16点測定では何に注意しなければならないのか?
ここまでの計算は、各区画の中心で測定した風速を利用しました。
しかし、実際の開口面の気流は、必ずしも区画内で均一ではありません。
そのため、測定結果を扱う際には注意が必要です。
注意① 測定した最小値と真の最小値は同じとは限らない
16点の測定結果で最小値が0.40 m/sだったとしても、測定点の間にさらに風速の低い場所が存在する可能性があります。
16点測定は、公的な検査指針に示された方法ですが、空間内のあらゆる点の風速を測定しているわけではありません。
例えば、フード開口部の隅や障害物の周囲に気流の偏りがある場合には、必要に応じて測定点を追加することが有用です。
注意② 風速の方向も確認する
風速計が示す風速の大きさと、開口面を通過する流入方向の風速成分は、厳密には異なります。
例えば、開口面に沿って横方向に強い風が流れていても、その空気がフード内部へ流入しているとは限りません。
風量を計算する場合には、開口面に対して垂直な流入風速成分が重要です。
実際の測定では、使用する風速計の特性にも注意する必要があります。
注意③ 測定時の作業条件を記録する
例えば、ドラフトチャンバーの前面サッシを開ける高さが異なると、開口面積が変わります。
また、粉体投入ブースでは、原料袋を持ち上げたときに気流が変化する可能性があります。
そのため、測定値だけでなく、どのような運転・作業条件で測定したのかを記録することが重要です。
注意④ 測定点数を機械的に16点と決めない
前述したとおり、厚生労働省の検査指針には、測定点の分割方法について条件があります。
大きなフードでは、各区画の一辺が0.5 m以下になるように分割数を増やす必要があります。
反対に、開口面が著しく小さい場合には、指針上の取扱いが異なります。
したがって、どのようなフードでも必ず16点と固定するのではなく、指針と設備の形状に従って測定点を設定する必要があります。
9. 補正係数kは設計段階でどのように決めるのか?
ここで、設計上の難しい問題があります。
既設設備であれば、開口面の風速を測定することで補正係数kを計算できます。
しかし、新設する局所排気装置では、まだ設備が存在しません。
当然、開口面の風速を実測することはできません。
では、設計段階ではどのようにkを決めればよいのでしょうか。
方法① 類似設備の実測結果を参考にする
例えば、同じ構造のブース型フードを過去に設計した経験がある場合、その設備の開口面風速の測定結果を参考にできる可能性があります。
ただし、開口部の寸法、フードの奥行き、ダクトの接続位置などが異なれば、風速分布も変化します。
単に「以前の設備ではkが1.2だったから今回も1.2でよい」と判断することは適切ではありません。
方法② フードの形状から風速のむらを予測する
フードの開口面が広く、排気ダクトが開口面のすぐ近くに接続されている場合には、吸引風速に偏りが生じる可能性があります。
一方、フード内部に十分な空間があり、空気が均一に流れやすい構造であれば、風速分布のむらを小さくできる可能性があります。
このように、フードの内部構造から補正係数を検討します。
ただし、形状だけでkを正確に決められるとは限りません。
方法③ 試験や気流解析を利用する
必要に応じて、模型試験、実設備での試運転、気流解析などを利用する方法もあります。
例えば、試作したフードで開口面風速を測定することで、風速分布の特徴を把握できます。
また、数値流体解析を利用すれば、フード内部の気流分布を予測できる場合があります。
ただし、解析結果は設定した境界条件やモデルに依存するため、実測による検証が重要です。
補正係数には標準値があるのか?
提供PDFには、過去の設計事例として補正係数を仮定した計算や、実測結果から求めた値が紹介されています。
しかし、これらは個別の設備条件における値です。
今回確認した資料だけでは、あらゆる囲い式フードに適用できる統一された補正係数を示すことはできません。
そのため、設計ではkの設定根拠を記録し、設備完成後に実測結果と比較することが重要です。
10. 開口面の風速分布を改善すると必要排風量は減らせるのか?
