局所排気装置のフードで有害物質を捕捉するための排風量が決まったら、次に考えるのがダクトの太さです。
「細いダクトの方が空気が速く流れるのでよいのでは?」
「太いダクトの方が空気が流れやすいのでよいのでは?」
初めて局所排気装置を学ぶと、このような疑問が出てきます。
結論からいうと、ダクトは細すぎても、太すぎても問題があります。
必要な排風量を確保しながら、ダクト内を適切な速さで空気が流れるようにダクト径を決める必要があります。
特に粉じんを扱う設備では、ダクト内の風速が低すぎると、粉じんがダクト内に堆積する可能性があります。
一方、必要以上に風速を高くすると、ダクト内を空気が流れるときの抵抗が大きくなります。この抵抗を圧力損失といいます。
💡 最初に押さえる結論
ダクト径は、まずフードに必要な排風量を決め、その風量を適切なダクト内風速で流せるように決めます。
同じ排風量なら、ダクトを細くすると風速は速くなり、太くすると風速は遅くなります。
ダクトは何のためにあるのか
局所排気装置では、フードで吸い込んだ汚染空気を、空気清浄装置や排気口まで運ばなければなりません。
その空気の通り道がダクトです。
局所排気装置を単純化すると、次のような流れになります。
発散源
↓
フード
↓
ダクト
↓
空気清浄装置
↓
排風機
↓
排気口
ダクトは、単なる「空気を通す管」ではありません。
ダクト径や配置が適切でなければ、
- 必要な排風量を確保できない
- 粉じんがダクト内に堆積する
- 圧力損失が大きくなる
- より大きな能力の排風機が必要になる
といった問題につながります。
有機溶剤中毒予防規則第14条では、局所排気装置のダクトについて、長さをできるだけ短くし、ベンド(曲がり)の数をできるだけ少なくすることが定められています。(厚生労働省)
特定化学物質障害予防規則や粉じん障害防止規則では、対象となる局所排気装置について、ダクトをできるだけ短くし、ベンドをできるだけ少なくすることに加え、掃除口を設けるなど掃除しやすい構造とする規定があります。(厚生労働省)
ダクト径を考える基本は「風量=断面積×風速」
ダクト設計を理解するには、まず次の3つを区別する必要があります。
| 項目 | 意味 | 単位の例 |
|---|---|---|
| 風量 | 一定時間に流れる空気の量 | m³/min、m³/s |
| 断面積 | ダクトを輪切りにした面積 | m² |
| 風速 | ダクト内を空気が流れる速さ | m/s |
この3つには、次の関係があります。
風量 = 断面積 × 風速
つまり、風速を求める場合は、
風速 = 風量 ÷ 断面積
となります。
反対に、必要な断面積を求める場合は、
断面積 = 風量 ÷ 風速
です。
ここがダクト径を考える基本になります。
同じ風量を流す場合、
ダクトが細い
→ 断面積が小さい
→ 風速が速くなる
反対に、
ダクトが太い
→ 断面積が大きい
→ 風速が遅くなる
という関係になります。
厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」でも、ダクト内の平均風速を求め、そこから送風量や排風量を計算する方法が示されています。(厚生労働省)

丸ダクトの断面積はどう計算するのか
丸ダクトの場合、断面は円になります。
円の面積は次の式で求めます。
ダクトの断面積 = 3.14 × 直径 × 直径 ÷ 4
ここで注意したいのが、直径の単位をmにそろえてから計算することです。
例えば直径200 mmのダクトなら、
200 mm = 0.200 m
です。
したがって、
断面積
= 3.14 × 0.200 × 0.200 ÷ 4
= 0.0314 m²
となります。
つまり、直径200 mmの丸ダクトの断面積は、約0.0314 m²です。
200mmと300mmのダクトを比較してみる
ここからは、計算方法を理解するための仮定条件を使います。
必要な排風量を、
15 m³/min
とします。
まず、1分当たりの風量を1秒当たりの風量に変換します。
1分は60秒なので、
15 ÷ 60 = 0.25 m³/s
です。
この0.25 m³/sを、直径200 mmと300 mmのダクトに流した場合を比較します。
直径200mmの場合
直径200 mmは、
0.200 m
です。
まず断面積を計算します。
断面積
= 3.14 × 0.200 × 0.200 ÷ 4
= 0.0314 m²
次にダクト内風速を求めます。
風速 = 風量 ÷ 断面積
なので、
風速
= 0.25 ÷ 0.0314
= 約7.96 m/s
となります。
直径300mmの場合
直径300 mmは、
0.300 m
です。
断面積は、
断面積
= 3.14 × 0.300 × 0.300 ÷ 4
