【第17回】排風機の必要静圧・必要全圧の計算方法|ファンの選定と運転点

【第17回】排風機の必要静圧・必要全圧を求める|圧力損失から排風機を選定する方法

局所排気装置の必要排風量と、ダクト系統の圧力損失が分かれば、排風機を選定できるのでしょうか。

例えば、次の条件が分かったとします。

  • 必要排風量:12 m³/min
  • 計算した圧力損失:264.05 Pa

この場合、カタログから「風量12 m³/min、静圧264.05 Pa」の排風機を選べばよいのでしょうか。

実際には、まだ確認しなければならないことがあります。

まず、264.05 Paという数値が、局所排気装置のどの範囲の圧力損失なのかを確認する必要があります。

次に、排風機の吸込み側と吐出し側で、空気がどのような圧力を持っているかを整理します。

さらに、排風機のカタログに記載されている性能が「静圧」なのか「全圧」なのかを確認しなければなりません。

これらを混同すると、必要な排風量を確保できない排風機を選んでしまう可能性があります。

この記事では、前回までの計算例を引き継ぎ、必要静圧・必要全圧の違いから、ファン性能曲線による排風機選定、軸動力の計算、実際の運転点の確認方法まで解説します。

目次

1. 排風機は風量だけでは選定できない

最初に、排風機の役割を整理しましょう。

排風機は、羽根車を回転させることによって空気へエネルギーを与え、局所排気装置の内部に空気の流れを形成する機械です。

ここで重要なのは、排風機が空気を流すためには、ダクト系統に存在する抵抗に対応する圧力が必要になるということです。

同じ風量でも必要な圧力は異なる

例えば、同じ12 m³/minの空気を流す設備を2つ考えます。

設備A

  • ダクトが短い
  • エルボが少ない
  • ダクト径が比較的大きい
  • 空気清浄装置の抵抗が小さい

設備B

  • ダクトが長い
  • エルボが多い
  • ダクト径が比較的小さい
  • 空気清浄装置の抵抗が大きい

一般に、設備Bの方が大きな圧力を必要とする可能性があります。

つまり、排風機の選定には、少なくとも次の2つが必要です。

① 必要排風量:どれだけの空気を流す必要があるか

② 必要な圧力:その風量を流すために、どれだけの圧力を排風機が発生させる必要があるか

この2つを組み合わせて排風機を選定します。

必要な圧力が大きければ風量は不足することがある

例えば、ある排風機が、抵抗の小さい状態では12 m³/min以上の風量を出せるとします。

しかし、ダクトや空気清浄装置を接続して抵抗が増えると、実際の風量が減少する場合があります。

そのため、カタログに記載された最大風量だけで排風機を選ぶことは適切ではありません。

2. 静圧・速度圧・全圧をもう一度整理する

排風機の選定に進む前に、静圧・速度圧・全圧の関係を確認します。

静圧

静圧とは、流れている空気が持つ圧力のうち、速度圧を除いた成分です。

周囲の大気圧を基準にしたゲージ圧では、吸込み側のダクトは一般に負圧になります。

一方、排風機の吐出し側では、条件によって正圧になることがあります。

速度圧

速度圧Pvは、空気の流れる速さに対応する圧力です。

Pv = ρ × V² ÷ 2

  • Pv:速度圧(Pa)
  • ρ:空気密度(kg/m³)
  • V:風速(m/s)

例えば、空気密度1.20 kg/m³、風速10 m/sの場合、

Pv = 1.20 × 10² ÷ 2

Pv = 60 Pa

となります。

全圧

全圧Ptは、静圧Psと速度圧Pvを足したものです。

Pt = Ps + Pv

したがって、

Ps = Pt − Pv

となります。

この関係は、排風機の入口・出口それぞれで成立します。

ただし、実際のダクト内では風速分布が均一ではないため、以下の計算例では断面平均風速と代表的な圧力を用いた簡略モデルとして説明します。

3. 排風機の全圧と静圧はどう違うのか?

ここからが今回の中心です。

まず、排風機の入口を①、出口を②とします。

それぞれの全圧をPt1、Pt2とします。

① 排風機全圧とは?

