外付け式フードはなぜ距離が重要なのか?吸引気流と必要排風量の関係
局所排気装置を設置しているのに、有害物質を十分に吸い込めないことがあります。
排風機は正常に運転しており、フードの開口面では強い吸引気流が確認できる。それにもかかわらず、作業中に有機溶剤の蒸気や粉じんが周囲へ広がってしまうのです。
このような場合、原因の一つとして考えられるのが、外付け式フードと発散源との距離です。
例えば、フードを作業台の奥に設置した場合、作業者が手前側で作業すると、発散源がフードから離れてしまいます。
フードの開口面では十分な風速があっても、発散源の位置では吸引気流が大幅に弱くなっているかもしれません。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
この記事では、外付け式フードの吸引気流の性質を初学者にも分かりやすく説明したうえで、距離と風速、必要排風量の関係を具体的な計算例で解説します。
さらに、実際の現場でフードの吸引が不足している場合に、どのような調査や改善を行えばよいのかまで整理します。
1. 外付け式フードとは?まず基本的な構造を理解する
外付け式フードとは、有害物質の発散源の外側に吸込み口を設置し、周囲の空気とともに有害物質を吸引する方式です。
例えば、有機溶剤を使用する洗浄作業で、作業台の奥や側面に吸込み口を設ける方法があります。
発散源を完全に囲う必要がないため、作業空間を確保しやすい場合があります。
しかし、発散源が開放された場所にあるため、周囲の気流の影響を受けやすく、フードとの距離によって捕捉性能が大きく変わることがあります。
囲い式フードとの違い
囲い式フードは、発散源を囲いの内部に配置し、開口部から空気を流入させることで有害物質の拡散を抑えます。
一方、外付け式フードは、開口面の外側にある発散源から有害物質を引き込む必要があります。
つまり、外付け式フードでは、フードの開口面から離れた位置まで吸引気流を形成する必要があるのです。
ここが、囲い式フードとの重要な違いです。
2. 外付け式フードはなぜ離れるほど吸い込みが弱くなるのか?
外付け式フードの特徴は、開口面から離れるほど吸引気流の速度が急速に低下することです。
この現象を理解するには、空気がフードへ流れ込む様子を考えてみましょう。
身近なたとえ|掃除機の吸込み口
掃除機の吸込み口を床面に近づけると、ごみを吸い込みやすくなります。
一方、吸込み口を床面から大きく離すと、ごみを吸い込みにくくなります。
これは、吸込み口から離れた場所では、空気を引き込む速度が弱くなるためです。
外付け式フードでも、これと似た現象が生じます。
ただし、局所排気装置では、単に物を吸い込むのではなく、有害物質を含む空気を適切な方向へ移動させることが重要です。
同じ排風量でも吸引風速は一定ではない
例えば、排風機によって毎分12 m³の空気を吸引しているフードがあるとします。
フードの開口面付近では、空気が比較的狭い範囲に集まって流れています。
ところが、開口面から離れた場所では、さまざまな方向から空気がフードへ向かっています。
つまり、同じ量の空気が、より広い範囲から集まってくることになります。
このため、フードから離れた場所では、一般に吸引気流の速度が小さくなります。

このとき注意したいのは、フードから離れたことで小さくなるのは、その位置での吸引風速であって、排風量そのものではないということです。
排風機の運転条件を変えず、排風量が一定であれば、発散源を遠ざけても排風量は基本的に変わりません。
しかし、発散源の位置における吸引風速は低下します。
この違いを理解することが、外付け式フードの設計では重要です。
3. 等速度面とは?吸引気流が弱くなる理由を考える
外付け式フードの吸引気流を理解するために、「等速度面」という考え方を紹介します。
少し専門的な用語ですが、仕組みはそれほど難しくありません。
等速度面とは
等速度面とは、空間の中で、風速が同じ大きさになる点を結んだ仮想的な面のことです。
例えば、フードの前方にある風速0.5 m/sの点を集めると、ある曲面が形成されます。
別の位置にある風速0.2 m/sの点を集めれば、さらに広い範囲に曲面が形成される場合があります。
このように、フードの周囲には、風速の大きさに応じた等速度面が存在すると考えることができます。

ただし、等速度面は実際に目で見えるものではありません。
また、障害物のない理想的な条件と、実際の工場内では形状が異なります。
なぜ距離が離れると風速が小さくなるのか?
