外付け式フードの必要排風量を計算する|開口形状・距離・フランジの影響
局所排気装置のフードを設計するとき、必要な排風量はどのように計算すればよいのでしょうか。
第12回では、囲い式フードの必要排風量について、開口面積、平均風速、最小風速、補正係数の関係を説明しました。
一方、外付け式フードでは、発散源がフードの外側にあるため、計算方法が異なります。
例えば、有機溶剤を使用する洗浄作業で、作業台の横にフードを設置する場合を考えてみましょう。
同じ大きさのフードであっても、発散源までの距離が150 mmの場合と350 mmの場合では、必要な排風量が大きく変わることがあります。
また、フードの周囲にフランジを設けたり、作業台に接するように設置したりすることでも、空気の流れ方が変わります。
さらに、円形や正方形に近いフードと、細長いスロット型フードでは、使用する計算式自体が異なります。
つまり、外付け式フードの必要排風量を計算するには、制御風速だけでなく、フードの開口形状、発散源までの距離、周囲の構造を理解する必要があります。
この記事では、代表的な経験式の使い方を具体的な数値で解説し、実際の設計で注意しなければならない適用条件や、排風量の過小評価につながる誤解まで説明します。
1. 外付け式フードでは、なぜ必要排風量の計算が難しいのか?
外付け式フードは、有害物質の発散源の外側に吸込み口を配置し、有害物質を周囲の空気とともに吸引する方式です。
例えば、作業台の奥に吸込み口を設け、手前側で発生した有機溶剤蒸気を吸引する方法があります。
この場合、フードの開口面だけでなく、離れた発散源の位置にも吸引気流を形成する必要があります。
囲い式フードとの違い
囲い式フードでは、発散源が囲いの内部にあり、開口部から内部へ向かう気流によって有害物質の拡散を抑えます。
そのため、基本的には開口面積と平均流入風速から風量を求めることができます。
囲い式フードの基本式
Q = 60 × A × Vavg
一方、外付け式フードでは、発散源が開口面から離れているため、単純に開口面積と発散源位置の風速を掛け合わせることはできません。
発散源までの距離が大きくなるほど、吸引気流は広い範囲からフードへ集まるようになり、対象位置で必要な風速を確保するための風量が増える傾向があります。
吸引風速と排風量は別のもの
ここで、もう一度2つの用語を整理します。
| 用語 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| 排風量 | フードが単位時間に吸引する空気の体積 | m³/min |
| 吸引風速 | フードへ向かう空気の速度 | m/s |
| 制御風速 | 法令などで定められた所定位置の吸引風速 | m/s |
例えば、フードが15 m³/minの空気を吸引していても、発散源の位置で必ず0.5 m/sの風速が得られるわけではありません。
フードの形状や距離、周囲の障害物などによって、吸引風速の分布が変わるためです。

2. 必要排風量を計算する前に確認する7つの条件
外付け式フードの必要排風量を計算するときには、次の条件を確認します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| ① 対象物質 | 有機溶剤蒸気、ガス、ミスト、粉じんなど |
| ② 適用法令 | 制御風速、抑制濃度などの性能要件 |
| ③ フードの形状 | 円形、長方形、スロット型など |
| ④ 開口寸法 | 直径、幅、高さ、開口面積 |
| ⑤ 発散源までの距離 | 開口面と対象位置の距離 |
| ⑥ 周囲の構造 | フランジ、壁、作業台、側板など |
| ⑦ 作業条件 | 発散源の移動、作業者の位置、外乱気流など |
特に注意したいのは、フードの形状と設置条件です。
例えば、長方形フードでも、障害物のない空間に設置する場合と、下端を作業台に接するように設置する場合では、空気が流入できる方向が異なります。
したがって、同じ計算式を無条件に使うことは適切ではありません。
また、制御風速を設定するときには、日本の関係法令を確認する必要があります。
有機溶剤中毒予防規則の場合
有機溶剤中毒予防規則第16条第1項では、所定の外付け式フードについて、原則として次の制御風速が定められています。
| フードの形式 | 制御風速 |
|---|---|
| 側方吸引型 | 0.5 m/s |
| 下方吸引型 | 0.5 m/s |
| 上方吸引型 | 1.0 m/s |
同条の備考では、外付け式フードの制御風速について、有機溶剤蒸気を吸引しようとする範囲内で、フード開口面から最も離れた作業位置の風速とされています。