排風機全圧とは、排風機によって空気へ与えられる全圧の増加を表すものです。

排風機全圧 Ptf = Pt2 − Pt1

です。

例えば、排風機入口の全圧が−300 Pa、出口の全圧が+100 Paだった場合、

Ptf = 100 − (−300)

Ptf = 400 Pa

となります。

この例では、排風機が入口から出口までの間に、全圧を400 Pa増加させていることになります。

② 排風機静圧とは?

排風機静圧は、排風機全圧から、排風機出口の速度圧を差し引いたものとして定義されます。

排風機静圧 Psf = Ptf − Pv2

  • Psf:排風機静圧(Pa)
  • Ptf:排風機全圧(Pa)
  • Pv2:排風機出口の速度圧(Pa)

例えば、排風機全圧が400 Pa、排風機出口の速度圧が60 Paだった場合、

Psf = 400 − 60

Psf = 340 Pa

となります。

③ 排風機前後の静圧差とは?

一方、排風機入口と出口で測定した静圧の差は、

ΔPs = Ps2 − Ps1

です。

これは、排風機静圧そのものとは異なる値です。

3つの違い

項目計算式
排風機全圧Ptf = Pt2 − Pt1
排風機静圧Psf = Ptf − Pv2
排風機前後の静圧差ΔPs = Ps2 − Ps1

排風機全圧と排風機静圧の関係は、AMCAの技術資料でも説明されています。

また、提供PDF第15章でも、排風機静圧と排風機前後の静圧差は、厳密には同じ値ではないことが説明されています。

4. なぜ排風機静圧と前後の静圧差は一致しないのか?

ここを理解すると、排風機選定時の誤りを防ぎやすくなります。

排風機全圧は、

Ptf = Pt2 − Pt1

です。

ここで、

Pt2 = Ps2 + Pv2

Pt1 = Ps1 + Pv1

なので、

Ptf = (Ps2 + Pv2) − (Ps1 + Pv1)

となります。

排風機静圧は、

Psf = Ptf − Pv2

ですから、

Psf = Ps2 − Ps1 − Pv1

となります。

つまり、

排風機静圧 = 排風機前後の静圧差 − 排風機入口の速度圧

という関係になります。

この式から分かるのは、ファン前後の静圧差が、ファン静圧より入口速度圧の分だけ大きいことです。

ただし、ここでいう入口・出口は、排風機性能の定義に対応した断面です。

現場の任意の測定孔で静圧を測定して差し引くだけでは、排風機静圧を正しく求められない場合があります。

例えば、測定孔と排風機との間にエルボや異径継手がある場合には、圧力損失や速度圧の変化などを考慮する必要があります。

実務で覚えておきたいこと

排風機のカタログを見るときには、次の点を確認してください。

その性能曲線が、排風機静圧を示しているのか、排風機全圧を示しているのか。

これを確認せずに設計値と比較すると、条件の異なる数値を照合することになります。

5. 前回の圧力損失264.05 Paをどう扱うのか?

ここからは、第16回の計算例を引き継ぎます。

前回は、2台のフードが合流する局所排気装置について、次の条件を設定しました。

項目計算値
フードAの必要排風量7.2 m³/min
フードBの必要排風量4.8 m³/min
合計必要排風量12.0 m³/min
抵抗の大きい枝Bの損失101.50 Pa
合流後の主管の損失42.55 Pa
空気清浄装置の損失120.00 Pa
合計264.05 Pa

この例では、指定した流量で枝ダクトの圧力バランスが成立しているものと仮定します。

また、空気清浄装置は排風機の吸込み側に設置されているものとします。

今回の追加条件

排風機の選定を説明するため、次の条件を追加します。

  • 排風機入口ダクト内径:200 mm
  • 排風機出口の基準断面径:200 mm
  • 排風機出口から排気口までの摩擦・局部損失:40 Pa
  • 排気は屋外の大気中へ放出
  • 空気密度:1.20 kg/m³
  • ダクトや機器からの空気漏れ:なし
  • 排風機入口・出口は、計算上、同じ平均風速を持つと仮定

さらに、前回の264.05 Paは、フード周囲の静止空気から排風機入口までの、計算対象となる吸込み側全圧損失の合計として扱います。

実際の設備設計では、排風機接続部などに追加の損失がないか確認する必要があります。

この前提によって、排風機の入口と出口の圧力を順番に計算できます。

6. 計算例①|排風機入口の全圧・静圧を求める

まず、排風機入口の平均風速を求めます。

排風量Qは12 m³/min、ダクト内径Dは0.20 mです。

ステップ① 断面積を計算する

A = π × 0.20² ÷ 4

A ≒ 0.03142 m²

ステップ② 平均風速を計算する

V = Q ÷ (60 × A)

