【第31回】局所排気装置の完成時性能確認|測定・判定・引渡しの実務

局所排気装置の完成時性能確認と引渡しの実務|設計値と実測値の比較・不具合対応・記録管理

局所排気装置の設計計算が終わり、設置工事も完了しました。

しかし、フードやダクト、排風機が設計図面どおりに取り付けられていても、必要な吸引性能が得られているとは限りません。

例えば、次のような問題が考えられます。

  • 排風機は運転しているが、フードの吸引風速が不足している。
  • ダクトの接続部から空気が漏れている。
  • 排風量は足りているが、開口面の一部で風速が低い。
  • 空調設備の横風によって有害物質がフード外へ漏れやすくなっている。
  • 活性炭吸着装置の圧力損失が、設計時の想定と異なっている。
  • 設計値と測定値の違いが、測定誤差なのか設備の異常なのか判断できない。

このような状態で設備を使用し始めると、有害物質の捕捉性能が不足したまま作業を行うおそれがあります。

そこで重要になるのが、完成時の性能確認と引渡し前の確認です。

今回は、第27~30回で設計してきたアセトン洗浄用の局所排気装置を例に、完成後の確認手順を解説します。

具体的には、フードの開口面風速、ダクト内風速、排風量、静圧などを確認し、設計値と比較する方法を紹介します。

さらに、不具合が見つかった場合の原因調査、改善後の再測定、完成時記録の作成、使用部門への引渡しまでを順番に説明します。

今回使用する測定値は、計算方法と判定の考え方を説明するための仮想測定データです。実際の設備で測定した結果ではありません。

目次

局所排気装置の性能確認には「制御風速」と「抑制濃度」がある

局所排気装置の性能確認では、対象となる物質や適用法令によって、制御風速または抑制濃度による評価が行われます。

制御風速は、法令で定められた位置における吸込み気流の速度です。

一方、抑制濃度は、発散源付近の有害物質濃度を一定の値以下に抑えることで、作業者のばく露を安全な水準に保つことを意図して定められた濃度です。

抑制濃度を使用する設備の性能確認

抑制濃度が性能要件となる局所排気装置では、定期自主検査の際に、抑制濃度の測定結果と吸込み風速を関連付けて管理する方法があります。

具体的には、次のように確認します。

  1. 初回の確認
    局所排気装置を運転し、対象物質の濃度を測定して、抑制濃度の基準に適合していることを確認します。同時に、指針で定められた位置の吸込み風速を測定し、記録します。
  2. その後の定期自主検査
    同じ測定位置で風速を確認し、抑制濃度の基準に適合していたときに記録した風速と比較します。
  3. 性能の判定
    測定した風速が、過去に抑制濃度の基準に適合した際に測定した風速以上であれば、定期自主検査指針に基づき、風速によって吸気・排気能力を判定できます。

この方法によれば、所定の条件を満たしている場合、定期自主検査のたびに抑制濃度を測定する必要はありません。

ただし、風速が過去の基準値を下回った場合や、作業条件・発散源・設備構造などが変化した場合には、性能を改めて確認する必要があります。

また、この取扱いは局所排気装置の定期自主検査における性能確認の方法であり、法令で別途義務付けられる作業環境測定を省略できるという意味ではありません。

今回のアセトン洗浄用局所排気装置では?

今回の第31回で取り上げる設備は、有機溶剤中毒予防規則に基づくアセトン洗浄用の囲い式フードです。

この設備では、原則として制御風速によって性能を評価します。

  • 法令上の原則的な制御風速:0.40 m/秒
  • 今回の自主的な設計目標:0.50 m/秒

今回の記事では、完成時に開口面の風速を測定し、法令上の原則値と自主的な設計目標を満たしているか確認します。

さらに、ダクト排風量や静圧なども測定し、完成時の数値をその後の設備管理に活用する方法を解説します。

1.局所排気装置の完成時性能確認とは?

1-1.設置工事の完了と性能確認は別のこと

局所排気装置では、設備が完成したことと、必要な性能を確保できていることを区別する必要があります。

例えば、設計図面どおりに内径160 mmのダクトを設置したとしても、ダクトの圧力損失や排風機の性能によって、必要排風量が確保できない場合があります。

また、フードの排風量が十分であっても、開口面の一部に風速の低い場所が生じることがあります。

そのため、設備の完成後には、主に次の内容を確認します。

  1. 設計図面どおりの設備が設置されているか。
  2. フード・ダクト・排風機などに不具合がないか。
  3. 必要な吸引性能が得られているか。
  4. 通常の作業条件で性能を維持できるか。
  5. 使用部門が安全に運用・点検できる状態になっているか。

1-2.法定点検と完成時の性能確認の違い

今回の設備は、有機溶剤中毒予防規則第5条により設ける局所排気装置を想定しています。

同規則第22条では、対象となる局所排気装置を初めて使用するときなどに、吸気・排気の能力等について点検を行うことが定められています。

一方、施工会社と使用者が実施する完成時の性能確認や引渡し検査では、法定点検の内容に加えて、設計条件との比較や運転管理に必要な情報の確認を行うことが考えられます。

区分主な目的位置付け
初使用時等の点検設備の吸気・排気能力等を確認する有機溶剤中毒予防規則第22条の要求
完成時の性能確認設計条件と完成設備の性能を照合する法定点検を含み得る実務上の確認
引渡し検査使用・保守に必要な情報と未解決事項を確認する契約・社内手順等による管理
定期自主検査使用開始後の設備性能・状態を定期的に確認する同規則第20条の要求