また、すべてのフードを開放した場合の制御風速であることも規定されています。
ただし、同条第2項には例外規定があり、すべての作業に上記の数値を一律に適用することはできません。
さらに、特定化学物質、粉じん、鉛などでは、適用される性能要件が異なる場合があります。
したがって、以下の計算例で使用する0.5 m/sは、説明用の条件です。実際の作業に適用する際には、対象物質と関係法令を確認してください。
3. 円形・長方形フードの基本的な計算式
まず、障害物のない自由空間に設置した、単純な円形または長方形の外付け式フードについて考えます。
このようなフードでは、Dalla Valleの研究に基づく代表的な経験式が使用されます。
フランジのないフードの計算式
Q = 60 × Vc × (10X² + A)
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Q | 計算上の必要排風量 | m³/min |
| Vc | 対象位置で確保する吸引風速 | m/s |
| X | フード開口面から対象位置までの距離 | m |
| A | フードの開口面積 | m² |
式の先頭にある60は、m³/sをm³/minへ換算するための係数です。
なぜ10X²という項があるのか?
この式で最も重要なのが、10X²という項です。
Xは、フード開口面から対象位置までの距離を表しています。
距離が大きくなると、X²は急速に増加します。
例えば、
X = 0.10 mの場合、X² = 0.01 m²
X = 0.20 mの場合、X² = 0.04 m²
X = 0.30 mの場合、X² = 0.09 m²
となります。
このように、距離が2倍になると距離の二乗は4倍になります。
ただし、計算式には開口面積Aも含まれるため、必要排風量全体が必ず4倍になるわけではありません。
この式を使用できるフード
提供PDFの計算式一覧表では、この式の対象として、自由空間に設けた円形・長方形フードが示されています。
長方形フードについては、短辺をW、長辺をLとすると、縦横比W/Lが0.2を超える形状が該当します。
W/Lが0.2以下の細長い開口部については、スロット型フードとして別の式を検討します。
また、この経験式は、フードの中心軸付近の吸引気流を基礎とする近似的な計算方法です。
発散源が中心軸から大きく外れた場所にある場合や、周囲に障害物が存在する場合には、そのまま適用できるとは限りません。

4. 計算例①|長方形フードの必要排風量を求める
ここでは、有機溶剤を使用する小型洗浄作業を想定します。
作業台の奥に、正方形の外付け式フードを設置するとします。
計算条件
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| フードの形式 | 側方吸引型 |
| 開口幅 | 300 mm |
| 開口高さ | 300 mm |
| 対象位置までの距離X | 0.25 m |
| 対象位置で確保する風速Vc | 0.50 m/s |
| フランジ | なし |
| 設置条件 | 自由空間に設置した単純なフード |
周囲の大きな外乱気流や障害物は考慮しないものとします。
ステップ① 開口面積を求める
300 mmは0.30 mです。
したがって、
A = 0.30 × 0.30
A = 0.09 m²
となります。
ステップ② 距離の二乗を求める
X = 0.25 mなので、
X² = 0.25 × 0.25
X² = 0.0625 m²
となります。
ステップ③ 必要排風量を求める
Q = 60 × Vc × (10X² + A)
Q = 60 × 0.50 × (10 × 0.25² + 0.09)
Q = 30 × (0.625 + 0.09)
Q = 30 × 0.715
Q = 21.45 m³/min
となります。
この条件では、計算上の必要排風量は21.45 m³/minです。

計算結果をどう解釈するか?
今回の計算値は、発散源に相当する対象位置で0.50 m/sの吸引風速を得るための推定風量です。
実際に21.45 m³/minの排風量が得られたとしても、発散した有機溶剤蒸気が確実に捕捉されるとは限りません。
例えば、作業者の手や部品が気流を妨げたり、横から強い風が吹いたりする場合には、捕捉性能が低下する可能性があります。
したがって、この計算結果は設計検討の出発点として扱い、実際の作業条件で性能を確認する必要があります。
5. 計算例②|発散源までの距離を変えるとどうなる?
