【第22回】局所排気装置の日常点検・定期自主検査の進め方|点検項目・測定方法・判定基準を解説
局所排気装置は、一度設置すれば、その後もずっと同じ性能を発揮するのでしょうか。
答えは、いいえです。
例えば、設置当初は十分な吸引能力があった局所排気装置でも、長期間使用しているうちに、ダクトの内部へ粉じんが堆積したり、排風機の羽根車が汚れたりすることがあります。
また、作業方法が変わって発散源とフードの距離が大きくなったり、ダンパーの開度が変更されたりすると、必要な性能を確保できなくなる可能性があります。
このような異常を発見するために、局所排気装置には点検・検査が必要です。
ただし、点検といっても、毎日の作業前に行う簡単な確認から、測定器を使用して性能を調べる定期自主検査まで、目的や方法が異なります。
この記事では、次の疑問を順番に解説します。
- 日常点検と定期自主検査は何が違うのか
- 法律では何を、いつ検査することが求められているのか
- フード、ダクト、排風機では何を確認するのか
- 制御風速、静圧、排風量はどのように測定するのか
- 測定結果を何と比較して判定するのか
- 異常が見つかった場合には、どのように対応するのか
初めて点検を担当する方にも分かるように具体例を示しながら、経験者が注意すべき判定上の問題も取り上げます。
1. なぜ局所排気装置には定期的な点検が必要なのか?
局所排気装置は、発散源から発生した有害物質を捕捉し、作業者が吸い込むことを防ぐための設備です。
一般的な局所排気装置は、フード、ダクト、必要に応じた空気清浄装置、排風機などで構成されています。
これらのどこかに問題が発生すると、設備全体の性能へ影響する場合があります。
例えば、排風機が正常でも吸引不足になる
ある作業場で、ドラフトチャンバーを使用して有機溶剤を扱っているとします。
排風機は正常に回転しており、異常な音も発生していません。
しかし、作業中の開口面風速を測定すると、一部で必要な制御風速を下回っていました。
調査したところ、ダクト途中のダンパーが以前より閉じた状態になっていたとします。
この場合、排風機そのものが故障しているわけではありません。
それでも、装置として必要な吸引能力が確保されていなかったことになります。
異常を発見する方法は一つではない
例えば、ダクトの腐食や破損は目視で発見できる場合があります。
一方、開口面の風速不足は、風速計で測定しなければ判断しにくい場合があります。
また、空気清浄装置の目詰まりは、圧力差の変化などから把握できることがあります。
つまり、設備の外観確認と性能測定は、それぞれ役割が異なるということです。
日常的に状態を確認するとともに、必要な項目について体系的な検査を行うことが重要です。

2. 日常点検・定期自主検査・初回使用時点検の違い
最初に、点検・検査の種類を整理しましょう。
日常点検
日常点検は、局所排気装置を使用する前や使用中に、普段と異なる状態がないか確認するものです。
例えば、作業者が次のようなことを確認します。
- 排風機が運転しているか
- 異常な音や振動がないか
- フードの開口部がふさがれていないか
- ダンパーが決められた位置にあるか
- フードの周辺に吸引気流を妨げる物がないか
これは、異常を早期に発見するための実務上の管理方法です。
対象となる局所排気装置について、すべて一律に「毎日○項目の点検を実施する」という規定があるわけではありません。
日常点検の頻度や項目は、適用法令で別途定められる事項を確認したうえで、設備の使用条件やリスクに応じて設定します。
定期自主検査
定期自主検査は、法令で対象とされる設備について、一定の間隔で実施する検査です。
例えば、有機溶剤中毒予防規則第20条の対象となる局所排気装置では、原則として1年以内ごとに1回、定期に自主検査を行う必要があります。
検査では、フード、ダクト、排風機などの損傷や堆積状態、吸気・排気の能力などを確認します。
初回使用時・改造修理後の点検
対象となる局所排気装置を初めて使用するときや、分解して改造・修理したときには、関係規則に従った点検が必要になります。
例えば、排風機を交換した場合や、ダクトを分解して改造した場合には、該当する点検義務を確認します。
これらは、定期自主検査の実施時期とは別に判断する必要があります。
違いを整理する
| 比較項目 | 日常点検 | 定期自主検査 | 初回使用時等の点検 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 異常の早期発見 | 設備状態と性能の確認 | 使用開始時等の異常確認 |
| 実施時期 | 作業開始前など | 原則1年以内ごとに1回 | 初回使用・分解改造修理時等 |
| 法令上の位置付け | 一律の日次実施義務ではない | 対象設備では法定義務 | 対象設備では法定義務 |
| 確認内容 | 外観・運転状態など | 法定項目・検査指針に基づく確認 | 適用規則に定める事項 |
| 記録 | 実務上推奨 | 法定の記録・保存 | 適用規則によって異なる |

3. 法令ではどのような検査が義務付けられているのか?
