【第14回】制御風速・捕捉風速・開口面風速・ダクト内風速の違い|測定位置と使い分けを解説
局所排気装置の性能を確認するとき、「風速が十分に出ているから問題ない」と判断していないでしょうか。
例えば、ある工場で次のような測定結果が得られたとします。
- フードの開口面では5.5 m/s
- 発散源付近では0.5 m/s
- 排気ダクト内部では7.0 m/s
同じ局所排気装置なのに、風速が大きく異なっています。
では、この装置は正常なのでしょうか。それとも、どこかに問題があるのでしょうか。
実は、これらの数値だけで異常とは判断できません。
なぜなら、局所排気装置では、測定する場所によって空気の速度が異なり、風速を確認する目的も異なるためです。
局所排気装置の設計や性能確認では、「制御風速」「捕捉風速」「開口面風速」「ダクト内風速」という用語が使われます。
特に注意したいのは、制御風速と捕捉風速は技術的に密接な関係があり、まったく別の物理量ではないということです。
一方、開口面風速とダクト内風速は、文字どおり測定する場所に着目した用語です。
この記事では、4つの用語の違いを整理し、実際の計算例と現場での測定方法を使って解説します。
さらに、法令上の制御風速と設計上の捕捉風速、ダクト内の搬送速度を混同すると、どのような問題が生じるのかまで説明します。
1. まず4つの風速を比較してみよう
最初に、4つの風速の基本的な意味を整理します。
| 用語 | 主な意味 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 制御風速 | 有害物質を捕捉するため、所定の位置で必要とされる風速 | 設計、法令上の性能確認 |
| 捕捉風速 | フードが有害物質を捕捉するために形成する吸引気流の速度 | フード設計、捕捉性能の検討 |
| 開口面風速 | フードの開口面における空気の速度 | 開口面の風速分布、流入風量の確認 |
| ダクト内風速 | ダクト内部を流れる空気の速度 | 風量計算、圧力損失、粉じん等の搬送 |
すべての風速の単位は、一般にm/sです。
ただし、4つの用語は同じ観点から分類されたものではありません。
制御風速と捕捉風速は、有害物質を捕捉・制御するという目的に関係する用語です。
一方、開口面風速とダクト内風速は、風速を測定する場所に関係する用語です。
このため、例えば囲い式フードでは、開口面風速の最小値が、法令上の制御風速に該当する場合があります。
また、外付け式フードでは、捕捉のために設定した位置が法令上の制御風速の測定位置と一致する場合があります。

2. 制御風速とは?有害物質の拡散を防ぐための風速
制御風速とは、有害物質が周囲へ拡散することを抑え、フードへ取り込むために必要とされる吸引気流の速度です。
例えば、作業台の上で粉じんが発生している場合を考えてみましょう。
粉じんは、作業によって飛散しようとします。
一方、局所排気フードを運転すると、フードへ向かう吸引気流が形成されます。
この吸引気流によって、粉じんが作業者側へ広がることを抑えるわけです。
身近なたとえ|流れる川と小さな船
川を上流へ進もうとする小さな船を考えてみましょう。
船の進む力より川の流れが強ければ、船は上流へ進むことができません。
有害物質と吸引気流の関係も、単純化すればこれに似ています。
有害物質が作業者側へ移動しようとしていても、フードへ向かう気流によって、その移動を抑えられる場合があります。
ただし、実際の粉じんやミストには慣性があり、気流は三次元的に変化します。
したがって、単に有害物質の発散速度より吸引風速が大きければ、必ず捕捉できるというわけではありません。
制御風速はどこで測定するのか?
これは、フードの形式や適用法令によって異なります。
例えば、有機溶剤中毒予防規則第16条では、囲い式フードと外付け式フードで、制御風速の位置が異なります。
囲い式フード
開口面における最小風速を制御風速とします。
外付け式フード
有機溶剤蒸気を吸引しようとする範囲内で、開口面から最も離れた作業位置の風速を制御風速とします。
これは、囲い式と外付け式では、有害物質を捕捉するための気流の使い方が異なるためです。

3. 法令で定められている制御風速はいくつなのか?
