局所排気装置のダクト径と風速の計算方法|Q=A×Vから理解する

局所排気装置を検討していると、

「必要な排風量は分かったけれど、ダクト径はどう決めればよいのか」

「200mmと300mmのダクトでは、風速はどのくらい変わるのか」

と疑問に感じることがあります。

基本となるのが、

Q = A × V

という関係です。

この式が分かれば、風量・ダクト断面積・ダクト内風速の関係を計算できるようになります。

ただし、計算で風速が出れば、そのダクト径で設計が完了するわけではありません。実際の局所排気装置では、圧力損失、排風機の能力、取り扱う物質、粉じんの堆積、ダクト経路なども確認する必要があります。

この記事では、まず「Q = A × V」を使ったダクト径と風速の計算に範囲を絞って解説します。

💡 最初に押さえる結論

同じ風量を流す場合、ダクト径を小さくするとダクト内風速は速くなり、ダクト径を大きくすると風速は遅くなります。

理由は、

V = Q ÷ A

だからです。

ただし、「風速は速いほどよい」「ダクトは太いほどよい」のどちらも正しくありません。必要な風量を確保したうえで、取り扱う物質や圧力損失などを考えてダクト径を決めます。

目次

Q = A × Vとは何を表す式なのか

まず、それぞれの記号を確認します。

記号意味主な単位
Q風量m³/s、m³/min
A空気が通過する断面積m²
V断面を通過する平均風速m/s

基本式は、

Q = A × V

です。

例えば、断面積が0.10m²で、その断面を平均2.0m/sで空気が通過しているとします。

このとき、

Q = 0.10 × 2.0

Q = 0.20m³/s

です。

1分当たりへ直すと、

0.20 × 60 = 12m³/min

となります。

つまり、この断面を1分間に12m³の空気が通過していることになります。

「平均風速」であることが重要

ここは実務では特に注意が必要です。

Q = A × V

のVは、ダクトの中央1点だけで測定した風速を意味するものではありません。

ダクト断面内では、場所によって風速が異なる場合があります。そのため、風量計算には原則として断面平均風速を使います。

基本的な関係は、

Q = A × 平均風速

です。

初学者の段階では「Q = A × V」で十分ですが、実測値を使って風量を評価するときは、どこで測った風速なのかを確認することが重要です。

計算前に単位をそろえる

局所排気装置の計算で間違えやすいのが、単位です。

ダクト径がmm、風量がm³/minのままでは、そのままQ = A × Vへ代入できません。

今回の記事では、

Q:m³/s

A:m²

V:m/s

へそろえて計算します。

m³/minをm³/sへ直す

例えば15m³/minなら、1分は60秒なので、

15 ÷ 60 = 0.25m³/s

です。

反対に、m³/sからm³/minへ直す場合は60倍します。

mmをmへ直す

直径200mmなら、

200 ÷ 1,000 = 0.20m

です。

直径300mmなら、

300 ÷ 1,000 = 0.30m

です。

この単位換算を済ませてから断面積を計算します。

丸ダクトの断面積を求める

丸ダクトの断面積は、

A = π × D² ÷ 4

で求めます。

Dはダクトの内径です。

例えば直径200mm、つまり0.20mの場合、

A = 3.14 × 0.20² ÷ 4

A ≒ 0.0314m²

です。

ここで注意したいのは、ダクト断面積は直径に比例するのではなく、直径の2乗に比例することです。

直径が1.5倍になると、

1.5² = 2.25

なので、断面積は2.25倍になります。

この性質が、ダクト径を少し変えただけでも風速が大きく変わる理由です。

15m³/minを200mmダクトへ流すと何m/sになるか

ここから具体的に計算します。

以下は、計算方法を理解するための説明用の仮定条件です。

排風量を15m³/minとします。

まず秒単位へ変換します。

15 ÷ 60 = 0.25m³/s

直径200mmは、

D = 0.20m

です。

断面積は、

A = 3.14 × 0.20² ÷ 4

A ≒ 0.0314m²

となります。

次に、

V = Q ÷ A

へ代入します。

V = 0.25 ÷ 0.0314

V ≒ 7.96m/s

