【第15回】ダクト径と風速の関係|排風量・搬送速度・圧力損失の計算
局所排気装置を設計するとき、フードの必要排風量が決まったら、次は何をすればよいのでしょうか。
その一つが、排気ダクトの太さを決めることです。
例えば、必要排風量が12 m³/minの局所排気装置を設計する場合、直径125 mmのダクトを使用するのか、150 mmにするのか、200 mmにするのかによって、内部を流れる空気の速度が変わります。
ダクトを細くすると空気の速度が大きくなり、粉じんなどを運びやすくなる場合があります。
一方、風速が大きくなると圧力損失が増加し、排風機に必要な能力も大きくなる可能性があります。
反対に、ダクトを太くすると風速が小さくなり、圧力損失を減らせる場合があります。しかし、粉じんを含む空気を運ぶ設備では、風速の低下によってダクト内に粉じんが堆積するおそれがあります。
つまり、ダクトは太ければよいわけでも、細ければよいわけでもありません。
この記事では、ダクト径・排風量・風速の関係を基本式から説明し、必要なダクト径を計算する手順を解説します。
さらに、粉じんを運ぶための搬送速度、速度圧、直管圧力損失の計算方法、実際の設備で確認すべき事項まで取り上げます。
1. 局所排気装置では、なぜダクト径を計算するのか?
局所排気装置は、フードで有害物質を捕捉するだけでは機能しません。
捕捉した有害物質を含む空気を、ダクトを通して排風機や必要な空気清浄装置へ運び、適切に排出する必要があります。
一般的な局所排気装置では、空気は次のような経路を通ります。
フード → ダクト → 空気清浄装置 → 排風機 → 排気口
※装置の構成や排風機・空気清浄装置の配置は、対象物質や設備条件によって異なります。
この経路のうち、空気を運ぶ役割を担っているのがダクトです。
ダクトには2つの重要な役割がある
一つ目は、必要な排風量を確保できる空気の通路を形成することです。
二つ目は、捕捉した粉じんやミストなどを、途中で過度に堆積・付着させずに運ぶことです。
例えば、有機溶剤蒸気を運ぶ設備では、ダクト内部で粉じんが堆積する問題は通常ありません。ただし、冷却による凝縮や腐食には注意が必要です。
一方、粉体を取り扱う設備では、吸引した粉じんがダクト内部に堆積する可能性があります。
この違いによって、ダクト径を選定するときの考え方が変わります。

2. 排風量・ダクト断面積・風速の関係
最初に、ダクト設計で最も重要な基本式を確認しましょう。
Q = 60 × A × V
ここで、
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Q | 排風量 | m³/min |
| A | ダクトの内側の断面積 | m² |
| V | ダクト内の断面平均風速 | m/s |
です。
この式は、一定時間に断面を通過する空気量を表しています。
なぜ60を掛けるのか?
例えば、断面積が0.02 m²、平均風速が10 m/sだったとします。
1秒間に流れる空気の体積は、
0.02 × 10 = 0.20 m³/s
です。
1分間に換算すると、
0.20 × 60 = 12 m³/min
となります。
したがって、
Q = 12 m³/min
です。
この60は秒から分へ換算するための係数です。
排風量をm³/sで計算する場合には、この60は必要ありません。
断面積が変わると風速が変わる
基本式を風速Vについて整理すると、
V = Q ÷ (60 × A)
となります。
この式から、排風量Qが一定であれば、ダクト断面積Aが大きくなるほど風速Vは小さくなることが分かります。
反対に、断面積が小さくなるほど風速は大きくなります。
例えば、同じ道路を通過する車を考えてみましょう。
車線が少ない道路と広い道路では、車の混雑状況が変わります。
空気にも似た関係がありますが、ダクトの場合は流量と断面積から平均風速が決まるという点が重要です。
3. 円形ダクトの断面積と直径を求める
局所排気装置には、円形のスパイラルダクトなどがよく使用されます。
円形ダクトの断面積は、次の式で求めます。
A = πD² ÷ 4
- A:ダクト断面積(m²)
- D:ダクト内径(m)
- π:円周率
例えば、内径150 mmの円形ダクトであれば、
D = 0.15 m
なので、
A = π × 0.15² ÷ 4
A ≒ 0.01767 m²
となります。
直径が2倍になると断面積は4倍になる
ここで重要なのは、断面積が直径の二乗に比例することです。