日本の労働安全衛生関係法令では、対象物質や作業内容によって局所排気装置の性能要件が定められています。
ここでは、有機溶剤中毒予防規則を例に解説します。
有機溶剤中毒予防規則第16条
同条第1項では、対象となる局所排気装置について、次の制御風速が規定されています。
| フード形式 | 原則となる制御風速 |
|---|---|
| 囲い式フード | 0.4 m/s |
| 外付け式・側方吸引型 | 0.5 m/s |
| 外付け式・下方吸引型 | 0.5 m/s |
| 外付け式・上方吸引型 | 1.0 m/s |
また、この制御風速は、局所排気装置のすべてのフードを開放した場合の値です。
したがって、複数のフードを接続している設備で、一つのフードだけを開放して測定した結果を、そのまま法令上の性能確認結果として扱うことはできません。
なお、同条第2項には一定の場合の例外が規定されています。
また、同規則第18条には、対象となる有機溶剤業務中に所定の制御風速以上で局所排気装置を稼働させることについての規定があります。特例制度も存在するため、適用関係の確認が必要です。
すべての局所排気装置に同じ値を使ってよいのか?
使用できません。
例えば、特定化学物質障害予防規則や粉じん障害防止規則では、対象物質の性状、作業、フード形式などによって要求事項が異なります。
また、鉛や一部の特定化学物質については、抑制濃度を満たす能力が性能要件となる場合があります。
このような設備では、設計時に捕捉のための風速を設定することはありますが、その数値がそのまま法令上の合否判定基準になるわけではありません。
法令で求められる性能と、技術的な設計のために設定する風速は、必ず区別する必要があります。
4. 捕捉風速とは?制御風速とは何が違うのか?
ここが今回の記事で最も重要な部分の一つです。
「捕捉風速」と「制御風速」は、別々の場所で測定するまったく異なる風速だと思われるかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
提供PDF『やさしい作業環境改善技術』第6章では、control velocityとcapture velocityの用語の変遷について説明し、両者の意味を基本的に同じものとして扱っています。
捕捉風速の意味
捕捉風速とは、フードから発生する吸引気流によって、フード外にある有害物質を捕捉するための風速を指す技術用語です。
英語では、capture velocityと呼ばれます。
例えば、作業台の奥にある外付け式フードが、手前にある発散源から蒸気を吸い込む場面を考えます。
このとき、発散源付近でフードへ向かっている気流の速度を、捕捉風速として扱うことがあります。
ただし、設計上どの位置を捕捉の対象とするかは、作業条件によって異なります。
制御風速と捕捉風速の関係
両者の関係を整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 制御風速 | 捕捉風速 |
|---|---|---|
| 主な使い方 | 日本の法令・設計技術 | 換気工学・設計技術 |
| 着目するもの | 有害物質を制御する気流 | 有害物質を捕捉する気流 |
| 位置の決め方 | 適用法令や設計条件による | 設計上の捕捉対象位置による |
| 法令との関係 | 所定の法令で性能基準として使用 | 独立した一律の法定基準値ではない |
重要なのは、制御風速と捕捉風速を、別の種類の物理量として区別しないことです。
例えば、有機溶剤を使用する外付け式フードで、法令上の制御風速を確認する位置における吸引風速を考える場合、その風速を捕捉風速と呼んでも、物理的には同じ位置の同じ気流を表しています。
ただし、技術的に設定した捕捉位置と法令上の制御風速の確認位置が異なる場合には、両者の数値は一致しません。
海外ではどのように扱われているのか?