です。

つまり、15m³/minを直径200mmの丸ダクトへ流すと、理論上の平均風速は約8.0m/sになります。

同じ15m³/minを300mmダクトへ流すとどうなるか

次は直径300mmです。

D = 0.30m

なので、

A = 3.14 × 0.30² ÷ 4

A ≒ 0.0707m²

です。

風量は先ほどと同じ0.25m³/sなので、

V = 0.25 ÷ 0.0707

V ≒ 3.54m/s

となります。

比較すると次のようになります。

条件200mmダクト300mmダクト
風量15m³/min15m³/min
断面積約0.0314m²約0.0707m²
平均風速約7.96m/s約3.54m/s

同じ15m³/minでも、ダクト径を200mmから300mmへ変更すると、平均風速は約8.0m/sから約3.5m/sまで低下します。

必要な風速からダクト径を逆算する

実際の設計では、

「風量は決まっている。では、この風速になるようにダクト径を求めたい」

という場合もあります。

まず、

Q = A × V

から、

A = Q ÷ V

と変形できます。

丸ダクトでは、

A = π × D² ÷ 4

なので、ダクト径Dは、

D = √{4Q ÷ (π × V)}

で求めることができます。

例えば説明用の仮定として、

Q = 15m³/min = 0.25m³/s

目標とするダクト内平均風速を、

V = 8.0m/s

とします。

すると、

D = √{4 × 0.25 ÷ (3.14 × 8.0)}

D ≒ 0.199m

となります。

つまり、

約199mm

です。

この結果から、実際に使用する規格径を選びます。

ただし、ここで重要なのは、8.0m/sという数値はこの記事の計算説明のための仮定値であり、すべての局所排気装置に適用できる基準ではないという点です。

また、理論径を規格径へ変更した後は、選んだ実際の径で、

V = Q ÷ A

をもう一度計算します。

200mmなら、

約7.96m/s

です。

仮に8.0m/sが「下回ってはいけない条件」だった場合、199mmという計算結果を単純に200mmへ丸めて終了することはできません。

規格径を選んだ後に、実際の風速を再計算することが重要です。

制御風速とダクト内風速は別のもの

局所排気装置では、「風速」という言葉が複数の場所で使われます。

特に混同しやすいのが、

制御風速

と

ダクト内風速

です。

ダクト内風速は、ダクト内部を空気が移動する速度です。

一方、制御風速は、対象となる法令やフード型式に応じて、フードの開口面や発散源側の所定位置で確認する吸込み気流の速度です。

例えば、

「制御風速が0.5m/sだから、ダクト内部も0.5m/sにする」

という考え方は適切ではありません。

同じm/sという単位でも、測定する場所と目的が違うからです。

Q = A × Vによってダクト風量を考えるときのVは、基本的にダクト断面の平均風速です。

Q = A × Vだけでダクト径を決めてはいけない

ここまでの計算だけを見ると、

「必要風量を決めて、好きな風速を設定すれば、ダクト径を決められる」

ように見えるかもしれません。

しかし、実際の局所排気装置では、そこまで単純ではありません。

ダクト径を決めるときには、必要排風量だけでなく、取り扱う物質、ダクト内での堆積や滞留、ダクト長さ、エルボや分岐による圧力損失、排風機の能力などを合わせて考える必要があります。

特に粉じん系では、ダクト内風速が低すぎると、粉じんがダクト内部へ堆積する可能性があります。

反対に、ダクト径を小さくして風速を必要以上に高くすると、圧力損失が増え、排風機に必要な能力も大きくなります。

したがって、

細いダクトほどよい

でも、

太いダクトほどよい

でもありません。

必要な風量を確保しながら、取り扱う物質を適切に搬送でき、圧力損失も考慮したダクト径を選ぶことが重要です。

実務ではこの順番で確認する

局所排気装置のダクト径を検討するときは、必要排風量を決める → 単位をそろえる → 必要なダクト内風速の条件を確認する → 理論径を計算する → 実際の規格径を選ぶ → 選定した径で風速を再計算する → 圧力損失を計算する → 排風機性能を確認する → 設置後に実測する、という流れで整理すると分かりやすくなります。