局所排気装置に関係する法令は、取り扱う有害物質や作業内容によって異なります。
代表的な規則と条文は次のとおりです。
| 規則 | 定期自主検査 | 初回使用時等の点検 |
|---|---|---|
| 有機溶剤中毒予防規則 | 第20条 | 第22条 |
| 特定化学物質障害予防規則 | 第30条 | 第33条 |
| 粉じん障害防止規則 | 第17条 | 第19条 |
| 鉛中毒予防規則 | 第35条 | 関連する点検規定を確認 |
| 石綿障害予防規則 | 第22条 | 関連する点検規定を確認 |
これらの規則では、定期自主検査の対象となる局所排気装置について、原則として1年以内ごとに1回の検査が規定されています。
ただし、同じ規則が適用される作業場にあるからといって、すべての換気設備が無条件に同じ定期自主検査の対象になるとは限りません。
例えば、有機溶剤中毒予防規則第20条では、同規則第5条または第6条の規定により設ける局所排気装置を対象としています。
したがって、まず設備ごとに適用法令と該当条文を確認する必要があります。
1年以上使用しない設備はどうなるのか?
例えば、有機溶剤中毒予防規則第20条では、1年を超える期間使用しない装置について、その使用しない期間の定期自主検査に例外があります。
ただし、使用を再開する際には所定の自主検査を行う必要があります。
単に長期間使用していなかったからといって、何も確認せず再稼働してよいという意味ではありません。
4. 定期自主検査では何を確認するのか?
ここからは、具体的な検査項目を説明します。
有機溶剤中毒予防規則第20条第2項を例にすると、次の事項が定められています。
| 法定検査項目 | 初学者向けの説明 |
|---|---|
| フード・ダクト・ファンの摩耗、腐食、くぼみその他損傷 | 設備が傷んでいないか |
| ダクト・排風機のじんあいの堆積状態 | 内部が汚れたり詰まったりしていないか |
| 排風機の注油状態 | 必要な潤滑が確保されているか |
| ダクト接続部の緩み | 継手や固定部分が緩んでいないか |
| ベルトの作動状態 | ベルト駆動部分が正常か |
| 吸気・排気の能力 | 必要な吸引性能があるか |
| その他、性能保持に必要な事項 | 設備固有の問題がないか |
ここで注意したいのは、すべての設備にベルトや注油箇所が存在するとは限らないことです。
例えば、直結式の排風機には、電動機とファンを連結するベルトがありません。
また、軸受の構造によって潤滑方法も異なります。
そのため、法定検査項目と実際の設備構造を照合し、適用される事項を確認します。
5. フードの点検では何を見るのか?
フードは、有害物質を発散源の近くで捕捉するための入口です。
排風機が正常でも、フードの位置や形状が不適切であれば、十分な捕捉性能が得られない場合があります。
① フードの変形・腐食・損傷
例えば、金属製フードに腐食孔がある場合や、衝突によって開口部が変形している場合を考えます。
このような状態では、設計時と異なる気流が形成される可能性があります。
厚生労働省の定期自主検査指針では、フードの寸法やフランジ・バッフル板などが届出時の状態に保たれていることなどが判定基準として示されています。
② フード内部の堆積・閉塞
フード内部に粉じんやミストなどが堆積すると、吸引を妨げる場合があります。
例えば、スロット型フードの細長い開口部の一部に付着物があると、その部分の吸込み状態が変化する可能性があります。
③ 作業中の障害物
ドラフトチャンバーの内部に大きな機器を設置した場合や、外付け式フードの前に容器などを置いた場合、気流が妨げられることがあります。
フードの開口部に障害物がないだけでなく、実際の作業状態で吸引気流が適切に形成されているか確認します。
実務上の判定方法
例えば、次のように確認します。
| 確認項目 | 判定の考え方 |
|---|---|
| 開口部 | 吸引を妨げる変形・閉塞がないか |
| フランジ・バッフル板 | 届出時の構造・寸法が維持されているか |
| 腐食・損傷 | 吸引機能を低下させる異常がないか |
| 内部の堆積 | 吸引を妨げる堆積がないか |
| 気流 | 所期の吸込み気流が形成されているか |

6. ダクトの点検では何を見るのか?