V = 12 ÷ (60 × 0.03142)

V ≒ 6.37 m/s

ステップ③ 速度圧を計算する

Pv1 = ρ × V² ÷ 2

Pv1 = 1.20 × 6.366² ÷ 2

Pv1 ≒ 24.32 Pa

ステップ④ 排風機入口の全圧を求める

今回の例では、フード周囲の静止空気を全圧0 Paとします。

そこから排風機入口までに264.05 Paの全圧損失が発生すると仮定しています。

したがって、

Pt1 = −264.05 Pa

となります。

ステップ⑤ 排風機入口の静圧を求める

静圧は、

Ps1 = Pt1 − Pv1

です。

数値を代入すると、

Ps1 = −264.05 − 24.32

Ps1 ≒ −288.37 Pa

となります。

計算結果

項目排風機入口
平均風速6.37 m/s
速度圧+24.32 Pa
全圧−264.05 Pa
静圧−288.37 Pa

ここで注意してほしいのは、排風機入口の静圧が、圧力損失264.05 Paよりも絶対値として大きくなっていることです。

これは、全圧から速度圧を差し引くためです。

圧力損失264.05 Paと入口静圧−288.37 Paは、異なる内容を表しています。

7. 計算例②|排風機出口の全圧・静圧を求める

次に、排風機出口側を考えます。

今回は、排風機出口から屋外の排気口までに40 Paの摩擦・局部損失があると仮定しました。

さらに、排気口から空気が大気中へ放出されるため、その出口速度に相当するエネルギーも考える必要があります。

排気口での速度エネルギー

今回は排風機出口と排気口が同じ断面積で、風量も同じと仮定しています。

したがって、排気口の平均風速は約6.37 m/s、速度圧は約24.32 Paです。

屋外の十分離れた静止空気までを系統の終点とし、出口速度エネルギーが回収されない単純な放出を仮定すると、出口損失は速度圧に相当します。

つまり、

排気口の出口損失 ≒ 24.32 Pa

です。

この条件では、排風機出口から十分離れた大気までの必要な全圧は、

40.00 + 24.32

64.32 Pa

となります。

したがって、

Pt2 ≒ +64.32 Pa

です。

排風機出口の静圧

排風機出口の速度圧Pv2は24.32 Paです。

したがって、

Ps2 = Pt2 − Pv2

Ps2 = 64.32 − 24.32

Ps2 = +40.00 Pa

となります。

排風機出口の結果

項目排風機出口
平均風速6.37 m/s
速度圧+24.32 Pa
全圧+64.32 Pa
静圧+40.00 Pa

なお、この40 Paは排風機出口から排気口までの摩擦・局部損失です。

実際にルーバ、雨よけ、曲がり部などがある場合には、それらに対応する抵抗も検討する必要があります。

また、出口速度圧に相当する損失を既に含めた損失係数を使用する場合には、同じ出口損失を二重に加算してはいけません。

8. 計算例③|排風機の必要全圧を求める

排風機入口と出口の全圧が求められました。

次は、排風機全圧を計算します。

排風機全圧の式は、

Ptf = Pt2 − Pt1

です。

今回の計算では、

  • 排風機入口全圧:−264.05 Pa
  • 排風機出口全圧:+64.32 Pa

となっています。

したがって、

Ptf = 64.32 − (−264.05)

Ptf ≒ 328.37 Pa

となります。

何を意味しているのか?

