【第19回】局所排気装置の完成時点検|制御風速・風量・静圧の測定方法

【第19回】局所排気装置の完成時に何を確認する?制御風速・風量・静圧の測定と性能評価

局所排気装置の設置工事が終わりました。

排風機のスイッチを入れると、ダクト内を空気が流れ、フードから空気を吸い込んでいます。

では、これで工事完了としてよいのでしょうか。

排風機が動いていることと、局所排気装置が必要な性能を発揮していることは、同じではありません。

例えば、ドラフトチャンバーの開口面では風速が十分に見えても、一部の場所では風速が不足していることがあります。

また、外付け式フードの吸込み口では強い風速が得られていても、離れた発散源付近では必要な吸引気流が得られていないことがあります。

さらに、排風機の能力が十分でも、複数の枝ダクトの流量配分が適切でなければ、一部のフードで吸引不足が発生する可能性があります。

そこで必要になるのが、完成時の点検と性能評価です。

今回は、設置・改造後の局所排気装置について、どの順番で点検し、どこで測定し、測定結果をどう判断するのかを解説します。

初めて担当する方が実際の作業をイメージできるように、測定位置と計算例を示しながら、経験者が見落としやすい注意点も取り上げます。

目次

1. 局所排気装置の完成時に性能確認が必要な理由

局所排気装置の設計では、必要排風量、ダクト径、圧力損失、排風機の能力などを計算します。

しかし、これらは工事を行う前に想定した条件に基づく計算結果です。

実際の設備が完成すると、設計時の想定と異なる部分が生じる場合があります。

例えば、次のようなものです。

  • 予定していた位置よりフードが離れて設置されている
  • 設計図よりダクトの曲がりが増えている
  • ダンパーが適切に調整されていない
  • 作業に使用する器具がフードの吸引を妨げている
  • 排風機の実際の回転数が設計条件と異なる
  • 空調や給気設備からの気流がフードに影響している

このような違いがあると、設計計算では十分な性能を確保できるはずだった装置でも、実際には吸引能力が不足することがあります。

自動車の完成検査に置き換えて考える

自動車を組み立てた場合、エンジンが動くだけでは十分ではありません。

ブレーキやハンドルなどが正常に機能することも確認する必要があります。

局所排気装置も同じです。

排風機が回転しているだけでなく、実際に有害物質を適切に捕捉できることを確認しなければなりません。

完成時に確認する4つの視点

局所排気装置の完成時には、主に次の4つの視点で確認します。

視点確認する内容
設備の状態フード・ダクト・排風機などに異常がないか
吸引性能必要な制御風速や排風量が得られているか
圧力・運転状態静圧や排風機の運転条件が設計と整合しているか
実作業での状態汚染気流が漏れずに捕捉されているか

この4つを組み合わせて評価することが重要です。

2. 法律で求められる「初めて使用するときの点検」とは?

最初に、法令上の要求事項を整理します。

局所排気装置の点検については、対象となる有害物質や作業内容によって適用される規則が異なります。

ここでは、有機溶剤中毒予防規則を例に説明します。

有機溶剤中毒予防規則第22条

同規則第22条では、第20条第1項の対象となる局所排気装置について、初めて使用するとき、または分解して改造・修理を行ったときには、所定の事項を点検することが規定されています。

主な点検事項は次のとおりです。

点検事項実際に確認する内容の例
ダクト・排風機のじんあいの堆積状態内部の堆積や閉塞がないか
ダクト接続部の緩みフランジ、ボルト、接続部に異常がないか
吸気・排気の能力必要な吸引性能が得られているか
その他性能保持に必要な事項設備の状態に応じた確認

また、同規則第23条では、点検などによって異常を認めた場合の補修について規定されています。

完成時点検と定期自主検査は同じなのか?

同じではありません。

有機溶剤中毒予防規則では、次のように区別されています。

区分主な規定実施する時期
初めて使用するとき等の点検第22条初回使用時、分解して改造・修理を行ったとき
定期自主検査第20条原則として1年以内ごとに1回
定期自主検査の記録第21条所定事項を記録し3年間保存
異常があった場合の補修第23条異常を認めたとき

対象設備や使用休止期間などによって適用される条件があります。

なお、初回使用時の点検記録について、有機溶剤中毒予防規則第21条の3年間保存義務を、そのまま第22条の点検へ適用する説明は正確ではありません。

一方、粉じん障害防止規則など、初回点検の記録・保存について別途規定しているものもあります。

したがって、記録義務についても適用規則ごとに確認する必要があります。

実務上は初回測定記録を保存したい

法令による記録義務とは別に、完成時の測定結果を保存しておくことを推奨します。

完成時の状態が分からなければ、数年後に吸引能力が低下した際、どの程度変化したのかを比較することが難しくなるからです。

3. 性能測定を始める前に何を準備するのか?