つまり、引渡し時に「設備が完成した」と確認するだけでは十分ではありません。

必要な法定点検を実施するとともに、設計上の性能が得られていることを確認する必要があります。

2.今回確認する局所排気装置の設計条件

2-1.設備の概要

今回の例では、アセトンを使用して小型金属部品を洗浄する作業を想定します。

フードには、ドラフトチャンバー型の囲い式フードを使用します。

フード内部に洗浄容器を配置し、作業者は前面の開口部から必要な操作を行います。

設備の構成は次のとおりです。

H-01:囲い式フード

↓

排気ダクト

↓

AC-01:活性炭吸着装置

↓

F-01:排風機

↓

EX-01:屋外排気口

今回は、この設備が施工されたものと仮定して、完成時の確認方法を解説します。

ただし、前回までの排風機は仮想の性能曲線を使用していました。

実際の設備では、使用する排風機の型式とメーカー性能が確定していることが必要です。

2-2.第29回で求めた設計値

第29回の最新版で求めた主要な計算結果は次のとおりです。

項目設計値
フード開口幅0.80 m
フード開口高さ0.40 m
フード開口面積0.3200 m²
法令上の原則的な制御風速0.40 m/秒
自主的な設計目標の最小風速0.50 m/秒
設計平均風速0.625 m/秒
必要排風量12.00 m³/分
ダクト内径160 mm
ダクト断面積0.0201 m²
設計ダクト内平均風速9.95 m/秒
初期状態の系統圧力損失573.31 Pa
圧力損失増加後の設計値623.31 Pa

これらの値は、第29回のExcel設計計算書と一致しています。

ダクト断面積は小数第4位まで表示していますが、計算には丸め前の数値を使用しています。

2-3.排風機の計算結果

第29回では、次の仮想排風機性能を設定しました。

排風機全圧(Pa)=1,250 − 50 × 排風量(m³/分)

この条件から、次の運転点を求めました。

条件運転排風量運転全圧
初期状態12.52 m³/分624.03 Pa
圧力損失増加後12.17 m³/分641.37 Pa

これらは、仮想排風機と仮定した系統抵抗の交点から求めた値です。

今回の完成時性能確認では、これらの数値を実測値として使用するのではなく、設計段階で予測した運転状態の参考値として扱います。

実際の設備では、メーカーの排風機性能曲線と施工後の測定結果を比較する必要があります。

3.完成時の性能確認を始める前の準備

3-1.設計資料を準備する

性能確認を行う前に、次の資料を用意します。

資料主な確認内容
設備配置図フード、排風機、排気口等の設置位置
ダクト系統線図ダクト径、長さ、エルボ、機器の接続関係
Excel設計計算書必要排風量、圧力損失、設計条件
排風機仕様書型式、回転数、性能曲線、使用可能範囲
活性炭吸着装置の仕様書処理風量、圧力損失、使用条件
電気設備図面電源、制御盤、インバータ等の構成
施工記録工事中の変更内容
届出関係書類届出対象設備の計画内容

ここで重要なのは、設計時の図面と完成後の設備が一致しているかを確認することです。

例えば、施工途中でエルボが1個追加された場合、当初の圧力損失計算書と実際の設備条件が一致しなくなります。

必要に応じて設計計算書を更新します。

3-2.測定器を準備する

今回は、主に次の測定器を使用します。

測定器主な用途
熱線式風速計フード開口面の風速測定
ピトー管・差圧計ダクト内の速度圧・風速測定
差圧計ダクトや装置の静圧・差圧測定
スモークテスター気流の流れ方の確認
回転計必要に応じて排風機の回転数測定
電流計等電動機の運転状態確認
巻尺・スケールフード・ダクト寸法の確認

熱線式風速計には、日本カノマックスのクリモマスター風速計Model 6501シリーズのような測定器を使用することが考えられます。

ただし、使用機器は測定範囲、精度、校正状態、測定環境への適合性を確認して選定します。

3-3.測定条件を統一する

性能確認では、どのような運転条件で測定したかが重要です。

今回の例では、次の条件を設定します。

項目今回の確認条件
サッシ開口幅0.80 m
サッシ開口高さ0.40 m
排風機通常運転設定
活性炭吸着装置初期状態を想定
給気・空調設備通常の作業時と同じ条件
作業場の扉通常の使用状態
フード内部通常作業を想定した配置
測定時の安全管理火災・爆発等のリスクを確認

測定時だけ作業場の扉を開放したり、排風機の回転数を通常より高くしたりすると、実際の作業状態とは異なる結果になる可能性があります。

また、有機溶剤の蒸気が存在する可能性がある設備では、測定器や試験方法が点火源とならないように確認します。

4.手順① 設備の施工状態を確認する

風速測定の前に、設備そのものに問題がないか確認します。

4-1.フード

次の事項を確認します。

  • フードが計画した位置に設置されている。
  • サッシが正常に開閉する。
  • サッシ開口寸法が計画と一致している。
  • フード内部に気流を妨げる障害物がない。
  • フードの接続部に破損や緩みがない。
  • バッフルなどの内部構造が仕様と一致している。

ドラフトチャンバーでは、サッシが開いている部分と、ガラスで閉じられた部分を区別します。

今回の測定対象となる開口面は、幅0.80 m、高さ0.40 mの実際に開いている範囲です。

4-2.ダクト

次の事項を確認します。

  • ダクト内径が設計どおりである。
  • ダクト経路が図面と一致している。
  • 直管長さとエルボの数が一致している。
  • 接続部に緩みや損傷がない。
  • 必要な支持金具が設置されている。
  • 点検口や測定孔が適切に設けられている。
  • 著しい漏れや閉塞がない。