米国OSHAのTechnical Manualでは、capture velocityを、フード外部で発生した汚染物質を捕捉するためにフードが誘起する気流の速度として説明しています。
これは技術的な定義です。
日本の有機溶剤中毒予防規則第16条の数値や測定位置を、そのまま米国の法的義務として説明するものではありません。
また、OSHAの技術資料にある具体的な捕捉風速やフード配置の推奨値を、日本国内で一律の法的要求事項として扱ってはいけません。
5. 開口面風速とは?フードの入口で測定する風速
開口面風速とは、フードの吸込み口における空気の速度です。
例えば、長方形フードの開口部が200 mm × 200 mmの場合、その面を空気が通過してフード内部へ流れ込みます。
この開口面で測定する風速が、開口面風速です。
開口面風速には平均値と最小値がある
実際のフードでは、開口面のすべての場所で同じ風速が得られるとは限りません。
例えば、4点で測定した結果が、次のとおりだったとします。
| 測定位置 | 開口面風速 |
|---|---|
| A | 0.40 m/s |
| B | 0.45 m/s |
| C | 0.55 m/s |
| D | 0.60 m/s |
この場合、最小風速は0.40 m/sです。
4点が等面積区域を代表している場合、単純平均は、
Vavg = (0.40 + 0.45 + 0.55 + 0.60) ÷ 4
Vavg = 0.50 m/s
となります。
ここで注意したいのは、平均風速と最小風速は異なるということです。
開口面風速から風量を計算する
開口面積をA、開口面に垂直な平均流入風速をVavgとすると、
Q = 60 × A × Vavg
で流入風量を計算できます。
- Q:流入風量(m³/min)
- A:開口面積(m²)
- Vavg:開口面に垂直な平均流入風速(m/s)
ただし、この式で求められるのは、その開口面を通過する風量です。
ほかの開口部やすき間からも空気が流入している場合には、その流入量を考慮する必要があります。
開口面風速は法令上の制御風速と同じなのか?
囲い式フードでは、法令によっては開口面における最小風速が制御風速として定義されています。
そのため、両者が一致する場合があります。
しかし、外付け式フードでは、開口面で測定した風速と、離れた作業位置での制御風速は異なります。
開口面で強い吸引気流があっても、離れた発散源で必要な吸引風速が得られているとは限りません。
この違いは、既設設備の性能確認で特に重要です。
6. 外付け式フードでは、なぜ開口面風速と捕捉風速が大きく違うのか?
外付け式フードでは、開口面から離れるほど吸引気流が弱くなります。
これは、第8回と第9回でも解説した、吸引気流の基本的な性質です。
掃除機の吸込み口を思い浮かべる
掃除機の吸込み口のすぐ近くでは、比較的強い空気の流れが生じています。
しかし、吸込み口から離れると、吸引気流は弱くなります。
局所排気フードでも同様です。
フードの開口面では高い風速があっても、離れた発散源の位置では、風速が大幅に低下する場合があります。
同じ排風量でも風速が違う
例えば、開口面積0.04 m²の外付け式フードが13.2 m³/minの空気を吸い込んでいるとします。
この場合、開口面の平均流入風速は、
Vavg = 13.2 ÷ (60 × 0.04)
Vavg = 5.5 m/s
となります。
一方、フードから0.20 m離れた位置では、同じ排風量でも吸引風速は小さくなります。
自由空間に設けた単純な外付け式フードの代表的な経験式を適用すると、