ここでは、同じフードについて、風速分布を改善した場合を考えてみましょう。
開口面積は0.24 m²、確保する最小風速は0.40 m/sとします。
改善前の補正係数は1.25です。
改善前
Q = 60 × 0.24 × 0.40 × 1.25
Q = 7.20 m³/min
改善後
フード内部の構造を改善し、補正係数を1.10にできたと仮定します。
Q = 60 × 0.24 × 0.40 × 1.10
Q = 6.336 m³/min
計算結果を比較すると、次のようになります。
| 項目 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 開口面積 | 0.24 m² | 0.24 m² |
| 最小風速 | 0.40 m/s | 0.40 m/s |
| 補正係数 | 1.25 | 1.10 |
| 必要排風量 | 7.20 m³/min | 6.336 m³/min |
今回の計算例では、風速分布を改善することで、同じ最小風速を確保するための必要排風量が12%小さくなりました。

なぜ風速分布を改善すると排風量が減るのか?
例えば、開口面の一部分で0.40 m/sしか得られない一方、別の場所では0.80 m/sになっている場合を考えます。
この場合、吸引が強い部分では必要以上の流入風速になっている可能性があります。
フードの内部構造を改善し、開口面の風速を均一にできれば、過度に強い吸引部分を減らせる場合があります。
その結果、最小風速を維持したまま、平均風速を小さくできる可能性があります。
ただし、改善後に必ずk = 1.10を達成できるわけではありません。
また、排風量を実際に削減する場合には、フードの捕捉性能、ダクトの搬送条件、排風機の運転点なども確認する必要があります。
11. 開口面積を小さくすると必要排風量はどう変わる?
次に、フードの開口面積を変更した場合を考えます。
例えば、囲い式フードの前面開口寸法が600 mm × 400 mmだったとします。
ここで、作業方法を見直し、開口高さを400 mmから300 mmにできる場合を考えます。
変更前
開口面積は、
A = 0.60 × 0.40
A = 0.24 m²
です。
Vmin = 0.40 m/s、k = 1.25とすると、
Q = 7.20 m³/min
です。
変更後
開口高さを300 mmへ小さくすると、
A = 0.60 × 0.30
A = 0.18 m²
となります。
同じ最小風速と補正係数を仮定すると、
Q = 60 × 0.18 × 0.40 × 1.25
Q = 5.40 m³/min
となります。
| 項目 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|
| 開口幅 | 600 mm | 600 mm |
| 開口高さ | 400 mm | 300 mm |
| 開口面積 | 0.24 m² | 0.18 m² |
| 計算風量 | 7.20 m³/min | 5.40 m³/min |
この例では、開口面積を25%減らすことで、計算上の必要排風量も25%減少しました。

開口部を小さくする際の注意点
ただし、開口部を小さくしたことで、風速分布が変わる可能性があります。
また、材料や工具の出し入れが難しくなったり、作業者が無理な姿勢になったりすることも考えられます。
そのため、開口面積を小さくした後も、従来と同じ補正係数が成立するとは限りません。
作業性と捕捉性能の両方を確認しながら検討する必要があります。
12. 複数の開口部がある場合はどのように計算するのか?
実際の囲い式フードでは、開口部が一つだけとは限りません。
例えば、前面に大きな作業用開口部があり、側面にも小さな開口部を設けている場合があります。
この場合には、それぞれの開口部から流入する風量を考える必要があります。
開口部が2つある場合
ここでは、次の条件を仮定します。
前面開口部
- 開口面積:0.24 m²
- 平均流入風速:0.50 m/s
側面開口部
- 開口面積:0.03 m²
- 平均流入風速:0.50 m/s
前面開口部の流入風量は、
Q1 = 60 × 0.24 × 0.50
Q1 = 7.20 m³/min
です。
側面開口部の流入風量は、
Q2 = 60 × 0.03 × 0.50
Q2 = 0.90 m³/min
です。
したがって、両方の開口部から流入する風量の合計は、
Qtotal = 7.20 + 0.90
Qtotal = 8.10 m³/min
となります。

この例は、それぞれの開口部で設定した平均流入風速が得られると仮定した計算です。
実際には、開口部を増やすとフード内部の圧力や気流分布が変わります。
また、前面と側面で必要な流入風速が同じとは限りません。
そのため、各開口部の流入風速を個別に確認するとともに、適用法令の性能要件を満たすか検討する必要があります。
単に開口部の面積を合計し、一つの風速を掛ければよいとは限らないのです。
13. 扉や配管のすき間から流入する空気はどう扱う?