例えば、内径100 mmのダクトと200 mmのダクトを比較すると、
200 ÷ 100 = 2
なので、直径は2倍です。
しかし、断面積は、
2² = 4
となり、4倍になります。
したがって、同じ排風量であれば、直径を2倍にしたときの平均風速は4分の1になります。

4. 計算例①|排風量12 m³/minでダクト径を変える
ここでは、必要排風量12 m³/minの局所排気装置を想定します。
内径125 mm、150 mm、200 mmの3種類の円形ダクトを比較します。
計算条件
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| 排風量 | 12 m³/min |
| 比較する内径 | 125・150・200 mm |
| ダクト形状 | 円形 |
| 空気の状態 | 一様な密度の空気を仮定 |
排風量を一定とすることで、ダクト径が平均風速に与える影響を比較します。
① 内径125 mmの場合
D = 0.125 m
断面積は、
A = π × 0.125² ÷ 4
A ≒ 0.01227 m²
です。
平均風速は、
V = 12 ÷ (60 × 0.01227)
V ≒ 16.30 m/s
となります。
② 内径150 mmの場合
D = 0.150 m
断面積は、
A = π × 0.150² ÷ 4
A ≒ 0.01767 m²
です。
平均風速は、
V = 12 ÷ (60 × 0.01767)
V ≒ 11.32 m/s
となります。
③ 内径200 mmの場合
D = 0.200 m
断面積は、
A = π × 0.200² ÷ 4
A ≒ 0.03142 m²
です。
平均風速は、
V = 12 ÷ (60 × 0.03142)
V ≒ 6.37 m/s
となります。
計算結果を比較する
| ダクト内径 | 断面積 | 平均風速 |
|---|---|---|
| 125 mm | 0.01227 m² | 16.30 m/s |
| 150 mm | 0.01767 m² | 11.32 m/s |
| 200 mm | 0.03142 m² | 6.37 m/s |
同じ12 m³/minの空気を運んでいるのに、ダクト径によって平均風速が大きく異なることが分かります。

では、どのダクト径を選べばよいのでしょうか。
この時点では、まだ判断できません。
なぜなら、必要なダクト径は、運ぶ物質の性質と圧力損失などによって変わるためです。
5. 搬送速度とは?ダクト内風速と何が違うのか?
ここで、局所排気装置の設計に重要な「搬送速度」について説明します。
搬送速度とは、粉じんなどの粒子状物質を、ダクト内部で過度に堆積させずに運ぶために必要となる空気の速度です。
英語では、transport velocityやconveying velocityと呼ばれます。
ダクト内風速と搬送速度は別の物理量なのか?
両者は、別々の物理量ではありません。
ダクト内風速は、実際にダクト内部を流れる空気の速度です。
一方、搬送速度は、粒子状物質を運ぶという目的に着目した速度です。
実務では、必要な搬送速度を設定し、それを満たすようにダクト内平均風速を設計します。
身近なたとえ|水に流される砂
水路を流れる砂を考えてみましょう。
水の流れが弱いと、砂は水路の底に沈みやすくなります。
流れが強くなると、砂は水に運ばれやすくなります。
ダクト内の粉じんも、これに似た現象が起こります。
ただし、空気中の粒子の挙動は、水中の砂と完全に同じではありません。
粒径、密度、粒子形状、湿り気、凝集性、粉じん濃度などによって挙動が変化します。
ガス・蒸気の場合
ガスや蒸気が空気と十分に混合している場合、粉じんのような粒子の沈降を防ぐための搬送速度を設定する必要は通常ありません。
そのため、ダクト内風速を比較的小さくして、圧力損失を低減できる場合があります。
ただし、冷却によって蒸気が凝縮する場合や、腐食性の物質を含む場合には別の検討が必要です。
粉じんの場合
粉じんを含む空気では、ダクト内風速が小さすぎると、粉じんが堆積する可能性があります。
特に、次のような場所には注意が必要です。
- 水平方向に長く設置されたダクト
- エルボなどの曲がり部
- 断面積が急に大きくなる部分
- ダクトの分岐・合流部分
- 風量が不足している分岐ダクト
粉じんが堆積すると、ダクトの有効断面積が小さくなったり、圧力損失が増加したりする可能性があります。
その結果、局所排気装置の性能が低下することがあります。
6. 搬送速度は何m/sに設定すればよいのか?