Q = 60 × Vc × (10X² + A)
です。
この式をVcについて整理すると、
Vc = Q ÷ [60 × (10X² + A)]
となります。
Q = 13.2 m³/min
X = 0.20 m
A = 0.04 m²
を代入すると、
Vc = 13.2 ÷ [60 × (10 × 0.20² + 0.04)]
Vc = 0.50 m/s
となります。
同じフードでも、開口面では平均5.5 m/s、0.20 m離れた位置では計算上0.50 m/sとなりました。

これは説明用の計算例であり、経験式の適用条件を満たす単純なフードを仮定したものです。
実際の風速分布は、フードの形状や周囲の気流によって変わります。
7. ダクト内風速とは?空気を運ぶための風速
次に、ダクト内風速について説明します。
ダクト内風速とは、排気ダクト内部を流れる空気の速度です。
局所排気装置では、フードで捕捉した有害物質を含む空気を、ダクトを通して排風機や空気清浄装置へ運びます。
ダクト内風速は、この空気の搬送に関係する重要な値です。
ダクト内風速と排風量の関係
ダクトの断面積をAd、断面平均風速をVdとすると、風量Qは、
Q = 60 × Ad × Vd
で表すことができます。
したがって、
Vd = Q ÷ (60 × Ad)
となります。
ここで、円形ダクトの断面積は、
Ad = πD² ÷ 4
です。
- Ad:ダクト断面積(m²)
- D:ダクト内径(m)
- Vd:ダクト内平均風速(m/s)
計算例|直径200 mmのダクト
排風量13.2 m³/min、ダクト内径200 mmを仮定します。
内径をmへ換算すると、
D = 0.20 m
です。
断面積は、
Ad = π × 0.20² ÷ 4
Ad ≒ 0.03142 m²
となります。
ダクト内平均風速は、
Vd = 13.2 ÷ (60 × 0.03142)
Vd ≒ 7.0 m/s
となります。
この計算では、排風量13.2 m³/minの空気が、直径200 mmの円形ダクトを通過するときの平均風速は約7.0 m/sです。
ダクト内風速が大きいほどよいのか?
必ずしもそうではありません。
ダクト内風速を大きくすると、同じ流量に対してダクト径を小さくできる場合があります。
しかし、一般に風速が大きくなるほど、ダクトの摩擦損失や局部損失が増加する傾向があります。
その結果、排風機に必要な圧力や消費電力が増える場合があります。
また、騒音が大きくなることも考えられます。
一方、ダクト内風速を小さくしすぎると、粉じんやミストなどが堆積・付着しやすくなる場合があります。
したがって、ダクト内風速は、大きければ大きいほどよいというものではありません。

8. 粉じんを扱う場合は搬送速度に注意する
ここからは、経験者にとって特に重要な内容です。
局所排気装置のダクト内風速には、空気を流すだけでなく、粉じんなどを搬送する役割があります。
例えば、研磨作業で発生した粉じんをフードで捕捉したとしても、ダクト内部の風速が不足していると、粉じんが堆積する可能性があります。
搬送速度とは?
搬送速度とは、粉じんなどの粒子をダクト内部で運搬するために必要となる気流の速度を指します。
これは、ダクト内風速と密接に関係する技術的な概念です。
ただし、空気とともに運ばれる物質の種類によって、必要な条件は異なります。
例えば、細かい粉じんと、比較的粗い金属粉では、粒子の性質が異なります。
また、粉じんの濃度やダクトの向き、曲がり部の有無などによっても堆積のしやすさが変わります。
ダクト内風速に一律の法定値はあるのか?