次に、ダクトの点検です。
ダクトは、フードから吸引した空気を排風機へ運ぶ設備です。
ダクトに異常が生じると、排風量の不足や流量配分の変化が起こる場合があります。
① ダクトの腐食・破損
外面の腐食や変形、接続部の損傷などを確認します。
例えば、腐食によって吸込み側のダクトに穴が開いている場合、その穴から外部の空気が漏れ込む可能性があります。
この場合、排風機の排風量は確保されていても、フードから吸い込む風量が不足することがあります。
② 内部の堆積
粉じんを扱う設備では、エルボや水平ダクトなどに粉じんが堆積することがあります。
堆積によって流路が狭くなると、圧力損失が増加する可能性があります。
内部の状態を確認する場合には、点検口などを利用します。
ただし、内部点検には設備停止や残留物質へのばく露防止などの安全措置が必要になる場合があります。
③ 接続部の緩み
フランジ、ボルト、接続部などを確認します。
また、点検口のガスケットなどから空気が漏れていないか確認します。
④ ダンパーの状態
ダンパーの開度が設計時と異なると、風量配分が変化する可能性があります。
特に複数のフードを接続している設備では、一つのダンパーの調整がほかの枝ダクトへ影響する場合があります。
静圧測定も有効
例えば、正常時の静圧が−250 Paだった場所で、現在は−350 Paになっていたとします。
この場合、何らかの運転条件の変化が生じた可能性があります。
ただし、静圧の変化だけで閉塞や空気漏れを断定してはいけません。
排風量、排風機回転数、測定位置などを組み合わせて調査します。

7. 排風機の点検では何を見るのか?
排風機は、局所排気装置の空気の流れを形成する機械です。
そのため、排風機の状態は吸引性能へ直接影響します。
① 羽根車の摩耗・腐食・汚れ
羽根車に汚れが付着したり、腐食や摩耗が生じたりすると、排風機の性能が低下する可能性があります。
また、回転部分に付着物が偏ると、振動が大きくなる場合があります。
② 異常音・異常振動
運転中に普段と異なる音や振動が発生していないか確認します。
例えば、軸受の異常や羽根車の汚れなどが原因になることがあります。
ただし、音や振動だけで故障原因を断定することはできません。
③ ベルトの状態
ベルト駆動式の排風機では、ベルトの張力や摩耗、滑りなどを確認します。
電動機が正常に回転していても、ベルトが滑っていれば、排風機の回転数が不足する場合があります。
④ 電動機・インバータ
電動機の異常な温度上昇、電流、インバータの設定条件などを確認します。
インバータ制御を行っている場合には、必要な回転数で運転できているか確認します。
ただし、インバータの周波数表示と実際のファン軸回転数は、必ずしも一致しません。
⑤ 排風機の能力
排風機の回転数や圧力が正常に見えても、必要な排風量が得られているとは限りません。
そのため、必要に応じてファン性能曲線や系統抵抗との関係を確認します。
8. 定期自主検査で使用する測定器
検査では、確認する項目に応じて測定器を使用します。
厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」では、準備すべき測定器等を、必ず準備すべきものと、必要に応じて準備するものに分けています。
代表的なものは次のとおりです。
| 測定器 | 主な用途 |
|---|---|
| スモークテスター | 吸引気流の方向・流れ方の確認 |
| 熱線風速計等 | 制御風速の測定 |
| ピトー管・マノメーター | ダクト内の圧力・風速・風量の評価 |
| 温度計 | 排風機・電動機等の温度確認 |
| テスター | 電気的な状態の確認 |
| 絶縁抵抗計 | 電気絶縁状態の確認 |
| テンションメーター | ベルト張力の確認 |
| 聴音器等 | 軸受などの異常音の確認 |
| 微差圧計 | 必要に応じた静圧・差圧測定 |
| 回転計 | 排風機回転数の確認 |
※指針に掲載された測定器の一部を整理しています。正式な定期自主検査では、指針の準備機器一覧と設備構造を確認してください。
風速計について
例えば、日本カノマックスのクリモマスター風速計 Model 6501シリーズのような風速測定器を使用する場合には、測定対象の風速範囲と使用するプローブの特性を確認します。
測定器によって、対応する風速範囲、方向特性、付属機能などが異なります。
また、風速測定用プローブを使用することと、静圧測定を行うことは別の操作です。
静圧測定では、適切な圧力測定機器と接続方法が必要です。
9. 制御風速の測定方法と判定基準
ここからは、性能検査について詳しく説明します。
制御風速は、局所排気装置の吸引性能を評価する重要な指標です。
ただし、制御風速が性能要件となる設備と、抑制濃度などが性能要件となる設備を区別する必要があります。
有機溶剤中毒予防規則の原則値
同規則第16条第1項の原則値は、次のとおりです。