仕組みを単純化するために、小さな吸込み口の周囲を、空気が球面状に広がって流れる理想的なモデルで考えます。
半径をrとした球面の面積は、次の式で求められます。
A = 4πr²
この球面を通過する空気の量をQ、面に垂直な流入風速をVとすると、理想的な条件では次の関係が成立します。
Q = A × V
したがって、
V = Q ÷ 4πr²
となります。
この式では、排風量Qが一定であれば、距離rの2乗に反比例して風速が小さくなります。
例えば、距離が2倍になれば、球面の面積は4倍となり、風速は4分の1になります。
ただし、これはあくまで理想化したモデルです。
実際のフードには一定の開口面積があり、吸引気流の形状は完全な球面にはなりません。
「距離が2倍になれば風速は必ず4分の1」と、すべての外付け式フードに適用してはいけません。
実際の設計では、フードの形状や開口面積などに対応した計算式を使用する必要があります。
4. 外付け式フードの必要排風量はどのように計算するのか?
ここからは、実際の換気設計で使用される計算式を紹介します。
外付け式フードの必要排風量を計算する場合には、フードの形式によって異なる式を使用します。
まず、円形や一定の縦横比を持つ長方形の単純な開口を、障害物のない空間に設けた場合を考えます。
フランジのない外付け式フードの代表的な経験式
代表的な経験式は、次のとおりです。
Q = 60 × V × (10X² + A)
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Q | 計算上の必要排風量 | m³/min |
| V | 所定の位置で確保しようとする吸引風速 | m/s |
| X | フード開口面から対象位置までの距離 | m |
| A | フードの開口面積 | m² |
この式は、Dalla Valleの研究に基づく、単純な外付け式フードに対する経験式です。
風量をm³/minで表すため、式の先頭に60を掛けています。
ここで重要なのは、式の中にある「10X²」という項です。
フードと対象位置との距離Xが大きくなると、この項が急速に増加します。
つまり、同じ吸引風速を遠い位置で確保しようとすると、必要な排風量が大きくなるのです。
ただし、この式はあらゆるフード形状や設置条件に適用できるものではありません。
スロット型、壁や作業台に接するフード、ついたてで囲われたフードなどは、別の式や評価方法が適切になる場合があります。
5. 計算例|発散源までの距離が変わると必要排風量はどうなる?
ここでは、同じフードを使用し、発散源までの距離だけを変更した場合の計算を行います。
比較のために、次の条件を仮定します。
計算条件
- フード形式:フランジのない単純な長方形外付け式フード
- 開口部:横200 mm × 縦200 mm
- 開口面積:0.04 m²
- 対象位置で確保する風速:0.5 m/s
- 発散源までの距離:0.10 m、0.20 m、0.30 m
- 周囲の大きな外乱気流や障害物は考慮しない
※0.5 m/sは計算を比較するための仮定値です。所定の有機溶剤業務の側方吸引型フードに関する制御風速と一致しますが、この計算例をすべての作業の設計値に適用できるという意味ではありません。
条件① 距離が0.10 mの場合
Q = 60 × 0.5 × (10 × 0.10² + 0.04)
Q = 30 × (0.10 + 0.04)
Q = 4.2 m³/min
条件② 距離が0.20 mの場合
Q = 60 × 0.5 × (10 × 0.20² + 0.04)
Q = 30 × (0.40 + 0.04)
Q = 13.2 m³/min
条件③ 距離が0.30 mの場合
Q = 60 × 0.5 × (10 × 0.30² + 0.04)
Q = 30 × (0.90 + 0.04)
Q = 28.2 m³/min
計算結果の比較
| 発散源までの距離 | 計算上の必要排風量 | 0.10 mの場合との比較 |
|---|---|---|
| 0.10 m | 4.2 m³/min | 1.00倍 |
| 0.20 m | 13.2 m³/min | 約3.14倍 |
| 0.30 m | 28.2 m³/min | 約6.71倍 |

この結果を見ると、フードの開口面積が同じでも、発散源までの距離によって必要排風量が大きく変わることが分かります。
距離を0.10 mから0.20 mへ2倍にした場合、必要排風量は4.2 m³/minから13.2 m³/minへ増えます。
また、距離を0.30 mまで広げると、28.2 m³/minとなります。
この例では、距離を0.10 mから0.30 mへ3倍にすると、必要排風量は約6.7倍になりました。
ただし、これは特定の経験式と仮定条件による計算結果です。
すべての外付け式フードで、距離が3倍になると必ず6.7倍の風量が必要になるという意味ではありません。
6. 同じ排風量のまま発散源を遠ざけるとどうなる?