今回の有機溶剤中毒予防規則第16条で規定されている0.4 m/sや0.5 m/sなどは、ダクト内風速の基準ではありません。
また、今回参照した資料から、すべての局所排気装置に共通して適用できる「ダクト内風速は必ず10 m/s以上」といった一律の法的要求を示すことはできません。
ダクト内の必要な搬送速度は、対象物質や設備条件に応じて技術的に検討する必要があります。
特に粉じんを扱う設備では、単に風量を確保するだけでなく、ダクト内部での堆積を防止できるかを確認することが重要です。
排風量を減らすと搬送速度も変わる
例えば、局所排気フードの形状を改善して必要排風量を減らした場合を考えます。
ダクト径を変更せず排風量だけを減らすと、ダクト内平均風速は低下します。
その結果、粉じんが堆積しやすくなる可能性があります。
したがって、フードの改善によって排風量を減らせる場合でも、ダクトの搬送条件を確認する必要があります。
9. 同じ局所排気装置で4つの風速を比較する
ここまでの内容を、一つの設備で整理してみましょう。
ここでは、外付け式フードを使用した有機溶剤洗浄作業を想定します。
設備条件
| 項目 | 仮定条件 |
|---|---|
| フード形式 | 外付け式・側方吸引型 |
| 開口寸法 | 200 × 200 mm |
| 開口面積 | 0.04 m² |
| フードから対象位置までの距離 | 0.20 m |
| 対象位置で設定する吸引風速 | 0.50 m/s |
| 計算上の排風量 | 13.2 m³/min |
| ダクト内径 | 200 mm |
この条件では、次のような結果になります。
| 風速の種類・位置 | 計算値 | 意味 |
|---|---|---|
| 対象位置の吸引風速 | 0.50 m/s | 有害物質を捕捉するために設定した風速 |
| 開口面の平均風速 | 5.50 m/s | フード入口を通過する平均風速 |
| ダクト内平均風速 | 約7.00 m/s | ダクト内部を流れる空気の平均風速 |
なお、今回の対象位置が法令上の制御風速を確認する位置と一致し、その作業に有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の側方吸引型の原則値が適用される場合、0.50 m/sは制御風速と対応します。
これらは別々の排風量で計算したものではありません。
同じ13.2 m³/minの空気が流れている場合でも、場所や断面積によって風速が変わっているのです。
ただし、これは途中に空気漏れや分岐などがなく、流量が一定であると仮定した計算例です。

なぜダクト内風速が開口面風速より大きいのか?
今回の例では、フードの開口面積が0.04 m²、ダクトの断面積が約0.03142 m²です。
つまり、ダクトの方が断面積が小さくなっています。
同じ風量が通過する場合、断面積が小さい方が平均風速は大きくなります。
このため、開口面で5.5 m/s、ダクト内で約7.0 m/sという結果になりました。
ただし、ダクトの断面積がフードの開口面積より大きければ、ダクト内風速の方が小さくなる場合もあります。
したがって、「ダクト内風速は必ず開口面風速より大きい」と覚えてはいけません。
10. 囲い式フードでは4つの風速をどう考えるのか?
次に、囲い式フードで考えてみましょう。
例えば、前面開口寸法が600 mm × 400 mmのブース型フードを想定します。
開口面で風速を測定したところ、次の結果が得られたとします。
- 最小風速:0.40 m/s
- 平均風速:0.50 m/s
開口面積と排風量
開口面積は、
A = 0.60 × 0.40
A = 0.24 m²
です。
平均風速0.50 m/sの場合、開口面からの流入風量は、
Q = 60 × 0.24 × 0.50
Q = 7.20 m³/min
となります。
制御風速は0.40 m/s
仮に有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則が適用される囲い式フードであれば、開口面の最小風速0.40 m/sが、制御風速の評価に関係します。
一方、風量の計算には平均風速0.50 m/sを使用しました。
この違いを理解することが重要です。
ダクト内風速を求める
ここで、ダクト内径を150 mmと仮定します。
ダクトの断面積は、
Ad = π × 0.15² ÷ 4
Ad ≒ 0.01767 m²
です。
ダクト内平均風速は、
Vd = 7.20 ÷ (60 × 0.01767)
Vd ≒ 6.79 m/s
となります。
整理すると、次のようになります。
| 測定・計算項目 | 値 |
|---|---|
| 開口面の最小風速 | 0.40 m/s |
| 開口面の平均風速 | 0.50 m/s |
| 開口部からの流入風量 | 7.20 m³/min |
| ダクト内平均風速 | 約6.79 m/s |
このように、囲い式フードでは、開口面の最小風速と平均風速を区別しながら排風量を計算します。
11. 4つの風速は現場でどのように測定するのか?