局所排気装置の性能測定では、風速計だけを持って現場へ行っても、十分な評価ができないことがあります。

測定を始める前に、何を確認し、どのような条件で測定するかを決める必要があります。

① 設計資料を確認する

まず、設計時の資料を準備します。

例えば、次の資料です。

  • フードの形式と寸法
  • フードの設置位置と作業位置
  • 必要排風量の計算書
  • ダクト系統図・ダクト径
  • 圧力損失の計算書
  • 排風機の性能曲線
  • ダンパーの設定条件
  • 対象物質と適用法令
  • 空気清浄装置の仕様

これらの資料は、測定結果を比較する基準になります。

② 測定器を準備する

測定内容に応じて、次のような測定器を使用します。

測定器主な使用目的
熱線風速計等フードの低い風速や風速分布の測定
スモークテスター等気流の方向や流れ方の確認
ピトー管ダクト内の速度圧の測定
マノメーター・微差圧計静圧や差圧の測定
回転計排風機の回転数確認
電流計等電動機の運転状態確認
巻尺等開口寸法・測定位置の確認

実際に使用する測定器は、測定範囲、精度、校正状態、測定対象の気流に適した特性を確認します。

例えば、0.4 m/s程度の風速を測定したい場合には、その風速範囲を適切に測定できる機器が必要です。

③ 作業条件を整理する

測定時には、次の条件を確認して記録します。

  • 使用するフードの数
  • フードの開閉状態
  • ドラフトチャンバーのサッシ高さ
  • 作業者の位置
  • 使用する機器や容器の配置
  • 排風機の回転数・インバータ周波数
  • ダンパーの開度
  • 空調・給気設備の運転状態
  • 扉や窓の開閉状態

例えば、測定時にはドラフトチャンバーのサッシを大きく開けていたのに、実際の作業では違う高さにしている場合、測定結果と作業時の性能を同じ条件で比較できません。

また、法令上の制御風速を測定する場合には、適用規則で定められた測定条件を満たす必要があります。

4. 測定前には設備の外観と安全状態を確認する

風速や静圧を測定する前に、設備の状態を確認します。

例えば、ダクトが外れていたり、フードが破損していたりする状態で性能測定をしても、正常な運転条件とはいえません。

フードの確認

フードの開口部、囲い込み部分、フランジ、スロットなどに異常がないか確認します。

また、設計どおりの位置に設置されているかも確認します。

ダクトの確認

ダクトの接続状態、変形、腐食、漏れ、ダンパーの開度などを確認します。

粉じんを扱う設備では、堆積や閉塞の可能性にも注意します。

排風機の確認

排風機に異常音や異常振動がないか確認します。

ベルト駆動式の場合には、ベルトの状態なども確認します。

また、電動機やインバータの設定条件を確認します。

測定作業自体の安全も重要

点検口の開放、回転機械の近くでの測定、高所作業、ダクト内部の点検などには、それぞれ固有の危険があります。

内部点検や清掃など、危険部に接近する作業では、必要に応じて動力源の遮断、誤起動防止、残留エネルギーの除去などを行います。

一方、風速や静圧の測定には、運転状態で行うものがあります。

そのため、運転中に行う測定と、停止・隔離して行う点検を区分し、安全な作業手順を決める必要があります。

可燃性雰囲気や有害物質が存在する場合には、測定器や気流可視化方法の適合性も確認してください。

5. 制御風速とは?完成時に最も重要な測定項目の一つ

制御風速は、局所排気装置の性能確認で重要な指標です。

ただし、すべての局所排気装置に同一の制御風速が適用されるわけではありません。

対象物質や作業内容によって、必要な性能要件が異なります。

ここでは、有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則値を例に説明します。

フード形式原則となる制御風速
囲い式フード0.4 m/s
外付け式・側方吸引型0.5 m/s
外付け式・下方吸引型0.5 m/s
外付け式・上方吸引型1.0 m/s