次に、同じフードで、発散源までの距離だけを変更した場合を比較します。
次の条件は一定とします。
- 開口面積A:0.09 m²
- 対象位置で確保する風速Vc:0.50 m/s
- フード形式:フランジのない単純な外付け式フード
距離Xを0.15 m、0.25 m、0.35 mに変更します。
距離0.15 mの場合
Q = 60 × 0.50 × (10 × 0.15² + 0.09)
Q = 9.45 m³/min
距離0.25 mの場合
Q = 60 × 0.50 × (10 × 0.25² + 0.09)
Q = 21.45 m³/min
距離0.35 mの場合
Q = 60 × 0.50 × (10 × 0.35² + 0.09)
Q = 39.45 m³/min
計算結果を比較すると、次のようになります。
| 距離X | 計算上の必要排風量 | 0.15 mとの比較 |
|---|---|---|
| 0.15 m | 9.45 m³/min | 1.00倍 |
| 0.25 m | 21.45 m³/min | 約2.27倍 |
| 0.35 m | 39.45 m³/min | 約4.17倍 |

この結果から、発散源までの距離が必要排風量へ大きく影響することが分かります。
例えば、フードを発散源から350 mm離れた位置に設置するより、150 mmの位置へ近づけられれば、同じ風速を確保するための計算風量を大幅に小さくできる可能性があります。
ただし、これは同じ経験式を使用した比較です。実際の捕捉効果や風量削減を保証するものではありません。
距離を短くすれば、それだけでよいのか?
フードを近づけることは一般に有利ですが、次の問題にも注意が必要です。
例えば、フードを手前へ出しすぎると、作業者が部品を出し入れしにくくなる場合があります。
また、吸込み口と発散源の間に作業者の顔が入るような配置では、吸引される蒸気が呼吸域を通過するおそれがあります。
そのため、距離の短縮だけではなく、作業性と気流の経路を確認することが重要です。
6. フランジ付きフードでは必要排風量を減らせるのか?
外付け式フードの開口部の周囲に設ける板状の縁を、フランジと呼びます。
フランジを適切に設けると、開口部の周縁を回り込んで流入する空気を抑えられる場合があります。
その結果、フード前方の吸引気流を有効に利用でき、同じ位置で必要な風速を確保するための排風量を小さくできる可能性があります。
フランジ付きフードの代表的な経験式
Q = 60 × 0.75 × Vc × (10X² + A)
フランジのない場合との違いは、0.75という係数があることです。
この係数は、Dalla Valleの研究に基づく、一定の条件でのフランジの効果を表しています。
計算例③|フランジを設置した場合
先ほどの条件をそのまま使用します。
- 開口面積:0.09 m²
- 対象位置までの距離:0.25 m
- 対象位置で確保する風速:0.50 m/s
計算式に代入すると、
Q = 60 × 0.75 × 0.50 × (10 × 0.25² + 0.09)
Q = 22.5 × 0.715
Q = 16.0875 m³/min
となります。
小数第2位までで表すと、
Q ≒ 16.09 m³/min
です。
フランジのない場合と比較してみましょう。
| フードの条件 | 計算上の必要排風量 |
|---|---|
| フランジなし | 21.45 m³/min |
| フランジあり | 約16.09 m³/min |
| 差 | 約5.36 m³/min |
この計算では、必要排風量が約25%小さくなりました。

フランジを付ければ、必ず25%削減できるのか?