特に、吸引側ダクトの漏れは、フードで必要な空気量を吸引できなくなる原因となります。

4-3.排風機

排風機では、次の事項を確認します。

  • 選定した型式が設置されている。
  • 正しい方向に回転する。
  • 異常な振動や異音がない。
  • 電動機の電流等が許容範囲にある。
  • 設定された運転周波数で正常に運転する。
  • 必要な保護装置が正常に作動する。

今回の設備では、活性炭吸着装置の後段に排風機を配置しています。

有機溶剤中毒予防規則第15条では、空気清浄装置がある場合の排風機の配置について規定されており、原則として清浄後の空気が通る位置に設ける必要があります。

また、排風機や電動機の防爆上の適合性についても、実際の設備条件から確認する必要があります。

4-4.排気口と給気設備

排気口では、排気方向、設置位置、周囲への影響などを確認します。

また、排気した空気を補うための給気が不足すると、作業場の負圧が大きくなり、設計どおりの排風量を確保できない場合があります。

排気口や給気設備は、単に設置されていればよいのではなく、通常運転時に適切に機能することを確認する必要があります。

5.手順② フードの吸引気流を確認する

5-1.まず気流の方向を確認する

風速の数値を測定する前に、スモークテスターなどを使用して、フード開口部の気流の流れ方を確認します。

正常な状態では、フード開口部周辺の空気がフード内部へ流れ、排気系統へ向かいます。

確認する項目は次のとおりです。

  • 開口部の空気がフード内部へ流れているか。
  • 開口部から外へ向かう気流が生じていないか。
  • 開口部付近に著しい乱れがないか。
  • 作業者の動作や空調設備が吸引を妨げないか。
  • フード内部に著しい滞留がないか。

スモークテスターによる気流確認は、数値測定だけでは分かりにくい乱れや漏れの可能性を発見するために役立ちます。

ただし、煙の流れを確認しただけで、法令上の制御風速を満たしたと判断することはできません。

また、発煙試験を行う際には、試験に使用する物質、可燃性蒸気の有無、点火源、設備への影響などを確認し、安全に実施できる条件を整える必要があります。

5-2.横風の影響も確認する

ドラフトチャンバーは発散源を囲い込む構造のため、外付け式フードに比べて周囲気流の影響を受けにくい特徴があります。

ただし、サッシ開口部に空調設備からの強い風が当たったり、作業者の移動によって気流が乱れたりすると、フードの捕捉性能が低下する場合があります。

そのため、通常の作業条件で開口面付近の気流を確認し、必要に応じてスモークテスターなどで外部への漏出や気流の乱れを調べます。

6.手順③ フード開口面の風速を測定する

6-1.囲い式フードの制御風速とは?

今回の設備は囲い式フードです。

有機溶剤中毒予防規則第16条では、囲い式フードの原則的な制御風速として0.40 m/秒が定められています。

囲い式フードの制御風速は、フード開口面における最小風速です。

したがって、開口面の平均風速だけを測定して、法令上の制御風速を満たしていると判断してはいけません。

今回の設計では、法令上の原則値0.40 m/秒とは別に、自主的な設計目標として最小風速0.50 m/秒を設定しています。

6-2.風速の測定位置を決める

今回のフード開口寸法は次のとおりです。

幅:0.80 m

高さ:0.40 m

開口面積:

0.80 × 0.40 = 0.32 m²

厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」では、通常の囲い式フードの風速測定位置について、開口面を等しい面積の16以上の部分に分け、それぞれの中心を測定位置とする方法が示されています。

今回は、この方法を参考にします。

開口幅0.80 mを4等分すると、

0.80 ÷ 4 = 0.20 m

開口高さ0.40 mを4等分すると、

0.40 ÷ 4 = 0.10 m

となります。

したがって、開口面を幅方向4区画、高さ方向4区画の合計16区画に分割します。

各区画の中心を測定点とします。

なお、上記指針は定期自主検査のための指針です。ここでは、初使用時の性能確認にも参考として利用しています。

6-3.仮想測定結果

今回は、測定後に得られた値として次の16点を仮定します。

単位はすべてm/秒です。

開口面の位置左①②③右④
上段0.700.730.710.70
上から2段目0.660.680.670.67
上から3段目0.620.650.640.63
下段0.590.610.600.59

この表の数値は、測定方法と判定の考え方を説明するための仮想データです。

6-4.最小風速を求める

16点の測定値の中で最も小さい値は、

0.54 m/秒

です。

今回の自主的な設計目標は0.50 m/秒です。

そのため、測定例では、

0.54 − 0.50 = 0.04 m/秒

だけ設計目標を上回っています。

また、原則的な法令基準0.40 m/秒とも比較します。

0.54 − 0.40 = 0.14 m/秒

となります。

今回の16点の測定結果は、いずれも0.40 m/秒以上です。

ただし、実際の適否判断では、測定器の状態、測定条件、測定位置、適用される法令上の特例の有無などを確認する必要があります。

6-5.平均風速を求める

次に、16点の平均風速を求めます。

上段の合計:

0.54 + 0.60 + 0.63 + 0.67 = 2.44

上から2段目の合計:

0.59 + 0.64 + 0.67 + 0.70 = 2.60

上から3段目の合計:

0.61 + 0.65 + 0.68 + 0.71 = 2.65

下段の合計:

0.62 + 0.66 + 0.70 + 0.73 = 2.71

全体の合計:

2.44 + 2.60 + 2.65 + 2.71 = 10.40

16点の平均風速:

10.40 ÷ 16 = 0.65 m/秒

したがって、

平均開口面風速:0.65 m/秒

です。

6-6.測定結果を整理する

項目設計値・基準値仮想測定値
法令上の原則的な制御風速0.40 m/秒最小0.54 m/秒
自主的な設計目標の最小風速0.50 m/秒最小0.54 m/秒
設計平均開口面風速0.625 m/秒平均0.65 m/秒