この順序で重要なのは、ダクト径の計算を局所排気装置設計のゴールにしないことです。

Q = A × Vは、局所排気装置全体を設計するための基本的な計算の一つです。

よくある計算ミスと判断ミス

よくある誤り何が問題か
15m³/minを15m³/sとして計算する風速が60倍になる
200mmを200のまま式へ入れるmとの単位整合が取れない
ダクト中央1点の風速を平均風速として扱う実際の風量とずれる可能性がある
制御風速とダクト内風速を同じものと考える測定位置と目的が異なる
ダクト径を大きくすればよいと考える粉じん等では堆積を検討する必要がある
ダクト径を小さくすればよいと考える圧力損失が大きくなる可能性がある
Q = A × Vだけで設備設計を終了する圧力損失や排風機性能を確認していない

まとめ

局所排気装置のダクト径と風速を理解する基本式は、

Q = A × V

です。

丸ダクトの断面積は、

A = π × D² ÷ 4

で求められます。

ダクト内平均風速は、

V = Q ÷ A

です。

反対に、風量と目標風速からダクト径を求める場合は、

D = √{4Q ÷ (π × V)}

と整理できます。

今回の説明用条件では、15m³/minを流した場合、

  • 200mmダクト:約7.96m/s
  • 300mmダクト:約3.54m/s

となります。

同じ風量でも、ダクト径が変われば風速は大きく変わります。

一方で、Q = A × Vはダクト設計の出発点であり、設計完了を意味する式ではありません。

実設備では、取り扱う物質、必要な搬送状態、圧力損失、排風機性能、設置後の実測性能などまで確認し、局所排気装置全体として成立しているかを判断する必要があります。

ここからは実務者・設計者向けの記事になります。

局所排気装置のフードでは、単に開口部の風速が高いだけでは十分とはいえません。

最も重要なのは、有害物が発生する位置で、確実にフードへ引き込めているかです。特に外付け式フードでは、フードから離れるほど吸引気流が急激に弱くなります。

そのため、必要以上に風量を増やすよりも、次のような改善が有効な場合があります。

  • フードを発生源に近づける
  • フードで発生源をできるだけ囲い込む
  • 横風や空調気流を遮る
  • 作業者の呼吸域と発生源の間にフードを配置する
  • 作業姿勢やワークの置き方を見直す

フードの制御風速の一般的な目安

発生状況制御風速の目安
1,静かな蒸気・ガスの発散、囲い式フード0.25~0.5 m/s程度
2,一般的な蒸気、軽い粉じん0.5~1.0 m/s程度
3,速い気流のある作業場所に、活発に飛散する場合
 (樽詰め作業、コンベヤーの落とし口、破砕機)
1.0~2.5m/s が必要となることがある
4,強い横風、非常に速い気流のある作業場所または高速度で飛散(研磨・切断・投入など、粉じんが飛散する作業)2.5~10m/s
(条件に応じて風速の増加または設備改善が必要)

これは一般的な設計・検討の目安です。実際に必要な制御風速は、対象物質の有害性、発生量、発生の勢い、フード形状、フードと発生源の距離、周囲の気流などによって変わります。

3,4,項目は乱れ気流が大きすぎるので、この乱れ気流を無くすことから検討します。(実際に3,4,では設計の検討はしません)

化学物質では抑制濃度を満たす制御風速にする必要があります。その為、乱れ気流として0.3m/sを加えて検討することをお勧めします。


ダクト内搬送速度の一般的な目安

搬送対象ダクト内搬送速度の目安
蒸気・ガス・溶剤蒸気8~12 m/s程度
ヒューム、極めて軽い乾燥粉じん10~15 m/s程度
軽い粉じん、一般粉じん15~20 m/s程度
重い粉じん、湿った粉じん、付着・堆積しやすい粉じん18~25 m/s程度を要することがある

粉じんの粒径、比重、含水率、粘着性、発生量、ダクトの水平配管の長さ、曲がり部の数などによって、必要な速度は変わります。

特に、湿った粉じん、油分を含む粉じん、繊維状粉じん、粘着性のある粉じんは、一般的な速度範囲でも堆積する可能性があります。基本的に湿った粉じん等は、フード内に入れる前に除去する事を考えて、軽い粉じんとして設計し、運転開始後も、点検口などを活用してダクト内部の堆積状況を確認することが重要です。

搬送速度が15m/s以上になると、圧力損失が大きくなるので8m/sが経済的です。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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