必ずしもそうではありません。
0.75という係数を使用できるのは、代表的なフランジ付きフードの条件を満たす場合です。
フランジの幅が不足していたり、フードが特殊な形状であったりすると、想定した効果が得られない可能性があります。
また、作業台や壁が近くに存在する場合には、そもそもフランジのない自由空間のフードとは気流条件が異なります。
さらに、フード開口面に極めて近い位置では、この係数を無条件に適用すると問題が生じることがあります。
この点については、後ほど詳しく説明します。
7. 壁・床・作業台に接する場合は計算式が変わる
次に、フードの下端が作業台に接している場合を考えます。
自由空間に設けたフードでは、開口部の周囲から空気が流れ込みます。
しかし、フードが作業台に接していれば、その面を通って空気が流れ込むことはできません。
そのため、吸引気流の広がり方が変わります。
作業台に接した単純な長方形フード
提供PDFの計算式一覧表では、床・作業台・壁などに接して設けた長方形フードに対して、次の経験式を示しています。
Q = 60 × Vc × (5X² + A)
自由空間の場合と比較すると、10X²だった部分が5X²へ変わっています。
これは、空気が流れ込める方向を固体面が制限することを考慮したものです。
計算例④|作業台に接する場合
条件を次のように仮定します。
- 開口面積:0.09 m²
- 対象位置までの距離:0.25 m
- 対象位置で確保する風速:0.50 m/s
- フード:作業台に接した長方形フード
計算すると、
Q = 60 × 0.50 × (5 × 0.25² + 0.09)
Q = 30 × (0.3125 + 0.09)
Q = 12.075 m³/min
となります。
フランジ付きで作業台に接する場合
さらに、フランジを設けた所定の長方形フードでは、次の式が示されています。
Q = 60 × 0.75 × Vc × (5X² + A)
同じ数値を代入すると、
Q = 60 × 0.75 × 0.50 × (5 × 0.25² + 0.09)
Q = 9.05625 m³/min
となります。
4つの計算式を比較する
| フードの設置条件 | 代表的な計算式 | 計算風量 |
|---|---|---|
| 自由空間・フランジなし | 60Vc(10X²+A) | 21.45 m³/min |
| 自由空間・フランジあり | 60×0.75Vc(10X²+A) | 約16.09 m³/min |
| 作業台等に接する・フランジなし | 60Vc(5X²+A) | 約12.08 m³/min |
| 作業台等に接する・フランジあり | 60×0.75Vc(5X²+A) | 約9.06 m³/min |

この表は、各式に同じ数値を代入した場合の計算上の比較です。
実際には、作業台への設置によって発散源とフードの位置関係が変化したり、フランジによって開口周囲の構造が変わったりします。
したがって、実際の設備を変更せずに、計算式だけを都合よく変更してはいけません。
例えば、フードが作業台から50 mm浮いている場合、下方からの空気の流入が完全になくなるとは限りません。
この状態を、作業台に密着したフードと同じ条件として扱うことには注意が必要です。
重要なのは、式に記載されている構造と、実際のフードの構造が一致しているかどうかです。
8. 同じ開口面積でも円形と長方形で捕捉性能は同じなのか?
例えば、開口面積0.09 m²のフードを考えます。
正方形であれば、300 mm × 300 mmです。
一方、円形フードで同じ開口面積にする場合には、直径dを次の式から求めます。
A = πd² ÷ 4
これを変形すると、
d = √(4A ÷ π)
となります。
A = 0.09 m²を代入すると、
d = √(4 × 0.09 ÷ π)
d ≒ 0.339 m
となります。
つまり、直径約339 mmの円形フードと、300 mm角の正方形フードは、ほぼ同じ開口面積です。
計算式では同じ風量になる
単純な自由空間のフードに同じ経験式を適用すると、開口面積Aと距離X、風速Vcが同じであれば、計算風量も同じになります。
しかし、これはフードの吸引性能が完全に同じであることを意味しません。
実際の等速度面は同じではない
第9回で説明したように、フードの開口形状が変わると、周囲の等速度面や流線の分布が変わります。
例えば、正方形と細長い長方形では、開口面の周囲の形状が異なります。
同じ排風量でも、中心軸から外れた場所における吸引風速が異なる場合があります。
つまり、代表的な経験式が同じであることと、空間内のあらゆる位置で同じ吸引気流が得られることは別の問題です。
発散源の形に合ったフードを選ぶ
例えば、小さな点状の発散源を対象とする場合と、横幅1 mの槽全体を対象とする場合では、適切なフード形状が異なります。
そのため、開口面積だけでなく、発散源の幅や奥行き、位置、作業方法に合わせて、開口形状を検討する必要があります。
9. スロット型フードでは別の計算式を使用する
ここからは、より専門的な内容です。