囲い式フードには、作業用の開口部以外にもすき間が存在する場合があります。
例えば、扉の合わせ目や配管の貫通部などです。
こうしたすき間からも空気が流入する場合があります。
すき間からの流入量を考える
仮に、複数のすき間の合計開口面積が0.01 m²で、そこを通過する平均流入風速が0.30 m/sだったとします。
このとき、
Qleak = 60 × 0.01 × 0.30
Qleak = 0.18 m³/min
となります。
先ほどの2つの開口部から8.10 m³/minが流入している場合、さらに0.18 m³/minの空気がすき間から流入すると、
Qtotal = 8.10 + 0.18
Qtotal = 8.28 m³/min
となります。
ただし、これは各部の流入条件が変わらないと仮定した風量収支の例です。
すき間が増えれば必要排風量が増えるだけなのか?
それだけではありません。
排風機の運転条件が同じ場合、新たなすき間から空気が流入すると、前面開口部からの流入量が減少する可能性があります。
その結果、前面開口部の最小風速が低下し、有害物質が外へ漏れ出す可能性があります。
したがって、すき間の影響を評価するときには、合計風量だけでなく、主要な開口部の流入風速がどのように変わるかを確認する必要があります。
また、すき間をすべて塞げばよいというわけでもありません。
設備に必要な給気経路や圧力調整機能などを理解したうえで、不要な漏れを改善する必要があります。
14. 開口面風速が十分でも有害物質が漏れることはあるのか?
あります。
開口面風速は、囲い式フードの性能を評価するうえで重要な指標です。
しかし、開口面の最小風速が所定の値を満たしていても、有害物質が漏れ出す可能性があります。
事例① 発散速度が大きい
例えば、粉体原料を高い位置から投入すると、投入に伴う空気の移動や粉じんの飛散が発生する場合があります。
そのような状況では、開口部から内部へ流入する気流が形成されていても、粉じんが外へ飛散する可能性があります。
事例② 作業者の動作によって気流が乱れる
例えば、作業者が原料袋を素早く出し入れすると、その動作によって空気が動く場合があります。
また、作業者の身体が開口部を部分的に塞ぐことによって、気流分布が変化する場合もあります。
事例③ 内部に強い気流が存在する
例えば、回転機械や高温設備がフード内部にある場合、設備自体が気流を発生させることがあります。
この気流によって、有害物質が開口部へ向かう可能性があります。
事例④ 外乱気流が開口部に当たる
工場内の空調や扉からの風が開口部へ直接当たると、フード内部の気流が乱れることがあります。
このような場合、風速測定だけでなく、実際の作業状態で有害物質がどの方向へ移動するか確認する必要があります。
制御風速は重要な性能指標ですが、捕捉性能のすべてを表すものではありません。
15. 風速分布のむらを改善するにはどうすればよいのか?