ここで注意が必要なのは、すべての局所排気装置に共通する搬送速度があるわけではないことです。
しかし、これらは技術的な経験値として掲載されたものであり、すべての設備にそのまま適用できる法定値ではありません。
特に、古い技術資料に掲載された数値を使用する際には、対象物質、ダクト構造、粉じん濃度、設備の摩耗などを確認する必要があります。
何を確認して搬送速度を決めるのか?
主な確認項目は、次のとおりです。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 粒径 | 粉じんの粒子の大きさ |
| 密度 | 粒子が比較的重いか軽いか |
| 粒子形状 | 球状、繊維状、不規則形状など |
| 湿り気 | 湿った粉じん、付着しやすい粉じん |
| 粉じん濃度 | 搬送する空気に含まれる粉じんの量 |
| ダクトの向き | 水平、垂直、傾斜 |
| 曲がり部 | エルボの数、曲率半径 |
| 材質 | 摩耗、腐食、付着への耐性 |
例えば、比較的粗い粒子を大量に吸引する場合と、微細なヒュームを吸引する場合では、検討する条件が異なります。
また、硬い粒子を高い風速で搬送すると、ダクトの内面が摩耗する可能性があります。
そのため、必要以上に風速を大きくすることも適切ではありません。
搬送速度は、粉じんの堆積防止と、圧力損失・設備摩耗のバランスを考えて設定する必要があります。
7. 計算例②|必要な風速からダクト径を求める
ここでは、設計上必要なダクト内平均風速が10 m/sと設定された場合を考えます。
※10 m/sは計算方法を説明するための仮定値です。すべての粉じんに適用できる搬送速度や法定値ではありません。
計算条件
- 必要排風量Q:12 m³/min
- 設計上の風速V:10 m/s
- ダクト形状:円形
まず、必要な断面積を求めます。
基本式は、
Q = 60 × A × V
です。
これをAについて整理すると、
A = Q ÷ (60 × V)
となります。
数値を代入すると、
A = 12 ÷ (60 × 10)
A = 0.0200 m²
となります。
断面積からダクト径を求める
円形ダクトでは、
A = πD² ÷ 4
です。
これをDについて整理すると、
D = √(4A ÷ π)
となります。
したがって、
D = √(4 × 0.0200 ÷ π)
D ≒ 0.1596 m
となります。
mmへ換算すると、
D ≒ 159.6 mm
です。
つまり、この仮定条件では、内径約160 mmの円形ダクトが計算上の値になります。
計算結果をそのまま採用してよいのか?
実際の設計では、入手可能なダクトの寸法、板厚、内径、接続部品などを考慮する必要があります。
例えば、内径150 mmを使用する場合には、平均風速は約11.32 m/sになります。
一方、内径200 mmを使用する場合には、平均風速は約6.37 m/sになります。
ここで、設計上の搬送速度として10 m/s以上を確保する必要があると判断しているならば、内径200 mmでは条件を満たしません。
ただし、内径150 mmであっても、圧力損失やダクト摩耗などを確認する必要があります。
計算で求めた直径を丸めた場合には、必ず採用した内径から風速を計算し直してください。
8. ダクト内風速が大きくなると何が起こるのか?
ダクト内風速を大きくすると、空気の運動に関係する圧力が大きくなります。
この圧力を、速度圧と呼びます。
速度圧は、次の式で求められます。
Pv = ρV² ÷ 2
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Pv | 速度圧 | Pa |
| ρ | 空気密度 | kg/m³ |
| V | 平均風速 | m/s |
例えば、空気密度を1.20 kg/m³、風速を10 m/sと仮定すると、
Pv = 1.20 × 10² ÷ 2
Pv = 60 Pa
となります。
風速が2倍になると速度圧は4倍になる
風速が5 m/sの場合は、
Pv = 1.20 × 5² ÷ 2
Pv = 15 Pa
です。
風速が10 m/sの場合は、
Pv = 60 Pa
です。
風速が2倍になると速度圧は4倍になっています。
この関係は、局所排気装置の圧力損失を理解するうえで非常に重要です。
ただし、速度圧と圧力損失は同じものではありません。
速度圧は気流の運動に対応する圧力であり、圧力損失は流れの途中で摩擦や局部抵抗などによって失われる機械的エネルギーを圧力で表したものです。

9. ダクト径が変わると圧力損失はどうなるのか?
