有機溶剤中毒予防規則の適用除外とは?第2条・第3条・第4条の2の違いをわかりやすく解説

有機溶剤を少量しか使用しない場合、

「局所排気装置は必要なのか」
「有機溶剤作業主任者を選任しなければならないのか」
「作業環境測定や有機溶剤健康診断まで必要なのか」

と迷うことがあります。

有機溶剤中毒予防規則(以下「有機則」)には、一定の条件に該当した場合、一部または広い範囲の規定を適用しない「適用除外」の仕組みがあります。

ただし、「使用量が少ない=有機則がすべて適用されない」ではありません。

2026年10月3日時点の有機則では、少量使用に関係する第2条・第3条に加えて、化学物質管理が一定の水準にある事業場についての第4条の2があります。まず、この3つを分けて考えることが重要です。

💡 最初に押さえる結論

第2条:許容消費量以下なら、一定の規定が適用除外になる。労働基準監督署長の認定は規定されていない。
第3条:少量使用が常態となっているなどの条件を満たし、所轄労働基準監督署長の認定を受けることで、さらに広い範囲が適用除外になる。
第4条の2:使用量の少なさではなく、事業場の化学物質管理が一定水準にあることを所轄都道府県労働局長が認定する制度。

目次

有機則の適用除外は「何も管理しなくてよい」という意味ではない

「適用除外」という言葉から、有機溶剤に関する管理がすべて不要になると考えてしまうかもしれません。

しかし、実際にはそうではありません。

第2条、第3条、第4条の2では、適用除外となる条件も範囲も異なります。さらに、有機則の一部が適用されなくなったからといって、労働安全衛生法や労働安全衛生規則など、他の法令に基づく義務まで自動的に消えるわけではありません。

したがって実務では、

「適用除外になるか」

だけを見るのではなく、

「どの規定が適用されなくなり、どの規定が残るのか」

まで確認することが重要です。

まず確認するのは「有機溶剤の使用量」だけではない

第2条・第3条を検討するとき、最初から許容消費量を計算するのは適切ではありません。

先に、次の順序で確認します。

  1. 使用している物が有機則の対象となる「有機溶剤等」に該当するか
  2. 行っている作業が有機溶剤業務に該当するか
  3. その業務が第2条・第3条の対象となる業務か
  4. 作業場所が「タンク等の内部」か、それ以外か
  5. 有機溶剤等の消費量を確認する
  6. 許容消費量と比較する
  7. どの適用除外制度を検討しているのかを整理する

特に注意したいのが「対象業務」です。

第2条・第3条が対象としているのは、有機則第1条第1項第6号のハからルまでの業務です。

例えば、印刷、文字の書込み・描画、表面加工、接着剤等の塗布、接着、洗浄・払しょく、塗装、乾燥、試験・研究などが含まれます。

一方、有機溶剤等を製造する工程の業務など、第1条第1項第6号イ・ロや、同号ヲの業務まで第2条・第3条の適用除外対象になるわけではありません。

第2条の適用除外とは

第2条は、一定の有機溶剤業務について、消費する有機溶剤等の量が「許容消費量」を超えない場合に、有機則の一部の規定を適用しない仕組みです。

第3条とは異なり、第2条には所轄労働基準監督署長による認定手続は規定されていません。

ただし、「会社が少量だと思ったから適用除外」という意味ではありません。

法令で定められた方法により、作業場の気積、有機溶剤等の区分、消費量などを確認し、条件に該当していることを説明できるようにしておく必要があります。

許容消費量はどう計算するのか

タンク等の内部以外の場所では、作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量と、次の許容消費量を比較します。

有機溶剤等の区分許容消費量 W
第一種有機溶剤等W=1/15 × A
第二種有機溶剤等W=2/5 × A
第三種有機溶剤等W=3/2 × A

Wは許容消費量で、単位はグラムです。

Aは作業場の気積で、単位は立方メートルです。ただし、床面から4mを超える高さの空間は除き、気積が150m³を超える場合は150m³として計算します。

そのため、Aを最大の150m³として計算すると、許容消費量は第一種10g、第二種60g、第三種225gとなります。

タンク等の内部では、「作業時間1時間」ではなく、1日に消費する量と許容消費量を比較します。

使用した製品の重量をそのまま使うとは限らない

ここは実務で間違えやすいところです。

例えば塗料、インキ、接着剤などの有機溶剤含有物では、「製品を100g使ったから消費量100g」と単純に扱うとは限りません。

有機則第2条第2項では、業務の種類に応じた消費量に、厚生労働大臣が定める数値を乗じる仕組みがあります。その数値は昭和47年労働省告示第122号で定められています。純粋な有機溶剤では1.0、有機溶剤含有物では製品の区分などに応じた数値を使用します。