| フード形式 | 制御風速 |
|---|---|
| 囲い式フード | 0.4 m/s |
| 外付け式・側方吸引型 | 0.5 m/s |
| 外付け式・下方吸引型 | 0.5 m/s |
| 外付け式・上方吸引型 | 1.0 m/s |
ただし、同条には一定の例外規定があり、特例制御風速などの制度が適用される場合もあります。
これらの数値をすべての局所排気装置に一律に適用してはいけません。
10. 囲い式フードの制御風速を測定する
囲い式フードの例として、ドラフトチャンバーを考えます。
測定対象は実際の開口部
前面に上下スライド式サッシがあるドラフトチャンバーでは、サッシを途中まで下げて使用する場合があります。
この場合、開口面は原則としてサッシの下側で実際に開放されている部分です。
サッシのガラス部分を開口面積に含めてはいけません。
ただし、別の開口部がある構造では、それらの状態も確認する必要があります。
測定点の決め方
厚生労働省の定期自主検査指針では、原則として開口面を次の条件で分割します。
- 分割した各区域の面積が等しい
- 各区域の一辺が0.5 m以下
- 原則16以上の区域
- 各区域の中心で測定する
開口面が著しく小さい場合には、2以上の区域に分割する取扱いが示されています。
計算例①|ドラフトチャンバーの16点測定
次の条件を想定します。
- 開口幅:800 mm
- 開口高さ:400 mm
- 開口面積:0.32 m²
- 横4分割、縦4分割
- 測定点数:16点
各区域の大きさは、幅200 mm、高さ100 mmです。
測定結果が次のようになったとします。
| 位置 | 左① | ② | ③ | 右④ |
|---|---|---|---|---|
| 上段 | 0.45 | 0.48 | 0.51 | 0.49 |
| 2段目 | 0.46 | 0.50 | 0.54 | 0.52 |
| 3段目 | 0.44 | 0.47 | 0.49 | 0.48 |
| 下段 | 0.38 | 0.43 | 0.46 | 0.45 |
単位:m/s
最小風速はどれか?
この測定結果では、
最小風速 = 0.38 m/s
です。
16点の単純平均風速は約0.472 m/sですが、有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則値が適用される囲い式フードでは、開口面の最小風速が評価対象です。
したがって、この例では、
0.38 m/s < 0.4 m/s
となり、原則値を下回っています。
平均風速が0.4 m/sを超えていることを理由に、適合と判断してはいけません。
何を改善するのか?
まず、測定条件に問題がないか確認します。
例えば、サッシ高さ、測定位置、風速計の方向、空調気流の影響などです。
次に、排風量やフード内部の気流状態を確認します。
必要に応じてフード構造や排風系統を改善し、再測定します。

11. 外付け式フードの制御風速を測定する
次に、側方吸引型の外付け式フードを考えます。
例えば、作業台の奥にフードがあり、作業者が手前側で部品を洗浄している場合です。
測定位置はフード開口面ではない
有機溶剤中毒予防規則第16条の外付け式フードでは、対象とする蒸気を吸引しようとする範囲内で、フード開口面から最も離れた作業位置の風速が制御風速となります。
したがって、開口面風速が高いことだけで適合とは判断できません。
計算例②|側方吸引型外付け式フード
次の測定結果が得られたとします。
| 測定位置 | 風速 |
|---|---|
| フードに近い作業位置 | 0.82 m/s |
| 中央の作業位置 | 0.65 m/s |
| 最も離れた作業位置・左側 | 0.55 m/s |
| 最も離れた作業位置・右側 | 0.43 m/s |
この例では、最も離れた所定の作業位置の一つで、
0.43 m/s
となっています。
仮に同規則第16条第1項の側方吸引型の原則値0.5 m/sが適用される場合には、原則値を下回ります。
作業者の立ち位置と測定位置を混同しない
「最も離れた作業位置」とは、単に作業者が立っている位置を意味するわけではありません。
有害物質を吸引しようとする範囲の中で、実際の作業に関係する位置を確認する必要があります。
また、作業範囲が広い場合には、最も離れた複数の位置を確認することが重要です。

12. スモークテスターによる気流確認
スモークテスターは、気流の流れ方を確認するための器具です。
例えば、フード付近で煙が内部へ吸い込まれるか、外部へ流れるかを観察します。
スモークテスターで確認できること
- フードへ向かう気流が形成されているか
- 開口部付近に滞留がないか
- 外乱気流の影響がないか
- 吸引気流が作業者の呼吸域を通過しないか
厚生労働省の定期自主検査指針では、フードの吸込み気流の状態を調べる方法として、スモークテスターの使用が示されています。
煙が吸い込まれれば合格なのか?
