局所排気装置の圧力損失の計算方法|直管・エルボ・ダンパーを基礎から解説

局所排気装置を設計するとき、「必要な風量さえ決めれば、あとはその風量を出せるファンを選べばよい」と考えてしまうことがあります。

しかし、フードで吸い込んだ空気は、ダクト、エルボ、ダンパー、空気清浄装置などを通過します。その途中では抵抗が生じ、空気が持つエネルギーの一部が失われます。

これが圧力損失です。

圧力損失を適切に見積もらなければ、計算上は必要風量を設定していても、実際にはファンの風量が不足し、フードで必要な吸引性能を得られないことがあります。

厚生労働省の「化学物質管理者講習テキスト」でも、ダクトの圧力損失を考慮せずに設計すると想定した制御風速が得られないこと、ダクトをできるだけ短くし、曲がりを少なくするなど、圧力損失を小さくする設計が重要であると説明されています。都道府県労働局所在地一覧

この記事では、局所排気装置で特に重要な直管・エルボ・ダンパーの圧力損失について、初学者でも計算できるところから説明します。

💡 最初に押さえる結論

局所排気装置の圧力損失は、直管だけで決まりません。

直管の摩擦損失+エルボ・ダンパーなどの局部損失+その他の機器損失

を系統に沿って積み上げて考えます。

また、圧力損失は風速の影響を強く受けます。ダクト径を小さくして風速を上げると、圧力損失が急激に大きくなる場合があります。

目次

圧力損失とは何か

圧力損失とは、空気がダクトや機器の中を流れるときに、摩擦、曲がり、流路の変化などによって失われる流れの機械的エネルギーを、圧力の単位Paで表したものです。

前の記事で説明したように、圧力損失は基本的に全圧の低下として考えます。

例えば、空気がまっすぐなダクトを流れていても、ダクトの壁面との摩擦があるため、下流へ進むにつれて全圧は低下します。

さらにエルボで流れを90°曲げれば、流れの剥離や渦が発生します。ダンパーを絞れば流路が狭くなり、さらに抵抗が増えます。

つまり、局所排気装置では、

「空気を流すために、どれだけ圧力を使うのか」

を計算する必要があります。

厚生労働省の局所排気装置摘要書にも、「装置全体の圧力損失及び計算方法」を記載する欄があります。圧力損失の計算は、排風量やファン性能と並ぶ設計上の重要事項です。厚生労働省

圧力損失計算の基本となる速度圧

直管損失と局部損失の計算を理解するには、まず速度圧を確認します。

速度圧Pvは、

Pv = ρ × V² ÷ 2

で求めます。

ここで、Pvは速度圧[Pa]、ρは空気密度[kg/m³]、Vはダクト内平均風速[m/s]です。

例えば、この記事の説明用条件として、

空気密度 ρ = 1.20kg/m³
風速 V = 8.0m/s

と仮定すると、

Pv = 1.20 × 8.0² ÷ 2

= 1.20 × 64 ÷ 2

= 38.4Pa

となります。

この記事で使用する空気密度、摩擦係数、局部損失係数は、計算方法を説明するための仮定値です。実際の設備設計では、使用する技術資料、ダクト条件、メーカー資料などに基づいて値を決める必要があります。

速度圧が重要なのは、多くの圧力損失が風速の2乗に強く影響されるためです。

直管の圧力損失を計算する

まっすぐなダクトでも、空気とダクト内面との摩擦によって圧力損失が発生します。

円管の直管摩擦損失を考える代表的な式が、ダルシー・ワイスバッハ式です。

圧力の単位で表すと、

ΔP = λ × (L ÷ D) × Pv

と整理できます。

ここで、ΔPは直管圧力損失[Pa]、λ(ラムダ)は管摩擦係数、Lはダクト長さ[m]、Dはダクト内径[m]、Pvは速度圧[Pa]です。

ダルシー・ワイスバッハ式は、管摩擦による圧力損失を、管長、管径、平均流速、摩擦係数から求める基本的な関係式です。数学活用大事典

直管20mの計算例

説明用に次の条件を仮定します。

λ = 0.02
L = 20m
D = 0.20m
V = 8.0m/s
ρ = 1.20kg/m³

先ほど求めた速度圧は38.4Paです。

まず、

L ÷ D = 20 ÷ 0.20 = 100

です。

したがって、

ΔP = 0.02 × 100 × 38.4

= 76.8Pa

となります。

つまり、この仮定条件では、20mの直管を流れることで約77Paの圧力損失が生じる計算です。

管摩擦係数λは固定値ではない

ここは重要です。

今回のλ = 0.02は説明用に仮定した値であり、どのダクトにも0.02を使えるわけではありません。

管摩擦係数は、流れの状態を表すレイノルズ数や、ダクト内面の粗さなどの影響を受けます。大学・高専の流体力学資料でも、管摩擦係数はレイノルズ数や管壁粗さと関係して扱われています。数学活用大事典