ここからは、実際の現場で風速を測定するときの注意点です。
風速を正しく評価するには、何のために測定するのかを最初に明確にする必要があります。
① 制御風速の測定
制御風速は、適用法令で定められた位置と方法に従って測定する必要があります。
例えば、有機溶剤中毒予防規則の対象となる囲い式フードでは、開口面の最小風速が重要になります。
一方、外付け式フードでは、フード開口面から最も離れた所定の作業位置が重要になります。
厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」では、熱線風速計等による測定方法が示されています。
囲い式フードについては、原則として開口面を16以上の等面積部分に分割し、各部分の一辺を0.5 m以下として中心で測定する方法が示されています。
開口面が著しく小さい場合には、別の分割数の取扱いがあります。
② 捕捉風速の確認
設計上の捕捉対象位置で、吸引気流の速度と方向を調べます。
例えば、外付け式フードの発散源付近で風速を測定し、設計で想定した吸引気流が得られているか確認します。
ただし、風速の大きさだけでなく、気流の方向も重要です。
発散源の周囲に横風がある場合などには、フードへ向かう気流が妨げられる可能性があります。
③ 開口面風速の測定
フードの開口面における風速分布を確認します。
特に、広い開口面を持つフードでは、場所によって風速にむらが生じることがあります。
風量を計算する目的で測定する場合には、各区域を代表する開口面に垂直な流入風速成分を把握する必要があります。
単に風速計の指示値を無条件に平均してよいわけではありません。
④ ダクト内風速の測定
ダクト内風速は、ピトー管や適切な風速計などを用いて測定します。
ダクト内部では、壁面付近と中心部で風速が異なるため、1点だけの測定では平均風速を正確に求められない場合があります。
そのため、ダクト断面内の複数点で測定し、平均風速を求める方法が使用されます。
また、エルボや分岐部の近くでは、偏流や旋回流が存在する場合があります。
測定位置の選定、測定孔の配置、測定器の特性などに注意が必要です。

12. ダクト内風速から排風量を確認するときの注意点
例えば、ダクト内の一点で8.0 m/sという風速が得られたとします。
この数値を、そのまま断面平均風速として排風量を計算してよいのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
ダクト内部の流れは、一般に断面内で均一ではありません。
特に、曲がり部の下流や分岐の近くでは、風速分布が大きく偏る場合があります。
このような場所で1点測定した値を平均風速として扱うと、風量を過大評価したり、過小評価したりする可能性があります。
トラバース測定とは?
トラバース測定とは、ダクト断面内の複数の位置で風速を測定し、その分布から断面平均風速や風量を求める方法です。
例えば、円形ダクトでは、断面を複数の等面積部分に分け、適切な測定点で風速や速度圧を測定する方法があります。
ピトー管によって速度圧を測定した場合には、空気密度などを考慮して風速へ換算します。
風速分布が一様でないため、速度圧の単純平均から直接平均風速を求めてよいとは限りません。
圧力損失との関係
ダクト内風速が変化すると、速度圧も変化します。
速度圧Pvは、
Pv = ρV² ÷ 2
で求められます。
- Pv:速度圧(Pa)
- ρ:空気密度(kg/m³)
- V:風速(m/s)
例えば、空気密度を1.2 kg/m³と仮定すると、ダクト内風速が5 m/sの場合、
Pv = 1.2 × 5² ÷ 2
Pv = 15 Pa
です。
風速が10 m/sの場合には、
Pv = 1.2 × 10² ÷ 2
Pv = 60 Pa
となります。
風速が2倍になると、速度圧は4倍になります。
ただし、速度圧と圧力損失は同じものではありません。
実際の圧力損失を求めるには、ダクトの長さ、断面形状、曲がり、損失係数などを考慮する必要があります。
13. 実務例|開口面風速が高いのに有機溶剤蒸気を捕捉できない
ここでは、架空の洗浄作業場を考えます。
作業台の奥に、側方吸引型の外付け式フードが設置されています。
作業者は、手前側で有機溶剤を使用して部品を洗浄しています。
排風機は正常に運転しており、フードの開口面では強い吸引気流が感じられます。
しかし、洗浄作業中には、蒸気の一部が作業者側へ流れることがあります。
現場で確認したいこと
まず、次の内容を調べます。
- フードの開口面積と開口面風速