この結果は、排風量12 m³/minのとき、排風機入口から出口までに約328.37 Paの全圧上昇が必要になることを意味します。

ここで、もう一つの計算方法を確認します。

今回の条件では、

  • 吸込み側の全圧損失:264.05 Pa
  • 吐出し側の摩擦・局部損失:40.00 Pa
  • 排気口の出口速度損失:24.32 Pa

です。

これらを合計すると、

264.05 + 40.00 + 24.32

328.37 Pa

となります。

排風機全圧の計算結果と一致しています。

ただし、このように損失を合計できるのは、同じ流路上で、圧力の基準と計算対象の範囲が整合している場合です。

複数の枝ダクトが存在する場合には、前回説明したように流量配分と圧力バランスを考慮する必要があります。

9. 計算例④|排風機の必要静圧を求める

次に、排風機静圧を計算します。

排風機静圧は、

Psf = Ptf − Pv2

でした。

今回の数値を代入すると、

Psf = 328.37 − 24.32

Psf = 304.05 Pa

となります。

したがって、今回の簡略モデルにおける設計上の要求性能は、次のようになります。

項目必要な値
必要排風量12.0 m³/min
必要排風機全圧約328.37 Pa
必要排風機静圧約304.05 Pa

ここで、もう一つ確認してみましょう。

排風機前後の静圧差は、

ΔPs = Ps2 − Ps1

です。

したがって、

ΔPs = 40.00 − (−288.37)

ΔPs ≒ 328.37 Pa

となります。

今回の計算結果を整理すると、

圧力の種類計算結果
排風機全圧328.37 Pa
排風機静圧304.05 Pa
排風機前後の静圧差328.37 Pa

となりました。

今回、排風機全圧と前後の静圧差が一致したのは、入口と出口の速度圧を等しく設定したためです。

一般に両者が必ず一致するわけではありません。

また、排風機静圧は、入口の速度圧24.32 Paの分だけ前後の静圧差より小さくなっています。

10. 排風機のカタログでは静圧と全圧のどちらを見るのか?

ここまで計算した必要排風機全圧328.37 Paと、必要排風機静圧304.05 Paは、どちらも意味のある値です。

しかし、排風機のカタログに表示されている性能と比較するときには、条件をそろえる必要があります。

静圧性能曲線が表示されている場合

カタログの縦軸が「静圧」であり、それが排風機静圧として定義された値ならば、設計で求めた必要排風機静圧と比較します。

今回の例では、

風量12.0 m³/min、排風機静圧304.05 Pa

という点を確認します。

全圧性能曲線が表示されている場合

カタログの縦軸が「全圧」であれば、排風機全圧と比較します。

今回の例では、

風量12.0 m³/min、排風機全圧328.37 Pa

という点を確認します。

どちらを使用してもよいのか?

適切な定義と条件で換算できる場合には、静圧・全圧のどちらを基準にしても排風機を評価できます。

ただし、ファン出口面積や速度圧、測定・試験条件を確認する必要があります。

特に、カタログの「静圧」がどの定義に基づく数値かを確認してください。

排風機前後の静圧差と、カタログ上の排風機静圧をそのまま同一視してはいけません。

11. ファン性能曲線とは?

必要風量と必要圧力が分かったら、次は排風機の性能曲線を確認します。

ファン性能曲線とは、排風機の風量と圧力の関係などを示したグラフです。

一般的な性能曲線では、

  • 横軸:風量
  • 縦軸:静圧または全圧

が示されています。

さらに、回転数、効率、軸動力、騒音などの情報が併記されている場合もあります。

排風機は常に同じ風量を出すわけではない

例えば、排風機の回転数が一定でも、接続されたダクトの抵抗が変われば運転風量は変化します。

ダクト抵抗が大きくなると風量が減少することがあります。

反対に、抵抗が小さくなると風量が増加することがあります。

ただし、実際の性能曲線には機種固有の形状があり、どの運転範囲でも必ず滑らかな右下がりになるとは限りません。

そのため、実際の排風機選定ではメーカーが示す使用可能な運転範囲を確認する必要があります。

排風機の形式にも違いがある

排風機には、遠心式や軸流式などがあります。

また、遠心式でも羽根車の形状によって特性が異なります。

提供PDF第15章では、多翼ファン、プレートファン、リミットロードファン、エアフォイルファンなどを紹介しています。

これらは同じ風量であっても、発生できる圧力、効率、軸動力、騒音特性などが異なります。

したがって、ファンの形式は風量だけでなく、必要な圧力や使用条件に応じて選定する必要があります。

12. ダクト系統にも性能曲線がある

ここで、ファン性能曲線と組み合わせるもう一つの曲線を説明します。

それが「系統抵抗曲線」です。

系統抵抗曲線とは?