したがって実際の設計では、採用する計算法や技術資料に従ってλを決めます。

エルボの圧力損失を計算する

次は、ダクトを曲げるエルボです。

エルボでは空気の進行方向を変えなければなりません。急な曲がりでは流れが壁面から剥がれたり、渦や偏流が生じたりするため、直管とは別の局部圧力損失が発生します。

局部損失は一般に、

ΔP = ζ × Pv

で表すことができます。

ζ(ゼータ)は局部損失係数で、エルボ、ダンパー、縮小部、拡大部などの形状によって異なります。局部抵抗による圧力損失をζと速度圧から表す関係は、流体工学でも用いられる一般的な方法です。OACIS

エルボの計算例

先ほどと同じ、

Pv = 38.4Pa

とします。

説明用として、あるエルボの局部損失係数を、

ζ = 0.50

と仮定します。

すると、

ΔP = 0.50 × 38.4

= 19.2Pa

です。

同じ条件のエルボが2個あれば、

19.2 × 2 = 38.4Pa

となります。

ただし、実際のζは、曲がり角度、曲がり半径、ダクト形状、上流・下流の条件などによって変わります。

したがって、この記事の0.50をそのまま設計値として使用してはいけません。

曲がり半径が小さいエルボはなぜ損失が大きくなりやすいのか

同じ90°エルボでも、すべて同じ圧力損失になるわけではありません。

一般に、急激に方向を変える形状では流れが曲がりについていけず、剥離や渦が生じやすくなります。

一方、十分な曲がり半径を確保した形状では、流れを比較的滑らかに方向転換させることができます。

そのため設計では、単に「90°曲げる」という情報だけでなく、どのような形状のエルボを使うのかまで確認する必要があります。

厚生労働省の資料でも、ダクトが長くなりすぎたり、ベンドが多くなったりすると圧力損失が増大し、より大きな能力のファンが必要になることが説明されています。厚生労働省

ダンパーにも圧力損失がある

ダンパーは、枝ダクトなどの風量を調整するために使用されます。

ダンパーを閉じる方向へ動かすと流路が狭くなるため、一般に抵抗が増加します。

考え方はエルボと同じで、局部損失係数を使用する場合は、

ΔP = ζ × Pv

で計算します。

説明用として、

Pv = 38.4Pa
ダンパーのζ = 1.0

と仮定すると、

ΔP = 1.0 × 38.4

= 38.4Pa

です。

ただし、ダンパーのζは開度や形状によって変化するため、実際の設計ではメーカーの性能資料などを確認します。

厚生労働省の「局所排気装置の定期自主検査指針」でも、流量調整用ダンパーについて、局所排気装置の性能を保持するよう調整した開度で固定されていることを確認するよう示されています。厚生労働省