スロット型フードとは、長さに比べて幅が小さい、細長い吸込み口を持つフードです。
例えば、開放された洗浄槽の奥に、槽の横幅に沿って細長いスロットを設ける場合があります。
このようなフードでは、円形や正方形に近いフードとは、吸引気流の広がり方が異なります。
スロット型フードの基本的な考え方
第9回では、非常に細長いスロット型フードの吸引気流を、円柱面に近い流れとして考える方法を説明しました。
この考え方を利用すると、スロット長さLと対象位置までの距離Xから、必要排風量を推定することができます。
自由空間に設けたスロット型フード
提供PDF第7章では、スロットの幅Wと長さLの比が0.2以下の条件について、次の代表的な経験式を示しています。
Q = 60 × 5.0 × L × X × Vc
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Q | 計算上の必要排風量 | m³/min |
| L | スロットの長さ | m |
| X | スロットから対象位置までの距離 | m |
| Vc | 対象位置で確保する吸引風速 | m/s |
この式は、円形・長方形フードの基本式とは異なり、距離Xに比例する形になっています。
ただし、実際のスロット型フードでは、端部から流入する空気の影響などがあるため、適用範囲に注意が必要です。
スロット型フードの4種類の式
提供PDFの表7・1では、流入方向が制限される条件に応じて、次の係数が示されています。
| フードの条件 | 計算式 |
|---|---|
| 自由空間・全円柱近似 | Q = 60×5.0×L×X×Vc |
| 台の縁などに設けた3/4円柱近似 | Q = 60×4.1×L×X×Vc |
| 床・作業台・壁面などに設けた1/2円柱近似 | Q = 60×2.8×L×X×Vc |
| 適切なバッフルを設けた1/4円柱近似 | Q = 60×1.6×L×X×Vc |
この係数の違いは、スロット周囲の空気が流入できる方向の違いを、理想化した等速度面で表したものです。
ただし、どの式でも同じスロットが使えるという意味ではありません。
特に、側板やバッフル板によって気流を制限する場合には、その構造が計算モデルに対応しているかを確認する必要があります。
10. 計算例⑤|スロット型フードの必要排風量を求める
ここでは、細長いスロット型フードを想定します。
計算条件
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| スロットの長さL | 1.20 m |
| スロットの幅W | 0.06 m |
| 対象位置までの距離X | 0.20 m |
| 対象位置で確保する風速Vc | 0.50 m/s |
まず、縦横比を確認します。
W/L = 0.06 ÷ 1.20
W/L = 0.05
したがって、W/L ≤ 0.2という条件を満たしています。
さらに、距離と長さの比を確認すると、
X/L = 0.20 ÷ 1.20
X/L ≒ 0.167
となります。
自由空間に設けた場合
Q = 60 × 5.0 × 1.20 × 0.20 × 0.50
Q = 36.0 m³/min
となります。
気流の流入方向が異なる場合
同じ数値を、各係数の経験式へ代入して比較してみましょう。
| 流入条件のモデル | 係数 | 計算風量 |
|---|---|---|
| 全円柱 | 5.0 | 36.00 m³/min |
| 3/4円柱 | 4.1 | 29.52 m³/min |
| 1/2円柱 | 2.8 | 20.16 m³/min |
| 1/4円柱 | 1.6 | 11.52 m³/min |
これらは、それぞれの構造条件が成立するものと仮定した計算値です。
実際に同じフードへ板を追加するだけで、この表のとおり排風量が減ることを保証するものではありません。
ただし、空気が不要な方向から流れ込むことを減らせれば、吸引気流をより有効に利用できる可能性があることは理解できます。
スロット型の経験式には適用距離の条件がある
ここで、重要な注意点があります。
- スロット幅Wが長さLの0.2倍以下であること。
- 対象位置までの距離Xが長さLの0.4倍以下であること。
これは、実際のスロットには端部があり、距離が大きくなると端部からの空気の流入を無視できなくなるためです。
例えば、同じ長さ1.20 mのスロットでも、対象位置までの距離Xが大きくなると、理想的な円柱面による近似が成立しにくくなります。
したがって、スロット型フードの計算式も、すべての寸法や距離に無条件に適用してはいけません。
11. フランジ付きの経験式には開口面に近すぎる場合の注意点がある
ここは、外付け式フードの計算で特に見落としやすい部分です。
これまで、フランジ付きフードに対して、次の経験式を紹介しました。
Q = 60 × 0.75 × Vc × (10X² + A)
では、対象位置がフード開口面へ非常に近づいた場合にも、この式をそのまま使用できるのでしょうか。
X = 0とするとどうなる?