先ほどは、対象位置における吸引風速を0.5 m/sに固定し、距離を変えたときの必要排風量を比較しました。
次は反対に、排風量を一定にして、距離による吸引風速の変化を考えてみましょう。
ここでは、先ほどのフードを使用し、排風量を13.2 m³/minに固定します。
先ほどの経験式を風速Vについて整理すると、
V = Q ÷ [60 × (10X² + A)]
となります。
この式に、各距離を代入します。
| 発散源までの距離 | 排風量 | 計算上の吸引風速 |
|---|---|---|
| 0.10 m | 13.2 m³/min | 約1.57 m/s |
| 0.20 m | 13.2 m³/min | 0.50 m/s |
| 0.30 m | 13.2 m³/min | 約0.23 m/s |

この例では、フードから0.20 mの位置で0.50 m/sだった吸引風速が、0.30 mの位置では約0.23 m/sまで低下します。
排風量は変えていないにもかかわらず、発散源で得られる吸引風速が大きく変わるのです。
このため、フードを設置した後に作業者が発散源を遠ざけると、捕捉性能が低下する可能性があります。
この2つの計算を混同しない
今回行った計算には、異なる2つの考え方があります。
| 比較方法 | 固定する条件 | 分かること |
|---|---|---|
| 必要排風量の比較 | 対象位置での風速 | 距離を変えたときの必要風量 |
| 吸引風速の比較 | フードの排風量 | 距離を変えたときの風速 |
設計では、必要な風速を確保するための排風量を検討します。
一方、既設設備の性能を調べる場合には、現在の排風量で作業位置にどれだけの吸引風速が得られているかを確認することがあります。
両者を区別すると、距離の影響を理解しやすくなります。
7. フランジを設けると必要排風量はどう変わる?
外付け式フードの性能を改善する方法の一つに、フランジの設置があります。
フランジとは、フードの開口部の周囲に取り付ける縁や板のような構造です。
フランジの役割
フランジのないフードでは、開口部の前方だけでなく、周囲や後方からも空気が吸い込まれます。
フランジを適切に設置すると、開口部の背面側などから回り込む空気の流入を抑えられます。
その結果、同じ対象位置で必要な吸引風速を確保するための排風量を、少なくできる場合があります。
フランジ付きフードの代表的な経験式
十分な効果が得られるフランジを設けた単純な外付け式フードでは、次の経験式が使われます。
Q = 60 × 0.75 × V × (10X² + A)
フランジのない場合との違いは、0.75という係数です。
例えば、距離0.20 m、開口面積0.04 m²、風速0.5 m/sとすると、
Q = 60 × 0.75 × 0.5 × (10 × 0.20² + 0.04)
Q = 9.9 m³/min
となります。
先ほどのフランジのない条件では13.2 m³/minだったので、経験式上は25%小さくなります。
ただし、フランジを設ければすべてのフードで必ず25%の排風量削減が実現できるわけではありません。
フランジの大きさや取付け状態、フード形状、周囲の障害物などによって効果は異なります。
また、経験式は開口面から極端に近い位置まで、無条件に適用できるものではありません。

フランジよりも発散源を近づけた方がよい場合もある
フランジの設置は有効な改善方法の一つですが、フードを発散源へ近づける方が効果的な場合もあります。
例えば、フードと発散源の距離が大きいことが主な問題であれば、フランジを取り付ける前に、フードの設置位置を変更できないか検討することが重要です。
さらに、側板やついたてを利用して発散源を部分的に囲うことも、捕捉性能の改善につながる場合があります。
8. 法令上の制御風速はどこで測定するのか?