つまり、ダンパーは単なる「開閉板」ではなく、系統の圧力バランスと風量に影響する部品です。

直管・エルボ・ダンパーの損失を合計する

ここまでの仮定条件をまとめてみます。

直管20m:76.8Pa
エルボ2個:38.4Pa
ダンパー:38.4Pa

これらが同じ流路に直列に配置されているとすると、

76.8 + 38.4 + 38.4 = 153.6Pa

となります。

したがって、この区間の圧力損失は約154Paです。

ここでは説明を簡単にするため、すべて同じ径・同じ速度圧で計算しました。

実際の設備では、途中でダクト径が変われば風速も速度圧も変化します。したがって、各部についてその計算に対応する風速・速度圧を使う必要があります。

また、局部損失係数ζについても、資料によって上流側速度を基準にするのか、下流側速度を基準にするのかなど定義が異なる場合があります。

係数の数字だけを拾って計算せず、その係数が何を基準に定義されているかまで確認することが重要です。

ダクト径を小さくすると圧力損失が急増しやすい

直管の式をもう一度見ます。

ΔP = λ × (L ÷ D) × Pv

そして、

Pv = ρ × V² ÷ 2

です。

同じ風量を流す場合、ダクト径を小さくすると断面積が小さくなるため、風速が上がります。

すると速度圧が増えます。

さらに、直管式のL ÷ Dも、Dが小さくなるほど大きくなります。

つまりダクトを細くすると、

風速上昇による速度圧増加

と、

L ÷ Dの増加

の両方が圧力損失を大きくする方向に働きます。

以前の記事で扱った「ダクト径と風速」は、ここで圧力損失へつながります。

ダクト径は、単に「空気が通ればよい」ではなく、必要風量、風速、搬送する物質、圧力損失、施工スペースなどを合わせて決める必要があります。

「風速を高くすればよい」とは限らない

風速を上げれば、ダクト内で物質を搬送しやすくなる場合があります。

しかし、風速が高くなるほど速度圧は大きくなります。

例えば、他の条件が同じで風速を8m/sから12m/sへ1.5倍にすると、

速度圧は、

1.5² = 2.25倍

になります。

局部損失係数ζが同じなら、

ΔP = ζ × Pv

なので、局部圧力損失も2.25倍になります。

そのため、必要以上に高いダクト風速は、ファンに要求する圧力や消費動力を増やす原因になります。

一方、粉じんなどを搬送する場合には、風速を下げすぎると堆積の問題が生じる可能性があります。

したがって、「速いほど良い」「遅いほど省エネ」という一方向の考え方では決められません。

対象物質、設備構造、必要な搬送状態などを確認する必要があります。

圧力損失が大きいと局所排気装置に何が起こるのか

系統抵抗が大きくなると、同じファンを使用した場合、一般にはファンの運転点が変化し、風量が低下する方向に働きます。

すると、

必要なフード風量を確保できない

という問題につながる可能性があります。

厚生労働省の化学物質管理者講習テキストも、ダクトの圧力損失によってファン風量が低下し、適切な設計を行わないと想定した制御風速が得られないと説明しています。都道府県労働局所在地一覧

したがって設計では、

必要風量だけを決める

のではなく、

その風量を流したときの系統全体の圧力損失を求める

ことが必要です。

そのうえで、必要風量時に必要な圧力を出せるファンを選びます。

実設備では何を確認すればよいか

圧力損失の計算結果だけでは、設備が適切に機能しているとは判断できません。

設計時にはダクト長さ、内径、エルボ形状と個数、ダンパー、空気清浄装置などを確認し、それぞれの圧力損失を積み上げます。

運転開始後は、設計時と同じ状態が維持されているかを見ることが重要です。

例えば、ダクト内部に堆積物が増えれば実際の抵抗が変化します。ダンパー開度が変わっていても風量バランスが変化します。

厚生労働省の定期自主検査指針では、ダクトの堆積状況を確認し、必要に応じて測定孔で静圧を測定して設計値と著しい差がないか確認する方法が示されています。厚生労働省

したがって、実務では設計値・試運転時の値・現在の測定値を比較できるよう記録しておくと、異常診断にも役立ちます。

圧力損失計算で間違えやすい点

特に注意したいのは、「圧力損失の式を知っていること」と「正しい設計計算ができること」は同じではないという点です。

風速が変わる部位では、どの位置の速度圧を使う係数なのか確認が必要です。

さらに、圧力損失が小さければ局所排気装置として必ず良好というわけでもありません。

圧力損失計算は、あくまでダクト系統とファンを成立させるための技術計算です。

最終的には、必要な吸引性能が得られているか、実際の発散源を適切に捕捉できているか、適用される法令上の性能要件を満たしているかを別途確認する必要があります。

まとめ

局所排気装置の圧力損失は、大きく考えると、

直管による摩擦損失

と、

エルボ・ダンパーなどによる局部損失

を積み上げて求めます。

直管では、

ΔP = λ × (L ÷ D) × Pv

局部損失では、

ΔP = ζ × Pv

という関係を基本として考えます。

そして、

Pv = ρ × V² ÷ 2

なので、風速が高くなると圧力損失は急激に増えやすくなります。

設計で重要なのは、計算式へ数字を入れることだけではありません。

どの部位を計算しているのか、どの風速を使うのか、λやζの根拠は何か、どこまでの損失を合計したのか

を明確にすることです。

この考え方が理解できると、次に扱う分岐ダクトの圧力バランス、共通ダクト径、ファン選定へつながります。

📚 主な参考資料

厚生労働省「化学物質管理者講習テキスト 第1版」第7章 リスクアセスメント(リスク低減対策)
局所排気装置のダクトと排風機について、圧力損失による風量低下、ダクトを短くすること、曲がりを少なくすることなどの設計上の基本事項。都道府県労働局所在地一覧

厚生労働省「局所排気装置摘要書」様式第25号
装置全体の圧力損失と計算方法が設計事項として扱われていること。厚生労働省

厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」
ダクト内の堆積状態、静圧測定、ダンパー開度・固定状態などの確認方法。厚生労働省

石川工業高等専門学校「管路内の流れ」
ダルシー・ワイスバッハ式による直管圧力損失と管摩擦係数の扱い。数学活用大事典

大阪大学 学術情報庫「ダクト経路」
速度圧に抵抗係数を掛けて圧力損失を扱う基本関係と、直管の抵抗係数。OUKA

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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