系統抵抗曲線は、ダクト系統に流れる風量と、その風量を流すために必要な圧力との関係を表したものです。

局所排気装置では、風量を大きくすると、一般に圧力損失が増加します。

ダクト形状や抵抗係数などが一定で、気流を非圧縮性流体として近似できる場合には、圧力損失はおおむね風量の二乗に比例します。

これを式で表すと、

P = K × Q²

となります。

  • P:系統で必要となる圧力(Pa)
  • K:系統の抵抗を表す係数
  • Q:風量

ただし、空気清浄装置の種類や目詰まり状態などによって、この二乗則がそのまま成立しない場合があります。

また、複数の枝ダクトの流量配分が変わる場合にも注意が必要です。

今回の計算条件で系統抵抗曲線を求める

今回求めた必要排風機静圧は、

Psf = 304.05 Pa

でした。

必要排風量は、

Q = 12.0 m³/min

です。

ここで、排風機静圧を基準とした系統抵抗曲線を、説明用に二乗則で近似すると、

K = 304.05 ÷ 12²

K ≒ 2.1115

となります。

したがって、

Psf,req ≒ 2.1115 × Q²

という式で近似できます。

この式から、風量を変えた場合の必要排風機静圧を求めてみましょう。

風量Q近似した必要排風機静圧
6 m³/min76.01 Pa
9 m³/min171.03 Pa
12 m³/min304.05 Pa
15 m³/min475.08 Pa

この表をグラフにすると、右上がりの曲線になります。

この曲線は、今回の簡略モデルから作成した設計用の近似曲線です。

実際の空気清浄装置や複数枝ダクトを含む設備では、抵抗特性を別途確認する必要があります。

13. 運転点とは?排風機とダクトの性能が釣り合う場所

排風機の運転点とは、排風機が実際にどれだけの風量と圧力で運転するかを表す点です。

この運転点は、ファン性能曲線と系統抵抗曲線の交点で決まります。

なぜ交点で決まるのか?

例えば、ある風量において、排風機が発生できる圧力よりダクト系統の必要圧力が大きい場合、その風量を維持することはできません。

一方、同じ風量で排風機が発生する圧力の方が大きい場合には、風量が変化する方向に働きます。

最終的には、排風機が発生する圧力と、系統が必要とする圧力が釣り合う点で運転することになります。

ただし、これは安定した運転が成立する範囲での説明です。

仮想のファン性能曲線で考える

ここでは計算方法を理解するため、次の仮想的なファン静圧曲線を設定します。

Psf,fan = 424.05 − 10Q

これは説明用の式であり、実在する製品の性能曲線ではありません。

今回の系統抵抗曲線は、

Psf,req = 2.1115 × Q²

です。

Q = 12.0 m³/minを代入すると、

排風機側は、

Psf,fan = 424.05 − 10 × 12

Psf,fan = 304.05 Pa

となります。

一方、系統側も、

Psf,req = 304.05 Pa

です。

したがって、両者は、

風量12.0 m³/min、排風機静圧304.05 Pa

の点で交わります。

この交点が、今回の仮想的な排風機と系統の運転点になります。

14. ファン性能曲線の交点が必要風量より左にある場合

例えば、設計上の必要風量が12 m³/minであるにもかかわらず、ファン性能曲線と系統抵抗曲線の交点が10 m³/minにある場合を考えます。

この場合、実際の運転風量は、設計上必要な風量に達しない可能性があります。

そのため、次のような対策を検討します。

① 排風機の能力を見直す

排風機の形式や大きさ、回転数などを見直します。

② ダクト系統の抵抗を低減する

ダクト径やエルボの形状、ダクト経路などを検討します。

ただし、粉じんを扱う設備では、ダクト内の搬送速度が不足しないように注意する必要があります。

③ フードの必要排風量を見直す

フードを発散源に近づけたり、適切な囲い込みやフランジを検討したりすることで、必要排風量を小さくできる場合があります。

ただし、単に風量を減らすのではなく、必要な捕捉性能を確保できることが前提です。

④ 給気条件を確認する

工場の給気が不足していると、室内の圧力条件が変化し、排風量に影響する場合があります。

そのため、排風機だけでなく、必要な給気が確保されているかも確認します。

15. 排風機の回転数を変えると風量や圧力はどうなるのか?