- 発散源からフードまでの距離
- 対象作業位置における吸引風速
- 作業者の呼吸域と気流の位置関係
- 扉や空調設備による外乱気流
- ダクト内の排風量
- 排風機とダクト系統の状態
例えば、開口面の平均風速が十分に高くても、発散源がフードから遠い場合には、その位置の吸引風速が小さくなっている可能性があります。
改善案① フードと発散源の距離を見直す
まず、フードを発散源へ近づけられないか検討します。
ただし、作業者が無理な姿勢になったり、蒸気が呼吸域を通過する配置になったりしないようにする必要があります。
改善案② 周囲の外乱気流を減らす
例えば、空調設備からの吹出し気流が、フードへ向かう吸引気流を妨げている場合があります。
そのような場合には、空調の吹出し方向を変更したり、適切な側板を設けたりする方法を検討します。
改善案③ 排風量と圧力損失を確認する
フードの配置だけでなく、排風量そのものが不足している可能性もあります。
例えば、ダクト内部に堆積物がある場合や、空気清浄装置の抵抗が増えている場合には、実際の排風量が低下することがあります。
このような場合には、排風量、静圧、排風機の運転状態などを確認します。
改善案④ 実作業で捕捉性能を確認する
改善後は、単に開口面風速が増えたことだけで判断せず、実際の作業条件で汚染気流が適切に捕捉されているか確認します。
必要に応じて、安全性を確認したうえで適切な気流の可視化方法を用います。
また、ばく露状況の評価が必要な場合には、作業環境測定や個人ばく露測定など、目的に応じた評価方法を検討します。

※この事例は技術的な検討方法を説明するための架空事例です。
14. 経験者が注意したい7つのポイント
① 制御風速と捕捉風速を別の物理量として扱わない
両者は技術的に共通する概念を持っています。
ただし、法令上の制御風速の位置や数値と、設計時に設定した捕捉風速を混同してはいけません。
② 開口面風速が高いことだけで性能を判断しない
特に外付け式フードでは、開口面から離れた対象位置における吸引風速が重要です。
開口面で高い風速が得られても、十分な捕捉性能があるとは限りません。
③ 開口面の平均風速と最小風速を混同しない
囲い式フードの風量計算では平均流入風速を使用します。
一方、適用法令によっては、開口面の最小風速が制御風速として定められています。
④ ダクト内風速を制御風速と混同しない
ダクト内で10 m/sの風速が得られていても、発散源付近で0.5 m/sの吸引風速が得られているとは限りません。
⑤ ダクト内風速の1点測定から風量を断定しない
ダクト内の風速分布は一様ではありません。
風量を求める際には、適切な測定位置と複数点の測定などによって平均風速を把握する必要があります。
⑥ 粉じんの搬送に必要な風速を確認する
粉じんを扱う局所排気装置では、ダクト内風速が不足すると粉じんが堆積する可能性があります。
フードの必要排風量だけでなく、ダクト内の搬送条件も確認する必要があります。
⑦ 法令適合と実作業のばく露低減を区別する
制御風速は重要な法令上の性能要件です。
しかし、所定の制御風速を満たしていても、発散条件や外乱気流などによって有害物質が漏れ出す可能性があります。
そのため、必要に応じて実作業での捕捉性能やばく露状況も評価します。
15. 現場で使える風速測定チェックリスト
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 測定目的 | 法令適合、捕捉性能、風量確認、搬送条件など |
| 対象物質 | ガス、蒸気、ミスト、粉じんなど |
| 適用法令 | 制御風速、抑制濃度などの要求事項 |
| フード形式 | 囲い式、外付け式など |
| 制御風速 | 法令上の所定位置と値 |
| 捕捉風速 | 設計上の捕捉対象位置と風速 |
| 開口面風速 | 平均値、最小値、風速分布 |
| ダクト内風速 | 平均風速、測定位置、分布 |
| 測定器 | 測定範囲、方向特性、校正状態 |
| 測定条件 | 作業状態、フード開放状態、排風機運転条件 |
| 外乱気流 | 空調、扉、給気、設備の運動 |
| 呼吸域 | 汚染気流が作業者へ向かっていないか |
| 排風量 | 計算値と実測値 |
| ダクト | 堆積、閉塞、漏れ、圧力損失 |
| 改善後 | 必要な性能が維持されているか |
このチェックリストは、技術的な確認事項を整理したものであり、すべての項目が一律に法的義務となるものではありません。
よくある質問
Q1. 制御風速と捕捉風速は同じものですか?