ここからは、ダクト径と圧力損失の関係を計算します。
ダクト内部を空気が流れると、ダクト内面との摩擦によって圧力損失が発生します。
円形ダクトの直管摩擦損失を表す代表的な式に、ダルシー・ワイスバッハ式があります。
ΔP = λ × (L ÷ D) × Pv
ここで、
- ΔP:直管の摩擦圧力損失(Pa)
- λ:ダルシー管摩擦係数(無次元)
- L:ダクトの長さ(m)
- D:ダクト内径(m)
- Pv:速度圧(Pa)
です。
速度圧の式を代入すると、
ΔP = λ × (L ÷ D) × (ρV² ÷ 2)
となります。
この式から、圧力損失は風速だけでなく、ダクトの長さ、内径、管摩擦係数、空気密度にも関係することが分かります。
ここで注意したいこと
「圧力損失は風速の二乗に比例する」という説明をよく見かけます。
これは、ダクトの長さ、内径、管摩擦係数、空気密度が同じ場合の関係です。
今回のようにダクト径自体を変更する場合には、速度圧だけでなく、L/Dの項も変わります。
したがって、ダクト径の変更による直管圧力損失を比較する際には、式全体を使用する必要があります。
10. 計算例③|内径125・150・200 mmの直管圧力損失を比較する
ここでは、先ほどの排風量12 m³/minの設備について、ダクト径を変えたときの直管圧力損失を比較します。
計算条件
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| 排風量Q | 12 m³/min |
| 直管長さL | 10 m |
| 空気密度ρ | 1.20 kg/m³ |
| ダルシー管摩擦係数λ | 0.025 |
| ダクト形状 | 円形 |
| 比較内径 | 125・150・200 mm |
※管摩擦係数0.025は説明用の仮定値です。実際には、レイノルズ数やダクト内面の粗さなどに基づいて求めます。
※本節では、すべてのダクト径で同じ排風量12 m³/minを維持できるものと仮定します。
① 内径125 mmの場合
先ほど計算した平均風速は、
V ≒ 16.30 m/s
です。
速度圧は、
Pv = 1.20 × 16.297² ÷ 2
Pv ≒ 159.36 Pa
となります。
直管圧力損失は、
ΔP = 0.025 × (10 ÷ 0.125) × 159.36
ΔP ≒ 318.73 Pa
となります。
② 内径150 mmの場合
平均風速は、
V ≒ 11.32 m/s
です。
速度圧は、
Pv ≒ 76.85 Pa
となります。
直管圧力損失は、
ΔP = 0.025 × (10 ÷ 0.150) × 76.85
ΔP ≒ 128.09 Pa
となります。
③ 内径200 mmの場合
平均風速は、
V ≒ 6.37 m/s
です。
速度圧は、
Pv ≒ 24.32 Pa
となります。
直管圧力損失は、
ΔP = 0.025 × (10 ÷ 0.200) × 24.32
ΔP ≒ 30.40 Pa
となります。
3種類の計算結果
| 内径 | 風速 | 速度圧 | 直管圧力損失 |
|---|---|---|---|
| 125 mm | 16.30 m/s | 159.36 Pa | 318.73 Pa |
| 150 mm | 11.32 m/s | 76.85 Pa | 128.09 Pa |
| 200 mm | 6.37 m/s | 24.32 Pa | 30.40 Pa |

この計算例では、内径125 mmと200 mmの直管圧力損失に約10.5倍の差が生じています。
ただし、これは同じ排風量、同じ長さ、同じ空気密度、同じ管摩擦係数を仮定した比較です。
実際には、ダクト径が変わると管摩擦係数も変化する可能性があります。
また、排風機の運転条件が同じ場合、ダクト径を変更すれば実際の排風量自体が変化することがあります。
そのため、今回の数値をそのまま既設設備の改造後の実測値として扱うことはできません。
11. 直管圧力損失はなぜダクト径の影響を強く受けるのか?