排風機の回転数を変えることによって、運転条件を変更できる場合があります。

同じ排風機で、相似な運転条件が成立する場合には、ファン法則を利用できます。

代表的な関係は次のとおりです。

  • 風量は回転数に比例する。
  • 圧力は回転数の二乗に比例する。
  • 軸動力は回転数の三乗に比例する。

数式で表すと、

Q2/Q1 = N2/N1

P2/P1 = (N2/N1)²

W2/W1 = (N2/N1)³

となります。

ここでNは回転数、Wは軸動力です。

ただし、これらの式は、同じファンで相似な運転状態を比較する場合の近似関係です。

系統抵抗の変化や効率の変化などによって、実際の運転結果が単純にこの関係と一致しない場合があります。

回転数を10%増加させる場合

例えば、回転数を1.10倍にした場合、相似条件では、

風量は、

約1.10倍

圧力は、

1.10² = 1.21

約1.21倍

軸動力は、

1.10³ = 1.331

約1.33倍

となります。

つまり、回転数を10%増加させると、軸動力は約33%増加する計算です。

そのため、吸引不足を改善する目的で回転数を上げる場合には、電動機の過負荷や排風機の許容回転数などを確認する必要があります。

16. 排風機の軸動力はどう計算するのか?

排風機を選定するときには、必要な圧力と風量だけでなく、軸動力も確認する必要があります。

軸動力とは、排風機を回転させるためにファン軸へ供給する機械的な動力です。

排風機静圧を使う場合

排風機静圧と静圧効率を用いる場合、軸動力の概算は、

Wshaft = Q × Psf ÷ (60 × ηs)

で求められます。

  • Wshaft:軸動力(W)
  • Q:排風量(m³/min)
  • Psf:排風機静圧(Pa)
  • ηs:静圧効率(小数)

計算例⑤|排風量12 m³/minの場合

次の条件を仮定します。

  • 排風量Q:12.0 m³/min
  • 排風機静圧Psf:304.05 Pa
  • 排風機静圧効率ηs:0.50(50%)

計算すると、

Wshaft = 12.0 × 304.05 ÷ (60 × 0.50)

Wshaft ≒ 121.62 W

となります。

kWへ換算すると、

Wshaft ≒ 0.122 kW

です。

これは、今回の仮定条件における計算上のファン軸動力です。

電動機も0.122 kWでよいのか?

そのように決めることはできません。

実際には、使用する排風機の軸動力曲線、運転範囲、駆動方式、電動機効率、過負荷の可能性などを確認する必要があります。

また、ファン静圧効率50%という値は説明用の仮定値であり、今回の運転点に適した実在の排風機が同じ効率を持つとは限りません。

電動機の容量は、メーカーが示す性能資料などを用いて検討する必要があります。

なお、排風機全圧を用いて軸動力を計算する場合には、静圧効率ではなく、対応する全圧効率を使用します。

効率の種類を混同してはいけません。

17. 空気清浄装置の目詰まりは排風機選定にどう影響するのか?

局所排気装置の排風機を選定するときには、空気清浄装置の抵抗も重要になります。

例えば、フィルターを使用した設備では、粉じんが捕集されるにつれて圧力損失が増加する場合があります。

そのため、清浄な状態の圧力損失だけで排風機を選定すると、使用を続けた際に必要な風量を確保できなくなる可能性があります。

清浄時と使用後では圧力損失が異なる

仮に、空気清浄装置の圧力損失が、

  • 清浄時:120 Pa
  • 使用中のある状態:220 Pa

だったとします。

この場合、同じ風量で比較すると、空気清浄装置の圧力損失は100 Pa増加しています。

しかし、実際には抵抗が増加することで運転点が変わり、風量そのものが減少する可能性があります。

そのため、単に必要静圧へ100 Paを加えるだけでは、実際の運転条件を正確に予測できない場合があります。

実務では何を確認するのか?