今回の仮想測定結果では、法令上の原則値と自主的な設計目標の双方を上回っています。

ただし、これは今回の仮想条件における評価です。

実際には、通常作業時のサッシ開口高さや空調条件で必要な性能が得られることも確認する必要があります。

7.手順④ 開口面風速から排風量を計算する

7-1.平均開口面風速を使用する

今回の平均開口面風速は0.65 m/秒です。

フード開口面積は0.32 m²です。

開口面風速から排風量を計算する場合、今回のように開口面を等しい面積の区画に分けたときは、各区画の平均的な法線方向風速を用いて、排風量を概算できます。

7-2.排風量を計算する

まず、1秒間の空気量を求めます。

0.32 × 0.65 = 0.208 m³/秒

次に、1分間の排風量へ換算します。

0.208 × 60 = 12.48 m³/分

したがって、

開口面風速から求めた参考排風量:12.48 m³/分

となります。

7-3.設計値と比較する

設計排風量は12.00 m³/分です。

今回の参考排風量は12.48 m³/分です。

差は、

12.48 − 12.00 = 0.48 m³/分

です。

設計排風量に対する割合は、

0.48 ÷ 12.00 × 100 = 4.00%

となります。

項目排風量
必要排風量12.00 m³/分
開口面から求めた参考排風量12.48 m³/分
差+0.48 m³/分
設計値に対する差+4.00%

今回の仮想測定結果では、開口面から計算した参考排風量が設計値を上回っています。

ただし、フード開口面での風速測定は、測定位置、気流方向、作業者や測定器の影響などによって誤差が生じる場合があります。

したがって、計算した12.48 m³/分は、今回の条件での参考推定値として扱います。

8.手順⑤ ダクト内風速と排風量を確認する

8-1.ダクト内径を確認する

今回のダクト内径は160 mmです。

mへ換算します。

160 ÷ 1,000 = 0.160 m

半径は、

0.160 ÷ 2 = 0.080 m

です。

ダクト断面積を求めます。

0.080 × 0.080 × 3.14159265

= 約0.02010619 m²

表示値は、

0.0201 m²

です。

第29回と同様に、後続の計算では丸め前の断面積を使用します。

8-2.ダクト内平均風速の仮想測定値

今回は、適切な測定位置でピトー管と差圧計を使用し、ダクト断面内の複数位置から平均風速を求めたものと仮定します。

その結果、ダクト内平均風速は約10.27876 m/秒となったものとします。

表示値は、

10.28 m/秒

です。

ここで、ダクト中央の1点だけの風速を測定し、それをダクト内平均風速として扱わないようにします。

ダクト内部では、壁面付近と中央付近で風速が異なるためです。

8-3.ダクト排風量を計算する

ダクト断面積と平均風速から排風量を求めます。

丸め前の断面積と平均風速を使用すると、

0.02010619 × 10.27876 × 60

= 約12.40 m³/分

となります。

したがって、

ダクト測定から求めた排風量:12.40 m³/分

です。

8-4.開口面から求めた排風量と比較する

今回の結果を比較します。

測定・計算方法排風量
設計必要排風量12.00 m³/分
開口面風速からの参考推定値12.48 m³/分
ダクト内風速からの参考推定値12.40 m³/分

開口面から求めた値とダクトから求めた値の差は、

12.48 − 12.40 = 0.08 m³/分

です。

ダクトから求めた値を基準にすると、

0.08 ÷ 12.40 × 100 = 約0.65%

となります。

今回の例では、2つの推定値が比較的近い結果となっています。

ただし、差が0.65%以内なら必ず合格という法定基準があるわけではありません。

実際には、測定器の精度、測定断面、風速分布、気流方向、漏れ、測定時の運転条件などを踏まえて評価します。

また、ダクト流量とフード開口面流量が大きく異なる場合には、ダクトの漏れや測定条件などを調べる必要があります。

9.手順⑥ 静圧と排風機の運転状態を確認する

9-1.静圧を測定する目的

静圧は、ダクト内の空気が周囲に対して持つ圧力です。

完成時に静圧を記録しておくと、その後に設備性能が変化したときの比較資料として利用できます。

例えば、活性炭吸着装置の圧力損失が増加した場合、排風機の運転点が変化し、各測定位置の静圧も変わることがあります。

ただし、静圧の変化だけで性能向上や性能低下を判断してはいけません。

9-2.静圧測定位置を決める

今回の設備では、例えば次の場所を測定位置として設定することが考えられます。

  • フード直後のダクト
  • 活性炭吸着装置の入口
  • 活性炭吸着装置の出口
  • 排風機の入口側
  • 排風機の出口側

実際の測定位置は、設備構造と安全性を確認して決定します。

特に、測定孔の位置はエルボや分岐の直近を避けるなど、流れの乱れに注意する必要があります。

9-3.仮想の静圧測定例

今回は、フード直後の特定の測定孔において、次の静圧が得られたと仮定します。

測定静圧:−280 Pa

これは、測定位置における大気圧との差を示す値です。

今回の設備では、フード直後のダクトが大気圧より低い状態にあるものとします。

ただし、この−280 Paを、装置全体の圧力損失573.31 Paや、仮想排風機全圧624.03 Paと直接比較してはいけません。

それぞれ示している物理量と測定・計算条件が異なるためです。

9-4.静圧だけで吸引性能を判断しない

例えば、完成時の静圧が−280 Paであったものが、使用開始後に−350 Paになったとします。

負圧の絶対値が大きくなっていても、吸引性能が向上したとは限りません。

ダクトの閉塞や装置の抵抗増加によって、排風量が減少している可能性もあります。

したがって、静圧の変化を確認した場合には、フードの制御風速や排風量、排風機の運転状態なども確認します。

9-5.排風機の性能を確認する

排風機では、次の項目を記録することを推奨します。

項目確認する内容
排風機型式設置した実際の製品
回転数定格・運転条件との関係
インバータ周波数通常運転時の設定
電動機電流許容範囲との関係
振動・異音異常の有無
吸込・吐出側圧力測定断面と圧力の定義
排風量設計値との関係