それだけでは判断できません。
例えば、煙がフードへ向かっていても、所定位置の制御風速が法令上の原則値に達していない場合があります。
また、煙が作業者の呼吸域を通ってフードに吸い込まれる場合には、ばく露防止の観点から問題となる可能性があります。
気流の可視化は方向や流れ方を調べるものであり、風速測定の代用ではありません。
スモークテスターを使用する際の安全上の注意
煙の種類によっては、刺激性や腐食性などに注意が必要なものがあります。
また、火気や着火源を伴う方法は、引火性蒸気などが存在する場所では適切でない場合があります。
使用前に製品の仕様、安全データシート、使用環境を確認する必要があります。
13. ダクト内の排風量を測定する方法
次に、ダクト内の排風量を確認します。
排風量は、ダクト断面積と断面平均風速から計算できます。
基本式
Q = 60 × A × Vavg
- Q:排風量(m³/min)
- A:ダクト断面積(m²)
- Vavg:断面平均風速(m/s)
計算例③|内径200 mmのダクト
次の条件を想定します。
- ダクト内径:200 mm
- 平均風速:6.40 m/s
ダクト断面積は、
A = π × 0.20² ÷ 4
A ≒ 0.03142 m²
です。
したがって、
Q = 60 × 0.03142 × 6.40
Q ≒ 12.06 m³/min
となります。
この例では、約12.06 m³/minの排風量が得られています。
風速は1点測定でよいのか?
通常、ダクト内の1点の風速だけで断面平均風速を求めることはできません。
特にエルボの近くでは、風速分布が偏る場合があります。
そのため、適切な測定断面を選び、ピトー管などを使用した複数点測定を行う方法があります。
風量が設計値と一致すれば合格なのか?
必ずしもそうではありません。
例えば、排風量が12 m³/minであっても、フードが発散源から離れすぎている場合には、必要な捕捉性能が得られないことがあります。
また、複数フードを接続している設備では、主管風量が設計値と一致していても、各枝ダクトの流量配分が適切でない場合があります。
したがって、必要な制御風速などの性能と組み合わせて判断する必要があります。
14. 静圧測定を定期自主検査にどう活用するのか?
静圧測定は、ダクト系統の状態を調べるための有効な方法です。
例えば、完成時には正常だった設備でも、ダクト内の堆積や空気清浄装置の目詰まりによって、圧力分布が変化する場合があります。
静圧を測定する場所
例えば、次の位置が考えられます。
- フード直後
- 枝ダクト
- 合流後の主管
- 空気清浄装置の前後
- 排風機の入口側
- 排風機の出口側
ただし、静圧測定孔を設ける位置は、ダクトの構造や測定目的に応じて選定します。
正常時との比較例
| 測定位置 | 正常時 | 現在 |
|---|---|---|
| フード直後 | −120 Pa | −125 Pa |
| 主管 | −250 Pa | −290 Pa |
| 排風機入口 | −400 Pa | −460 Pa |
この例では、いずれの測定位置でも負圧の絶対値が増加しています。
しかし、この結果だけでダクトの閉塞やフィルター目詰まりを断定してはいけません。
排風量、ダンパー開度、排風機回転数などと組み合わせて判断する必要があります。
判定基準をどう考えるか?
厚生労働省の検査指針では、例えばダクト内の堆積などに関連する静圧測定について、設計値と著しい差がないことを判定基準とする取扱いが示されています。
ただし、「どの場所でも設計静圧の±10%以内なら必ず合格」といった一律の基準があるわけではありません。
静圧の数値を判定するときには、測定位置と運転条件を確認することが重要です。
15. 抑制濃度が性能要件となる場合はどうするのか?
ここまで制御風速を中心に説明しました。
しかし、すべての局所排気装置が制御風速だけで性能を評価されるわけではありません。
例えば、鉛や一部の特定化学物質に関係する設備では、適用法令・告示により、抑制濃度が性能要件となる場合があります。
抑制濃度とは?
抑制濃度は、局所排気装置によって有害物質の発散が抑えられているかを評価するための基準です。
所定の位置と方法で有害物質濃度を測定し、基準と比較します。
これは、一般的な作業環境測定の管理濃度とは異なる概念です。
制御風速だけで判断してはいけない
例えば、抑制濃度で性能を評価する装置において、設計上の風速が確保されていても、それだけで抑制濃度の要件を満たしたとは判断できません。
適用される告示や検査指針に従って評価する必要があります。
また、過去の抑制濃度測定結果を利用して、その後の風速測定から性能を確認する方法には、所定の条件があります。
そのため、測定記録がない設備で、任意に設定した風速値だけを使用して適合判定することは適切ではありません。
16. 判定基準をどう整理するのか?