= 約0.0707 m²
です。
風速は、
風速
= 0.25 ÷ 0.0707
= 約3.54 m/s
となります。
結果を比較すると次のようになります。
| ダクト径 | 断面積 | 排風量 | ダクト内風速 |
|---|---|---|---|
| 200 mm | 約0.0314 m² | 15 m³/min | 約7.96 m/s |
| 300 mm | 約0.0707 m² | 15 m³/min | 約3.54 m/s |
どちらも排風量は15 m³/minです。
しかし、ダクト径が違うため、ダクト内風速は大きく違います。
ここから分かる重要なポイントは、
風量が同じでも、ダクト径が違えば風速は変わる
ということです。

なぜ直径が1.5倍なのに断面積は2.25倍になるのか
200 mmから300 mmになると、直径は、
300 ÷ 200 = 1.5倍
です。
しかし、断面積は直径を2回掛けて計算します。
そのため、
1.5 × 1.5 = 2.25倍
になります。
つまり、300 mmダクトの断面積は、200 mmダクトの約2.25倍になります。
同じ風量を流すのであれば、断面積が約2.25倍になる分だけ、風速は大きく低下します。
このため、
ダクト径を少し大きくしただけでも、ダクト内風速はかなり変わることがある
という点に注意が必要です。
搬送速度とは何か
ダクト内の空気は、吸い込んだガス、蒸気、ミスト、粉じんなどを運びます。
特に粉じんでは、ダクト内の風速が低すぎると、粒子がダクト内に落ちて堆積する可能性があります。
このように、汚染物質をダクト内で運ぶという観点から考える風速を、一般に搬送速度と呼びます。
粉じんには質量があります。
そのため風速が低すぎると、
空気は流れているが、粉じんは十分に運ばれない
という状態になる可能性があります。
特に、
- 水平ダクト
- ベンド部分
- ダクト径が急に変わる部分
- 流れが乱れやすい場所
などでは、粉じんが堆積していないか確認することが重要です。
粉じん障害防止規則でも、ダクトを掃除しやすい構造とすることが求められています。(厚生労働省)
搬送速度は一律の数字ではない
ここは特に誤解しやすい部分です。
「粉じんを運ぶダクトは○m/sにすればよい」
と、すべての設備に同じ数字を当てはめることはできません。
必要となる風速は、
- ガス、蒸気、ミスト、粉じんのどれを運ぶのか
- 粉じんの粒径
- 粉じんの密度
- 湿っているか
- 付着しやすいか
- ダクトが水平か垂直か
- ダクトの曲がりや分岐
- 実際の設備条件
などによって変わります。
少なくとも、ここで確認した有機則、特化則、粉じん則のダクト構造に関する規定では、すべての局所排気装置に共通する「搬送速度○m/s」という一律値は示されていません。(厚生労働省)
したがって、実際の設計では対象物質や設備条件を確認して決める必要があります。
ダクトは細すぎてもよくない
同じ排風量なら、ダクトを細くすると風速は速くなります。
例えば今回の仮定条件では、
直径300 mmでは、
約3.54 m/s
だったものが、直径200 mmでは、
約7.96 m/s
になりました。
では、ダクトはできるだけ細くして風速を高くした方がよいのでしょうか。
そうではありません。
風速が高くなると、一般にダクト内の圧力損失も大きくなります。
圧力損失が大きくなると、その抵抗に打ち勝って空気を流すために、より大きな能力を持つ排風機が必要になります。
また、
- 消費電力の増加
- 騒音の増加
- 粉じんによるダクトの摩耗
- 系統全体の圧力損失増加
なども検討する必要があります。
つまり、
「風速が速いほど優れたダクト」というわけではありません。
ダクトは太すぎてもよくない
反対に、ダクトを太くすると断面積が大きくなり、同じ風量では風速が低下します。
ガスや蒸気を扱う場合と、固体粒子である粉じんを扱う場合では考慮すべき内容が異なりますが、特に粉じんでは低すぎる風速に注意が必要です。
粉じんがダクト内に堆積すると、
ダクト内に粉じんがたまる
↓
空気の通り道が変化する
↓
設備の抵抗や風量が変化する
↓
フードの捕捉性能へ影響する可能性がある
という問題につながります。
厚生労働省の定期自主検査指針でも、ダクトの変形、破損、腐食、漏れや静圧などを確認する方法が示されています。(厚生労働省)
したがって、
ダクト径は「できるだけ太く」でも「できるだけ細く」でもなく、必要風量と必要なダクト内風速の両方から決める
ことが基本です。

実務ではダクト径をどう決めるのか
ここから、基本的な計算手順を見てみます。
手順1 まず必要排風量を決める
最初に決めるのはダクト径ではありません。