ここは、外付け式フードの性能確認で特に重要な部分です。
日本の有機溶剤中毒予防規則第16条では、対象となる局所排気装置の制御風速が、フード形式ごとに定められています。
同条第1項における原則の数値は、次のとおりです。
| フードの形式 | 制御風速 |
|---|---|
| 囲い式フード | 0.4 m/s |
| 外付け式・側方吸引型 | 0.5 m/s |
| 外付け式・下方吸引型 | 0.5 m/s |
| 外付け式・上方吸引型 | 1.0 m/s |
ただし、これは有機溶剤中毒予防規則における規定です。
すべての局所排気装置に共通する数値ではなく、同条第2項などに例外規定もあります。
外付け式フードでは最も離れた作業位置が重要
有機溶剤中毒予防規則第16条の備考では、外付け式フードの制御風速について、吸引対象範囲内でフードの開口面から最も離れた作業位置の風速と定めています。
つまり、フードの開口面で風速を測定するだけでは、法令上の制御風速を確認したことにはなりません。
例えば、作業台の奥に側方吸引型フードがあり、作業範囲がフードから0.10~0.30 mの範囲に及ぶ場合を考えます。
この場合、開口面から最も離れた作業位置が0.30 mであるなら、その位置が制御風速の確認上重要になります。
ただし、実際の確認では、フードの開口面からの距離だけでなく、吸引対象範囲や作業の実態、関係法令に基づく測定方法を確認する必要があります。
開口面風速と制御風速を混同しない
例えば、フードの開口面で3 m/sの風速を確認したとします。
この数値が大きいからといって、0.30 m離れた作業位置で0.5 m/s以上の吸引風速が確保されているとは限りません。
開口面風速は、フードへ流入する空気の状態を把握するための重要な測定値です。
一方、外付け式フードの制御風速は、適用法令において定められた位置で確認する必要があります。
フードの開口面で吸引していることと、離れた作業位置で必要な制御風速が得られていることは別の問題です。
9. 外乱気流があると距離の影響はさらに大きくなる
これまでの計算では、障害物や大きな外乱気流のない条件を仮定しました。
しかし、実際の工場では、フードの周囲にさまざまな気流が存在します。
例えば、次のようなものです。
- 扉や窓から入る風
- 空調設備の吹出し気流
- 扇風機やスポットクーラーの風
- 近くの給気口からの気流
- 人や台車の移動による気流
- 設備の熱による上昇気流
なぜ外乱気流が問題になるのか?
外付け式フードの吸引風速は、開口面から離れるほど弱くなります。
そのため、発散源がフードから離れている場所では、横風などの影響を受けやすくなる場合があります。
例えば、フードへ向かう吸引気流が弱い場所に、横方向から強い空気の流れがあるとします。
その場合、汚染気流がフードへ向かわず、横へ流される可能性があります。
ただし、吸引風速と外乱気流の風速を単純に比較するだけで、捕捉の可否が決まるわけではありません。
気流の方向、乱れ、汚染物質の発散速度なども関係します。
外乱気流を減らす方が合理的なこともある
例えば、扇風機の風がフードの捕捉気流を妨げている場合、排風機を大型化する前に、扇風機の位置や向きを変更する方法が考えられます。
また、必要に応じて側板やついたてを設けることで、横風の影響を小さくできる場合があります。
ただし、側板やついたてを設置する場合には、作業の妨げにならないこと、清掃や点検が可能であることなども確認する必要があります。
10. 現場ではどのように距離を測定すればよいのか?
外付け式フードの設計や性能確認では、フードと発散源の距離を正確に把握することが重要です。
しかし、距離の測り方にも注意が必要です。
フードのどこから測定するのか?
基本的には、フードの開口面を基準にして、対象となる発散源や作業位置との位置関係を確認します。
ここで重要なのは、フードの外形寸法やダクト接続位置を基準にしないことです。
例えば、フードにフランジが設けられている場合でも、フランジの外端が開口面になるわけではありません。
また、フードが斜めに取り付けられている場合には、開口面の向きと発散源の位置関係も重要になります。
作業位置が移動する場合はどうする?