風速分布に大きなむらがある場合、単に排風機の回転数を上げるだけでは、効率的な改善につながらないことがあります。
例えば、開口面の一部分だけ吸引が強く、別の部分で弱い場合には、フード内部の構造を見直すことが有効な場合があります。
① ダクトの接続位置を見直す
排気ダクトが開口部の近くに偏って接続されている場合、その付近で吸引が強くなる可能性があります。
このような場合には、ダクトの接続位置を見直すことで、風速分布を改善できることがあります。
② フード内部の空間を確保する
フードの内部が極端に狭いと、ダクトの接続位置による圧力分布の偏りが、開口面の風速分布へ影響することがあります。
必要に応じて、内部に適切な空間を確保することを検討します。
③ プリーナムチャンバーを検討する
第10回で説明したプリーナムチャンバーは、内部流速や圧力分布の偏りを抑え、吸引量を均一にしやすくするための構造です。
ただし、プリーナムチャンバーを設ければ必ず風速分布が均一になるわけではありません。
ダクトの接続位置や内部形状なども重要です。
④ 必要に応じて内部の気流分配構造を検討する
例えば、適切な整流・分配板を設けることで、特定の部分へ集中する吸引を調整できる場合があります。
ただし、板を設けることで圧力損失が増加したり、粉じんが堆積したりする可能性があります。
また、整流板がないこと自体が、設備の不良を意味するわけではありません。
フードの形状、風速分布、圧力損失などから必要性を判断します。
【図解⑦挿入:ダクト接続位置と内部構造による風速分布の改善例】
16. 実務例|粉体投入用ブースの必要排風量を見直す
ここでは、粉体原料を混合機へ投入する作業を想定します。
既設のブース型フードでは、開口面の一部で吸引が強く、別の部分では弱い状態が確認されています。
また、作業者から、排風機の騒音が大きいという意見も出ています。
そこで、捕捉性能を維持しながら、必要排風量を合理化できないか検討します。
ステップ① 現在の作業条件を確認する
最初に、次の内容を確認します。
- 原料袋の投入方法
- 発散源の位置と粉じんの飛散方向
- 作業者の立ち位置と呼吸域
- 開口部の幅と高さ
- 開口面の風速分布
- フード内部の障害物
- ダクト接続位置
- 周囲の外乱気流
ここでは、粉体投入時に開口部をどの程度使用しているかも調べます。
ステップ② 現在の補正係数を求める
開口面を適切に分割して風速を測定し、平均風速と最小風速を求めます。
例えば、
平均風速 = 0.60 m/s
最小風速 = 0.40 m/s
だったとすると、
k = 0.60 ÷ 0.40
k = 1.50
となります。
この結果から、開口面の吸引に偏りがあると考えられます。
ステップ③ 風速分布の改善を検討する
例えば、ダクトの接続位置や内部構造を見直すことで、吸引の偏りを改善できないか検討します。
ただし、フードの変更により、粉じんの飛散方向や内部の気流が変わる可能性があるため、捕捉性能も確認する必要があります。
ステップ④ 改善後に再測定する
改善後は、同じ条件で開口面の風速を測定し、補正係数を再計算します。
例えば、最小風速0.40 m/sを維持しながら、平均風速を0.48 m/sにできたと仮定すると、
k = 0.48 ÷ 0.40
k = 1.20
となります。
この場合、補正係数は1.50から1.20へ小さくなりました。
ただし、最終的には実際の粉体投入作業において、粉じんが十分に捕捉されているかを確認する必要があります。
ステップ⑤ 排風機とダクト系統を確認する
必要排風量を減らす場合には、フードだけでなく、ダクトや排風機の運転条件も変わります。
特に粉じんを扱う設備では、ダクト内風速が低下することで粉じんが堆積しやすくなる可能性があります。
そのため、単にフードの必要風量が小さくなったことだけを理由に、排風機の回転数を下げてはいけません。
設備全体の圧力損失、搬送条件、捕捉性能を確認したうえで検討します。
※この事例は計算方法と改善手順を説明するための架空事例です。
17. 法令上の性能確認と設計計算を区別する
ここまで説明してきた必要排風量の計算は、局所排気装置を設計するための技術的な方法です。
一方、法令上の性能要件は、対象物質や適用される規則によって異なります。
有機溶剤中毒予防規則の場合
有機溶剤中毒予防規則第16条第1項では、所定の囲い式フードについて、原則として開口面の最小風速0.4 m/sを確保できる能力が求められています。