フードで有害物質を捕捉するために必要な排風量を先に決めます。
ここでは説明用の仮定値として、
必要排風量 = 15 m³/min
とします。
手順2 設計するダクト内風速を決める
次に、運ぶ物質や設備条件からダクト内風速を検討します。
ここでは計算方法を説明するため、
設計するダクト内風速 = 8.0 m/s
と仮定します。
この8.0 m/sは、この記事の計算を説明するための仮定値です。
法令で一律に8.0 m/sと定められているわけではありません。
手順3 風量の単位をそろえる
風速の単位はm/sなので、排風量も1秒当たりに直します。
15 m³/min ÷ 60
= 0.25 m³/s
です。
手順4 必要な断面積を求める
断面積は、
断面積 = 風量 ÷ 風速
で求められます。
したがって、
断面積
= 0.25 ÷ 8.0
= 0.03125 m²
となります。
必要なダクト断面積は約0.03125 m²です。
手順5 断面積から丸ダクトの直径を求める
丸ダクトの断面積は、
断面積 = 3.14 × 直径 × 直径 ÷ 4
でした。
この式から直径を求める場合は、
直径 = √(4 × 断面積 ÷ 3.14)
となります。
√は「平方根」を表します。
今回の断面積0.03125 m²を入れると、
直径
= √(4 × 0.03125 ÷ 3.14)
まず、平方根の中を計算します。
4 × 0.03125 = 0.125
次に、
0.125 ÷ 3.14 = 約0.0398
したがって、
直径 = √0.0398
となります。
0.0398の平方根は約0.199なので、
直径 = 約0.199 m
です。
mmに直すと、
0.199 m = 約199 mm
となります。
計算上必要なダクト径は、約199 mmとなりました。
手順6 実際に採用するダクト径で風速を再確認する
実設備では、計算結果が199 mmだからといって、そのまま199 mmのダクトを使用するとは限りません。
使用可能なダクト寸法などを考慮して選定します。
例えば、200 mmダクトを採用したとします。
200 mmは0.200 mなので、
断面積
= 3.14 × 0.200 × 0.200 ÷ 4
= 0.0314 m²
です。
実際の風速は、
風速 = 風量 ÷ 断面積
なので、
0.25 ÷ 0.0314
= 約7.96 m/s
となります。
今回の仮定条件では、設計時に想定した8.0 m/sに近い値となりました。
このように、
必要排風量を決める
↓
設計するダクト内風速を決める
↓
必要断面積を計算する
↓
計算上のダクト径を求める
↓
実際に採用するダクト径を決める
↓
採用した径で風速を再計算する
という流れで考えると理解しやすくなります。

「風量」と「風速」を混同しない
初学者が特に間違えやすいのが、風量と風速を同じものだと考えてしまうことです。
今回の例では、
直径200 mmのダクトは、
風速 約7.96 m/s
直径300 mmのダクトは、
風速 約3.54 m/s
でした。
しかし、どちらの排風量も、
15 m³/min
です。
つまり、
風速が速いから、必ず風量も多いとは限りません。
風量は、
風量 = 断面積 × 風速
で決まるためです。
細いダクトでは、小さい断面積を速い風速で空気が流れます。
太いダクトでは、大きい断面積を遅い風速で空気が流れます。
結果として、両方の風量が同じになることがあります。
法令上はダクトについて何が求められているのか
ここで、技術的なダクト径の計算と法令上の要求を分けて考える必要があります。
有機溶剤中毒予防規則第14条では、局所排気装置のダクトについて、
- 長さをできるだけ短くする
- ベンドの数をできるだけ少なくする
ことが規定されています。(厚生労働省)
粉じん障害防止規則では、
- 長さをできるだけ短くする
- ベンドの数をできるだけ少なくする
- 適当な箇所に掃除口を設けるなど、掃除しやすい構造にする
ことが規定されています。(厚生労働省)
特定化学物質障害予防規則でも、対象となる局所排気装置について、同様に短いダクト、少ないベンド、掃除しやすい構造が規定されています。(厚生労働省)
これらの規定は、
「ダクトを直径200 mmにしなさい」
という意味ではありません。
具体的なダクト径については、
- 必要排風量
- 対象物質
- 必要なダクト内風速
- ダクト経路
- 圧力損失
- 空気清浄装置
- 排風機能力
などを考慮して設計する必要があります。
計算でダクト径を決めたら終わりではない
計算で適切と思われるダクト径を求めても、それだけで局所排気装置が適切に機能しているとは判断できません。
施工後には、実際の設備を確認する必要があります。
例えば、
- 設計どおりのダクト径になっているか