例えば、開口面積Aを0.09 m²、風速Vcを0.50 m/sとします。
X = 0を代入すると、
Q = 60 × 0.75 × 0.50 × (10 × 0² + 0.09)
Q = 2.025 m³/min
となります。
一方、開口面全体に平均風速0.50 m/sの流入気流を確保する条件では、
Q = 60 × 0.09 × 0.50
Q = 2.70 m³/min
となります。
つまり、フランジ付きの経験式をX = 0まで延長すると、開口面での単純な風量計算より小さい値が得られます。

なぜ、このようなことが起こるのか?
原因は、0.75という係数の適用範囲にあります。
この係数は、一定の距離とフード条件において、フランジによって周囲からの空気の回り込みが減少することを表したものです。
しかし、対象位置が開口面に極端に近い場合には、その効果を同じ割合で表すことが適切ではなくなります。
提供PDF第7章でも、この問題を取り上げています。
そして、フランジ付きフードの経験式による計算風量が、開口面で必要とする流量より小さくなる場合には、囲い式に相当する開口面の流量計算を下限側の確認に用いる考え方を説明しています。
ただし、上記の2.70 m³/minは開口面全体の平均風速を0.50 m/sと仮定した比較値です。どのフードでも一律に採用できる設計風量ではありません。

経験式は適用範囲を理解して使う
この例から分かるのは、経験式は数学的に数値を代入できるからといって、すべての条件で物理的に妥当な結果になるわけではないということです。
特に、フランジの効果や流入方向の制限を表す係数については、元になった実験条件や近似の考え方を理解する必要があります。
12. 現場ではどのような順序で計算式を選ぶのか?
ここまで複数の式を紹介してきました。
実際の設計では、次の順序で検討すると整理しやすくなります。
ステップ① 発散源とフードの位置関係を確認する
まず、発散源がフードの開口面の外側にあることを確認します。
発散源を囲うことが可能な場合には、囲い式フードの採用も検討します。
ステップ② フードの開口形状を確認する
円形、長方形、スロット型などの形式を確認します。
長方形の場合には縦横比、スロット型の場合には長さと幅の比も確認します。
ステップ③ 壁・作業台・フランジの条件を確認する
フードの開口部周囲から、どの方向に空気が流入できるかを確認します。
壁に近いだけなのか、完全に接しているのかによっても、条件は異なります。
ステップ④ 対象位置までの距離を決める
発散源が移動する場合には、その移動範囲も確認します。
また、使用する経験式の対象位置と、法令上の制御風速を確認すべき位置が一致するかを検討します。
ステップ⑤ 設計上確保する吸引風速を設定する
対象物質、作業方法、関係法令、外乱気流などを踏まえて設定します。
ステップ⑥ 経験式の適用条件を確認して排風量を計算する
フードの形状と設置条件に合った経験式を選びます。
適用条件から外れる場合には、別の計算方法や実験・測定などによる確認を検討します。
ステップ⑦ 捕捉性能と設備条件を総合的に確認する
計算した排風量だけでなく、作業者の呼吸域、ダクトの圧力損失、排風機の性能なども確認します。
【図解⑨挿入:外付け式フードの計算式を選択する判断フロー】
13. 実務例|洗浄作業台の外付け式フードを改善する
ここでは、架空の工場に設置された部品洗浄作業台を考えます。
作業台の奥には、側方吸引型の外付け式フードが設置されています。
作業者は、有機溶剤を使用して部品を洗浄しています。
しかし、作業台の手前で作業すると、発生した蒸気が十分に捕捉されないことがあります。
現場で確認したいこと
最初に、次の項目を確認します。
- フードの開口寸法
- フードの開口面から洗浄容器までの距離
- 容器が移動する作業範囲
- フランジの有無と寸法
- フードと作業台の接触状態
- 作業者の呼吸域
- 周囲の空調や扉による外乱気流
- 排風機とダクトの運転状態
計算結果から改善を考える
例えば、フードと発散源の距離が大きい場合には、まずフードを近づけられないか検討します。
作業方法によっては、容器の位置を変更する方が合理的な場合もあります。
次に、フード周囲の気流を改善するため、フランジや側板などを設けられないか検討します。
ただし、フランジや側板を追加したからといって、経験式の係数を機械的に変更してはいけません。
実際の空気の流入方向が、想定した計算モデルに近づいているかを確認する必要があります。