ここでは、前節の計算結果をもう少し掘り下げてみましょう。
円形ダクトでは、
A = πD² ÷ 4
です。
また、
Q = 60 × A × V
なので、
V = 4Q ÷ (60πD²)
となります。
この式から、排風量Qが一定であれば、平均風速Vはダクト内径Dの二乗に反比例します。
さらに、直管圧力損失は、
ΔP = λ × (L ÷ D) × (ρV² ÷ 2)
です。
同じ排風量、同じダクト長さ、同じ空気密度、同じ管摩擦係数と仮定すると、
V ∝ 1/D²
ですから、
V² ∝ 1/D⁴
となります。
また、式には1/Dという項もあります。
したがって、
ΔP ∝ 1/D⁵
という関係になります。
つまり、この単純化した条件では、ダクト径を大きくすると直管圧力損失は非常に小さくなるのです。
ただし、実際には管摩擦係数も変わるため、常に完全な五乗則が成立するわけではありません。
また、設備全体の圧力損失にはフード、エルボ、空気清浄装置などの損失も含まれます。
このため、直管だけの五乗則を、設備全体の圧力損失や排風機動力へそのまま当てはめてはいけません。
12. エルボやダンパーの圧力損失も考慮する
ここまで計算したのは、まっすぐなダクトの摩擦圧力損失です。
しかし、実際の局所排気装置にはエルボ、分岐、ダンパー、異径継手などがあります。
これらの部分でも圧力損失が発生します。
局部圧力損失は、代表的には次の式で表せます。
ΔPlocal = ζ × Pv
- ΔPlocal:局部圧力損失(Pa)
- ζ(ゼータ):局部損失係数(無次元)
- Pv:基準とする断面の速度圧(Pa)
局部損失係数ζは、継手の形状や流れの条件によって異なります。
計算例|150 mmダクトにエルボがある場合
排風量12 m³/min、内径150 mmの場合、速度圧は約76.85 Paでした。
ここで、エルボの局部損失係数を仮に0.8とします。
すると、
ΔPlocal = 0.8 × 76.85
ΔPlocal ≒ 61.48 Pa
となります。
直管10 mの摩擦圧力損失は、約128.09 Paでした。
したがって、今回の直管とエルボ1個についての合計損失は、
128.09 + 61.48
約189.57 Pa
です。
ただし、この値には、フード入口、その他の継手、空気清浄装置、排気口などの損失は含まれていません。
また、局部損失係数0.8は説明用の仮定値です。
実際の設計では、使用する継手に対応した資料から損失係数を確認する必要があります。
13. ダクトを太くすれば排風量は増えるのか?
ここは、現場で特に誤解されやすい部分です。
ここまでの計算では、排風量を12 m³/minで固定して比較してきました。
しかし、実際の設備では、ダクト径を変更すると流路抵抗が変わります。
その結果、排風機の運転点が変わり、排風量も変化する可能性があります。
排風機には特性曲線がある
排風機は、どのような圧力条件でも一定の風量を出せるわけではありません。
一般に、排風機が発生できる圧力と風量の関係は、ファン性能曲線として示されます。
一方、ダクト系統にも、風量と必要圧力の関係があります。
実際の運転点は、この2つの特性が釣り合うところで決まります。
したがって、ダクト径を大きくして圧力損失を減らした場合、同じ排風機の運転条件であれば、排風量が増えることがあります。
反対に、ダクト径を小さくして圧力損失を増やした場合には、排風量が減ることがあります。
なぜダクト径の変更後に風量を測定するのか?
例えば、計算では内径125 mmから150 mmへ変更することで圧力損失が小さくなると予測できても、実際の排風量がどれだけ変わるかは、排風機の特性などを確認しなければ分かりません。
そのため、ダクト径の変更後には、風量や制御風速などを確認する必要があります。

14. 粉じんを扱うダクトでは、なぜ太くしすぎてはいけないのか?
例えば、粉体投入設備で発生する粉じんを局所排気装置で吸引しているとします。
現在は、内径150 mmのダクトで、必要な排風量を確保できています。
ここで、省エネルギーを目的として内径200 mmへ変更する場合を考えます。
同じ排風量12 m³/minで比較すると、
- 150 mm:11.32 m/s
- 200 mm:6.37 m/s
となります。
ダクト径を大きくすると、平均風速が約44%低下する計算です。
この風速低下によって、粉じんが堆積しやすくなる可能性があります。
粉じんが堆積するとどうなるのか?