したがって、適用除外を判断するときは、購入量や使用した容器の本数だけで判断せず、対象となる有機溶剤等の量を法令上どのように計算するかまで確認する必要があります。

第2条では何が適用除外になるのか

第2条では、有機則のすべてが適用されなくなるわけではありません。

条文上、主に次の規定が適用除外の対象となります。

  • 第2章「設備」
  • 第3章「換気装置の性能等」
  • 第19条・第19条の2(有機溶剤作業主任者関係)
  • 第24条から第26条まで
  • 第7章「保護具」
  • 第9章「有機溶剤作業主任者技能講習」

例えば、有機則第24条の掲示や第25条の有機溶剤等の区分表示なども、第2条による適用除外の対象に含まれます。

一方、第5章「測定」と第6章「健康診断」は、第2条で列挙されている適用除外の対象に含まれていません。

ここで「必ず作業環境測定と健康診断が必要」と単純化しないことも重要です。

正確には、

第2条に該当しただけでは、第5章の測定や第6章の健康診断は免除されない。したがって、それぞれの規定の適用要件に該当する場合は実施が必要になる。

という整理になります。

有機則の第5章は測定、第6章は健康診断、第8章は有機溶剤の貯蔵・空容器の処理について定めています。

第3条は「監督署長の認定」を受ける適用除外

第3条も、基本となる許容消費量の考え方は第2条と共通しています。

大きな違いは、所轄労働基準監督署長の認定が必要であることと、適用除外の範囲が第2条より広いことです。

タンク等の内部以外では、作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量が許容消費量を常態として超えないことが条件です。

タンク等の内部では、1日に消費する有機溶剤等の量が許容消費量を常に超えないことが条件になります。

第3条の認定を受けようとする事業者は、有機溶剤中毒予防規則一部適用除外認定申請書に作業場の見取図を添えて、所轄労働基準監督署長へ提出します。

また、認定後に第3条の条件を満たさなくなった場合は、事業者は遅滞なく所轄労働基準監督署長へ報告しなければなりません。

第3条では何が残るのか

第3条は、

「この省令(第四章中第二十七条及び第八章を除く。)」

を適用しないという構造になっています。

つまり、第3条の認定を受けた業務についても残るのが、

第27条「事故の場合の退避等」
第8章「有機溶剤の貯蔵及び空容器の処理」

です。

反対に、第5章の測定や第6章の健康診断などは、第3条による適用除外の範囲に入ります。

したがって、第2条と第3条を比べると、次のように整理できます。

比較項目第2条第3条
基本となる条件許容消費量以下許容消費量を常態として、または常に超えない
監督署長の認定不要必要
設備関係一定範囲で適用除外原則として適用除外
作業主任者関係一定範囲で適用除外適用除外
作業環境測定第2条では免除されない適用除外
有機溶剤健康診断第2条では免除されない適用除外
第27条・事故時の退避等適用が残る適用が残る
貯蔵・空容器の処理適用が残る適用が残る

現在は第4条の2の適用除外制度もある

現在の記事を更新するうえで、特に追加しておきたいのが有機則第4条の2です。

これは、第2条・第3条のような「有機溶剤の使用量が少ない場合」の仕組みとは性格が異なります。

第4条の2は、化学物質の管理が一定の水準にある事業場について、所轄都道府県労働局長の認定を受けることで、有機則の一部を適用除外とする制度です。

主な認定要件には、専属の化学物質管理専門家を配置してリスクアセスメントやリスク低減措置を管理していること、過去3年間の一定の労働災害の状況、作業環境の管理状況、健康診断結果、事業場外の化学物質管理専門家による評価、法令遵守状況などがあります。

この制度の認定は事業場単位で行われ、認定は3年ごとに更新が必要です。

また、第4条の2による認定を受けても、健康診断や一定の保護具関係の規定は適用除外にはなりません。厚生労働省の運用通知でも、認定後もこれらを遵守する必要があることが示されています。

したがって、第4条の2は単なる「規制緩和制度」と考えるより、

十分な化学物質管理能力と実績がある事業場について、個別規制中心の管理から自律的な化学物質管理へ移行できる仕組み

と理解した方が実務上分かりやすいでしょう。

「第2条なら自己判断で大丈夫」と考えない

実務上、特に注意したいのがこの点です。

第2条には第3条のような認定手続がないため、「自己判断でよい」と説明されることがあります。

しかし、この表現だけでは誤解を招きます。

事業者が確認しなければならないのは、少なくとも、

  • 対象となる有機溶剤等
  • 有機溶剤業務の種類
  • 作業場所
  • 作業場の気積
  • 有機溶剤等の区分
  • 消費量
  • 告示で定める乗数
  • 許容消費量との比較
  • 適用除外となる規定と残る規定