改善後に確認すること
改善後は、適用される法令の性能要件を確認し、必要な制御風速などが得られているかを調べます。
また、実際の洗浄作業中に、有機溶剤蒸気が作業者の呼吸域を通過していないかも確認します。
必要に応じて、気流の可視化や適切なばく露評価を検討します。
※この事例は設計上の考え方を説明するための架空事例です。
14. 計算した排風量から排風機を選定するときの注意点
必要排風量を計算したら、次は排風機やダクトの設計を検討します。
ただし、計算で求めた排風量を、そのまま排風機のカタログ風量へ当てはめるだけでは不十分です。
必要排風量と排風機の能力は同じではない
局所排気装置では、フードから空気を吸い込んだ後、ダクトや空気清浄装置などを通過して排気します。
その途中では、摩擦損失や局部損失などが発生します。
したがって、排風機は、これらの圧力損失を考慮した運転点で、必要な排風量を確保できるものでなければなりません。
フードの改善によって圧力損失が変わることがある
例えば、フードの開口面積を変更したり、細長いスロットを設けたりすると、流入部分の圧力損失が変化する場合があります。
また、フランジや側板を追加することで、周囲の気流分布が変わる場合があります。
したがって、フード単体の必要排風量だけでなく、ダクトや排風機を含む系統全体で検討することが重要です。
複数フードの同時使用条件にも注意する
例えば、1台の排風機に複数のフードを接続している場合、一つのフードの構造を変更すると、各分岐の流量配分が変わることがあります。
そのため、改造したフードだけでなく、他のフードへの影響も確認する必要があります。
15. 経験者が注意したい7つのポイント
① 距離Xを正しく設定する
フードの先端から発散源までの距離を測定する際には、使用する経験式で定義された基準位置を確認します。
特に、フランジがある場合には、フランジの外端と吸込み開口面を混同しないようにします。
② 開口面積だけで捕捉性能を判断しない
同じ開口面積であっても、フードの形状や発散源との位置関係によって気流分布は異なります。
③ フランジの係数0.75を無条件に使わない
フランジ幅、周囲の構造、対象位置までの距離などが、経験式の適用条件に合っているか確認します。
④ 壁や作業台に近いだけで5X²の式を使わない
壁や作業台によって空気の流入方向が制限されることが、この式の前提です。
フードとの間にすき間がある場合には注意が必要です。
⑤ スロット型では端部の影響を無視しない
スロット中央で十分な吸引風速があっても、端部で同じ風速が得られるとは限りません。
また、距離Xがスロット長さLに対して大きい場合には、円柱面近似による経験式の適用に注意します。
⑥ 制御風速を満たすことと捕捉できることを混同しない
法令上の制御風速は重要な性能要件ですが、作業者の位置、発散方向、外乱気流によって実際の捕捉性能は変化する場合があります。
⑦ 計算風量だけで排風機を選定しない
必要排風量を確保するためには、系統全体の圧力損失、排風機の運転点、給気条件なども考慮する必要があります。
16. 外付け式フードの計算チェックリスト
| 確認項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 対象物質 | 種類、性状、発散形態 |
| 適用法令 | 制御風速、抑制濃度など |
| フード形式 | 円形、長方形、スロット型など |
| 開口寸法 | 直径、幅、高さ、長さ |
| 開口面積A | m² |
| 縦横比 | W/L |
| 対象位置までの距離X | m |
| 対象位置の風速Vc | m/s |
| フランジ | 有無、寸法、形状 |
| 壁・作業台 | 接触状態、すき間 |
| 側板・バッフル | 有無、配置 |
| 計算式 | 使用した式と選定理由 |
| 適用条件 | 経験式の成立条件 |
| 必要排風量Q | m³/min |
| 外乱気流 | 方向、風速、発生状況 |
| 作業者の位置 | 呼吸域と汚染気流の関係 |
| 排風機 | 必要風量、必要静圧 |
| ダクト | 寸法、長さ、圧力損失 |
| 性能確認 | 所定位置の制御風速、捕捉状況 |
この表は実務上の計算・確認事項を整理したものであり、すべての項目が一律に法定義務となるわけではありません。
よくある質問
Q1. 外付け式フードの必要排風量は、開口面積と制御風速だけで計算できますか?