この制御風速は、同条の備考により、すべてのフードを開放した場合の値として定義されています。

また、同条には一定の例外規定があります。

したがって、上の数値をすべての物質・作業に一律に当てはめてはいけません。

フード形式によって測定位置が変わる

例えば、囲い式フードでは開口面の最小風速が重要です。

一方、外付け式フードでは、開口面から最も離れた所定の作業位置における風速が重要です。

これらを取り違えると、測定値が高くても、法令上の要求事項を正しく評価できません。

6. 囲い式フードの制御風速を測定する

囲い式フードの例として、ドラフトチャンバーを考えます。

ドラフトチャンバーは、作業を行う空間が囲われ、前面の開口部から空気が流れ込む構造です。

前面には上下に移動できるサッシが設けられているものがあります。

どこを測定するのか?

例えば、サッシを途中まで下げて使用するドラフトチャンバーを考えます。

この場合、前面の開口部は、サッシの下端から作業面までの範囲です。

制御風速の測定対象となる開口面は、サッシの下側にある実際の開放部分です。

サッシの上側のガラス部分を、開口面に含めてはいけません。

ただし、ほかにも実際に空気が流入する開口部がある構造では、それらを含めてフードの構造を確認する必要があります。

測定点を決める

厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」では、囲い式フードの制御風速測定に関して、原則として次の方法が示されています。

開口面を、それぞれ面積が等しく、一辺が0.5 m以下となるように16以上の部分へ分割し、その中心で測定します。

ただし、開口面が著しく小さい場合については、2以上の部分へ分割する取扱いがあります。

重要なのは、単に16点測定すればよいのではなく、開口部全体を適切に分割することです。

計算例①|ドラフトチャンバーの16点測定

次のようなドラフトチャンバーを想定します。

  • 開口幅:800 mm
  • 開口高さ:400 mm
  • 開口面積:0.32 m²
  • 測定点:16点
  • 分割方法:横4列、縦4段

各区域の寸法は、幅200 mm、高さ100 mmです。

この条件では、各区域の面積は等しく、一辺も0.5 m以下となります。

次の測定結果が得られたとします。

測定位置左①②③右④
上段0.480.520.500.47
2段目0.510.550.540.49
3段目0.530.560.520.50
下段0.460.490.480.44

単位:m/s

この場合、最小風速は、

Vmin = 0.44 m/s

です。

仮に、この装置が有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の囲い式フードの原則値0.4 m/sの対象であり、ほかの条件も適切であれば、測定した最小風速はその原則値以上となっています。

平均風速も計算してみる

16点の風速を合計すると、

合計 = 8.04 m/s

です。

したがって、単純平均風速は、

Vavg = 8.04 ÷ 16

Vavg = 0.5025 m/s

となります。

ここで重要なのは、平均風速と最小風速を区別することです。

平均風速が0.50 m/s程度あっても、最小風速が法定の値を下回っていれば、平均値だけで適合と判断してはいけません。

7. 開口面の平均風速から排風量を求める

先ほどのドラフトチャンバーでは、平均風速が0.5025 m/sでした。

これを使って、開口部から流入する空気の体積を求めてみましょう。

基本式

Q = 60 × A × Vavg

  • Q:流入風量(m³/min)
  • A:開口面積(m²)
  • Vavg:開口面に垂直な平均流入風速(m/s)

今回の条件では、

A = 0.80 × 0.40

A = 0.32 m²

です。

したがって、

Q = 60 × 0.32 × 0.5025

Q = 9.648 m³/min

となります。

つまり、この条件では、ドラフトチャンバーの開口部から約9.65 m³/minの空気が流入していると計算できます。

この値は排風機の排風量と同じなのか?

必ずしも同じとは限りません。

例えば、ドラフトチャンバーに別の開口部やすき間がある場合には、そこからも空気が流入する可能性があります。

したがって、前面開口部からの流入風量だけを測定しても、排風機が運んでいる全風量を正確に表していない場合があります。

計算するときの注意点

今回の計算は、16個の等面積区域で測定した風速が、それぞれの区域を代表するという仮定によるものです。

また、計算に使用する風速は、開口面に垂直な流入方向の速度成分です。

気流が斜めに流れている場合や、測定器が方向を正しく捉えていない場合には、測定値を無条件に平均してよいわけではありません。

8. 外付け式フードの制御風速はどこで測定するのか?