完成時にこれらを記録しておくと、後の不具合調査に役立ちます。

10.設計値と完成時の仮想測定結果を比較する

ここまでの計算結果をまとめます。

項目設計値・基準値仮想測定値評価
開口幅0.80 m0.80 m一致
開口高さ0.40 m0.40 m一致
法令上の原則的な最小風速0.40 m/秒0.54 m/秒数値上は上回る
自主的な設計目標の最小風速0.50 m/秒0.54 m/秒目標達成
設計平均風速0.625 m/秒0.65 m/秒上回る
必要排風量12.00 m³/分ダクトから12.40 m³/分上回る
ダクト内径160 mm160 mm一致
ダクト内平均風速9.95 m/秒10.28 m/秒上回る
初期系統圧力損失573.31 Pa未測定比較不可
仮想排風機の初期運転全圧624.03 Pa実機値未確定比較不可
フード直後の静圧設計基準値未設定−280 Pa初期記録用

今回の仮想測定結果では、制御風速と排風量について、自主的な設計目標を満たす結果となっています。

ただし、排風機の実際の仕様や、装置全体の圧力損失などは未確定です。

したがって、今回の数値だけで実設備の引渡しを正式に承認できるわけではありません。

完成時の性能確認では、確認できた事項と未確認事項を区別して記録することが重要です。

11.性能が不足した場合はどうする?

ここまでの例では、最終的に必要な風速が得られていました。

しかし、完成時の最初の測定で、設計目標を満たさない場合もあります。

ここでは、別の仮想測定例を使って説明します。

11-1.最初の測定で風速が不足した例

初回の確認で、開口面の一部に次の値が得られたと仮定します。

  • 法令上の原則値:0.40 m/秒
  • 自主的な設計目標:0.50 m/秒
  • 開口面の測定点の最小値:0.45 m/秒

この場合、0.45 m/秒は法令上の原則値0.40 m/秒を上回っています。

一方、自主的な設計目標0.50 m/秒には達していません。

したがって、法令上の要求事項と自主的な設計目標を区別して評価する必要があります。

今回の例では、自主的な設計目標を満たしていないため、引渡し前に原因を調べるものとします。

11-2.原因を調べる順番

最初に、測定条件が適切だったかを確認します。

例えば、次の事項です。

  1. サッシ開口高さは0.40 mだったか。
  2. 排風機は通常運転設定だったか。
  3. 給気設備や空調設備の状態は通常どおりだったか。
  4. 測定器とプローブの向きは適切だったか。
  5. 作業者の立ち位置が測定に影響していなかったか。

測定条件に問題がなければ、設備側の原因を調べます。

11-3.考えられる原因

現象考えられる原因主な確認事項
開口面の一部だけ風速が低いバッフル配置、横風、内部障害物開口面の風速分布と気流
開口面全体で風速が低い排風量不足、給気不足ダクト風量、排風機運転状態
排風量が設計値より低い抵抗増加、回転数不足、漏れダクト・処理装置・排風機
測定値が大きく変動する乱れ気流、運転不安定空調、給気、制御状態
静圧の負圧が大きくなった閉塞、抵抗増加など風量、各部の差圧
静圧の負圧が小さくなったファン性能低下、漏れなど風量、漏れ、排風機

これらは考えられる原因の例です。

特定の測定結果だけから、原因を一つに決めつけてはいけません。

11-4.横風が原因だった場合

今回の例では、空調設備からの横風によって開口面の気流が乱れていたと仮定します。

そのため、空調の吹出し方向や給気方法を見直します。

対策後に、同じ測定条件で再測定します。

その結果、開口面の最小風速が0.54 m/秒となったものとします。

項目改善前改善後
最小風速0.45 m/秒0.54 m/秒
自主的な設計目標0.50 m/秒0.50 m/秒
目標に対する評価未達達成

このように、改善前後を比較する場合には、サッシ開口高さ、排風機の運転設定、測定位置、空調条件などを記録する必要があります。

11-5.改善後は再測定する

対策を実施しただけでは、改善効果を確認したことにはなりません。

例えば、空調の吹出し方向を変更した場合、横風の影響は小さくなっても、別の位置で気流の乱れが生じる可能性があります。

そのため、対策後は再測定し、開口面全体の風速分布や通常作業時の気流を確認します。

12.不具合が見つかった場合の引渡し判断

完成時の性能確認では、不具合が見つかった場合の対応方法も決めておく必要があります。

例えば、次のように整理できます。

状況実務上の対応例
法令上必要な性能を満たさない原因調査と是正を行い、再確認する
自主的な設計目標を満たさない設計条件を確認し、改善または正式な仕様変更を検討する
施工図面と実設備が異なる変更内容を評価し、図面・計算書を更新する
排風機の仕様が未確認メーカー資料を取得して照合する
測定結果の信頼性が不十分測定条件・方法を見直して再測定する
軽微な書類不備がある補正内容と担当者・期限を明確にする

法令上必要な性能が不足する場合には、必要な対策を講じたうえで、適切な状態を確認する必要があります。

自主的な設計目標が未達の場合についても、使用部門が認識しないまま条件を変更して引き渡すことは避けるべきです。

設備仕様の変更が必要であれば、その根拠と影響を確認し、設計資料も更新します。

また、未解決事項がある状態で引渡しを行う場合には、使用制限や未完了項目を明確にする必要があります。

特に、安全上重要な未解決事項については、単に書面に残すだけで使用開始を認めることは適切ではありません。

13.完成時の性能確認記録を作成する

13-1.何を記録する?