基本的には共通する技術的概念を持っています。
ただし、日本の法令に定められた制御風速には、対象設備、数値、測定位置などの規定があります。
設計上の捕捉風速と法定制御風速は、目的に応じて区別する必要があります。
Q2. 外付け式フードの開口面風速が3.0 m/sなら十分ですか?
それだけでは判断できません。
開口面から離れた対象作業位置で、必要な吸引風速が確保されているか確認する必要があります。
Q3. ダクト内風速から排風量を求めることはできますか?
できます。
ダクトの断面積と、断面に垂直な平均風速が分かれば、Q = 60 × A × Vで風量を計算できます。
ただし、平均風速を正しく求める必要があります。
Q4. ダクト内風速が10 m/sあれば、粉じんは堆積しませんか?
保証されません。
粉じんの粒径、密度、濃度、ダクトの構造などによって、必要な搬送条件は異なります。
Q5. 開口面風速だけを測定してもよいですか?
測定の目的によります。
開口面の吸引状態や流入風量を確認する目的では有用です。
しかし、外付け式フードの法令上の制御風速を確認する目的では、開口面風速だけでは不十分です。
Q6. 制御風速を満たしていれば、作業者のばく露は十分に低減されていますか?
必ずしもそうではありません。
制御風速は重要な性能指標ですが、発散状況、気流方向、作業者の位置なども考慮する必要があります。
まとめ|風速は数値だけでなく測定位置と目的が重要
局所排気装置では、制御風速、捕捉風速、開口面風速、ダクト内風速という用語が使われます。
これらを理解するときには、最初に測定位置と目的を確認することが重要です。
制御風速は、有害物質を制御するために所定の位置で必要とされる風速です。日本の法令では、対象設備に応じた性能要件として規定される場合があります。
捕捉風速は、有害物質を捕捉するためにフードが形成する吸引気流の速度です。制御風速と共通する概念ですが、技術的な設計条件と法令上の要求事項は区別します。
開口面風速は、フードの開口面での風速です。平均風速や最小風速を区別して使用する必要があります。
ダクト内風速は、ダクト内部で空気が流れる速度です。風量計算や圧力損失、粉じんの搬送条件などの検討に使用します。
また、同じ排風量であっても、場所や断面積によって風速は異なります。
そのため、開口面やダクト内部で高い風速が得られていても、発散源付近で十分な捕捉風速が得られているとは限りません。
局所排気装置の性能を評価するときに重要なのは、風速の数値だけで判断するのではなく、その風速がどこで、何のために測定された値なのかを理解することです。
この考え方を身につけることで、設計計算の誤りを防ぎ、既設設備の吸引不良や性能低下の原因を適切に調査しやすくなります。
次回は、ダクト径と風速の関係を中心に、排風量、ダクト断面積、搬送速度、圧力損失を組み合わせて解説します。
主な参考資料
- 『やさしい作業環境改善技術』第6章「フードの性能の表し方」、第7章「捕捉フードの必要排風量の計算」
- e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」第16条・第18条
- 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について
- 厚生労働省「有機溶剤中毒予防規則の施行について」
- 米国OSHA「OSHA Technical Manual, Section III, Chapter 3:Ventilation Investigation」
※OSHAの資料は海外の技術参考情報として使用しています。日本の法令上の要求事項を示すものではありません。
※本記事の数値計算は、風速の違いを説明するために設定した仮定条件によるものです。実際の設備の性能や法令適合を保証するものではありません。


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