排風機選定時には、少なくとも次の内容を確認します。

  • 空気清浄装置の処理風量
  • 設計風量における圧力損失
  • 使用による圧力損失の変化
  • 点検・清掃・交換を行う条件
  • 圧力損失が増加した状態でも必要な排風量を確保できるか

これらは、実際の設備を安定して使用するための重要な設計項目です。

18. 排風機を選定するときの実務手順

ここまでの内容を整理すると、排風機選定は次の手順で進められます。

ステップ① 必要排風量を確定する

まず、各フードの必要排風量を求めます。

複数のフードがある場合には、同時使用条件と必要な流量配分を確認します。

ステップ② ダクト系統の圧力損失を計算する

フード、直管、エルボ、合流部、ダンパー、空気清浄装置などの損失を計算します。

ステップ③ 枝ダクトの圧力バランスを確認する

複数の枝ダクトがある場合には、必要な風量配分が成立するように圧力条件を整合させます。

ステップ④ 排風機の入口・出口の圧力を計算する

吸込み側と吐出し側を分け、全圧・静圧・速度圧を整理します。

ステップ⑤ 排風機の必要全圧・必要静圧を求める

ファンの定義に対応する必要圧力を計算します。

ステップ⑥ 排風機の候補を選ぶ

必要風量、必要圧力、使用する気体や粉じんの性状、温度、腐食性などを考慮して形式・型番の候補を選びます。

ステップ⑦ ファン性能曲線と系統抵抗曲線を照合する

両者の交点から、実際の運転点を確認します。

ステップ⑧ 軸動力・電動機容量・回転数を確認する

メーカーの性能資料を用いて、必要な条件を満たせるか確認します。

ステップ⑨ 設置条件を確認する

排風機前後の接続ダクト、エルボ、給気条件、設置スペース、点検性などを確認します。

ステップ⑩ 設備完成後に性能を確認する

完成後は、適用法令で必要とされる性能を確認するとともに、必要に応じて各フードの風量、制御風速、ダクト静圧、排風機の電流、回転数などを測定します。

19. 法令上、排風機の性能はどのように扱われているのか?

局所排気装置を設計するときには、法令上の要求事項と技術上の選定方法を区別する必要があります。

法令上の性能要件

例えば、有機溶剤中毒予防規則第16条では、所定の局所排気装置について、フードの形式に応じた制御風速を確保するための能力が定められています。

排風機を選定する際には、このような性能要件を満たせるように設計する必要があります。

ただし、同条がすべての局所排気装置について、排風機静圧を一律に「○Pa以上」とすることを規定しているわけではありません。

定期自主検査との関係

厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」では、ファン、ダクト、吸気・排気能力などの確認方法が示されています。

例えば、フードの風速が所定の判定基準に適合しない場合に、ファン側での風量確認が必要となる場合があります。

また、ファンの摩耗、腐食、異常振動、電動機の状態なども重要な確認事項です。

ファン性能曲線を使った選定は法的義務なのか?

ファン性能曲線を使うことは、排風機を適切に選定するための代表的な工学的方法です。

ただし、日本のすべての局所排気装置に対して、特定のグラフを用いた計算手順そのものが一律に法定されているという意味ではありません。

最終的には、適用される法令の性能要件を満たす設備であることが重要です。

20. 経験者が注意したい8つのポイント

① 圧力損失の合計をそのまま必要静圧にしない

吸込み側、吐出し側、排気口、速度圧の取扱いを整理する必要があります。

② 排風機静圧と前後の静圧差を混同しない

ファン静圧は、ファン全圧からファン出口速度圧を差し引いた値です。

③ カタログの圧力表示を確認する

静圧曲線と全圧曲線を混同しないようにします。

④ 最大風量だけで排風機を選定しない

必要な風量と圧力の組合せで性能曲線を確認します。

⑤ 排風機の設置条件を確認する

排風機入口直前のエルボや不適切な接続は、気流の偏りや旋回を生じさせ、カタログどおりの性能が得られなくなる原因となる場合があります。

⑥ 空気清浄装置の目詰まりを考慮する

清浄時だけでなく、使用中の抵抗増加も考慮します。

⑦ 軸動力と電動機容量を混同しない

計算上の軸動力だけで、最終的な電動機容量を決めてはいけません。

⑧ 実際の運転点と法令上の性能を確認する

計算上、必要風量を確保できる排風機を選定しても、実際の設備が必ずその条件で運転するとは限りません。

そのため、完成後に性能を確認する必要があります。

21. 排風機選定チェックリスト

分類確認項目
フード必要排風量、同時使用条件
系統フード数、枝ダクト数、合流位置
風量合計必要排風量、流量配分
圧力損失吸込み側の損失
圧力損失吐出し側の損失
圧力損失空気清浄装置の損失
圧力損失排気口の損失
圧力排風機入口静圧・全圧
圧力排風機出口静圧・全圧
圧力排風機必要全圧・必要静圧
排風機形式、型番、回転数
性能ファン性能曲線、運転点
効率静圧効率、全圧効率
動力軸動力、電動機容量
設置入口・出口の接続条件
環境温度、腐食性、粉じん、防爆の必要性
保全摩耗、振動、異常音、清掃・交換
性能確認風量、制御風速、必要な捕捉性能