完成時の測定値は、その後の設備管理に役立つ情報です。

例えば、次の項目を記録することを推奨します。

項目記録内容
設備番号LEV-001
測定日実際の測定日
測定者氏名・所属
測定場所フードH-01
測定器型式・管理番号
校正・点検情報校正日、使用前確認など
開口幅0.80 m
開口高さ0.40 m
排風機の運転設定周波数・回転数など
空調・給気条件通常運転時の状態
開口面風速16点の測定結果
最小風速0.54 m/秒
平均風速0.65 m/秒
参考排風量12.48 m³/分
ダクト排風量12.40 m³/分
静圧測定位置と−280 Pa
異常の有無確認結果
是正・再測定実施内容と結果
判定・承認確認者、確認日

今回の数値は、説明用の仮想測定データです。

実際の記録では、測定していない項目に架空の数値を記入しないようにします。

13-2.測定条件も記録する

測定値だけを記録しても、後から比較できない場合があります。

例えば、開口面の最小風速が0.54 m/秒であったとしても、サッシ開口高さが0.40 mだったのか0.20 mだったのかによって、評価の意味が変わります。

また、排風機の運転設定や空調条件が異なっていれば、測定値が変化することがあります。

そのため、測定時の運転条件を記録することが重要です。

13-3.設計値・仮想値・実測値を区別する

記録では、次の4つを区別することを推奨します。

  • 設計値:設計条件に基づいて設定した値
  • 計算値:設計式などから計算した値
  • 仮想測定値:教材や説明のために設定した値
  • 実測値:実際の設備で測定した値

今回の記事の例では、仮想測定値を使用しています。

実務で記録書を作成するときには、実際の測定結果に置き換えてください。

14.局所排気装置の引渡し時に必要な資料

14-1.引渡し資料を整理する

設備を使用部門へ引き渡す際には、施工図面だけでなく、設備の運転・点検・保守に必要な情報も整理することを推奨します。

資料主な内容
完成図面実際のフード・ダクト・排風機の配置
ダクト系統線図実際の接続構成と寸法
最新版の設計計算書設計値、計算条件、変更履歴
排風機仕様書型式、性能曲線、回転数等
排ガス処理装置仕様書処理性能、使用条件、保守方法
完成時性能確認記録風速、排風量、静圧など
点検記録初使用時点検などの実施結果
操作説明書起動・停止、異常時の対応
保守点検手順書日常・定期点検の内容
不具合・是正記録不具合内容、対応結果、未完了事項

これは実務上推奨する資料構成です。

すべての資料が、同じ名称で法令上の引渡し書類として規定されているわけではありません。

14-2.使用部門への説明

設備を引き渡すときには、使用部門へ次の事項を説明することが重要です。

  • 通常の起動・停止方法
  • サッシの適切な使用高さ
  • 作業時のフード内部の配置
  • 吸引気流を妨げる行為
  • 運転異常の確認方法
  • 排風機の運転設定
  • 活性炭吸着装置の保守方法
  • 異常時の連絡先
  • 設備を使用してはいけない状態

例えば、完成時には開口高さ0.40 mで性能確認を行っていても、使用者が普段0.60 mまで開いて作業すれば、同じ性能が得られるとは限りません。

そのため、確認した運転条件を実際の作業方法に反映する必要があります。

14-3.引渡し後の管理責任

引渡し時には、誰がどの設備を管理するのかを明確にすることを推奨します。

例えば、次のような役割分担が考えられます。

担当主な役割
使用部門日常の運転確認、異常の連絡
設備保全部門点検、修理、性能管理
安全衛生担当部門法令適用確認、記録管理の支援
有機溶剤作業主任者法令に基づく点検や作業管理
施工・設備業者契約範囲に応じた不具合対応

役割分担は事業場の組織体制に合わせて決定します。

ただし、法令上の事業者の義務や、有機溶剤作業主任者に定められた職務を、社内の役割分担によってなくすことはできません。

【図解⑨挿入:完成時性能確認記録・完成図面・操作説明書・保守点検資料を使用部門へ引き渡す関係図】

15.完成時の測定値を、その後の管理に活用する

15-1.完成時の測定値を初期管理値にする

完成時に得られた測定結果は、その後の性能低下を早期に発見するための比較基準として活用できます。

例えば、今回の仮想測定値を初期管理データとして整理すると、次のようになります。

管理項目初期管理データの例
サッシ開口高さ0.40 m
開口面の最小風速0.54 m/秒
開口面の平均風速0.65 m/秒
ダクト排風量12.40 m³/分
フード直後の静圧−280 Pa