次に、側方吸引型の外付け式フードを考えます。

例えば、作業台の奥に長方形の吸込み口を持つフードが設置されている場合です。

作業者は、その手前側で有機溶剤を使って部品を洗浄しているとします。

フードの開口面で測定するのか?

いいえ。

有機溶剤中毒予防規則第16条の外付け式フードでは、有機溶剤蒸気を吸引しようとする範囲内で、フードの開口面から最も離れた作業位置の風速が制御風速となります。

これは、フードの開口面の風速とは異なります。

例えば、フードの開口面で3.0 m/sの風速が得られていても、離れた対象作業位置では0.4 m/sしか得られない場合があります。

作業位置とはどこか?

ここでいう作業位置は、単純に作業者の身体の位置を意味するものではありません。

有害物質を吸引しようとする範囲内にある、実際の作業に関係する位置を確認します。

例えば、作業台の奥にフードがあり、手前側まで洗浄作業を行う場合には、手前側がフードから最も離れた作業位置になる可能性があります。

ただし、作業者が立っている場所だけを基準にして、測定位置を決めてはいけません。

発散源の位置、作業範囲、最も離れた作業位置を確認し、適用法令・検査指針に対応した測定位置を設定する必要があります。

計算例②|側方吸引型外付け式フード

ある外付け式フードの対象作業位置で、次の測定結果が得られたとします。

測定位置測定風速
フードに近い作業位置0.82 m/s
中央の作業位置0.61 m/s
最も離れた作業位置・左側0.52 m/s
最も離れた作業位置・右側0.46 m/s

この例で、最も離れた所定の作業位置のうち小さい測定値は、

0.46 m/s

です。

仮に有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の側方吸引型の原則値0.5 m/sが適用される場合には、所定の制御風速を満たしていません。

ここで、フードの開口面風速が高いことを理由に、適合と判断してはいけません。

9. スモークテスターで気流の流れ方を確認する

風速計は、空気の速度を数値として測定できます。

しかし、気流がどの方向へ流れているのか、周囲の気流によってどのように変化しているのかについては、風速の数値だけでは判断しにくい場合があります。

そこで使用する方法の一つが、気流の可視化です。

気流を可視化すると何が分かるのか?

例えば、適切なスモークテスターなどを使用すると、次のような状態を確認できます。

  • フードへ向かう気流が形成されているか
  • フードの外へ流れ出す気流がないか
  • 作業者の呼吸域へ向かう流れがないか
  • 空調設備などの外乱気流による影響がないか
  • フードの周囲で気流が滞留していないか

ドラフトチャンバーの場合

サッシの下側にある開口部で、空気が内部へ流入する様子を確認します。

また、内部に設置した機器や容器が気流を妨げていないか確認します。

例えば、大きな機器を開口部のすぐ近くに設置すると、局所的な気流の乱れが生じる場合があります。

外付け式フードの場合

発散源からフードへ向かう気流の状態を確認します。

特に、作業者の呼吸域を通過してからフードへ吸引されるような気流になっていないか注意が必要です。

スモークテスターだけで合否を判断できるのか?

できません。

スモークテスターで気流の方向を観察することは有用ですが、法令で数値が求められる制御風速を、煙の流れ方だけで正確に評価することはできません。

また、可視化に使う煙やミストそのものが測定対象の気流を乱したり、作業環境を汚染したりしないようにする必要があります。

可燃性雰囲気、有害物質の存在、火気・着火源などの条件を確認したうえで、適切な方法を選択してください。

10. ダクト内の風量はどのように測定するのか?

次に、ダクト内の排風量を確認します。

なぜ排風量を測定するのか?

例えば、外付け式フードの制御風速が不足していた場合を考えます。

このとき、排風量自体が不足しているのか、それともフードの位置や形状が不適切なのかを調べる必要があります。

排風量の測定は、その原因を検討するための重要な情報になります。

基本式

ダクト内の排風量は、

Q = 60 × A × Vavg

で求められます。

  • Q:排風量(m³/min)
  • A:ダクト断面積(m²)
  • Vavg:断面平均風速(m/s)

計算例③|直径200 mmのダクト

次の条件を想定します。

  • ダクト内径:200 mm
  • ダクト内平均風速:6.40 m/s

断面積は、

A = π × 0.20² ÷ 4

A ≒ 0.03142 m²

です。

排風量は、

Q = 60 × 0.03142 × 6.40

Q ≒ 12.06 m³/min

となります。

※この計算例は、前述のドラフトチャンバーとは別の設備を想定しています。

ダクト内部の1点だけで測定してよいのか?