粉じんがダクト内部に堆積すると、次のような問題が起こる可能性があります。
第一に、流路が狭くなり、圧力損失が増加することがあります。
第二に、排風量が低下し、フードの捕捉性能が悪化することがあります。
第三に、堆積物の清掃や除去が必要になり、設備保全の負担が増える場合があります。
さらに、可燃性粉じんを扱う場合には、堆積物や着火源などに関する別の危険性も評価する必要があります。
ダクトの大型化を判断するためには?
まず、対象となる粉じんの性質を確認します。
そのうえで、変更後の搬送速度が適切であるか、使用する技術資料や類似設備の実績などに基づいて判断します。
また、ダクト径の変更によって実際の排風量も変化するため、変更後の運転条件を予測する必要があります。
粉じんを運ぶ設備では、直管圧力損失を小さくすることだけを優先してはいけません。
15. 角形ダクトでは、どのように風速と圧力損失を計算するのか?
局所排気装置では、円形ダクトだけでなく、長方形の角形ダクトを使用する場合もあります。
例えば、天井裏や梁の間など、設置スペースに制約がある場合です。
角形ダクトの断面積
幅a、高さbの長方形ダクトでは、
A = a × b
です。
例えば、
幅300 mm、高さ200 mmなら、
A = 0.30 × 0.20
A = 0.060 m²
となります。
平均風速は、
V = Q ÷ (60 × A)
で求められます。
円形ダクトと同じ断面積なら圧力損失も同じなのか?
必ずしも同じではありません。
角形ダクトと円形ダクトでは、流路の周長や壁面との接触条件などが異なります。
そのため、同じ断面積と風量でも、摩擦圧力損失が異なる場合があります。
水力直径とは?
非円形ダクトの摩擦圧力損失を検討する方法の一つに、水力直径を用いる方法があります。
水力直径Dhは、
Dh = 4A ÷ P
で求められます。
- A:流路断面積(m²)
- P:流体が接する周長(m)
長方形ダクトの場合は、
Dh = 2ab ÷ (a + b)
となります。
例えば、幅0.30 m、高さ0.20 mであれば、
Dh = 2 × 0.30 × 0.20 ÷ (0.30 + 0.20)
Dh = 0.24 m
となります。
ただし、水力直径と、円形ダクトとの摩擦損失を比較するための相当直径は、使用する計算方法によって定義が異なる場合があります。
これらを同じ意味で扱い、無条件に数値を置き換えないように注意する必要があります。
16. 実務例|局所排気装置の吸引能力が低下した場合
ここでは、架空の粉体投入設備を想定します。
この設備では、投入作業中に粉じんが発生するため、局所排気装置で吸引しています。
しかし、最近になって、以前よりも吸引が弱く感じられるようになりました。
現場での調査を進めると、ダクトの一部に粉じんが堆積している可能性があることが分かりました。
ステップ① 設備の運転条件を確認する
まず、次の情報を整理します。
- 排風機の運転状態
- フードの使用条件
- ダンパーの開度
- 空気清浄装置の状態
- ダクト内の堆積物の有無
- 過去の風量・静圧の記録
過去の正常時の記録があれば、現在の測定結果と比較します。
ステップ② ダクト内の風速と風量を確認する
適切な測定位置で、ダクト内の平均風速を測定します。
例えば、内径150 mmのダクトで、断面平均風速が8.0 m/sと測定された場合を考えます。
断面積は、
A ≒ 0.01767 m²
です。
したがって、
Q = 60 × 0.01767 × 8.0
Q ≒ 8.48 m³/min
となります。
仮に、設計上の必要排風量が12 m³/minだったとすると、現在の測定風量はその値を下回っています。
ただし、この結果だけでは、ダクトの堆積物が原因だとは断定できません。
排風機、ダンパー、空気清浄装置、給気条件などの影響も考えられます。
ステップ③ 原因を調査する
安全な方法で設備を停止・隔離し、ダクトの点検を行います。
粉じんの種類によっては、開放や清掃の際にばく露、火災、爆発などの危険が生じる可能性があります。
そのため、設備の停止、残留物の確認、適切な保護措置などを検討したうえで実施します。
ステップ④ 改善後に性能を確認する
堆積物の除去や設備の補修を行った場合には、再び風量や必要な制御風速を確認します。
また、粉じんが堆積した原因についても検討します。
例えば、もともとの搬送速度が不足しているのであれば、清掃だけでは同じ問題が再発する可能性があります。
必要に応じて、ダクト径、経路、分岐、曲がり、風量配分などの改善を検討します。
※この事例は、現場での調査手順を説明するための架空事例です。
17. 法令上、ダクト径や搬送速度はどのように扱われているのか?