例えば、作業台上の容器を移動させながら洗浄する作業を考えます。
容器がフードの近くにあるときは十分に吸引できても、作業台の手前へ移動させると吸引が弱くなる場合があります。
そのため、通常の作業位置だけでなく、容器を移動させる範囲も調査する必要があります。
現場では、次の内容を図面に記録するとよいでしょう。
| 確認項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| フード開口部 | 横幅・高さ・向き |
| 発散源の位置 | 通常時の位置 |
| 作業範囲 | 発散源が移動する範囲 |
| 最大距離 | 開口面から最も離れる作業位置 |
| 作業者の位置 | 呼吸域と発散源の関係 |
| 周囲の障害物 | 製品、容器、壁、機械など |
| 外乱気流 | 方向、強さ、発生条件 |
設計計算に用いる距離は、使用する計算式の定義に合っている必要があります。
特に、フード中心軸から外れた発散源や、開口面から斜め方向に離れた作業位置では、単純な中心線上の経験式だけで評価できない場合があります。
11. 実務例|有機溶剤を使用する洗浄作業で吸引が弱い
ここでは、架空の工場で行われている部品洗浄作業を考えます。
作業者は、作業台の上に置いた容器で有機溶剤を使用して部品を洗浄しています。
作業台の奥には、側方吸引型の外付け式フードが設置されています。
ところが、作業者が作業台の手前で洗浄すると、発生した蒸気が十分に捕捉されないことがあります。
現場調査で確認すること
最初に、次の内容を確認します。
- フードの開口寸法
- フードの開口面から洗浄容器までの距離
- 作業者が容器を移動させる範囲
- 排風機の運転状態
- フードの開口面や対象作業位置での風速
- 扉や空調設備などによる外乱気流
- 作業者の呼吸域と蒸気の移動方向
例えば、作業台の奥では容器とフードの距離が0.15 mですが、手前で作業すると0.35 mになるとします。
このような場合には、容器を手前へ移動したときの捕捉条件を確認する必要があります。
改善案① 作業位置をフードへ近づける
作業方法を見直し、容器をフードの近くで使用できないか検討します。
ただし、作業者が無理な姿勢になったり、容器の転倒リスクが増えたりしないようにする必要があります。
改善案② フードを作業位置へ近づける
作業位置を変更できない場合には、フード側の位置を変更する方法があります。
例えば、フードを手前側へ延長したり、吸込み口の位置を変更したりすることが考えられます。
ただし、フード形状を変更すると圧力損失や気流分布が変わる場合があるため、必要な再計算や性能確認が必要です。
改善案③ 側板やついたてを設ける
作業台の左右に適切な側板を設置し、横風の影響を小さくする方法もあります。
この場合、フードへ向かう気流の範囲を限定し、捕捉効率を改善できる可能性があります。
ただし、側板によって作業者が容器を出し入れしにくくならないようにする必要があります。
改善案④ 囲い式フードへの変更を検討する
既存の外付け式フードでは十分な捕捉性能を得ることが難しい場合には、発散源を部分的に囲う、あるいは囲い式フードへ変更する方法も検討できます。
これは、単に排風機を大型化するよりも、合理的な改善につながる場合があります。
ただし、実際の改善では、適用法令、作業方法、排風量、ダクト系統、給気条件などを総合的に検討する必要があります。

※この事例は技術的な検討方法を示すための架空事例であり、実測値や改善効果を示すものではありません。
12. 経験者が注意したい5つのポイント
① 距離だけで捕捉性能を判断しない
フードと発散源の距離は重要ですが、距離だけで捕捉性能を判断することはできません。
フードの形状、開口面積、吸引方向、障害物、外乱気流、発散速度などを考慮する必要があります。
② 開口面風速と発散源位置の風速を混同しない
開口面風速を測定しても、離れた発散源で必要な吸引風速が得られているとは限りません。
また、開口面積と発散源位置の風速を単純に掛け合わせても、外付け式フードの必要排風量は求められません。
風量・風速・面積を計算するときには、どの場所の値なのかを明確にする必要があります。
③ 経験式をすべてのフードに適用しない
外付け式フードには、円形、長方形、スロット型などの種類があります。
また、壁や作業台に接している場合や、ついたてなどで囲まれている場合には、周囲からの空気の流れが変わります。
そのため、フードの形状や設置条件に応じて適切な式を選ぶ必要があります。
④ 排風量を増やす前に設置位置を確認する
捕捉性能が不足しているからといって、直ちに排風機を大型化することが最善とは限りません。
フードを発散源へ近づける、作業位置を見直す、外乱気流を減らすなどの改善によって、比較的少ない排風量で性能を改善できる場合があります。
⑤ フードを近づけても作業者の呼吸域を通過してはいけない
フードの距離を小さくすることは重要ですが、フードと発散源の間に作業者の顔が入ってしまうような配置は適切ではありません。
有害物質を含む気流が作業者の呼吸域を通らずにフードへ取り込まれるよう、作業者・発散源・フードの位置関係を確認する必要があります。
13. 外付け式フードを改善するときのチェックリスト
外付け式フードの捕捉性能を改善する際には、次の項目を確認するとよいでしょう。
| 確認項目 | 現場で確認する内容 |
|---|---|
| フード形式 | 側方・下方・上方吸引など |
| 開口部 | 面積・寸法・形状 |
| 発散源 | 位置・範囲・発散方向 |
| 距離 | 開口面から対象位置までの距離 |
| 最も離れた作業位置 | 作業範囲と位置関係 |
| 開口面風速 | 流入気流の状態 |
| 対象位置の風速 | 必要な捕捉気流があるか |
| 外乱気流 | 空調・扉・給気などの影響 |
| フランジ | 設置の有無・寸法・効果 |
| 側板・ついたて | 外乱気流を低減できるか |
| 排風量 | 必要風量と実際の風量 |
| 排風機 | 運転点と必要能力 |
| ダクト | 閉塞、漏れ、圧力損失 |
| 給気 | 排気に見合う空気の供給 |
| 作業者 | 呼吸域と汚染気流の位置関係 |
| 法令 | 適用規則・性能要件 |
| 改善後の確認 | 制御風速、実作業での捕捉性能など |
この表は実務上の確認事項を整理したものであり、すべての局所排気装置に共通する法定チェックリストではありません。
よくある質問
Q1. フードからの距離が2倍になると、必要排風量は必ず4倍になりますか?