この表は設計実務上の確認事項を整理したものであり、すべての項目が一律に法的義務となるものではありません。

よくある質問

Q1. 圧力損失の合計が300 Paなら、静圧300 Paの排風機を選べばよいですか?

必ずしもそうではありません。

計算した圧力損失の対象範囲や、排風機入口・出口の速度圧などを確認する必要があります。

Q2. 排風機全圧と排風機静圧は、どちらが大きいですか?

通常、排風機全圧の方が大きくなります。

排風機静圧は、排風機全圧から出口速度圧を差し引いた値だからです。

Q3. 排風機の入口静圧が−300 Pa、出口静圧が+100 Paなら、排風機静圧は400 Paですか?

いいえ。

400 Paは前後の静圧差です。

排風機静圧を求めるには、さらに入口速度圧を考慮する必要があります。

Q4. 必要な風量と静圧が分かれば、排風機を選定できますか?

候補の選定はできます。

ただし、最終的には性能曲線、運転点、効率、軸動力、設置条件などを確認する必要があります。

Q5. 排風機の回転数を上げれば、吸引能力を改善できますか?

改善できる場合があります。

ただし、回転数を上げると軸動力が大きく増加する可能性があります。

電動機の過負荷や排風機の許容回転数などを確認する必要があります。

Q6. ファン性能曲線と系統抵抗曲線の交点が必要風量より小さい場合は?

実際の運転風量が不足する可能性があります。

排風機の能力やダクト系統の抵抗を見直す必要があります。

Q7. 排風機を大型化すれば局所排気装置の性能は改善しますか?

必ずしもそうではありません。

フードの位置や形状が不適切な場合、排風量を増やしても捕捉性能が十分に改善しない可能性があります。

また、既設ダクトに過大な風速が生じることで、圧力損失や騒音が増加することもあります。

まとめ|排風機は必要風量と必要圧力を組み合わせて選定する

局所排気装置の排風機を選定するには、必要排風量と、排風機が発生させる必要のある圧力を求める必要があります。

今回の計算例では、次の結果が得られました。

計算項目結果
必要排風量12.0 m³/min
吸込み側全圧損失264.05 Pa
排風機入口静圧−288.37 Pa
排風機出口静圧+40.00 Pa
排風機必要全圧328.37 Pa
排風機必要静圧304.05 Pa
排風機前後の静圧差328.37 Pa

この結果から、圧力損失の合計と排風機静圧は、必ずしも同じ値ではないことが分かります。

また、排風機を選定するときには、ファン性能曲線と系統抵抗曲線を比較し、必要な運転点で性能を確保できるか確認する必要があります。

そして、実際の局所排気装置では、空気清浄装置の目詰まり、ダクトの施工条件、外乱気流、給気不足などによって、計算上の条件と実際の運転状態が異なる場合があります。

排風機選定で重要なのは、圧力損失を計算して終わるのではなく、その損失に対応する風量と圧力を、実際の運転点で確保できるか判断することです。

この考え方は、新しい局所排気装置を設計する際だけでなく、既設設備の吸引不良や排風量不足の原因を調査する場合にも役立ちます。

次回は、排風機の回転数変更、インバータ制御、ファン法則などをさらに詳しく解説し、既設局所排気装置の改善方法へつなげます。

主な参考資料

※本記事の圧力計算は、説明用の仮定条件に基づくものです。実際の設計では、ファンの試験条件、ダクト接続部、給排気の境界条件、空気清浄装置の特性などを考慮する必要があります。

※AMCAの技術資料は、排風機の静圧・全圧等の定義を確認するための参考資料です。日本国内の法的義務を示すものではありません。

※JISの適用や試験条件については、対象とする排風機に適用可能な規格本文およびメーカーの性能資料を確認してください。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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