局所排気装置のダクト設計では、法令上の要求事項と技術的な推奨事項を区別する必要があります。
有機溶剤中毒予防規則の場合
有機溶剤中毒予防規則第14条第2項では、局所排気装置のダクトについて、長さをできるだけ短くし、ベンドの数をできるだけ少なくすることが規定されています。
これは、ダクト内で発生する抵抗を抑えるためにも合理的な設計条件です。
また、同規則第16条では、対象となる局所排気装置について、フード形式に応じた制御風速を確保できる能力が要求されています。
ただし、第16条の制御風速は、ダクト内風速を直接規定した数値ではありません。
例えば、囲い式フードの0.4 m/sを、ダクト内の搬送速度として使用してはいけません。
搬送速度に一律の法定数値があるのか?
今回確認した日本の法令・資料から、すべての局所排気装置に共通して適用する「ダクト内風速は必ず○m/s以上」という一律の法的数値は確認できませんでした。
搬送速度については、対象物質の性質、装置構造、ダクト経路などに応じた技術的な検討が必要です。
また、対象となる規則によっては、局所排気装置のダクトや排風機の状態、じんあいの堆積状況、吸気・排気能力などについて、定期自主検査が必要です。
海外の技術資料との関係
米国OSHAのTechnical Manualでも、ダクト内の搬送速度が不足した場合には、堆積や閉塞が問題になることを説明しています。
また、ダクト内の風速は断面内で均一ではないため、適切な測定方法によって平均風速を求めることが重要とされています。
これらは、日本の設備設計や性能調査でも参考になる技術的な知見です。
ただし、OSHA Technical Manualの技術的説明を、日本国内の法定数値として扱うものではありません。
18. ダクト径を選定するときの実務手順
ここまでの内容を、実際の設計手順として整理します。
ステップ① 必要排風量を求める
フードの形式や発散源の状況から、必要排風量を計算します。
ステップ② 搬送する物質を確認する
ガス・蒸気、ミスト、粉じんなどの性状を確認します。
粉じんの場合には、粒径、密度、濃度、付着性なども重要です。
ステップ③ ダクト内の設計風速を検討する
対象物質の搬送条件、圧力損失、設備の材質などを考慮して、設計上の風速を設定します。
ステップ④ 必要断面積を計算する
A = Q ÷ (60 × V)
によって、必要断面積を求めます。
ステップ⑤ ダクト径を仮決定する
円形ダクトの場合、
D = √(4A ÷ π)
によって直径を求めます。
そのうえで、使用可能なダクトの寸法や設置スペースを考慮します。
ステップ⑥ 採用した内径で風速を再計算する
実際に採用する内径を使って、平均風速を計算し直します。
ステップ⑦ 圧力損失を計算する
直管、エルボ、分岐、空気清浄装置などの圧力損失を検討します。
ステップ⑧ 排風機の運転点を確認する
ファン性能曲線と系統の圧力特性から、必要排風量を確保できるか確認します。
ステップ⑨ 実際の設備で性能を確認する
設備完成後には、適用される法令上の性能要件を確認するとともに、必要に応じてダクト内風速、排風量、圧力、捕捉状態などを測定します。

19. 現場で使えるダクト設計チェックリスト
| 分類 | 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|---|
| フード | 必要排風量 | m³/min |
| 物質 | 対象物質 | ガス、蒸気、ミスト、粉じん |
| 物質 | 性状 | 粒径、密度、腐食性、凝縮性など |
| 風速 | 設計風速 | m/s、設定根拠 |
| 風速 | 搬送条件 | 堆積・付着の可能性 |
| ダクト | 形状 | 円形、角形、オーバル |
| ダクト | 内径・内寸 | mm |
| ダクト | 断面積 | m² |
| ダクト | 長さ | m |
| ダクト | 曲がり部 | 個数、形状、曲率半径 |
| ダクト | 分岐・合流 | 位置、角度、風量配分 |
| ダクト | 材質 | 腐食、摩耗、強度 |
| 圧力 | 速度圧 | Pa |
| 圧力 | 直管摩擦損失 | Pa |
| 圧力 | 局部圧力損失 | Pa |
| 圧力 | その他の損失 | フード、清浄装置、排気口など |
| 排風機 | 必要風量 | m³/min |
| 排風機 | 必要圧力 | Pa |
| 排風機 | 運転点 | 性能曲線との整合 |
| 保全 | 点検・清掃 | 測定孔、清掃口、アクセス |
| 性能確認 | 法令上の性能 | 制御風速・抑制濃度など |
| 性能確認 | 捕捉状況 | 実作業での確認 |
このチェックリストは、設計実務で確認すべき事項を整理したものであり、すべての項目が一律の法的義務となるものではありません。
よくある質問
Q1. 必要排風量が分かればダクト径を計算できますか?