必ず4倍になるわけではありません。
単純な理想モデルでは距離の2乗に関係しますが、実際のフードには開口面積があり、形状や設置条件も影響します。
したがって、使用する経験式の適用条件に合わせて計算する必要があります。
Q2. 排風機の風量が十分でも吸引できないことはありますか?
あります。
排風量が十分でも、フードと発散源が離れていたり、外乱気流が強かったりすると、有害物質を十分に捕らえられない場合があります。
Q3. 外付け式フードはできるだけ近づければよいですか?
発散源へ近づけることは一般的に有利ですが、作業の妨げにならないことや、呼吸域を汚染気流が通過しないことも重要です。
また、発散方向やフード形状も合わせて検討します。
Q4. フランジを付けると必ず25%の風量を削減できますか?
保証されるわけではありません。
代表的な経験式では0.75の係数が使用されますが、実際の効果はフランジの形状や寸法、周囲の気流などによって異なります。
Q5. 外付け式フードの制御風速はどこで測定しますか?
有機溶剤中毒予防規則第16条では、外付け式フードにより有機溶剤蒸気を吸引しようとする範囲内で、フード開口面から最も離れた作業位置の風速とされています。
ただし、適用される規則やフード形式によって要求事項は異なります。
Q6. フードと発散源の距離を短くすれば省エネルギーになりますか?
必要な捕捉性能を、より少ない排風量で確保できる場合には、省エネルギーにつながる可能性があります。
ただし、排風量の削減に伴い、排風機の動作点、ダクト内風速、給気、空調負荷なども変わるため、設備全体として検討する必要があります。
まとめ|外付け式フードは排風量だけでなく距離を管理する
外付け式フードでは、フードの開口面から離れるほど吸引風速が低下するため、発散源までの距離が捕捉性能を左右します。
同じ排風量であっても、発散源がフードから離れると、その位置で得られる吸引風速が小さくなります。
また、遠くの発散源で同じ吸引風速を確保するためには、より多くの排風量が必要になる場合があります。
そのため、外付け式フードの設計では、次の考え方が重要になります。
- 発散源とフードの距離をできるだけ小さくする
- 作業位置が変わる場合には、最も離れた位置も考慮する
- フードの形状と設置条件に適した計算式を使用する
- 外乱気流を減らして吸引気流を有効に利用する
- 必要に応じてフランジや側板などを検討する
- 法令上の性能要件と実作業での捕捉性能を区別して確認する
外付け式フードの設計で重要なのは、単に大きな排風機を設置することではなく、必要な場所に必要な吸引気流を形成することです。
そのためには、フードを発散源へ近づけること、作業者の位置を考慮すること、周囲の気流を適切に管理することが重要になります。
この考え方を理解すると、外付け式フードの必要排風量を計算するときだけでなく、既設設備の性能不足や吸引不良を調査するときにも役立ちます。
主な参考資料
- 『やさしい作業環境改善技術』第4章「局排フードについての基礎知識」、第7章「捕捉フードの必要排風量の計算」、第9章「フードの形と省エネ対策」
- e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」第14条・第16条・第18条
- 厚生労働省「有機溶剤中毒予防規則」
- 米国EPA「Technical Manual: Hood System Capture of Process Fugitive Particulate Emissions」
- 米国OSHA「OSHA Technical Manual, Section III, Chapter 3:Ventilation Investigation」
※米国EPA・OSHAの資料は、局所排気の気流や経験式の理解を補うための海外の技術参考資料です。日本国内の法的要求事項を示すものではありません。
※本記事の計算例は、単純な外付け式フードを想定した説明用の例です。実際の設備の必要排風量や捕捉性能、法令適合を保証するものではありません。


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