ここまで、多くの点検・測定項目を説明しました。
しかし、実際の検査では「何を基準に合格・不合格を判断するか」が重要です。
判定基準は、大きく次の3つに整理できます。
① 法令上の性能要件
例えば、有機溶剤中毒予防規則第16条第1項の原則値が適用される場合、囲い式フードの制御風速は0.4 m/sです。
この場合には、法令上の性能要件と比較します。
② 検査指針に示された判定基準
例えば、フードの吸引機能を低下させる損傷がないことや、吸込み口に閉塞がないことなどが示されています。
また、設計時の構造が維持されているかも重要な確認事項です。
③ 設計値・正常時の測定値
例えば、完成時の排風量や静圧を記録していた場合、現在の測定結果と比較することができます。
ただし、正常時の数値が法令上の性能を満たしていたことを確認する必要があります。
実務上の判定表
| 評価項目 | 主な判定根拠 |
|---|---|
| フード構造 | 届出時の構造・検査指針 |
| 腐食・損傷 | 機能を低下させる異常の有無 |
| ダクト堆積 | 堆積・閉塞の状態 |
| 空気漏れ | 接続部等の漏れの有無 |
| ベルト | 作動状態・メーカー仕様等 |
| 制御風速 | 適用法令・告示の値 |
| 抑制濃度 | 適用法令・告示の値 |
| 排風量 | 設計値・必要な性能 |
| 静圧 | 設計値・正常時の値との比較 |
| 排風機 | 性能曲線・運転条件・設備仕様 |
重要なのは、すべての測定結果に一律の許容差を設定しないことです。
例えば、設計値に対して風量が5%少ない場合でも、必要な制御風速を下回っていれば問題となります。
反対に、設計計算との間に一定の差があっても、それだけで直ちに法令違反と判断できるとは限りません。
法令上の性能、検査指針の判定基準、設計上の必要性能を区別して評価する必要があります。
17. 検査で異常が見つかった場合はどうするのか?
定期自主検査では、測定すること自体が目的ではありません。
異常が見つかった場合には、その原因を確認し、必要な措置を講じることが重要です。

例えば、制御風速が不足していた場合
あるドラフトチャンバーで、開口面の最小風速が0.32 m/sだったとします。
適用される性能要件が0.4 m/sであれば、所定の能力が不足しています。
この場合には、次のような原因が考えられます。
- サッシの開口状態が設計と異なる
- ダクトのダンパーが閉じている
- ダクト内部に堆積物がある
- 排風機の回転数が不足している
- 空調の外乱気流が影響している
原因を調べたうえで、適切な改善を行います。
法令上の補修義務
例えば、有機溶剤中毒予防規則第23条では、所定の自主検査や点検によって異常を認めた場合、直ちに補修しなければならないことが規定されています。
特定化学物質障害予防規則や粉じん障害防止規則にも、異常を認めた場合の補修等に関する規定があります。
修理が完了すれば問題ないのか?
必ずしもそうではありません。
例えば、ダクトを清掃しても、必要な制御風速が回復していなければ、十分な改善が行われたとはいえません。
そのため、修理後には必要な性能を再確認する必要があります。
また、吸引能力不足によって作業者が有害物質へばく露するおそれがある場合には、修理までの間も適切な保護措置が必要です。
18. 定期自主検査の記録は何年間保存するのか?
定期自主検査を行った場合には、関係法令に基づく記録が必要です。
例えば、有機溶剤中毒予防規則第21条では、所定の自主検査について、次の事項を記録し、3年間保存することが規定されています。
- 検査年月日
- 検査方法
- 検査箇所
- 検査の結果
- 検査を実施した者の氏名
- 検査結果に基づいて補修等の措置を講じた場合、その内容
初回使用時の点検記録にも同じ義務があるのか?
ここは注意が必要です。
有機溶剤中毒予防規則第21条の3年間保存規定は、同条で指定された自主検査の記録について定めています。
これを、そのまま同規則第22条の初回使用時点検へ適用する説明は正確ではありません。
一方、特定化学物質障害予防規則第34条の2や、粉じん障害防止規則第20条では、所定の初回使用時等の点検についても記録・保存が規定されています。
したがって、記録の保存義務は適用規則ごとに確認する必要があります。
実務上は検査結果を長期的に活用したい
法定保存期間を満たすこととは別に、完成時の測定値や設備改造前後の記録を、設備の履歴として保存しておくことを推奨します。
例えば、5年前の測定値と現在の測定値を比較することで、徐々に進行した性能低下を把握できる場合があります。
19. 日常点検を現場で継続する仕組み
ここからは、法令上の定期自主検査とは別に、日常管理の方法を考えます。
例えば、作業開始前に次の事項を確認する運用が考えられます。
| 確認項目 | 日常点検の例 |
|---|---|
| 排風機 | 運転しているか |
| 異常音 | 普段と異なる音がないか |
| 振動 | 異常な振動がないか |
| フード | 開口部をふさぐ物がないか |
| サッシ | 決められた開口高さか |
| ダンパー | 所定位置にあるか |
| 吸引気流 | 気流の状態に異常がないか |
| 差圧表示 | 設定した管理範囲から外れていないか |

毎日風速を測定する必要があるのか?