です。

そのため実務では、計算根拠や使用量を記録し、後から「なぜ第2条に該当すると判断したのか」を説明できる状態にしておくことをおすすめします。

これは有機則第2条が新たな記録様式を直接要求しているという意味ではなく、適用関係を適切に判断・管理するための実務上の提案です。

使用量が少なくてもリスクがなくなるわけではない

もう一つ重要なのは、

法令上の適用除外と、実際の健康障害リスクは同じものではない

という点です。

例えば少量の有機溶剤であっても、作業者の顔のすぐ近くで使用する、揮発性が高い、換気が悪い、皮膚へ繰り返し付着するなど、作業条件によってばく露状況は変わります。

したがって、有機則の設備規定等が適用除外になる場合でも、

「法令上局所排気装置が不要だから、何も対策しなくてよい」

と考えるのは適切ではありません。

対象物質に関して別途リスクアセスメント等の法的義務が適用される場合は、その義務に従う必要があります。また、法令上の最低限の義務とは別に、実際のばく露状況に応じた合理的なリスク低減措置を検討することが重要です。

実務ではこの順番で確認する

有機溶剤の適用除外を検討するときは、「何グラム使っているか」だけから判断を始めないことをおすすめします。

まずSDSや製品情報から対象物質と含有率を確認し、次に作業内容と作業場所を整理します。そのうえで、有機則第1条のどの有機溶剤業務に該当するのかを確認します。

次に、有機溶剤等の区分、作業場の気積、実際の使用量・消費量を確認し、第2条の許容消費量を計算します。

第2条に該当する場合は、そこで確認を終わらせず、

「第2条によって何が適用されなくなるのか」
「測定・健康診断など、残る規定の適用要件に該当しないか」
「他の労働安全衛生関係法令による義務はないか」

まで確認します。

さらに、少量使用が継続的な状態であり、第3条による広い範囲の適用除外を検討する場合は、所轄労働基準監督署へ事前に相談したうえで認定手続を確認するのが実務上確実です。

よくある誤解

「少量なら健康診断は不要ですか?」

第2条に該当しただけでは、有機則第6章の健康診断は適用除外になりません。

健康診断の対象となる業務に該当する場合は、別途、第29条などの要件を確認する必要があります。

一方、第3条の認定を受けた当該業務については、第3条による適用除外の範囲に第6章も含まれます。

「少量なら作業環境測定は不要ですか?」

これも第2条だけでは判断できません。

第5章の測定は第2条の適用除外対象に含まれていないため、測定規定自体の適用条件を確認します。

第3条の認定を受けた当該業務では、第5章も適用除外の範囲になります。

「第2条に該当すれば有機溶剤に関する表示は全部不要ですか?」

注意が必要です。

第2条では、有機則第24条の掲示や第25条の区分表示などが適用除外になります。

しかし、これは「有機則上の当該規定」が適用されないという意味です。労働安全衛生法や労働安全衛生規則など、別の規定によるラベル、SDS、リスクアセスメント等の義務まで一律に適用されなくなるという意味ではありません。

どの法令の、どの条文に基づく表示なのかを分けて確認することが重要です。

まとめ

有機溶剤中毒予防規則の適用除外を判断するときは、「使用量が少ない」という一点だけでは不十分です。

第2条では、許容消費量以下であれば設備、作業主任者、掲示・区分表示、保護具など一定の規定が適用除外になりますが、測定や健康診断は第2条による適用除外の対象ではありません。

第3条では、少量使用が常態となっているなどの条件を満たし、所轄労働基準監督署長の認定を受けることで、第27条の事故時の退避等と第8章の貯蔵・空容器処理を除き、より広い範囲が適用除外になります。

さらに現在は、第4条の2として、十分な化学物質管理体制・実績を有する事業場について、所轄都道府県労働局長が認定する別の適用除外制度も設けられています。

実務では、

対象物質 → 対象業務 → 作業場所 → 消費量 → 許容消費量 → 適用除外となる条文 → 残る義務

という順番で確認すると、判断を誤りにくくなります。

そして最も重要なのは、「適用除外=安全対策が不要」ではないということです。

法令上の適用関係を確認するとともに、実際のばく露状況や作業方法を踏まえて、必要な健康障害防止措置を検討してください。

📚 主な参考資料

厚生労働省「有機溶剤中毒予防規則」
有機溶剤中毒予防規則(厚生労働省)

厚生労働省「有機溶剤等の量に乗ずべき数値(昭和47年労働省告示第122号)」
有機溶剤等の量に乗ずべき数値

厚生労働省「有機溶剤中毒予防規則等に基づく化学物質の管理が一定の水準にある場合の適用除外の認定制度の運用について」(令和5年1月30日 基安発0130第1号)
第4条の2に関する認定制度の運用通知

※法令内容は2026年10月3日時点で確認しています。個別の事業場への適用は、使用物質、含有率、作業内容、作業場所、使用量・消費量などによって変わるため、必要に応じて所轄労働基準監督署等へ確認してください。

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この記事を書いた人

労働衛生コンサルタント。製造現場で約10年、環境安全部門で約20年、合計約30年の実務経験があります。化学物質管理、作業環境管理、局所排気、ISO45001及び安全衛生教育を中心に、現場で実行・継続できる仕組みづくりを支援しています。

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