また、同条の備考では、局所排気装置のすべてのフードを開放した場合の制御風速とされています。
複数のフードを一つの排風機に接続している場合には、特に重要な条件です。
ただし、同条第2項や関係する特例制度など、適用関係の確認も必要です。
他の規則では要求事項が異なる場合がある
特定化学物質、鉛、粉じんなどに関する局所排気装置では、対象物質や作業内容によって制御風速や抑制濃度などの性能要件が異なります。
したがって、今回の0.40 m/sをすべての囲い式フードに適用してはいけません。
また、法令上の性能要件が抑制濃度である設備については、設計時に仮定した風速が、そのまま法令上の合否判定基準になるわけではありません。
定期自主検査指針との関係
厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」には、フードの状態、気流を妨げる物の有無、制御風速、抑制濃度などについての検査方法が示されています。
今回紹介した16点の風速測定の考え方は、この指針に対応するものです。
ただし、設計段階で行う風量計算と、法令に基づく定期自主検査は目的が異なります。
設計計算では必要な排風量を予測します。
定期自主検査では、実際の設備について、所定の方法で性能などを確認します。
両者を区別して扱うことが重要です。
18. 実務で注意したい7つの誤解
誤解① 制御風速×開口面積で必要排風量が決まる
最小風速をそのまま平均風速として計算すると、風速分布のむらによって必要排風量を過小評価する可能性があります。
平均風速と最小風速の違いを考慮する必要があります。
誤解② 補正係数kは1.25にすればよい
補正係数はフードの形状や風速分布によって異なります。
1.25は今回の説明用の値であり、共通の設計値ではありません。
誤解③ 16点の最小値が0.4 m/sなら必ず適合する
法令適合の判断では、測定方法、運転条件、適用規則などを確認する必要があります。
また、16点以外の場所に、さらに風速が低い場所がある可能性も考慮します。
誤解④ 開口面積を半分にすれば必要排風量も必ず半分になる
同じ平均風速や補正係数が成立するという仮定では半分になります。
しかし、実際には開口部を変更すると風速分布が変化する可能性があります。
誤解⑤ すき間からの流入量は無視してよい
すき間から空気が流入すると、前面開口部の流入風速に影響する場合があります。
設計では、主要開口部以外の流入口にも注意する必要があります。
誤解⑥ 開口面の平均風速が高ければ捕捉性能は十分である
平均風速が高くても、一部分で必要な流入風速が得られていない場合があります。
また、内部で発生する気流や作業者の動作によって、有害物質が漏れる可能性もあります。
誤解⑦ 必要排風量を減らせば必ず省エネルギーになる
計算上の必要風量を減らせても、実際に排風機の運転条件を変更できるとは限りません。
また、圧力損失の増加やダクト内風速の低下などを伴う場合があります。
設備全体として評価する必要があります。
19. 囲い式フードの設計・性能確認チェックリスト
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 対象物質 | 種類、性状、危険性・有害性 |
| 適用法令 | 制御風速・抑制濃度などの要求 |
| フード形式 | カバー型、ブース型など |
| 開口寸法 | 幅、高さ、直径など |
| 開口面積 | m² |
| 開口数 | 前面、側面、投入部など |
| すき間 | 扉、配管貫通部など |
| 最小風速 | m/s |
| 平均風速 | m/s |
| 風速分布 | 測定位置による違い |
| 補正係数k | 値と設定根拠 |
| 必要排風量 | m³/min |
| 測定点 | 位置、数、分割方法 |
| 測定条件 | サッシ位置、作業条件、同時運転 |
| ダクト接続 | 位置、口径、内部の偏流 |
| 外乱気流 | 空調、給気、扉、作業者の動作 |
| 内部気流 | 滞留、逆流、漏れ出し |
| 排風機 | 必要風量、圧力、運転点 |
| ダクト | 圧力損失、堆積、搬送速度 |
| 性能確認 | 法定性能と実作業での捕捉性能 |
この表は、設計・改善を行う際の実務上の確認項目です。
すべての項目が、すべての局所排気装置に一律に義務付けられているわけではありません。
よくある質問
Q1. 囲い式フードの必要排風量は、開口面積だけで計算できますか?