通常、それだけでは断面平均風速を正確に求められません。

ダクト内部では、断面内の場所によって風速が異なるためです。

例えば、直管では、ダクト中心部と壁面付近で風速が異なることがあります。

さらに、エルボの直後などでは、風速分布が偏る場合があります。

そのため、ダクト断面内の複数点で測定するトラバース測定などによって、平均風速を求めます。

ピトー管を使用する場合

ピトー管を使用すると、全圧と静圧との差から速度圧を測定できます。

速度圧Pvと風速Vの関係は、

Pv = ρV² ÷ 2

です。

風速について整理すると、

V = √(2Pv ÷ ρ)

となります。

ここで重要なのは、ピトー管で求めた各測定点の速度圧から、適切に風速を求めることです。

速度圧の単純平均をそのまま平均風速へ換算する方法では、正しい断面平均風速にならない場合があります。

11. 静圧はどこで、何のために測定するのか?

局所排気装置の完成時には、ダクト内の静圧を記録しておくことを推奨します。

静圧は、フード・ダクト・空気清浄装置・排風機の運転状態を把握するための情報になります。

静圧を測定する目的

例えば、完成時にフード直後の静圧を測定し、その値を記録しておいたとします。

数年後、同じ位置で静圧を測定すると、以前とは異なる値になることがあります。

この場合、流量や系統抵抗、排風機の運転条件などに変化が生じている可能性があります。

静圧の変化だけで原因を断定できるのか?

できません。

例えば、ダクトの閉塞、空気清浄装置の目詰まり、排風機の能力低下などは、いずれも静圧や排風量に影響する可能性があります。

ただし、異常が発生した位置や、排風機の運転条件によって静圧変化の現れ方は異なります。

そのため、静圧の変化だけで原因を断定せず、排風量やほかの位置の静圧などと組み合わせて判断する必要があります。

測定例|設計時と完成時の静圧を比較する

例えば、設計時の想定静圧と完成時の実測静圧が次のようになったとします。

測定位置設計時の想定値完成時の実測値
フードA直後−120 Pa−125 Pa
フードB直後−140 Pa−170 Pa
排風機入口−400 Pa−430 Pa

これは架空の例です。

この場合、まず測定位置、排風量、ダンパー開度、排風機回転数などが設計条件と一致しているか確認します。

そのうえで、フードB側の静圧差が大きくなった理由などを調べます。

なお、負圧の場合、

−170 Paは−140 Paよりも圧力としては低い値です。

負圧の絶対値が大きくなったことを、圧力自体が上昇したと表現すると誤解が生じます。

静圧差と圧力損失は同じなのか?

必ずしも同じではありません。

異なる位置で静圧を測定した場合、断面積や風速が変化していると、速度圧も変化する場合があります。

したがって、静圧の差をそのまま圧力損失として扱えないことがあります。

全圧と速度圧の関係を考慮する必要があります。

12. 複数のフードがある場合は流量バランスを確認する

次に、2台のフードを1台の排風機に接続した設備を考えます。

設備の構成

フードAとフードBから、それぞれ枝ダクトが伸びています。

2本の枝ダクトは途中で合流し、1本の主管を通って空気清浄装置と排風機につながっています。

設計上の必要排風量を次のように設定します。

フード設計必要排風量
フードA7.2 m³/min
フードB4.8 m³/min
合計12.0 m³/min

完成後に各枝ダクトの風量を測定したところ、次の結果が得られたとします。

フード設計必要排風量完成時の測定風量
A7.2 m³/min8.2 m³/min
B4.8 m³/min3.8 m³/min
合計12.0 m³/min12.0 m³/min

この例では、合計排風量は設計値と一致しています。

しかし、フードAでは設計値より多く、フードBでは少なくなっています。

つまり、合計排風量が正しくても、各フードへ必要な風量が配分されているとは限らないということです。

なぜ流量が偏るのか?

例えば、フードA側の枝ダクトの抵抗が小さく、フードB側の抵抗が大きい場合、設計どおりの流量配分にならないことがあります。

このような場合には、ダンパーなどによる調整やダクト系統の見直しを検討します。

ダンパー調整の注意点

フードAのダンパーを調整すると、フードBや主管の流量にも影響する場合があります。

そのため、一つのフードを調整して終わりにせず、各枝の性能を再確認する必要があります。

また、必要排風量を満たしていても、フード形状や設置位置によっては捕捉性能が不足する可能性があります。

そのため、各フードの制御風速や気流の状態も確認します。

13. 制御風速が設計どおりでも、有害物質が漏れることはあるのか?