すべての局所排気装置について、毎日の風速測定が一律に義務付けられているわけではありません。
ただし、設備の使用条件や有害物質のリスクによっては、日常的な風速確認が有用な場合があります。
例えば、風量の変動が大きい設備や、作業者のばく露リスクが高い設備では、適切な監視方法を検討することが重要です。
異常の報告方法を決める
日常点検で異常が見つかっても、報告先や対応方法が決まっていなければ、設備が不適切な状態のまま使用されるおそれがあります。
そのため、次のような仕組みを推奨します。
- 誰が日常点検するか
- 何を異常と判断するか
- 異常を誰へ報告するか
- 作業を停止する条件は何か
- 誰が改善と再使用の判断をするか
これは、法令に一律の様式が定められたものではなく、事業場で整備する実務上の管理方法です。
20. 事例|定期自主検査では正常だったのに、3か月後に吸引能力が低下した
ここでは、架空の化学工場を想定します。
この工場では、有機溶剤を使用する作業台に、側方吸引型外付け式フードを設置しています。
3か月前に定期自主検査を実施したときには、必要な制御風速が得られていました。
しかし、最近になって、吸引能力が弱くなったように感じるという報告がありました。
ステップ① 作業状態を確認する
作業状況を確認すると、フードの近くに新しい作業用容器が設置されていました。
この容器が、発散源からフードへ向かう気流に影響している可能性があります。
ステップ② 制御風速を測定する
所定の作業位置で風速を測定したところ、前回の測定値より低下していました。
ステップ③ 原因を調べる
排風機の運転状態、ダンパー開度、ダクトの状態なども確認しました。
その結果、大きな設備異常はなく、容器の配置変更が吸引気流に影響している可能性が高いと判断しました。
ステップ④ 改善する
作業性を損なわないように容器の配置を見直しました。
その後、再び所定位置で風速を測定し、必要な性能が回復したことを確認しました。
この事例から学べること
この例では、定期自主検査を実施してから3か月しか経過していません。
それでも、作業環境の変化によって、必要な性能を確保できなくなる場合があります。
つまり、定期自主検査は設備管理の基礎ですが、日常の変化を把握する仕組みも重要ということです。
21. 現場で使える日常点検チェックリスト
次の表は、現場で日常点検を行うための記入例です。
| 点検項目 | 良好 | 異常 | 対象外 |
|---|---|---|---|
| 排風機が運転している | □ | □ | □ |
| 異常音がない | □ | □ | □ |
| 異常振動がない | □ | □ | □ |
| フードの開口部に障害物がない | □ | □ | □ |
| フードのサッシが所定位置にある | □ | □ | □ |
| ダンパーが所定位置にある | □ | □ | □ |
| 吸引気流の状態に異常がない | □ | □ | □ |
| 空気清浄装置の表示が正常 | □ | □ | □ |
| 空調・給気条件に大きな変化がない | □ | □ | □ |
| 異常があれば報告した | □ | □ | □ |
設備名、点検日、点検者、異常内容、対応状況も記録すると、履歴管理に活用できます。
※この表は一般的な設備を想定した実務用の例です。設備ごとに必要な点検事項を追加・修正してください。
22. 定期自主検査の実施手順チェックリスト
定期自主検査を進める際には、次の順序で準備・検査・評価・記録を行うと整理しやすくなります。
| 段階 | 確認事項 |
|---|---|
| 準備 | 適用法令と対象設備の確認 |
| 準備 | 前回の検査記録・設計資料の確認 |
| 準備 | 検査指針と判定基準の確認 |
| 準備 | 測定器の準備・機能確認 |
| 安全 | 運転中測定と停止点検の区分 |
| フード | 構造・腐食・損傷・堆積 |
| フード | 吸引気流・障害物 |
| ダクト | 腐食・変形・堆積・漏れ |
| ダクト | 接続部・ダンパー |
| 排風機 | 羽根車・軸受・ベルト等 |
| 排風機 | 運転状態・必要な圧力・風量 |
| 性能 | 制御風速または抑制濃度等 |
| 性能 | 必要に応じた排風量・静圧 |
| 判定 | 適用法令・検査指針・設計値との比較 |
| 改善 | 不適合事項の原因調査・補修 |
| 再確認 | 必要な性能の再測定 |
| 記録 | 法定事項の記録・保存 |
| 維持管理 | 次回検査への引継ぎ |
この表は定期自主検査の業務を整理するためのものであり、検査指針のすべての項目を省略せず掲載したものではありません。
正式な検査では、厚生労働省の検査指針と対象設備の構造を確認し、必要な検査項目を漏れなく実施してください。
よくある質問
Q1. 局所排気装置の日常点検は、毎日実施する法的義務がありますか?