- ダクトに漏れがないか
- ダクトが変形していないか
- 粉じんが堆積していないか
- ダンパーの状態は適切か
- 実際の排風量が確保されているか
- フードで必要な捕捉性能が得られているか
などを確認します。
厚生労働省の定期自主検査指針では、必要に応じてピトー管やマノメータを使用し、ダクト内の平均風速を求めて排風量を計算する方法が示されています。また、ダクト内静圧が設計値と著しく異ならないことを確認する方法も示されています。(厚生労働省)
つまり、
設計で計算することと、実際の設備で性能を確認することは別です。
計算値だけで「問題ない」と判断せず、実設備で確認することが重要です。
よくある誤解
| よくある誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|
| ダクトは細いほどよい | 細くすると風速は上がるが、圧力損失も増えやすい |
| ダクトは太いほどよい | 太くしすぎると風速が低下する |
| 風速が速ければ風量も多い | 風量は「断面積×風速」で決まる |
| 計算上の径をそのまま採用すればよい | 実際に採用する径で風速を再計算する |
| 粉じんには万能の搬送速度がある | 対象物質や設備条件を考慮する |
| ダクト径を決めれば設計は終了 | 次に圧力損失と排風機能力を検討する |
よくある質問
ダクト径は排風量だけ分かれば決められますか?
排風量だけでは決められません。
例えば15 m³/minの空気を流すとしても、どのくらいのダクト内風速で流すかによって必要な断面積が変わります。
したがって、
必要排風量
と、
設計するダクト内風速
の両方から考えます。
粉じんは風速を速くすればするほどよいですか?
そうとは限りません。
風速が低すぎれば粉じんが堆積する可能性がありますが、必要以上に速くすると圧力損失が増えます。
圧力損失が大きくなれば、より大きな能力を持つ排風機が必要になります。
また、消費電力、騒音、摩耗などへの影響も考える必要があります。
ガスや蒸気でもダクト内風速を考えますか?
考えます。
ただし、粉じんのように固体粒子が重力によって沈降・堆積する問題とは性質が異なります。
ガスや蒸気の場合でも、
- 必要排風量
- ダクト径
- ダクト内風速
- 圧力損失
- 排風機能力
を組み合わせて設計します。
まとめ
局所排気装置のダクト径は、直径だけを先に決めるものではありません。
基本的な流れは、
必要排風量を決める
↓
必要なダクト内風速を検討する
↓
必要断面積を求める
↓
ダクト径を計算する
↓
実際に採用する径で風速を再計算する
↓
圧力損失と排風機能力を確認する
です。
基本となる計算式は、
風量 = 断面積 × 風速
です。
丸ダクトの断面積は、
断面積 = 3.14 × 直径 × 直径 ÷ 4
で求めます。
そして、必要な断面積から直径を求める場合は、
直径 = √(4 × 断面積 ÷ 3.14)
です。
同じ排風量なら、
細いダクト
→ 風速が速くなる
太いダクト
→ 風速が遅くなる
という関係があります。
したがって、
「太いほどよい」「細いほどよい」ではなく、必要な排風量を適切な風速で運べるダクト径を選ぶ
ことが基本です。
そしてダクト径が決まった後は、ダクト、ベンド、空気清浄装置などで発生する圧力損失を計算し、その抵抗がある状態でも必要な排風量を確保できる排風機を選ぶ段階へ進みます。
主な参考資料
- 厚生労働省「有機溶剤中毒予防規則」第14条。局所排気装置のダクトについて、長さをできるだけ短くし、ベンドの数をできるだけ少なくすることを確認。(厚生労働省)
- 厚生労働省「特定化学物質障害予防規則」。対象となる局所排気装置のダクト構造について確認。(厚生労働省)
- 厚生労働省「粉じん障害防止規則」第11条。ダクトの長さ、ベンド、掃除しやすい構造等について確認。(厚生労働省)
- 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」。ダクト内平均風速、排風量、静圧等の確認方法について確認。(厚生労働省)
この記事は、局所排気装置のダクト設計を理解するための基本的な技術解説です。実際のダクト径、搬送速度、圧力損失、排風機能力は、対象物質、作業条件、ダクト経路、空気清浄装置等によって変わります。実設備の設計・変更では、適用法令、設備仕様、設計資料及び現場条件を確認してください。
今回は特に、「風量」「風速」「断面積」の意味が式を見ただけで分かることを優先しました。添付基準が求める、入力値→式→単位換算→結果→意味の順序にも合わせています。


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