これらは、法令が一律に定める管理値ではありません。

設備の性能を継続的に管理するための自主的な初期データです。

15-2.初期値と比較するときの注意

例えば、完成時に12.40 m³/分だった排風量が、その後11.80 m³/分に低下した場合を考えます。

差は、

12.40 − 11.80 = 0.60 m³/分

です。

初期値に対する減少率は、

0.60 ÷ 12.40 × 100

= 約4.84%

となります。

しかし、この4.84%という数値だけで、法令違反や設備不適合を判定することはできません。

必要な制御風速、測定条件、測定の不確かさなどを確認して評価します。

また、管理上の注意水準を設定する場合には、その根拠を明確にします。

15-3.静圧の初期値も活用する

今回の仮想静圧は−280 Paです。

この数値を記録しておくと、後の測定結果と比較できます。

ただし、静圧の絶対値が大きくなったことだけで、吸引性能が向上したと判断してはいけません。

例えば、ダクト閉塞によって抵抗が増加すると、測定位置によって静圧が変化することがあります。

そのため、静圧と制御風速、排風量を組み合わせて判断します。

15-4.活性炭吸着装置の管理

今回の設備では、活性炭吸着装置の圧力損失を初期180 Pa、増加後230 Paと仮定しています。

しかし、圧力損失の測定だけで、活性炭の吸着性能や破過の有無を判断できるわけではありません。

活性炭の交換時期や処理性能は、使用物質、濃度、風量、温度、湿度、活性炭の仕様などを踏まえて管理する必要があります。

圧力損失の管理と、吸着性能の管理を区別することが重要です。

16.法令上必要な点検・検査と記録

ここでは、今回の設備に関係する有機溶剤中毒予防規則の要求事項を整理します。

16-1.初使用時等の点検(第22条)

有機溶剤中毒予防規則第22条では、対象となる局所排気装置を初めて使用するとき、または分解して改造・修理を行ったときに、次の事項について点検を行うことが定められています。

  1. ダクト及び排風機におけるじんあいのたい積状態
  2. ダクトの接続部における緩みの有無
  3. 吸気及び排気の能力
  4. その他、性能を保持するため必要な事項

今回の完成時性能確認では、これらの内容を含めた点検を行う必要があります。

16-2.異常があった場合の補修(第23条)

同規則第23条では、定期自主検査または第22条の点検で異常を認めたときは、直ちに補修しなければならないとされています。

したがって、点検で異常を認めた場合には、記録するだけでなく、必要な補修を実施します。

16-3.定期自主検査(第20条)

今回の局所排気装置については、有機溶剤中毒予防規則第20条に基づき、原則として1年以内ごとに1回、定期自主検査を実施する必要があります。

検査には、フード・ダクト・ファンの損傷、ダクト接続部の緩み、排風機の状態、吸気・排気の能力などが含まれます。

16-4.定期自主検査の記録(第21条)

同規則第21条では、定期自主検査の結果について、次の事項を記録し、3年間保存することが定められています。

  • 検査年月日
  • 検査方法
  • 検査箇所
  • 検査の結果
  • 検査を実施した者の氏名
  • 検査結果に基づいて補修等を行った場合は、その内容

なお、第21条の3年間保存義務を、第22条の初使用時点検記録や、今回紹介したすべての引渡し資料に、そのまま一律に適用することは適切ではありません。

ただし、完成時の測定記録は、その後の維持管理に重要な資料です。

そのため、初使用時の点検結果や完成時性能確認記録も保存し、継続的に利用できるようにすることを推奨します。

16-5.有機溶剤作業主任者の点検

今回の作業が有機溶剤作業主任者の選任対象となる場合、同規則第19条の2に定める職務についても確認する必要があります。

同条では、有機溶剤作業主任者の職務として、局所排気装置などを1月を超えない期間ごとに点検することなどが規定されています。

これは、1年以内ごとに1回行う定期自主検査とは別の事項です。

16-6.法令上の要求と自主的な管理を区別する

項目位置付け
初使用時等の点検有機溶剤中毒予防規則第22条
異常があった場合の補修同規則第23条
1年以内ごとに1回の定期自主検査同規則第20条
定期自主検査記録の3年間保存同規則第21条
作業主任者による1月を超えない期間ごとの点検同規則第19条の2の対象業務
完成時測定値を初期管理値に設定すること自主的な性能管理
引渡しチェックリストの作成実務上の推奨方法
施工会社と使用部門の引渡し会議契約・社内運用に応じた管理

また、労働者が有機溶剤業務に従事する間の局所排気装置の稼働については、同規則第18条の要求事項を確認する必要があります。

なお、抑制濃度が性能要件となる局所排気装置については、過去に抑制濃度の基準に適合した際の風速を記録し、その後の定期自主検査で比較する方法が認められています。詳細は「局所排気装置の定期自主検査指針」の局-12を参照してください。

17.引渡し前の実務チェックリスト

17-1.施工状態

  • フードの設置位置と形状が図面と一致している。
  • サッシが正常に開閉する。
  • フード開口寸法を確認した。
  • ダクト内径を確認した。
  • 直管長さとエルボの個数を確認した。
  • ダクトの接続部に緩みがない。
  • 排風機の型式と回転方向を確認した。
  • 排気口の位置と排気方向を確認した。
  • 電気設備や保護装置に異常がない。

17-2.性能確認

  • 測定条件を記録した。
  • 測定器の状態を確認した。
  • フードの吸引気流を確認した。
  • 開口面の風速を測定した。
  • 開口面の最小風速を確認した。
  • 法令上の基準と比較した。
  • 自主的な設計目標と比較した。
  • ダクト内平均風速を確認した。
  • 排風量を確認した。
  • 静圧と測定位置を記録した。
  • 必要に応じて排風機の運転状態を確認した。

17-3.不具合対応

  • 不具合や未達項目を整理した。
  • 原因調査を行った。
  • 必要な是正措置を実施した。
  • 改善後に再測定した。
  • 設計変更があれば計算書と図面を更新した。
  • 未完了事項と使用制限を明確にした。

17-4.引渡し資料

  • 完成図面を準備した。
  • ダクト系統線図を準備した。
  • 最新の設計計算書を準備した。
  • 排風機仕様書を準備した。
  • 排ガス処理装置の仕様資料を準備した。
  • 完成時性能確認記録を作成した。
  • 法令上必要な点検結果を整理した。
  • 操作説明書と保守点検手順書を準備した。
  • 使用部門への説明を行った。
  • 管理責任者と異常時の連絡方法を明確にした。

18.よくある質問

Q1.局所排気装置の工事が完了すれば、すぐに使用してもよいですか?