できません。
フードの形状、発散源までの距離、周囲の構造なども考慮する必要があります。
Q2. 円形フードと長方形フードは同じ式で計算できますか?
所定の形状や設置条件を満たす単純な円形・長方形フードでは、同じ代表的な経験式を使用できます。
ただし、実際の気流分布まで同一になるわけではありません。
Q3. フランジがあれば必ず25%の風量を削減できますか?
保証されません。
係数0.75は、代表的な実験条件に基づく経験式の値です。
特に開口面へ極端に近い位置では注意が必要です。
Q4. 壁に近いフードは5X²の式で計算できますか?
必ずしもそうではありません。
壁や作業台に接することによって、空気の流入方向が制限される条件が前提です。
Q5. スロット型フードでは開口面積を計算しなくてもよいのですか?
スロット型フードの代表的な捕捉風量の経験式には、開口面積が直接含まれないものがあります。
しかし、スロット開口風速や圧力損失を計算する際には、開口面積が重要になります。
したがって、開口寸法を確認しなくてもよいという意味ではありません。
Q6. 外付け式フードの必要排風量が計算どおりなら、法令上も適合しますか?
計算だけでは判断できません。
適用される法令の性能要件を確認し、実際の設備で所定位置の制御風速などを確認する必要があります。
Q7. 排風量が不足している場合には、まず排風機を大型化すべきですか?
必ずしもそうではありません。
フードと発散源の距離、フード形状、フランジ、外乱気流などを見直すことで、より合理的な改善ができる場合があります。
まとめ|外付け式フードの計算は経験式の選び方が重要
外付け式フードの必要排風量を計算するには、フードの開口形状、発散源までの距離、フランジや壁・作業台の有無などを確認する必要があります。
円形や正方形に近いフードでは、距離の二乗を含む代表的な経験式を使用します。
一方、細長いスロット型フードでは、スロットの長さと距離を用いる別の式が使用されます。
また、フランジや壁・作業台などによって空気の流入方向を制限できる場合には、必要排風量を小さくできる可能性があります。
しかし、経験式は万能ではありません。
特に、フードの開口面へ極端に近い位置や、スロットの長さに対して距離が大きい場合には、式の適用範囲を確認する必要があります。
そして、どのような経験式を使用する場合でも、実際の作業で有害物質を適切に捕捉できるかどうかを確認することが重要です。
外付け式フードの設計では、単に計算結果を求めるだけでなく、その計算式が実際のフードの形状・配置・作業条件に合っているかを判断することが、最も重要な技術的能力の一つです。
次回は、制御風速、捕捉風速、開口面風速、ダクト内風速の違いを、測定位置や目的も含めて整理します。
主な参考資料
- 『やさしい作業環境改善技術』第7章「捕捉フードの必要排風量の計算」(特に円形・長方形、フランジ、壁面、スロット型フードの計算式一覧表および計算上の注意点)
- 『やさしい作業環境改善技術』第9章「フードの形と省エネ対策」
- e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」第14条・第16条・第18条
- 厚生労働省「衛生工学的対策」
- 米国OSHA「OSHA Technical Manual, Section III, Chapter 3:Ventilation Investigation」
※OSHAの資料は、日本国内の法令上の要求事項ではなく、海外の技術参考情報として使用しています。
※本記事の計算例は、経験式の使い方を理解するために設定した仮定条件によるものです。実際の設備の必要排風量、捕捉性能、法令適合を保証するものではありません。


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