必要排風量だけでは決定できません。
設計上のダクト内風速を設定すれば、必要な断面積と直径を計算できます。
ただし、最終的な選定では圧力損失や搬送条件なども確認する必要があります。
Q2. ダクト径を大きくすれば吸引性能は改善しますか?
圧力損失を低減できる場合があります。
ただし、実際の排風量は排風機の性能と系統抵抗によって決まるため、ダクトを太くするだけで必ず改善するわけではありません。
Q3. ダクト内風速は10 m/s以上必要ですか?
一律に10 m/s以上とすることは適切ではありません。
必要な搬送速度は対象物質や設備条件によって異なります。
Q4. ダクト径を半分にすると風速は2倍になりますか?
いいえ。
円形ダクトで排風量が一定の場合、断面積は直径の二乗に比例します。
そのため、直径を半分にすると断面積は4分の1となり、平均風速は4倍になります。
Q5. ダクト内風速が大きいほど粉じんは堆積しにくくなりますか?
一般に、必要な搬送速度を確保することで堆積を抑えられる場合があります。
しかし、風速が大きすぎると圧力損失やダクト摩耗が増加する可能性があります。
Q6. ダクト内の一点で風速を測定すれば排風量を計算できますか?
一点の測定値だけでは、断面平均風速を正確に求められない場合があります。
必要に応じて、ダクト断面の複数点を測定するトラバース測定などを行います。
Q7. ダクト径を変更したら制御風速も測定する必要がありますか?
ダクト径の変更は設備全体の流量に影響する可能性があります。
そのため、変更後は対象設備に適用される法令上の性能要件を確認する必要があります。
まとめ|ダクト径は風速・搬送条件・圧力損失のバランスで決める
局所排気装置のダクト径を計算するときには、排風量、断面積、平均風速の関係を理解することが重要です。
基本式は、
Q = 60 × A × V
です。
この式から、
A = Q ÷ (60 × V)
によって必要断面積を求められます。
円形ダクトの場合には、
D = √(4A ÷ π)
によって直径を計算できます。
しかし、ダクト径を決める作業は、これで終わりではありません。
ダクト径を小さくすると平均風速が大きくなりますが、圧力損失も増加する傾向があります。
一方、ダクト径を大きくすると圧力損失を低減できる場合がありますが、粉じんを扱う設備では搬送速度の不足に注意する必要があります。
また、ダクト径を変更すると排風機の運転点が変わる可能性があるため、計算で仮定した排風量が実際にも確保されるとは限りません。
ダクト設計で重要なのは、必要排風量を確保したうえで、対象物質を適切に搬送し、過大な圧力損失や設備摩耗を避けられる構造を選ぶことです。
今回学んだ知識は、局所排気装置の新設だけでなく、既設設備の吸引不良やダクト閉塞の原因調査にも役立ちます。
次回は、直管・エルボ・分岐などの圧力損失をさらに詳しく取り上げ、局所排気装置の系統全体の圧力を計算する方法を解説します。
主な参考資料
- 『やさしい作業環境改善技術』第10章「ダクトの設計」
- e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」
- 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について
- 米国OSHA「OSHA Technical Manual, Section III, Chapter 3:Ventilation Investigation」
※OSHA資料は、ダクト内の流速、搬送速度、堆積、風量測定などに関する海外の技術参考資料です。日本国内の法的義務を示すものではありません。
※本記事のダクト径・風速・圧力損失の計算例は、計算方法を理解するための仮定条件によるものです。実際の設計では、対象物質、ダクトの材質・構造、排風機性能、圧力損失などを確認する必要があります。


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