対象となる設備については、初使用時に必要な点検を行う必要があります。

また、設計どおりの性能が得られているか確認し、安全に使用できる状態であることを確かめることが重要です。

Q2.囲い式フードの開口面風速は、平均値が0.40 m/秒以上ならよいですか?

いいえ。

今回の有機溶剤用囲い式フードでは、原則として開口面における最小風速が制御風速です。

平均値だけで判定することは適切ではありません。

Q3.設計目標0.50 m/秒を下回ったら、直ちに法令違反になりますか?

必ずしもそうではありません。

今回の0.50 m/秒は自主的な設計目標です。

法令上の原則的な制御風速は0.40 m/秒ですが、設備に適用される規定や特例の有無なども確認する必要があります。

自主的な設計目標を満たしていない場合には、設計仕様との関係を確認し、必要な対応を検討します。

Q4.開口面風速から計算した排風量と、ダクト測定による排風量が違うのはなぜですか?

測定位置、風速分布、測定方法、気流の方向、測定器の精度などが異なるためです。

差が大きい場合には、測定条件やダクトの漏れなども確認します。

Q5.静圧の負圧が大きくなれば、吸引性能が向上したと考えてよいですか?

いいえ。

静圧の変化は、系統抵抗や排風機の運転状態によって生じます。

負圧の絶対値が大きくなっても、排風量が減少している場合があります。

静圧だけでなく、制御風速や排風量なども確認してください。

Q6.完成時の測定値を、その後の管理値に使用できますか?

はい。

適切な測定条件で得られた完成時の測定結果は、その後の性能管理の比較基準として活用できます。

ただし、自主的な管理値と法令上の判定基準を混同しないようにします。

Q7.完成時の測定記録は、必ず3年間保存する必要がありますか?

有機溶剤中毒予防規則第21条では、同規則第20条等の定期自主検査記録について、3年間の保存が定められています。

一方、初使用時点検や完成時の引渡し記録について、同条の保存義務を一律に適用することは適切ではありません。

ただし、完成時の性能確認記録は、設備の長期的な管理に役立つため、継続して保存することを推奨します。

Q8.完成時に排風量が設計値以上なら、性能確認は完了ですか?

排風量が設計値以上であることは重要ですが、それだけでは十分ではありません。

今回の囲い式フードでは、開口面の最小制御風速を確認する必要があります。

さらに、通常作業時の気流、設備構造、火災・爆発防止、運転状態なども確認します。

19.まとめ:完成時の確認結果を、引渡しと維持管理につなげる

今回は、局所排気装置の完成時性能確認から引渡しまでの実務を解説しました。

第29回で計算した設計値と、今回設定した仮想測定値を比較すると、次の結果となりました。

項目設計値・基準値仮想測定値
開口面の最小風速(法令原則値)0.40 m/秒0.54 m/秒
開口面の最小風速(自主目標)0.50 m/秒0.54 m/秒
平均開口面風速0.625 m/秒0.65 m/秒
必要排風量12.00 m³/分ダクト測定から12.40 m³/分
ダクト内平均風速9.95 m/秒10.28 m/秒
ダクト断面積0.0201 m²内径から算出
フード直後の静圧基準値未設定−280 Pa

今回の仮想測定結果では、必要な風速と排風量を確保できている例となっています。

ただし、実際の引渡し判断では、測定結果だけでなく、施工状態、排風機の仕様、排ガス処理装置の状態、必要な法定点検なども確認する必要があります。

特に重要なのは、次の点です。

  • 設計値と実測値を区別して比較する。
  • 囲い式フードでは、開口面の最小風速を確認する。
  • 排風量だけで性能の適否を判断しない。
  • 静圧の変化だけで吸引性能の良否を判断しない。
  • 不具合があった場合は、原因を調べ、必要な対策と再測定を行う。
  • 完成時の測定条件と結果を記録する。
  • 使用部門へ適切な運転条件と点検方法を引き継ぐ。

局所排気装置は、設計して設置すれば終わりではありません。完成後に必要な性能を確認し、その状態を維持できるよう管理して初めて、継続的なばく露低減につなげることができます。

完成時の性能確認は、設備の引渡しのためだけでなく、その後の性能管理の出発点として重要です。


参考資料

法令・行政資料

  1. 労働安全衛生法
    https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
  2. 有機溶剤中毒予防規則
    第14条、第15条、第16条、第18条、第19条の2、第20条~第23条
    https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000036
  3. 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について
    平成20年3月27日、基発第0327001号
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb5578&dataType=1
  4. 厚生労働省「有機溶剤中毒予防規則」
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74090000&dataType=0
  5. 局所排気装置の定期自主検査指針(愛知労働局PDF)
    該当箇所:局-11~局-12、検査項目「4.吸気及び排気の能力」。特に、抑制濃度による検査と、その際に測定した制御風速を基準にする方法について確認しました。
    労働局所在地一覧
  6. 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について
    平成20年3月27日付け基発第0327001号。指針の行政上の位置付けを確認できます。

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  4. 第30回「局所排気装置の設置届と摘要書の作り方」

※今回の記事に記載した測定値、不具合事例、静圧値、改善結果は、実務手順を説明するために設定した仮想データです。実際の設備性能を示すものではありません。また、局所排気装置の定期自主検査指針を初使用時の性能確認に参考利用する部分は、法令上の要求事項と区別した実務上の提案です。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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