あります。

例えば、側方吸引型の外付け式フードで、所定位置の制御風速を満たしていたとします。

しかし、実際の作業では、容器から発生した蒸気が作業者の呼吸域へ向かう場合があります。

その理由として、空調設備の気流や作業者の動き、発散源とフードの位置関係などが考えられます。

呼吸域を通過する気流に注意する

例えば、発散源が作業者の手前側にあり、その奥にフードが設置されている場合を考えます。

発散源からフードへ流れる気流が作業者の顔の付近を通過しないか確認することが重要です。

また、上方に設置されたフードへ吸引する場合でも、発散源とフードの間に作業者の顔が位置すると、汚染気流が呼吸域を通過するおそれがあります。

測定値だけでは評価できない部分がある

例えば、制御風速の測定は、所定位置での吸引気流の速度を評価するものです。

一方、実作業では、汚染物質の発散方向や作業者の姿勢なども影響します。

そのため、法令上の性能確認とは別に、実作業での捕捉状況を確認することが重要です。

必要に応じて、作業環境測定や個人ばく露測定などを組み合わせて評価します。

ただし、これらは測定目的が異なるため、相互に無条件で代用できるわけではありません。

14. 制御風速ではなく抑制濃度が性能要件となる場合

ここまで、制御風速を中心に解説しました。

しかし、局所排気装置の性能要件には、抑制濃度を用いるものもあります。

例えば、鉛や石綿、一部の特定化学物質に関係する設備では、適用される規則や告示によって、抑制濃度が性能要件となる場合があります。

抑制濃度とは?

抑制濃度は、有害物質の発散を抑える装置の性能を評価するために、所定の方法で測定する濃度です。

これは、一般的な作業環境測定の管理濃度と同じ概念ではありません。

完成時に何を確認するのか?

抑制濃度を性能要件とする装置では、関係法令や告示、検査指針に従って、所定の位置と方法で濃度を測定し、適合性を判断する必要があります。

単に設計上の風速を達成したことだけで、抑制濃度の要求事項を満たしたと判断してはいけません。

抑制濃度と風速を組み合わせて管理する場合

厚生労働省の定期自主検査指針には、過去の抑制濃度の検査で判定基準に適合した際に、所定位置の制御風速も測定している場合、その過去の風速と比較する取扱いが示されています。

ただし、この方法には条件があります。

抑制濃度を確認したことがない設備や、発散条件・フード配置などが大きく変わった設備で、過去の風速値だけを使って適合と判断することは適切ではありません。

また、法令上の測定方法や記録に関する要件も確認する必要があります。

15. 完成時に性能不足が判明した場合はどうするのか?

ここでは、完成時の測定で必要な性能が得られなかった場合の考え方を整理します。

まず重要なのは、排風機の回転数を上げることだけを優先しないことです。

原因① フードの形状や設置位置が不適切

例えば、外付け式フードが発散源から離れすぎている場合には、必要な吸引風速が得られない可能性があります。

この場合、フードを発散源へ近づけたり、囲い込みを追加したりする方法を検討します。

原因② ダクト系統に問題がある

例えば、ダンパーが閉まり気味であったり、ダクト内部に閉塞があったりすると、必要な排風量が得られない場合があります。

この場合には、ダクト系統の状態を確認します。

原因③ 排風機の能力が不足している

排風機の性能が設計条件を満たしていない場合も考えられます。

この場合、ファン性能曲線と系統抵抗曲線を照合し、実際の運転点を確認します。

原因④ 外乱気流が存在する

例えば、給気口や空調設備からの気流が、フードの吸引を妨げている場合があります。

この場合には、外乱気流の方向や強さを調べ、気流の配置を見直します。

原因⑤ 実作業と設計条件が異なる

例えば、計画時はフードの近くで作業する想定だったのに、実際には離れた位置で作業している場合があります。

この場合、単純に作業者へ近づくよう指導するだけでなく、作業性や姿勢を考慮し、フードの位置や形状が適切であるか検討します。

16. 完成時の測定結果をどのように判定するのか?