すべての局所排気装置について、一律に毎日の点検が規定されているわけではありません。
ただし、適用される個別の法令や設備条件を確認する必要があります。
実務上は、作業開始前などに必要な状態を確認することを推奨します。
Q2. 定期自主検査は1年に1回実施すればよいのですか?
対象設備では、原則として1年以内ごとに1回の定期自主検査が規定されています。
ただし、長期使用休止時の例外や使用再開時の検査など、適用規則の条件を確認する必要があります。
Q3. 定期自主検査では必ず制御風速を測定するのですか?
性能要件が制御風速で定められている設備では、所定の方法による測定が重要です。
一方、抑制濃度によって性能を評価する設備もあります。
厚生労働省の検査指針では、両者に対応する検査方法が示されています。
Q4. スモークテスターで煙が吸い込まれれば、性能に問題はありませんか?
それだけでは判断できません。
気流の方向が適切でも、法令で求められる制御風速に達していない場合があります。
Q5. 静圧が設計値と異なる場合、不適合ですか?
測定位置、風量、排風機の運転条件などを確認する必要があります。
静圧の値だけで法令違反や故障箇所を断定することはできません。
Q6. 排風機の回転数が正常なら、吸引能力も正常ですか?
必ずしもそうではありません。
ダクトの閉塞や空気漏れ、フードの位置、空気清浄装置の抵抗などが影響する場合があります。
Q7. 初回使用時点検の結果は3年間保存する必要がありますか?
適用規則によって異なります。
例えば、特定化学物質障害予防規則や粉じん障害防止規則には、所定の初回点検に関する記録・保存規定があります。
有機溶剤中毒予防規則では、定期自主検査の記録保存義務と初回使用時点検の規定を区別して確認する必要があります。
Q8. 定期自主検査で異常が見つかったらどうすればよいですか?
まず、有害物質へのばく露などの危険性を確認し、必要な保護措置を講じます。
そのうえで、関係規則に従って補修等を行い、必要な性能が回復したことを確認します。
まとめ|定期自主検査と日常点検を組み合わせて性能を維持する
局所排気装置は、設置したときの性能が、その後も自動的に維持される設備ではありません。
フード、ダクト、排風機、空気清浄装置などに異常が生じると、吸引性能が低下する場合があります。
そのため、日常点検によって普段と異なる状態を早期に発見するとともに、法令で対象となる設備については定期自主検査を実施する必要があります。
定期自主検査では、設備の腐食や損傷などの状態確認だけでなく、必要な制御風速や抑制濃度などの性能要件についても、適用法令や検査指針に基づいて評価します。
また、検査結果が設計値や正常時の値と異なる場合には、原因を調査し、必要な改善を行います。
そして、改善後には必要な性能を再確認し、その結果を記録することが重要です。
局所排気装置の点検・検査で重要なのは、チェックリストを埋めることではありません。設備の状態と実際の捕捉性能を確認し、有害物質へのばく露を防ぐために必要な能力を維持することです。
この考え方を現場の管理に取り入れることで、設備の異常を早期に把握し、計画的な修理や改善につなげることができます。
次回は、定期自主検査で重要となる「制御風速・静圧・排風量の記録と管理値の設定」について、設備の性能低下を早期に発見する実務方法を解説します。
主な参考資料
- 『やさしい作業環境改善技術』第18章「工事完成時の点検と性能が出ない場合の対策」
- e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」
- e-Gov法令検索「特定化学物質障害予防規則」
- e-Gov法令検索「粉じん障害防止規則」
- e-Gov法令検索「鉛中毒予防規則」
- e-Gov法令検索「石綿障害予防規則」
- 厚生労働省「局所排気装置の定期自主検査指針」等の周知等について(平成20年3月27日)
※本文の風速、風量、静圧の計算例は、検査方法を理解するための仮定例です。実設備の判定結果を示すものではありません。
※法令上の義務は、取り扱う物質、業務、装置の設置根拠、適用される特例等によって異なります。実際の検査では、適用法令と検査指針を確認してください。
※日常点検の推奨項目や頻度の設定は、法定の定期自主検査に代わるものではありません。


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