できません。
開口面積に加えて、確保すべき流入風速と、開口面の風速分布を考慮する必要があります。
Q2. 補正係数kは実際に測定できますか?
既設設備では、開口面の風速分布を測定し、平均風速と最小風速の比から求めることができます。
ただし、測定値から求めたkを、別の設備へそのまま適用できるとは限りません。
Q3. 風速の測定点は必ず16点ですか?
厚生労働省の定期自主検査指針では、原則として16以上の等面積部分に分割する方法が示されています。
ただし、開口面が著しく小さい場合には例外的な取扱いがあり、フードが大きい場合には分割数を増やす必要があります。
Q4. 開口面の風速が均一ならk = 1としてよいですか?
数学的には、平均風速と最小風速が等しければk = 1です。
ただし、実際のフードで完全に均一な風速分布が得られるとは限りません。
設計時にk = 1を仮定する場合には、その根拠と実現可能性を確認する必要があります。
Q5. 複数開口部の風量は合計できますか?
各開口部を通過する流量は合計できます。
ただし、各開口部の風速条件が成立していること、ほかに流入経路がないかなどを確認する必要があります。
Q6. 最小風速が法定値を満たしていれば、粉じんや蒸気が漏れ出すことはありませんか?
必ずしもそうではありません。
発散速度、作業者の動作、内部気流、外乱気流などによって漏れ出す可能性があります。
Q7. 補正係数を改善できたら、排風機の回転数を下げてもよいですか?
補正係数が小さくなり、同じ最小風速を少ない排風量で確保できる可能性はあります。
しかし、排風機の運転条件を変更する前に、捕捉性能、ダクト内風速、圧力損失などを確認する必要があります。
まとめ|囲い式フードの計算は開口面積と風速分布の両方が重要
囲い式フードの必要排風量を計算する際には、開口面積と流入風速の関係を理解する必要があります。
基本式は、
Q = 60 × A × Vavg
です。
さらに、最小風速と風速分布の補正係数を使用すると、
Q = 60 × A × Vmin × k
と表せます。
この式では、開口面積、最小風速、補正係数の3つが重要になります。
開口面積が大きいほど、同じ流入風速を確保するために必要な風量は大きくなります。
また、開口面の風速分布にむらがあるほど、同じ最小風速を確保するために必要な平均風速が大きくなります。
そのため、囲い式フードの設計では、単に排風量を大きくするのではなく、開口部の大きさやフード内部の構造を工夫することが重要です。
ただし、開口面積を小さくしたり、排風量を減らしたりする場合には、作業性や捕捉性能に悪影響が生じないように確認する必要があります。
重要なのは、法令上の性能要件を確保しながら、実際の作業で有害物質を適切に捕捉できる、無駄の少ないフードを設計することです。
次回は、外付け式フードの必要排風量を計算する方法を、フードの形状、開口面積、発散源までの距離、フランジの有無などに分けて解説します。
主な参考資料
- 『やさしい作業環境改善技術』第6章「フードの性能の表し方」、第7章「捕捉フードの必要排風量の計算」、第9章「フードの形と省エネ対策」
- e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」第16条
- 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について
- 米国OSHA「OSHA Technical Manual, Section III, Chapter 3:Ventilation Investigation」
※OSHAの資料は海外の技術参考資料であり、日本の法的要求事項を示すものではありません。
※本記事で使用した開口寸法、風速測定値、補正係数、必要排風量は、特に記載した場合を除き、計算方法を説明するための仮定値です。実際の設備仕様、性能、法令適合を保証するものではありません。


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