完成時の測定結果は、単に数値を記録するだけでなく、適切に評価する必要があります。

ここでは、次の3段階に整理します。

第1段階:適用法令の性能要件との比較

まず、適用される規則を確認します。

例えば、有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則が適用される場合には、所定の制御風速を確保できるかを確認します。

抑制濃度によって性能を評価する場合には、適用される濃度基準などを確認します。

第2段階:設計値との比較

次に、設計計算書の数値と測定結果を比較します。

例えば、次の項目です。

項目設計値と比較する内容
排風量必要な風量が確保されているか
静圧同じ位置・運転条件で想定値と整合するか
排風機回転数設定条件と一致するか
ダンパー想定した開度・調整状態か
フード寸法設計した開口面積や位置と一致するか

なお、すべての測定値が計算値と完全に一致することを求めるものではありません。

測定器の不確かさ、施工条件、気流の変動なども考慮しながら、差が生じた理由を確認します。

また、一律に「設計値の±10%以内なら合格」などとする根拠はありません。

許容範囲を設定する場合には、法令上の要求事項や設計条件、測定方法、必要な安全上の余裕などを踏まえる必要があります。

第3段階:実作業における捕捉性能

最後に、実作業を想定した条件で、有害物質の捕捉状態を確認します。

例えば、作業者の呼吸域へ向かう気流がないか、発散源からの気流がフードへ適切に誘導されているかを確認します。

法令上の性能要件を満たすこと、設計どおりの風量が出ていること、実作業で適切に捕捉できることは、それぞれ確認すべき内容が異なります。

17. 完成時の測定記録には何を残すのか?

完成時の性能確認では、測定結果を再現・比較できる記録を残すことが重要です。

例えば、次のような記録表が考えられます。

記録項目記録内容
設備情報設備名、管理番号、設置場所
測定情報測定日、測定者、測定器
法令情報適用規則、要求される性能
フード形式、寸法、開口状態
作業条件発散源、作業位置、使用設備
制御風速測定位置、各測定値、評価値
排風量測定位置、断面積、平均風速、風量
静圧測定位置、測定値、設計値
排風機回転数、周波数、電流等
ダンパー調整後の開度
外乱気流空調、扉、窓、給気の状態
判定法令適合、設計性能、実作業の評価
改善事項不具合の内容、対策、再測定結果

この記録表は実務上の提案であり、すべての項目が一律の法的義務となるわけではありません。

抑制濃度の測定では、局所排気装置を初めて設置した際に、抑制濃度の測定と併せて局所排気装置の風速も測定します。初回の抑制濃度測定の結果に問題がなければ、その後は局所排気装置の定期点検時に風速を確認します。風速に変化が認められなければ、局所排気装置の性能は維持されているものとして扱うことができ、2回目以降の測定では抑制濃度を測定する必要はありません。
局所排気装置の定期自主検査定期自主検査指針(局-12)

ただし、定期自主検査や点検の法定記録に該当する場合には、適用される規則の記録事項と保存期間を満たす必要があります。

測定位置を図面に残す

特に重要なのは、風速と静圧の測定位置を図面に残すことです。

例えば、完成時に「静圧−300 Pa」と記録してあっても、測定位置が分からなければ、将来の測定値と正しく比較することができません。

測定位置、測定孔、フード開口状態、排風機の設定条件などを一緒に記録することを推奨します。

18. 経験者が注意したい8つのポイント

① 法令上の性能要件を先に確認する

制御風速なのか、抑制濃度なのかを確認します。

設計上の目標値と法定基準を混同しないようにします。

② 囲い式フードは最小風速を確認する

平均風速だけで合否を判断してはいけません。

特にドラフトチャンバーでは、実際の開口部全体を適切に評価する必要があります。

③ 外付け式フードは最も離れた作業位置を確認する

開口面風速が高いことだけで、制御風速を満たしているとは判断できません。

④ 測定条件を統一する

完成時と定期検査時で、サッシ高さ、フード開放状態、排風機回転数などが異なれば、測定結果を直接比較できない場合があります。

⑤ ダクトの1点測定から排風量を断定しない

風量を計算するには、適切な断面平均風速を求める必要があります。

⑥ 静圧値だけで不具合の原因を断定しない

流量、圧力、排風機の運転条件などを組み合わせて判断します。

⑦ 合計排風量だけで複数フードを評価しない

各フードに必要な風量が配分され、必要な制御風速などが確保されているか確認します。

⑧ 初回の測定結果を維持管理に活用する

完成時の測定結果を基準として残しておくことで、性能低下の早期発見に役立てることができます。

19. 完成時の性能確認チェックリスト

順番確認事項確認結果
1適用法令と性能要件を確認した□
2設計計算書・系統図を確認した□
3測定器と測定方法を確認した□
4安全な点検・測定手順を確認した□
5フード・ダクト・排風機の外観を確認した□
6排風機の運転条件を確認した□
7各フードの気流の流れ方を確認した□
8所定位置の制御風速を測定した□
9必要に応じて抑制濃度等を確認した□
10必要な箇所で排風量を測定した□
11ダクト系統の静圧を測定した□
12複数フードの流量配分を確認した□
13設計値と実測値を比較した□
14実作業での捕捉状態を確認した□
15不具合がある場合は改善・再測定した□
16測定位置と運転条件を記録した□
17必要な性能が確認された状態で引き渡した□

このチェックリストは、完成時の性能確認を実務で進めるための提案です。

各項目の法的義務の有無は、設備と適用法令によって異なります。

よくある質問

Q1. 局所排気装置が完成したら、必ず風速を測定する必要がありますか?

法令上の点検や性能要件は、対象となる規則・設備によって異なります。

制御風速を性能要件とする設備では、所定位置の風速を確認することが重要です。

一方、抑制濃度を性能要件とする設備では、所定の濃度評価が必要となる場合があります。

Q2. 囲い式フードの平均風速が0.5 m/sなら問題ありませんか?

それだけでは判断できません。

有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の囲い式フードの原則値が適用される場合には、開口面の最小風速が重要です。

Q3. ドラフトチャンバーの開口面はどこですか?

サッシが下がっている場合、原則としてサッシ下端と作業面などで区切られた、実際に開口している部分です。

サッシのガラス部分を開口面に含めません。

Q4. 外付け式フードの開口面で風速を測定すれば十分ですか?

制御風速の評価としては、通常それだけでは不十分です。

適用法令に対応した、開口面から最も離れた所定の作業位置などを確認する必要があります。

Q5. 静圧が設計値と異なる場合は不適合ですか?

直ちに法令違反と判断できるわけではありません。

測定位置や運転条件、風量などを確認し、差が生じた理由を調べる必要があります。

Q6. 排風量が設計値を満たしていれば合格ですか?

必ずしもそうではありません。

フードの構造や設置位置が不適切な場合には、必要な捕捉性能が得られない可能性があります。

Q7. 完成時の測定記録は保存した方がよいですか?

保存することを推奨します。

完成時の記録があれば、将来の定期自主検査や吸引不良の原因調査で比較資料として活用できます。

ただし、法定記録の保存義務は適用規則ごとに確認してください。

まとめ|完成時の性能評価は「測定すること」ではなく「必要な性能を確認すること」

局所排気装置の設置工事が終わったら、排風機が正常に回転していることだけで完成と判断してはいけません。

実際の設備で、必要な性能を確認することが重要です。

特に、制御風速を評価する場合には、フードの形式によって測定位置が異なることに注意する必要があります。

囲い式フードでは、開口面の最小風速が重要です。

外付け式フードでは、開口面から最も離れた所定の作業位置の風速が重要です。

また、排風量や静圧を測定するときには、適切な測定位置と方法を選択し、設計時の条件と比較する必要があります。

さらに、法令上の性能要件を満たしていても、実作業における有害物質の捕捉状況を確認することが重要です。

局所排気装置の完成時に確認すべきことは、単に風速や静圧の数値が出ているかではありません。設計で想定した条件と実際の作業条件を照らし合わせ、有害物質を適切に捕捉できる設備になっているかを評価することです。

完成時の測定結果を記録しておけば、その後の性能低下を発見するための基準としても活用できます。

次回は、局所排気装置の吸引能力が不足した場合について、フード、ダクト、空気清浄装置、排風機など、原因をどのように切り分けて調査するのかを解説します。

主な参考資料

※本記事の測定値や設計値は、測定方法を理解するために設定した仮定条件によるものです。

※厚生労働省の定期自主検査指針は、定期自主検査の検査方法・判定基準を示す資料です。本記事では完成時の性能確認に活用できる技術的方法としても参照していますが、初回使用時の点検と定期自主検査を同一の法的手続として扱うものではありません。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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